リファラル採用のKPIで手が止まるのは、指標の名前を選ぶところではありません。「紹介1件をいつ数えるか」と「目標を何件に置くか」を決めるところです。
紹介は、社員が知人に声をかけるところから始まります。応募から数え始める他の経路の指標表をそのまま当てると、社員が紹介していない段階の詰まりが表に出てきません。
指標は、社員が紹介する前・紹介された人の選考・入社後の3段階に分けて置きます。目標値の根拠になるのは、公的統計で押さえる紹介経由の採用の規模感と、自社の紹介台帳の実績の2つです。
リファラル採用のKPIは紹介前・選考・入社後の3段階に置く
リファラル採用のKPIは、社員が紹介する前の段階(紹介数・紹介参加率)、紹介された人の選考の段階(書類選考通過率・内定承諾率・紹介から入社に至った割合)、入社後の段階(定着率・全入社に占める紹介経由の割合・紹介経由1名あたりの費用)の3つに分けて置きます。最終的な目標(KGI)は「期間内に紹介経由で何名が入社したか」で、8つの指標はそこへ至る途中の数字です。
段階 | 指標 | 計算式 | 分母 |
|---|
紹介前 | 紹介数 | 期間内に人事が受け付けた紹介の件数 | ー |
紹介前 | 紹介参加率 | 期間内に1件以上紹介した社員数 ÷ 紹介制度の対象の社員数 | 制度の対象の社員 |
選考 | 書類選考通過率 | 書類選考を通過した紹介候補者数 ÷ 書類選考に進んだ紹介候補者数 | 書類選考に進んだ紹介候補者 |
選考 | 内定承諾率 | 内定を承諾した紹介候補者数 ÷ 内定を出した紹介候補者数 | 紹介経由の内定者 |
選考 | 紹介から入社に至った割合 | 紹介を受け付けた月で束ねた候補者のうち入社した人数 ÷ その月に受け付けた紹介数 | 紹介数 |
入社後 | 定着率 | 観測時点で在籍している紹介経由の入社者数 ÷ 同じ時期に入社した紹介経由の入社者数 | 紹介経由の入社者 |
入社後 | リファラル比率 | 紹介経由の入社数 ÷ 全経路の入社数 | 全経路の入社者 |
入社後 | 紹介経由1名あたりの費用 | (紹介報酬+ツール費+運用にかけた人事の工数)÷ 紹介経由の入社数 | 紹介経由の入社者 |
紹介前の2つは、他の経路の指標表には無い列です。求人サイトやスカウトは、企業が出した求人に候補者が反応した件数から数え始めます。紹介は社員が声をかけた時点で始まるため、紹介数が少ないときに「社員の多くが紹介していない」のか「一部の社員だけが紹介している」のかは、紹介参加率を並べて初めて分かります。
選考の段階の指標の計算式は、他の経路と同じです。紹介経由の行と他の経路の行を同じ表に並べておけば、紹介された人がどの工程で選考から外れているかを比べるのも簡単です。工程をまたいだ通過率の計算は 中途採用の歩留まり|計算式と段階別の基準値の置き方 で、採用KPI全般の指標の選び方は 採用KPIとは?指標一覧と設定手順、目標値の置き方 で扱っています。
紹介された人が選考に進むかどうかを決めるのは、紹介した社員の話だけではありません。採用ページや求人票などの会社の公開情報も読んで判断しています。エンジニア・技術職の採用であれば、公開情報が候補者からどう見えているかを確かめる手段の1つが、エンジニア・技術職の採用に特化した無料の診断 エンジニア採用力チェック です。企業のURLを入力すると、採用ページ・求人票・技術発信などの公開情報をAIが5指標24項目で採点し、1営業日以内にレポートが届く仕組みです。
KGIは紹介経由の入社数で置き、紹介数は途中の指標にとどめる
リファラル採用のKGIは、期間内に紹介経由で入社した人数に置きます。紹介数をKGIにすると、紹介を集めること自体が目的になり、募集中のポジションの要件に合わない紹介が増えても、目標は達成したように見えてしまいます。
紹介数は、KGIの入社数から逆算して決める途中の指標です。逆算の手順は後半の「目標の入社数から必要な紹介数を逆算する」の章にまとめました。紹介制度の全体の設計は リファラル採用とは?仕組み・制度設計と社員紹介を回すコツ にまとめています。
