採用単価を全社で1つの平均値として置くと、職種ごとの差が予算から消えてしまいます。人材紹介の手数料は職種によって料率が違い、同じ年収の人に入社してもらっても、支払う額が職種で変わるからです。
職種ごとの差は、厚生労働省が公表している職種別の手数料率と求人倍率から、実額で確かめられます。料率・求人倍率・早期離職率の3つを重ねると、どの職種の予算を厚く置くべきかが数字で決まります。
職種別の採用単価は、手数料率と想定年収の掛け算で比べられる
職種別の採用単価を1人あたりの実額でまとめた政府統計は、2026年10月時点で見当たりません。公的統計で職種ごとの差を比べるなら、厚生労働省が公表する人材紹介の職種別平均手数料率に、自社の想定年収を掛けて年収連動分を試算する方法が使えます。採用単価そのものの定義と計算式は、採用単価の定義と、公的統計でわかる1件あたりの実額で扱いました。
人材紹介は、職種による差が最も大きく出る手法です。求人媒体の掲載料は職種が変わっても大きくは動きませんが、紹介手数料は年収と料率の両方で決まるため、職種が変わると2つが同時に動きます。
平均手数料率は、手数料の総額を予定年収の総額で割った値
厚生労働省・都道府県労働局のリーフレットによると、令和7年4月1日の省令改正で、職業紹介事業者は令和6年度の職種別の平均手数料率を人材サービス総合サイトに掲載することになりました。計算は取扱職種ごとに「求人者から徴収した手数料の総額」を「求職者の予定年収の総額」で割る方式です。分母が予定年収なので、料率に想定年収を掛ければ手数料の実額に戻せます。
出所:厚生労働省・都道府県労働局「職業紹介事業者の皆さまへ 紹介手数料率の実績の公開と違約金規約の明示が必要になります」(令和7年4月1日施行分)。
職種別の平均手数料率は20.2%から34.6%まで開く
厚生労働省職業安定局需給調整事業課の集計(令和7年10月末時点)では、人材紹介の平均手数料率実績は全職種で24.0%でした。最も高い経営・金融・保険の専門的職業が34.6%、最も低い介護が20.2%で、14.4ポイントの開きがあります。
出所:厚生労働省職業安定局需給調整事業課「職業紹介事業における職種別手数料、離職状況について」(令和7年10月末時点・人材サービス総合サイト掲載分・全職種5,659件)。
職種 | 平均手数料率実績 |
|---|
経営・金融・保険の専門的職業 | 34.6% |
法人・団体管理職員 | 33.9% |
情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発) | 31.2% |
営業の職業 | 31.2% |
情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発を除く) | 30.0% |
保育 | 24.3% |
一般事務・秘書・受付の職業 | 24.1% |
全職種 | 24.0% |
医師 | 22.0% |
看護 | 21.6% |
介護 | 20.2% |
集計の対象は、令和6年度の常用就職について人材サービス総合サイトに手数料率実績を掲載している事業所です。各事業所が掲載するのは常用就職の多い上位5職種までで、常用就職が年10件以下なら掲載は要りません。
平均は事業所ごとの手数料率実績を単純に平均した値で、就職件数による重みづけはしていません。取扱件数の多い大手の料率が平均に強く出る、という読み方はできない点に注意が要ります。
30%を超える料率が多いのは、管理職・IT・金融専門職・営業
厚生労働省需給調整事業課の同じ資料で料率を10%刻みのレンジに分けた構成比を見ると、法人・団体管理職員、情報処理・通信技術者、経営・金融・保険の専門的職業、営業の職業は「30.1%~40.0%」のレンジの割合が高い職種です。医師、看護、保育、介護、一般事務・秘書・受付の職業は「20.1%~30.0%」のレンジの割合が高くなっています。
採用予算の上では、前者の4職種を「年収の3割台」、後者の5職種を「年収の2割台」で見ておくのが、平均値の表と構成比の両方に沿った置き方です。
年収600万円で換算した職種別の手数料の差は86.4万円
平均手数料率に想定年収を掛けると、職種ごとの手数料の目安が実額で出ます。想定年収600万円なら、経営・金融・保険の専門的職業は207.6万円、介護は121.2万円で、差は86.4万円です(厚生労働省需給調整事業課の職種別平均手数料率実績をもとにOffers試算)。
