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採用単価の定義と、公的統計でわかる1件あたりの実額

採用単価の定義と、公的統計でわかる1件あたりの実額
鈴木 裕斗監修者

株式会社overflow / 代表取締役 CEO

鈴木 裕斗

株式会社サイバーエージェントに新卒入社。広告営業を経て、Amebaプラットフォームの管轄責任者に就任。その後、スタートアップ企業に入社、代表取締役就任を経て2ヶ月後に株式会社ディー・エヌ・エーにM&A、子会社化。子会社代表取締役とDeNA広告部長を兼任。2017年6月、株式会社overflowを創業。2018年から2020年9月末までエキサイト株式会社の社外取締役を兼任。

採用単価を他社と比べようとして、出てくる数字がまるで揃わない。原因は市場のばらつきではなく、同じ「採用単価」という言葉が、調査ごとに違うものを測っていることにあります。分子に何を入れ、分母をどの時点で数えるかが揃っていない数字は、並べたところで大小の意味を持ちません。

この記事は、まず自社の数字を比較できる状態にするところから始めます。そのうえで、毎年更新されている公的な実額がどこにあり、それが何を測った金額なのかを確かめていきます。

採用単価の定義と採用コストとの使い分け

採用単価とは、一定期間に投じた採用費用の総額を、同じ期間の採用人数で割った1人あたりの金額です。採用コストが費用の総額そのものを指すのに対し、採用単価はそれを人数で割った値であり、社内では両者を分けて扱います。

式そのものは1行で書けます。採用単価は、採用費用の総額を採用人数で割った値。実務で判断が割れるのは式ではなく、この右側に何を代入するかの側です。同じ会社の同じ期間であっても、代入するものを変えれば結果は何倍にも動きます。

費用の側は、外部費用と内部費用の2階建てで捉えるのが一般的です。外部費用は求人媒体の掲載料や人材紹介の手数料など社外へ支払う費用、内部費用は採用担当者や面接官の人件費など社内で発生する費用にあたります。費目の細かい一覧は採用コストの内訳に譲り、ここでは2階建てという骨格だけを押さえておきます。

分けて扱う理由は、総額と単価が同じ向きに動くとは限らないからです。採用人数を増やせば総額は増えますが、担当者の人件費のように人数で薄まる費用があるため、単価のほうは下がることがあります。逆に採用人数を絞った年度は、総額が減っていても単価は上がる。総額の増減だけを見て「採用にかけすぎている」と判断すると、この動きを取り違えます。

単価を持つ目的は、金額を下げること自体よりも手前にあります。同じ人数を採用するのにいくら要るかを一定の物差しで測り、年度をまたいで比べられるようにする。ここが出発点です。物差しが年ごとに伸び縮みしていれば、下がったのか測り方が変わったのかを区別できません。定義の話から始めるのは、そのためです。

分子に何を含めるかは公的な調査でも定義されていない

「採用単価の平均は◯万円」として流通している数字の多くは、企業への自己申告アンケートに由来します。厚生労働省「採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査」報告書は、令和3年度の厚生労働省委託調査として2022年3月に公表されました。求人企業12,800社を無作為に抽出し、有効回答は1,142社です。この報告書の巻末に載る調査票を開くと、採用コストを尋ねる設問(問4)は「各採用手段について、採用1件あたりの採用コストを、正社員、パート・アルバイト等直接雇用の非正社員別にお答えください」と書かれ、万円単位の整数で記入するよう求めているだけでした。何を費用に含めるかの範囲は、どこにも示されていません。

回答した1,142社は、それぞれ自社の考える範囲で金額を答えたことになります。媒体費だけを答えた会社もあれば、担当者の人件費まで積んで答えた会社もある。その平均が「相場」として引用されている、というのがこの数字の来歴です。範囲がそろっていない以上、自社の数字を当てて高い低いを判定する用途には向きません。

ここから導けることは1つです。分子の範囲は、外部から与えられるものではなく、自社で決めて固定するもの。何を含めたかを書き残しておかないかぎり、翌年の自分とも比較ができません。