数える前に「紹介1件」の定義と束ね方を決める
リファラル採用の指標が月ごとにぶれる原因の多くは、紹介1件をいつ・どう数えるかが決まっていないことです。人事が候補者の氏名と連絡先を受け付けた日を1件の日付とし、同じ候補者を2人の社員が紹介したときは先に受け付けた1件だけを残す、というように、集計を始める前に決めて紹介台帳の先頭に書いておきます。
決めること | 決め方の例 |
|---|
紹介1件を数える時点 | 人事が候補者の氏名と連絡先を受け付けた日 |
重複の扱い | 同じ候補者は、先に受け付けた紹介者の1件だけを残す |
既に応募・選考中だった候補者 | 紹介数に入れず、台帳の別の列に残す |
紹介者の範囲 | 紹介制度の対象に役員を含むかどうか(紹介参加率の分母が変わる) |
経路の区別 | 社員の紹介と、人事が社員のつながりを手がかりに直接声をかけた候補者を別の行にする |
決め方そのものに正解はありません。大事なのは、決めた内容を変えずに続けることです。続けていれば、四半期ごとの数字を比べられます。途中で決め方を変えたときは、変えた月を台帳に書き残してください。
紹介から入社までの割合は紹介を受け付けた月で束ねる
紹介から入社に至った割合は、紹介を受け付けた月ごとに束ねて数えます。紹介から入社までは、面談・選考を経て数か月かかります。「今月の入社数 ÷ 今月の紹介数」で出すと、分子と分母が別の候補者になってしまうためです。
たとえば4月に受け付けた紹介については、その候補者全員の選考が終わった時点で、何名が入社したかを確定させます。4月分が確定するまで、4月の入社率は空欄のままです。
紹介台帳には、紹介の受付日・紹介者の部署・職種・書類選考と面接の結果・内定と承諾の日付・入社日・紹介報酬の支給日を1人1行で並べます。入社後の在籍を観測する時点の決め方は リファラル採用の定着率|国内データと測り方 で詳しく扱いました。
目標値は公的統計で外枠を置き、自社の実績で中身を決める
リファラル採用の目標値は、公的統計で「紹介経由の採用は1社で年に何名くらいの規模か」という外枠を押さえ、そのうえで自社の紹介台帳の実績から各段階の率を決めます。書類選考通過率や紹介から入社に至った割合は、職種や選考基準によって企業ごとに大きく変わるため、他社の数字をそのまま目標にしても、未達のときに原因を切り分けられません。
外枠に使える公的統計は、厚生労働省の委託調査が示す経路別の採用人数と1件あたりの採用コスト、雇用動向調査の入職経路の3つです。
紹介で1年に正社員を4名以上採用した企業は99社中1社
厚生労働省の委託調査(令和3年6月実施)は、求人企業調査の回答企業のうち、過去3年間に職業紹介事業者や(求人)募集情報等事業者を利用したことがある561社を集計の対象にしています。その中で過去1年に知り合い・社員等からの紹介(縁故)で正社員の求人を出した99社のうち、実際に採用した人数が0人だった企業は37.4%、1人が36.4%、2人が19.2%、3人が6.1%、4人が1.0%で、5人以上の企業はありませんでした。
人材サービスを利用したことがある企業に限った数字で、この99社では、紹介経由の正社員の採用は1社あたり年に数名の規模です。
採用0人だった企業の割合を経路ごとに並べると、紹介は次の6経路の中で最も低い割合でした。
正社員の求人を出した経路 | 回答企業数 | 採用0人だった企業の割合 |
|---|
知り合い・社員等からの紹介(縁故) | 99社 | 37.4% |
民間職業紹介事業者(紹介会社) | 175社 | 45.1% |
インターネットの求人情報サイト | 254社 | 52.8% |
公共職業安定所(ハローワーク) | 322社 | 59.3% |
スカウトサービス | 51社 | 74.5% |
自社HP | 150社 | 89.3% |