職種 | 料率 | 年収400万円 | 年収600万円 | 年収800万円 |
|---|
経営・金融・保険の専門的職業 | 34.6% | 138.4万円 | 207.6万円 | 276.8万円 |
法人・団体管理職員 | 33.9% | 135.6万円 | 203.4万円 | 271.2万円 |
情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発) | 31.2% | 124.8万円 | 187.2万円 | 249.6万円 |
営業の職業 | 31.2% | 124.8万円 | 187.2万円 | 249.6万円 |
情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発を除く) | 30.0% | 120.0万円 | 180.0万円 | 240.0万円 |
保育 | 24.3% | 97.2万円 | 145.8万円 | 194.4万円 |
一般事務・秘書・受付の職業 | 24.1% | 96.4万円 | 144.6万円 | 192.8万円 |
全職種 | 24.0% | 96.0万円 | 144.0万円 | 192.0万円 |
医師 | 22.0% | 88.0万円 | 132.0万円 | 176.0万円 |
看護 | 21.6% | 86.4万円 | 129.6万円 | 172.8万円 |
介護 | 20.2% | 80.8万円 | 121.2万円 | 161.6万円 |
出所:厚生労働省職業安定局需給調整事業課「職業紹介事業における職種別手数料、離職状況について」(令和7年10月末時点)をもとにOffers試算。
3つの年収は、料率の差を同じ条件で比べるための置き値です。職種ごとの実際の年収水準を示すものではないので、自社の求人の想定年収に近い列を読むか、次の式で計算し直してください。
自社の職種別の手数料は、想定年収に料率を掛けて見積もる
自社の職種別の手数料の目安は、求人の想定年収にその職種の平均手数料率実績を掛けて出します。
職種別の手数料の目安 = 求人の想定年収 × その職種の平均手数料率実績
- 募集する職種を、表の職種区分のどれに当たるかで分ける
- 求人票に書く想定年収を職種ごとに置く
- 料率を掛けて、紹介経由で1人入社したときの手数料を出す
- 求人媒体やスカウトなど紹介以外の手法の費用は、手法別の実額で別に積む
表の料率は平均値で、実際の契約料率は事業者ごとに違います。使う予定の紹介会社の料率が平均からどれだけ離れているかは、後述の人材サービス総合サイトで確かめられます。
職種別の求人倍率は、料率の高さとは別に採用の難しさを示す
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」の参考統計表6では、有効求人倍率は職業計の1.05倍に対し、介護サービス職業従事者が3.82倍、営業職業従事者が2.05倍、情報処理・通信技術者が1.34倍、一般事務従事者が0.29倍でした。手数料率が最も低い介護が、求人倍率では表に並べた職種の中で最も高い水準にあります。
出所:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」参考統計表6(全国計・常用〔パート含む〕)。
手数料率の職種区分 | 求人倍率の職業区分 | 有効求人倍率 | 新規求人倍率 |
|---|
介護 | 介護サービス職業従事者 | 3.82倍 | 6.54倍 |
保育 | 社会福祉専門職業従事者 | 2.43倍 | 4.61倍 |
営業の職業 | 営業職業従事者 | 2.05倍 | 3.46倍 |
看護 | 保健師,助産師,看護師 | 1.94倍 | 3.17倍 |
医師 | 医師,歯科医師,獣医師,薬剤師 | 1.66倍 | 2.72倍 |
情報処理・通信技術者 | 情報処理・通信技術者 | 1.34倍 | 2.98倍 |
法人・団体管理職員 | 管理的職業従事者 | 0.83倍 | 1.43倍 |
一般事務・秘書・受付の職業 | 一般事務従事者 | 0.29倍 | 0.64倍 |
全職種 | 職業計 | 1.05倍 | 2.04倍 |