分母を数える時点で同じ費用でも単価が変わる

分母の側にも同じ問題があります。採用人数を、内定承諾の時点で数えるのか、入社の時点で数えるのか、試用期間を終えた時点で数えるのか。どれを選ぶかで分母が変わり、費用が1円も動かなくても単価だけが動きます。

たとえば、内定承諾が10名で実際の入社が8名だった年度を考えてください。同じ費用でも、承諾で数えれば単価は入社ベースより2割ほど低く出ます。低く出た数字が悪いわけではなく、承諾を分母に置いたと記録さえしてあれば一貫した指標になる。困るのは、前期は入社で数え、今期は承諾で数えていた、という状態のほうです。

期をまたぐ費用の扱いも避けて通れません。母集団形成にかけた媒体費やスカウト送信の工数は、入社の数か月前に発生しています。会計年度で費用を切り、入社日で人数を切ると、前期の費用と今期の人数が同じ式に乗ってしまう。人数の変動が大きい年ほど、このずれは大きく出ます。

公的統計にこの答えはありません。どの時点で数えるかを決めているのは各社の運用であって、統計の側ではないからです。だからこそ、決めた時点を毎期変えないことが比較の前提になります。

人材紹介の1件あたりの実額は毎年公表されている

自己申告ではない数字も1つあります。厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)によると、有料職業紹介の常用就職1件あたりの手数料は約103万円で、前年度から10.9%増えました。事業者が実際に受け取った手数料の集計であり、企業への聞き取りではありません。

手数料収入は17.6%増、就職件数は4.8%増で差が単価に出ている

同じ集計結果によると、令和6年度の民営職業紹介事業所の手数料収入は約9,835億円で対前年度比17.6%増、そのうち常用就職に係る手数料は約9,136億円で16.8%増でした。一方、常用就職の件数は有料888,993件(5.3%増)と無料31,242件(7.4%減)を合わせた約92万件で、伸びは4.8%にとどまります。収入の伸びが件数の伸びを3倍以上上回っており、その差が1件あたりの上昇として表れます。公表されている1件あたり10.9%増の中身は、常用就職に係る手数料が16.8%増える一方で、有料分の件数は5.3%増にとどまったという差です。

年度をさかのぼると傾きはさらにはっきりします。同報告書の手数料徴収状況の年度別推移では、手数料合計が令和2年度の523,976,662千円から令和6年度の983,454,157千円へ増えており、本稿で計算するとこの4年で約1.9倍です。件数の増加だけでは説明のつかない伸び方をしています。

この約103万円が測っているのは紹介手数料だけになる

同報告書の注記によれば、「常用」とは4か月以上の期間を定めて雇用されるもの又は期間の定めなく雇用されるものを指し、1件あたりの金額は常用就職に係る手数料の総額を常用就職件数で割って算出した値です。本稿で検算すると、公表されている約103万円は、常用就職に係る手数料を有料職業紹介の常用就職888,993件で割った水準にあたります。つまりこの約103万円に、求人媒体の掲載料も、採用担当者の人件費も、面接に費やした時間も入っていません。

自社の数字と突き合わせるなら、自社側も同じ範囲に切りそろえます。人材紹介会社へ支払った手数料の合計を、人材紹介経由で入社した人数で割る。この1本だけを比較の軸に置けば、公表値と同じものを測ったことになります。全社平均の採用単価をこの金額と並べても、含まれている費目が違うので大小は読み取れません。

この約103万円を自社の目標値に据えるかどうかは、また別の判断になります。すべての事業者と職種を均した値であり、職種や年収帯によって実際の手数料は大きく上下するからです。使いどころは目標そのものよりも、自社の紹介経由の単価が全国の水準からどれだけ離れているか、離れているとしてその差が年々開いているのか縮んでいるのかを見る物差しの側にあります。

徴収された紹介手数料の大半は法定の上限が及ばない

同報告書の手数料徴収状況(令和6年度)を開くと、徴収された手数料の合計983,454,157千円のうち、届出制手数料が980,821,781千円を占めています。本稿で比率を計算すると99.7%です。法令が上限を定めている側は、賃金額に対する料率で天井が決まる上限制手数料1,804,568千円と、1件あたりの定額で天井が決まる受付手数料などを合わせて2,632,376千円。全体の0.3%に届きません。

