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優秀なエンジニアの採用基準と見分け方|選考手法の精度

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「優秀なエンジニアがほしい」という声はどの企業からも聞かれますが、何をもって優秀とするかは、会社の事業と開発チームの課題によって違います。採用がうまくいかない企業の多くは、この定義があいまいなまま募集と面接を始めています。

自社にとっての優秀さを採用基準に落とす手順、選考でそれを見分ける方法、候補者から選ばれるために出しておく情報を、正社員の中途採用に絞って整理しました。

Offers HR Magazine編集部監修者

株式会社overflow / 編集担当

Offers HR Magazine編集部

Offers HR Magazine 編集部は、株式会社overflow が運営する採用メディアの編集チームです。エンジニア採用に取り組む人事・採用担当者に向けて、採用手法・人事制度・組織づくりの情報を届けています。

優秀なエンジニアの定義は自社の開発課題から決まる

優秀なエンジニアの定義は、会社ごとに違います。新規事業を立ち上げる会社なら設計から運用まで1人で回せる人、大規模なサービスを持つ会社なら既存のコードを読み解いて安全に直せる人が、それぞれ優秀なエンジニアです。採用基準づくりは「どんな課題を、入社後に任せたいか」を言葉にするところから始めます。

求める人材像は6つの問いで具体化する

厚生労働省の『採用選考自主点検資料(令和8年度版)』は、「明るく元気な人」「コミュニケーション能力や協調性がある人」のような抽象的な人材像を、もう一歩掘り下げて具体化するよう求めています。同資料が挙げる問いは次の6つです。

  1. 企業全体として、また採用部署で2〜3年後にどんなビジョンや計画を描いているか
  2. 今までの採用活動で、課題となっている点は何か
  3. 配置を予定している部署で活躍している人は、どんな能力を持っているか
  4. 採用にあたって、最優先する能力は何か
  5. 基礎知識、専門的知識はどの程度必要か
  6. 採用する職種の現場の人を見て、「さらにこういった能力があったら」と感じる点は何か

エンジニア採用でこの問いに答えるときは、人事だけで書かず、配属先のテックリードやエンジニアリングマネージャーと一緒に埋めます。たとえば3つ目の問いには「障害が起きたときに原因の切り分けを主導できる」「仕様のあいまいさを企画側と詰められる」のように、行動で書ける答えを集めるのが目的です。ペルソナの組み立て方は「エンジニアの採用における適切なペルソナ設計方法」で詳しく扱っています。

条件は必須・歓迎・評価しないの3つに分ける

求める人材像を書き出したら、条件を3つに分けます。全部を必須にすると候補者がいなくなり、全部を歓迎にすると選考で何を見ればよいかが決まりません。

区分

意味

エンジニア採用での書き方の例

必須条件

満たさなければ採用しない。入社直後の業務に要る

使っている言語で本番環境のサービスを開発・運用した経験

歓迎条件

あれば評価を上げる。入社後に身につけられる

自社で使っているクラウドやフレームワークの経験

評価しない条件

合否の判断に使わない

出身校、前職の企業名、経験年数そのもの

経験年数を「評価しない条件」に入れているのは、後の節で見るとおり、年数だけでは入社後の仕事ぶりをほとんど予測できないためです。「Go で3年以上」と書くより、「Go で決済まわりの機能を設計し、負荷が増えたときの対応を経験した」のように、できることで書きます。採用基準の例は「採用基準の例を紹介!設定方法とポイントを解説」にもまとめました。

評価項目は選考の前に点数化しておく

同じ厚生労働省の資料は、選考基準を面接などを実施してから検討するのではなく、あらかじめ明確にしておくよう求めています。項目を定めてそれぞれ点数化しておくことで、採用担当者の好き嫌いなどの主観を排除し、総合的で客観的な評価ができるという考え方です(出典:厚生労働省「採用選考自主点検資料(令和8年度版)」)。

エンジニアの選考なら、「技術の基礎知識」「設計の考え方」「チームでの進め方」「学び続ける習慣」のように4〜6項目を決め、項目ごとに「3点ならこれができる」という基準を文章で添えます。評価シートの作り方は「エンジニアの面接評価シートの作成方法」が参考になります。