出所:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」参考統計表6と同課「職業紹介事業における職種別手数料、離職状況について」をもとに、職種区分の対応づけはOffersが行った。
求人倍率の区分は日本標準職業分類(平成21年12月改定)に基づき、人材サービス総合サイトの職種区分と完全には一致しません。保育は保育士を含む社会福祉専門職業従事者、法人・団体管理職員は管理的職業従事者全体の値で代えています。経営・金融・保険の専門的職業は、参考統計表6に単独の区分が無いため表から外しました。
もう1つの前提として、一般職業紹介状況は全国のハローワークで扱った求人・求職の集計で、民間の人材紹介やスカウトを通じた転職は数に入りません。
介護は料率が最も低い一方、求人倍率は表の職種で最も高い
介護の平均手数料率は20.2%で主要職種の中で最も低い一方、介護サービス職業従事者の有効求人倍率は3.82倍、新規求人倍率は6.54倍で、表に並べた職種の中で最も高い値です(厚生労働省需給調整事業課の職種別手数料資料と「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」)。料率の低さは、1人あたりの手数料が小さいことを示すだけで、採用しやすさを示すものではありません。
求職者1人に対して求人が3件以上ある状態では、紹介経由でも候補者の紹介を待つ期間が長くなりやすいと読めます(数字からの推測)。介護の採用予算は、1人あたりの手数料より、採用までの期間と、次に触れる早期離職の分を厚めに見ておく方が実態に合います。
一般事務は有効求人倍率0.29倍で、紹介に頼らなくても応募が集まりやすい
一般事務従事者の有効求人倍率は0.29倍で、ハローワークでは求職者が求人の3倍以上いる計算です。一般事務・秘書・受付の職業の平均手数料率は24.1%で全職種の24.0%とほぼ同じなので、料率の面から紹介を避ける理由は大きくありません(厚生労働省需給調整事業課の職種別手数料資料と「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」)。
応募者が求人を大きく上回る職種では、求人媒体や自社の採用ページだけで候補者が集まる可能性が高くなります。紹介を使うかどうかは、先に自社で募集して応募の集まり方を確かめてから決めると、1人あたりの費用を抑えやすくなります。
情報処理・通信技術者は料率31.2%、ハローワークの有効求人倍率は1.34倍
情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発)の平均手数料率は31.2%で、全職種の24.0%より7.2ポイント高い水準です。一方、ハローワークでの情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.34倍、新規求人倍率は2.98倍でした(厚生労働省需給調整事業課の職種別手数料資料と「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」)。
ITエンジニアの転職はスカウトや人材紹介など民間サービスを通じたものが多く、ハローワークの倍率は市場の逼迫を小さく映している可能性があります(推測)。料率の高さを踏まえると、エンジニア採用は紹介に頼る割合が採用単価を大きく左右する職種です。
エンジニア採用で紹介経由の比率が高い会社は、自社の採用体制のどこで候補者を取りこぼしているかを先に測ると、料率の高い手法に頼る範囲を絞れます。エンジニア採用力チェックは、企業のURLから採用力を5指標24項目で採点し、結果を資料にまとめて返します。
職種別の早期離職率は、再採用で上乗せされる費用の目安になる
厚生労働省職業安定局需給調整事業課の同じ資料では、人材紹介で無期雇用として就職した人が就職後6か月以内に離職した割合の平均は、全職種で7.9%でした。介護15.3%、保育12.2%、看護10.5%が高く、経営・金融・保険の専門的職業2.0%、情報処理・通信技術者2.9%、医師3.0%が低い職種です。
出所:厚生労働省職業安定局需給調整事業課「職業紹介事業における職種別手数料、離職状況について」(令和5年度事業報告・全職種9,730件)。
職種 | 就職後6か月以内の平均離職率 |
|---|
介護 | 15.3% |
保育 | 12.2% |
看護 | 10.5% |
全職種 | 7.9% |