出所:厚生労働省「令和3年度厚生労働省委託調査 採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 報告書」(令和4年3月)図表IV-9。
紹介経由の入社が年に数名であれば、月次の率は1名の入社や辞退で大きく動きます。KGIは率ではなく件数(半期の紹介経由の入社数)で置き、選考の段階の率は四半期や半期に束ねてから目標と比べます。
紹介経由の1件あたり平均採用コストは4.4万円
同じ委託調査で、正社員の1件あたりの平均採用コストは、知り合い・社員等からの紹介(縁故)が4.4万円でした。民間職業紹介事業者(紹介会社)の85.1万円、インターネットの求人情報サイトの28.5万円と比べると、紹介経由の費用は紹介会社や求人情報サイトより小さい範囲に収まっています。
正社員の求人を出した経路 | 1件あたりの平均採用コスト |
|---|
自社HP等からの直接応募 | 2.8万円 |
知り合い・社員等からの紹介(縁故) | 4.4万円 |
インターネットの求人情報サイト | 28.5万円 |
民間職業紹介事業者(紹介会社) | 85.1万円 |
スカウトサービス | 91.4万円 |
出所:厚生労働省「令和3年度厚生労働省委託調査 採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 報告書」(令和4年3月)図表IV-14。
自社の紹介経由1名あたりの費用を出すときは、紹介報酬だけで割らず、紹介ツールの利用料と、紹介の受付や紹介者への連絡にかけた人事の工数も分子に入れます。紹介報酬の金額の決め方は リファラル採用の報酬相場|平均121,806円のデータ にまとめました。
リファラル比率は、入職者に占める縁故の約2割を外枠にする
厚生労働省の雇用動向調査で、2025年の入職者7,526.8千人のうち、入職経路が縁故だった人は1,609.2千人で、割合にすると21.4%です(割合は編集部の算出)。
この入職者は、期間を定めて雇われている人も含む常用労働者の数字で、正社員の求人に限った前の節の委託調査とは対象が違います。縁故は友人・知人等を含む区分で、前の会社のあっせんによる入職(330.6千人)も内訳の1つです。社員の紹介だけを数えた数字ではないため、自社のリファラル比率の目安ではなく、外枠として使います。
出所:厚生労働省「雇用動向調査」年次別推移 第7表(令和7年)、区分の定義は労働政策研究・研修機構「労働統計用語解説「労働移動」」。
自社のリファラル比率の目標を2割より高く置くなら、その比率を満たすのに紹介参加率をどこまで上げる必要があるかを、次の逆算で確かめてから決めるのが確実です。
目標の入社数から必要な紹介数を逆算する
紹介数の目標は、KGIの入社数を「紹介から入社に至った割合」で割って逆算します。半期に紹介経由で3名の入社を目標にし、自社の過去の実績で紹介から入社に至った割合が15%なら、必要な紹介数は20件です。
紹介数が決まると、紹介参加率の目標も出せます。社員1人が半期に平均1件を紹介しているなら、20名の社員が紹介する必要があり、紹介制度の対象が100名の会社では紹介参加率20%が目標になります。
置く数字 | 出し方 | 例 |
|---|
KGI(半期の紹介経由の入社数) | 採用計画から決める | 3名 |
紹介から入社に至った割合 | 自社の過去の実績(紹介月で束ねた値) | 15% |
必要な紹介数 | KGI ÷ 紹介から入社に至った割合 | 20件 |
紹介した社員1人あたりの紹介件数 | 自社の過去の実績 | 1件 |
必要な紹介者数 | 必要な紹介数 ÷ 1人あたりの紹介件数 | 20名 |
紹介参加率の目標 | 必要な紹介者数 ÷ 紹介制度の対象の社員数(100名) | 20% |
表の例の数字は、計算の手順を示すための仮の値です。