優秀なエンジニアを見分ける方法は構造化面接と実務に近い課題

候補者が採用基準を満たしているかを見分ける方法として、研究で予測精度が高いと示されているのは、質問と評価基準を揃えた構造化面接と、職務知識の確認です。実務に近い課題(ワークサンプル)も上位に入ります。逆に、質問を面接官に任せた自由な面接と、経験年数だけで判断する方法は、入社後の仕事ぶりをあまり予測できません。

選考手法の予測精度は2022年の再分析で下方修正された

選考手法ごとの予測精度は、長く Schmidt と Hunter が1998年にまとめた推定値が引かれてきました。

Sackett ほかの論文「Revisiting meta-analytic estimates of validity in personnel selection」(Journal of Applied Psychology、2022年)はその計算の補正を見直し、多くの手法の予測精度が過大に見積もられていたとして、平均の推定値を0.10〜0.20下げました。見直した後の順位では、構造化面接が最上位になっています。

選考の方法

1998年の推定(Schmidt & Hunter)

2022年の推定(Sackett ほか)

構造化面接

0.51

0.42

職務知識テスト

0.48

0.40

ワークサンプル(実務に近い課題)

0.54

0.33

一般知的能力テスト

0.51

0.31

非構造化面接

0.38

0.19

職務経験の年数

0.18

0.07

出典:Sackett, Zhang, Berry & Lievens「Revisiting meta-analytic estimates of validity in personnel selection」Journal of Applied Psychology 107(11)(2022年)Table 3

数字は選考の評価と入社後の仕事ぶりの評価との相関の強さで、1に近いほど予測が当たることを示します。エンジニアに限らない多くの職種の研究をまとめた値なので、自社の選考の精度は自社で確かめる必要があります。それでも手法どうしの差は大きく、面接官が思いついた質問をする非構造化面接は0.19と、構造化面接の0.42の半分に届きません。

構造化面接は質問と評価基準を全候補者で揃える

構造化面接は、全候補者に同じ質問を同じ順で聞き、決めておいた基準で採点する面接です。エンジニアの選考では、過去の行動を聞く質問と、場面を示して判断を聞く質問を組み合わせるのが一般的です。

  • 過去の行動を聞く例:「本番環境で大きな障害が起きたとき、あなたは何をしましたか。原因はどう特定しましたか」
  • 場面を示す例:「リリース直前に、仕様と違う実装を見つけました。期限は動かせません。どう進めますか」

質問ごとに「何を答えたら何点か」を面接官どうしで決めておき、面接の後は面接官が別々に採点してから話し合います。先に話し合うと、声の大きい面接官の印象に評価が寄るためです。質問の作り方は「エンジニアの採用面接で人材を見抜く質問集」に例を載せています。

技術力はコードと設計の説明で確かめる

職務知識テストとワークサンプルを、エンジニアの選考に置き換えると、技術の基礎を問う質問、コーディング課題、設計課題、過去に書いたコードの説明がこれに該当します。表のとおりワークサンプルの推定値は2022年の再分析で大きく下がっており、課題を出せば見分けられるとまでは言えません。課題は構造化面接と組み合わせ、採点の基準を先に決めて使います。

課題を設計するときに押さえたい点は、次の3つです。

  • 自社の実際の業務に近い題材にする(アルゴリズムの難問より、既存コードの改修やレビューのほうが仕事に近い)
  • 所要時間を明示し、長くても数時間に収める(在職中の候補者は時間を割けない)
  • 提出物について面接で説明してもらい、なぜその設計にしたかを聞く

コーディングテストの種類と導入の注意点は「コーディングテストとは?」で扱っています。

経歴と経験年数の印象に引きずられない

目立つ特徴に引きずられて、他の項目の評価までゆがむ認知の偏りを「ハロー効果」と呼びます。有名企業の出身、大規模サービスへの在籍、長い経験年数といった経歴は、面接官に「優秀そうだ」という印象を与えますが、候補者がそこで何を担当したかまでは示しません。

上の表でも、職務経験の年数の推定値は0.07で、入社後の仕事ぶりとの関係はほとんど見られませんでした。経歴を聞くときは「そのチームで、あなたが決めたことは何か」「うまくいかなかったことと、その後に変えたこと」のように、本人の判断と行動にまで降りて質問します。