区分

上限の定め方

令和6年度の徴収額

合計に占める割合

上限制手数料と受付手数料など

賃金額の100分の11(免税事業者は10.3)。受付手数料は1件710円(免税事業者は660円)

2,632,376千円

0.27%

届出制手数料

上限の定めなし(届け出た手数料表の額)

980,821,781千円

99.73%

合計

 

983,454,157千円

100%

出所:厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)の手数料徴収状況と、同「職業紹介事業の業務運営要領」第6 手数料。割合は本稿で算出

上限制と届出制の違いは料率の天井があるかどうかにある

厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第6 手数料(令和8年7月31日適用)は、上限制手数料の最高額を、支払われた賃金額の100分の11(免税事業者は10.3)と定めています。期間の定めのない雇用契約で同一の者が6箇月を超えて雇用された場合には、6箇月間の賃金額の100分の11と、臨時に支払われる賃金などを除いた額の100分の14.8(免税事業者は13.9)のうち大きい額まで、という規定も置かれました。上限制を採用する事業者は、これに加えて求人1件につき710円(免税事業者は660円)を限度とする受付手数料を組み合わせて徴収できます。

一方、届出制手数料について同要領が書いているのは、厚生労働大臣に届け出た手数料表の額を徴収することができる、というところまでです。率の上限は定められていません。上限制と届出制は事業者単位では併用できますが、同一の相手に対して併用して徴収することはできない、という制約が付いています。契約条件や返戻金まで含めた実務の扱いは人材紹介の手数料と契約で整理しました。

相場が動くのは料率の決定が法令の外にあるため

同要領によれば、届け出られた手数料表に対して変更を命じられるのは2つの場合に限られます。手数料に関する事項が明確に定められていないことにより著しく不当と認められるとき、または特定の者に対し不当な差別的取扱いをするときで、根拠は職業安定法第32条の3第4項です。

料率の水準そのものは、この2つに当たらないかぎり行政の判断を経ません。「年収の何パーセント」という数字が会社や職種によって開くのは、市場の慣行と個別の交渉で決まっているからです。法令から逆算できる水準ではない、という前提を置いておくと、見積書を横に並べたときの読み方が変わります。

この構造は、実務では2つの形で表れます。1つは、同じ職種で同じ年収帯であっても、会社によって提示される料率が違うこと。もう1つは、その料率が交渉の対象になり得ることです。法定の上限に守られていない領域だからこそ、料率そのものだけでなく、返戻金の条件、支払いの時期、対象となる賃金の範囲まで含めて条件を読む必要があります。単価の議論をチャネルの選択に落とすとき、この読み込みを飛ばすと後から差が出ます。

チャネル別の平均値は調査時点と回答数を見てから使う

チャネル別の1件あたり平均採用コストを公的に集計しているのは、先ほどの厚生労働省の委託調査(2022年3月報告・調査の実施は2021年6月)が事実上唯一です。正社員についての集計では、スカウトサービスが91.4万円、民間職業紹介事業者が85.1万円、インターネットの求人情報サイトが28.5万円、自社ホームページ等からの直接応募が2.8万円でした。最も高い項目と最も低い項目の開きは、本稿の計算で約33倍になります。

採用手段

1件あたりの平均採用コスト(正社員)

回答数

スカウトサービス

91.4万円

51

民間職業紹介事業者(紹介会社)

85.1万円

 

インターネットの求人情報サイト

28.5万円

 

インターンからの就職

12.4万円

 

求人情報誌・チラシ

11.3万円

 

委託募集

10.0万円

4

新聞広告・屋外広告

7.1万円

18

インターネットの求人情報まとめサイト

6.4万円

 

知り合い・社員等からの紹介(縁故)

4.4万円

 

自社ホームページ等からの直接応募

2.8万円

 