紹介の実績がまだ無い会社は、最初の半期は紹介数・紹介参加率・入社数の件数だけを記録し、率の目標を置きません。率を目標に使い始めるのは、紹介月で束ねた候補者がある程度たまってからにします。その下限(たとえば紹介10件)も、集計を始める前に決めておくと迷いません。
逆算した紹介参加率が実績を大きく超えるときは、他の経路と組み合わせる
逆算した紹介参加率が自社の実績を大きく上回るときは、紹介だけでKGIを満たそうとせず、紹介経由の入社数の目標を下げて、残りを他の経路に振り分けます。前の章の委託調査では、人材サービスを利用したことがあり紹介で正社員の求人を出した99社のうち、紹介で正社員を年4名以上採用した企業は1社でした。
人事が社員のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でのつながりを手がかりに候補者へ直接声をかける方法もあります。この経路は社員の紹介とは別の行で数え、紹介数に混ぜません。紹介が出尽くしたあとの経路の広げ方は リファラル採用が尽きたら|知り合いの知り合いとスカウト で扱っています。
人事の対応の速さもKPIに入れる
リファラル採用では、紹介を受け付けてから候補者に初めて連絡するまでの日数と、紹介した社員へ選考の結果を伝えるまでの日数も、人事が自分で管理する指標として置きます。対応の遅れは、候補者の関心が薄れたり、紹介した社員が次の紹介をためらったりする原因になりえるためです。
2つの日数は、紹介台帳に受付日・初回連絡日・紹介者への連絡日の3列を足せば数えられます。目標は「受付から3営業日以内に初回連絡」のように期限で置き、期限を過ぎた件数を月次で数えます。
紹介数は部署や全社の単位で見て、社員個人の評価やノルマには使いません。個人の件数を評価に入れると、要件に合わない紹介が増え、紹介から入社に至った割合が下がるおそれがあります。
運用は月次の確認と半期の見直しで回す
リファラル採用のKPIは、月次で紹介数・紹介参加率・人事の対応日数を確認し、半期ごとに紹介月で束ねた選考の率と入社数をKGIと比べて目標を見直し、年1回は定着率を観測する、という3つの頻度で回します。
頻度 | 見る指標 | 決めること |
|---|
月次 | 紹介数・紹介参加率・初回連絡までの日数・紹介者への連絡までの日数 | 紹介が少ない部署への声かけ、対応が遅れた紹介の手当て |
半期 | 紹介月で束ねた書類選考通過率・内定承諾率・紹介から入社に至った割合、紹介経由の入社数 | KGIの達成見込みと、紹介数・紹介参加率の目標の見直し |
年1回 | 紹介経由の入社者の定着率、リファラル比率、紹介経由1名あたりの費用 | 紹介報酬の額や支給条件、他の経路との予算の配分 |
月次で率を追わないのは、紹介経由の入社が年に数名の規模では、1名の動きで率が大きく変わるためです。月次は件数と日数だけを見て、率の判断は半期に回すのが無理のない分担です。
リファラル採用のKPIで人事が押さえる要点
リファラル採用のKPIは、紹介前・選考・入社後の3段階に分けて置き、KGIは紹介経由の入社数にします。数え始める前に紹介1件の定義と分母を決め、紹介から入社に至った割合は紹介を受け付けた月で束ねて数えます。
- 紹介前に紹介数と紹介参加率、選考に書類選考通過率・内定承諾率・紹介から入社に至った割合、入社後に定着率・リファラル比率・1名あたりの費用を置く
- 紹介1件の日付・重複・経路の区別を台帳の先頭に書き、途中で決め方を変えたら変えた月を残す
- 目標値の外枠は公的統計で置く。厚生労働省の委託調査では、人材サービスを利用したことがあり紹介で正社員の求人を出した99社のうち、紹介で正社員を年4名以上採用した企業は1社で、紹介の1件あたりの平均採用コストは4.4万円。入職者に占める縁故の割合は21.4%(2025年・編集部の算出)
- KGIの入社数を紹介から入社に至った割合で割って紹介数を出し、紹介参加率の目標まで下ろす
- 月次は件数と人事の対応日数、半期は率とKGI、年1回は定着率と費用を見る