営業の職業 | 5.4% |
法人・団体管理職員 | 4.9% |
一般事務・秘書・受付の職業 | 4.4% |
医師 | 3.0% |
情報処理・通信技術者 | 2.9% |
経営・金融・保険の専門的職業 | 2.0% |
離職率は、事業所ごとの令和4年度の常用就職件数(無期雇用のみ)と、そのうち就職後6か月以内に離職した人数から算出した値です。平均は事業所ごとの離職率の単純平均で、就職件数による重みづけはしていません。
離職率を掛けると、再採用分の上乗せが見積もれる
早期離職が出て同じ職種を再び紹介経由で採用すると、手数料がもう一度かかります。返金規定を考えない単純計算で、介護・想定年収400万円なら80.8万円×15.3%で約12.4万円、情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発)・想定年収600万円なら187.2万円×2.9%で約5.4万円が、1人あたりの上乗せの目安です(厚生労働省需給調整事業課の資料をもとにOffers試算)。
紹介会社との契約に早期離職時の返金規定があれば、上乗せはその分小さくなります。なお同じ資料は、医師・看護・保育・介護について、手数料率実績の高低で離職率に大きな差は見られなかったとしています。料率の高い事業者を選べば定着する、とは言えないということです。
紹介事業者ごとの料率は、人材サービス総合サイトで比べられる
厚生労働省が運営する人材サービス総合サイトでは、令和7年4月から職業紹介事業者ごとの職種別の手数料率実績を閲覧・検索できます。採用予定の地域・職種・手数料率を入力すると該当する紹介所が一覧で出て、手数料率の順に並べ替えられ、詳細情報では年間の就職実績と離職状況も見られます。
出所:厚生労働省職業安定局需給調整事業課「職業紹介事業における職種別手数料、離職状況について」。
職種別の平均値で予算を置いたら、実際に使う紹介会社の料率が平均からどれだけ離れているかを、このサイトで確かめる順番が合理的です。料率が平均より高い事業者を使うなら、その理由(専門領域の紹介実績や定着の実績)を詳細情報の就職実績と離職状況で確かめてから契約すると、予算との差を説明できます。
職種別の採用予算は、料率・求人倍率・離職率の3つで組み立てる
職種別の採用予算は、料率で年収連動分を見積もり、求人倍率で紹介に頼る割合を決め、離職率で再採用分を積む順に組み立てると、全社平均で置くより不足が出にくくなります。
- 職種ごとに、想定年収×平均手数料率実績で紹介経由1人あたりの手数料を出す
- 求人倍率が1倍を下回る職種(一般事務など)は、紹介以外の手法で埋める前提で紹介の枠を小さくする
- 求人倍率が高い職種(介護・営業など)は紹介の枠を残し、採用までの期間を長めに見る
- 離職率の高い職種は、手数料×離職率を再採用分として上乗せする
- 紹介以外の手法の費用は、手法別の1件あたり実額で積む
5の手法別の1件あたり実額と予算の組み方は中途採用の単価|相場の読み方と予算の置き方に、採用コスト全体の相場と一人当たりの平均は採用コストの相場、一人当たりの平均と募集費の実額にまとめています。
職種ごとの予算を置いたあとは、選考の各段階でどれだけ候補者が残るかで、同じ支出で採用できる人数が変わります。段階別の歩留まりの置き方は採用の歩留まり|計算式と段階別の基準値の置き方で扱いました。
職種別の採用単価を比べるときの要点
職種別の採用単価は、人材紹介の料率・求人倍率・早期離職率の3つで差が決まります。厚生労働省の集計では、平均手数料率は介護の20.2%から経営・金融・保険の専門的職業の34.6%まで開き、想定年収600万円なら手数料の差は86.4万円になります(Offers試算)。
- 料率が高いのは、法人・団体管理職員、情報処理・通信技術者、経営・金融・保険の専門的職業、営業の職業の4区分
- 料率が低くても求人倍率が高い職種(介護など)は、採用までの期間と再採用分を厚めに見る
- 求人倍率が1倍を下回る職種(一般事務など)は、紹介の前に自社の募集で応募の集まり方を確かめる
エンジニア採用のように料率の高い職種を抱える会社は、エンジニア採用力チェックで採用体制の弱いところを先に確かめておくと、紹介に頼る範囲を決めやすくなります。職種別の予算を表にまとめる段階では、採用計画とコスト管理シートで費目の枠を先に固定しておくと、職種ごとの差がそのまま予算に残ります。