特別の法人等

1.0万円

12

SNS

0.9万円

15

アウトプレースメント

0.0万円

2

短期バイトのマッチングアプリ

回答なし

0

出所:厚生労働省「令和3年度厚生労働省委託調査 採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 報告書」(2022年3月)図表IV-14。回答数は同図表に個別表示されているものだけを記載した

チャネルによっては回答が数件しかない

同じ図表には、項目ごとの回答数が添えられています。スカウトサービスは51、新聞広告・屋外広告は18、特別の法人等は12、委託募集は4、アウトプレースメントは2で、短期バイトのマッチングアプリは0でした。委託募集の10.0万円は4社の回答の平均、アウトプレースメントの0.0万円は2社の回答の平均ということになります。報告書自身も、この2つは回答数が少ないので注意が必要だと図表に注記しています。

回答が数件の項目と、数百件の項目が、同じ表の中で同じ体裁で並んでいる。表として見れば「チャネル別の相場」に見えますが、平均値の安定度は項目ごとにまるで違います。引用する側が回答数を落とすと、この差が読み手に伝わりません。

調査の実施は2021年6月で今年の相場としては使えない

人材紹介の実額が毎年更新されるのに対し、チャネルを横並びにした公的な集計はこの1本しかなく、実施から4年以上が過ぎています。この間に人手不足の水準も媒体の価格体系も動きました。

更新されている数字と、更新が止まっている数字を、同じ「相場」という言葉でひとまとめにしない。これがチャネル別の平均値との付き合い方になります。使うのであれば、調査年と回答数を添えたうえで、傾向の材料として置くところまでです。

実務では、自社で同じ形の表を作るほうが速く役に立ちます。チャネルごとの外部費用と、そのチャネル経由の入社人数さえ取れれば、回答数の問題も定義の問題も起きません。母数が小さくても、自社の数字であれば範囲がそろっているぶん比較に使えます。外部の平均は、その自社の表が想定と大きく食い違ったときに、原因を探す入口として引くくらいの位置づけが妥当です。

採用単価を自社で定義するときに決める4項目

比較できる採用単価を作るには、集計期間・分子の範囲・分母の時点・分割の粒度の4つを先に決めます。決めた定義を毎期変えないことが、推移を読むための前提になります。

4つを決める作業に、外から与えられる正解はありません。どれを選んでも構わないかわりに、選んだことを書き残し、翌期も同じ選び方をする。定義を毎年変えた数字は、推移として並べたときに何も語らなくなります。

集計期間を会計年度に合わせるか採用年度に合わせるかを決める

会計年度に合わせれば、経理の数字とそのまま突き合わせられます。採用年度に合わせた場合の利点は、母集団形成から入社までを1つの塊として見られること。どちらにも理由があるので、経理と人事のどちらの会話で使う数字なのかで選びます。

内部費用を分子に入れるかどうかを決める

入れるなら、面接官の拘束時間をどう測るかまで決めておきます。標準時間を面接の段階ごとに置き、職位別の時間単価を掛ける方法が扱いやすいところです。入れないと決めるのも1つの判断で、その場合は「外部費用ベースの単価」であることを数字の名前に残しておきましょう。

分母をどの時点で数えるかを決める

内定承諾で数えれば単価は低めに出て、入社で数えれば実態に近づき、試用期間の終了で数えれば定着まで含めた値になります。早期離職が課題になっている組織なら、3つ目を選ぶと打ち手の優先順位そのものが変わってくるはずです。

チャネル別に割るか全社平均だけを持つかを決める

チャネル別に割ると、次の項で扱う切り分けができるようになります。ただし内部費用をチャネルへ按分する手間が生じるので、まずは全社平均と、外部費用だけのチャネル別単価の2本から始めるのが現実的です。

ここまでの4つを決めても、出てきた金額が高いのか低いのかは金額だけでは判定できません。同じ単価でも、母集団が足りていない組織と、選考の途中で辞退が続いている組織では、次に取り組むことがまるで違うからです。自社のどこで詰まっているかを先に測りたい場合は、エンジニア採用力チェックで採用体制を項目ごとに採点できます。

採用単価が上がる背景は人手不足の水準で説明がつく

厚生労働省「労働経済動向調査(令和8年5月)の概況」(2026年6月23日公表・調査客体5,786事業所のうち有効回答3,174事業所)によると、令和8年5月1日現在の正社員等労働者過不足判断D.I.は、調査産業計で+47ポイントの不足超過でした。不足と答えた事業所が49%、過剰が2%です。

D.I.は「不足」と答えた事業所の割合から「過剰」の割合を引いた値で、プラスが大きいほど人手が足りていない状態を表します。同調査の推移を並べると、令和7年11月調査が+49、令和8年2月調査が+49、そして令和8年5月調査が+47。高い水準のまま横ばいで動いており、短期で緩む兆しは見えていません。

産業

正社員等労働者過不足判断D.I.(2026年5月1日現在)

調査産業計

+47

建設業

+59

医療,福祉

+57

運輸業,郵便業

+55

情報通信業

+54

学術研究,専門・技術サービス業

+54

サービス業(他に分類されないもの)

+48

製造業

+44

宿泊業,飲食サービス業

+38

不動産業,物品賃貸業

+36

生活関連サービス業,娯楽業

+36

金融業,保険業

+32

卸売業,小売業

+31

出所:厚生労働省「労働経済動向調査(令和8(2026)年5月)の概況」表3。D.I.は「不足」と答えた事業所の割合から「過剰」の割合を引いた値

不足に対応した事業所の7割が中途採用の強化を挙げている

同調査によると、労働者が不足している部門等に何らかの対応をした事業所の割合は、令和8年1〜3月期の実績で調査産業計63%でした。対応内容(複数回答)で最も多かったのは「中途採用の開始・拡大・強化」の69%です。次に多い項目は複数が39%で並んでおり、「業務の効率化の推進」もその一つでした。

不足を感じた企業の3社に2社が動き、そのうち7割が同じ手段を選ぶ。同じ市場に買い手が集まれば、1件あたりの獲得コストは上がります。採用単価の上昇は、個社の交渉が下手だからではなく、この構造から出ているとみるほうが説明として素直です。

この見方は、単価の目標を置くときの前提にもなります。市場の水準が上がっている局面で前年並みの単価を目標に据えると、達成できるのは採用人数を絞ったときだけ、という状況が起こり得ます。単価の目標は、採用人数の目標と切り離さずに置くほうが噛み合うでしょう。年度の途中で市場が動いたときにどちらを優先するのかも、あわせて決めておきたいところです。

埋まらない求人の割合が最も高いのは宿泊業・飲食サービス業になる

厚生労働省「令和7年上半期雇用動向調査結果の概況」によると、令和7年6月末日現在の未充足求人数は1,359.5千人、欠員率は2.6%でした。産業別の欠員率は宿泊業・飲食サービス業の4.8%が最も高く、運輸業・郵便業の4.1%が続きます。

自社の産業の欠員率は、単価が高いことの言い訳としてではなく、前提条件として置きます。欠員率の高い産業で全国平均並みの単価に収まっているなら、それは十分に良い状態です。逆に欠員率の低い産業で単価が突出しているなら、市場ではなく自社の設計に原因があります。

欠員率は同じ調査で毎年6月末日現在の値が公表されるので、自社の産業の値を毎期メモしておくと、単価の推移を市場の動きと切り分けられます。単価が上がった年に欠員率も上がっていれば市場側の要因、欠員率が横ばいなのに単価だけ上がっていれば自社側の要因。この2つを見分けられるだけで、打ち手を選ぶときの迷いはかなり減ります。

単価を下げる打ち手は構成要素の大きさで変わる

削減の入口は、外部費用と内部費用のどちらが自社の単価を押し上げているかを切り分けることです。押し上げている側が違えば、優先すべき打ち手も変わります。

切り分けそのものは、分子をチャネル別と費目別の2軸で並べ直すだけで済みます。外部費用のうち何割が成功報酬で、何割が固定の掲載料か。内部費用のうち何割が書類選考と面接に費やされているか。ここまで割ると、単価を押し上げている塊が1つか2つに絞られます。全体を一律に削る計画より、塊を名指しした計画のほうが実行に移しやすい。

外部費用が大きいときは成功報酬型か掲載料型かで打ち手が分かれる

外部費用が大きい場合、比重の中心は成功報酬型の手数料か、媒体の掲載料のどちらかに寄っています。前者なら1件あたりの単価が高い代わりに空振りが少なく、後者なら固定費として先に出ていく。どちらが自社の構造かによって、チャネルの入れ替えで下がるのか、歩留まりの改善で下がるのかが分かれます。チャネル別の平均と削減の具体策は採用単価の平均相場と削減のポイントにまとめました。

成功報酬型の比重が高い構造なら、下げる余地は料率よりも歩留まりの側にあります。同じ料率のままでも、内定承諾率が上がれば1人あたりの支払額は変わらずに採用人数が増え、固定的な費用が薄まるからです。掲載料型の比重が高い構造では、掲載の本数と期間がそのまま単価を決めます。応募の集まらない枠を惰性で更新していないか、掲載単位で棚卸ししてみてください。

内部費用が大きいときは選考プロセスを金額に直すところから始める

内部費用が大きい場合は、選考プロセスそのものが原因になっていることが多いところです。面接の回数、面接官の人数、日程調整に費やす往復。ここは金額として請求書に現れないので、標準時間と時間単価を置いて可視化するところから始めます。

内部費用を金額に直しておくと、副次的な効果もあります。面接の回数や参加人数を減らす提案は、感覚で「面接が多い」と言うより、1採用あたりいくらの時間が乗っているかを示すほうが現場の合意を得やすくなるからです。削減の話をする前に、まず金額として置いてみることをおすすめします。

作り直しの費用は最初の採用の単価に計上されない

切り分けたうえで、もう1つ見ておきたいのが作り直しの費用です。入社した人が短期間で退職すれば、同じポジションをもう一度埋めるための費用がかかります。この分は最初の採用の単価には計上されないため、単価だけを見ていると改善したように見えてしまう。分母を試用期間の終了時点で取る選択肢を先に挙げたのは、この見落としを塞ぐためでもあります。

ここまでの切り分けを終えると、削減の議論はチャネルの選択という1本の軸から、歩留まり・工数・定着を含む複数の軸へ開きます。単価は結果として下がる数字であって、単価そのものを直接いじる打ち手はほとんどありません。下げたい金額があるなら、どの構成要素を何割動かせばその金額に届くのかまで分解しておくと、施策の優先順位が自然に決まります。

他社と比べるときは粒度をそろえて差の理由を説明できる状態にする

自社の位置を他社と比べたい場合は、比較の粒度をそろえてください。企業規模別・業種別の平均と計算の手順は採用単価の計算方法と企業規模・業種別の平均、職種ごとの水準は採用単価の職種別の平均、エンジニア職に絞った内訳はエンジニア採用コストの相場と内訳にまとめてあります。いずれも、本記事で決めた定義と同じ範囲の数字かどうかを確かめてから当ててください。

他社の平均に自社を寄せることが目的ではありません。平均から離れていること自体は問題にならず、離れている理由を説明できるかどうかが問われます。欠員率の高い産業で、内部費用まで含めた定義で測っていれば、平均より高く出るのはむしろ自然な結果です。説明できる高さと説明できない高さを分ける。それが、採用単価という数字を自社で持つことの実務的な意味になります。

採用単価を扱うときの要点

  • 採用単価は、採用費用の総額を採用人数で割った値。判断が割れるのは式ではなく、分子の範囲と分母の時点をどう決めるか
  • 流通する「平均◯万円」の多くは、費用の範囲を定義しない設問への自己申告。厚生労働省の委託調査(令和3年度)の調査票 問4 は、含める費用の範囲を示していない
  • 自己申告ではない実額は人材紹介にだけある。厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」の常用就職1件あたり約103万円がそれで、紹介手数料だけを測った金額
  • 徴収された紹介手数料の99.7%は届出制で、法令の料率上限は及ばない。相場は法令からは逆算できない
  • 自社の採用単価は、集計期間・分子の範囲・分母の時点・分割の粒度の4つを決めて固定する。比較はそのあとの話になる

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