面接で聞く項目は職務に関係する事項に限る

採用基準と面接の質問は、職務を遂行できるかどうかに関係する事項だけで組み立てるのが原則です。厚生労働省の『採用選考自主点検資料(令和8年度版)』は、本籍地や家族の職業などの本人に責任のない事項や、宗教や支持政党などの本来自由であるべき事項について、採用基準にしないのは当然としたうえで、応募用紙や面接で把握すること自体が就職差別につながるおそれがあるとしています。

エンジニアの面接は技術の話から雑談に流れやすく、面接官が悪気なく家族構成や出身地を聞いてしまう場面も珍しくありません。構造化面接で質問を先に決め、面接官どうしで事前に打ち合わせておくと、評価のぶれと不適切な質問の両方を防げます。同資料も、面接ごとにどのような質問をしてどう評価するかを決め、面接担当者の事前打合せや予行演習をしておくよう求めています。面接官の心得と、聞いてはいけない質問の線引きは「面接官の役割と心得」で扱いました。

優秀なエンジニアに選ばれるには組織と技術の情報を先に出す

優秀なエンジニアは多くの企業から声をかけられているため、企業が候補者を選ぶのと同じくらい、候補者も企業を選んでいます。選考の精度を上げても、候補者が応募や返信をしてくれなければ見分ける機会自体がありません。候補者が比べている情報を、募集の段階で出しておくことが前提です。

情報通信業の人手不足感は調査産業計を上回る

厚生労働省の『労働経済動向調査(令和8年8月)の概況』では、2026年8月1日現在の正社員等労働者過不足判断D.I.(「不足」と答えた事業所の割合から「過剰」を引いた値)が、情報通信業で+52ポイントと、調査産業計の+47ポイントを上回りました。2026年8月時点の情報通信業は不足と答える事業所が過剰を大きく上回っており、候補者の側には選択肢があります。

候補者が働く環境に求める上位は組織の規模と技術への挑戦

Offers 登録者データ(株式会社overflow・2026年9月時点・n=31,649・複数選択)で働く環境の希望を見ると、最も多く選ばれたのは「スタートアップ/大企業でも小さい組織が良い」の16.6%でした。2位は「今とは異なる言語/フレームワーク/開発環境に挑戦できる」の8.4%で、「大企業が良い」5.3%、「資金調達している企業が良い」5.1%、「最新技術に挑戦でき、技術力を継続的に向上させたい」5.0%が続きます。

候補者が企業を比べる軸は、組織の大きさと、どんな技術に触れられるかです。求人票や採用ページには、チームの人数と構成、使っている言語やインフラ、入社後に任せたい技術的な課題を、具体的に書いておきます。

求人票や採用サイトに載せている情報が、候補者から見て足りているかを確かめる方法として、Offers の「エンジニア採用力チェック」があります。企業のURLを入力すると、公開されている情報を5指標24項目で採点したレポートが原則1営業日以内に届きます(選考工程や面接の精度は採点の対象外です)。

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転職を考えていない層には企業から声をかける

同じ Offers 登録者データ(株式会社overflow・2026年9月時点・n=31,649)の転職意向では、「今は考えていない」が47.5%、「良いオファーがあれば検討」が31.4%で、合わせて78.9%が今は転職を積極的に考えていない層でした。「すぐ転職したい」は10.8%です。

求人を出して応募を待つだけでは、この約8割には届きにくいというのが編集部の見立てです。候補者のプロフィールを見て企業から声をかけるダイレクトリクルーティングや、社員の知人を紹介してもらうリファラル採用を組み合わせます。採用難の背景と手法の使い分けは「エンジニア採用が難しい理由と優秀な人材を採用するポイント」、スカウトの仕組みと費用は「ダイレクトリクルーティングとは?」にまとめています。

採用基準を上げすぎると市場に候補者がいなくなる

採用基準は高ければよいわけではありません。必須条件を積み上げるほど、条件をすべて満たす候補者は減り、満たす人がいても他社と取り合いになります。基準を決めたら、市場にその人が実際にいるかを確かめ、必須条件を最小限に絞ります。

確かめ方は、スカウト媒体で必須条件だけを入れて検索し、該当者の数を見るのが手軽です。該当者がごく少ないなら、入社後に身につけられる条件を歓迎条件へ移します。

基準を満たすかどうかに加えて、事業の課題を解決できる人かどうかも見ます。経歴や技術が優れていても、自社が今いる段階と合わなければ力を出せません。立ち上げ期の会社で大企業の分業に慣れた人を採用すると、担当範囲の広さに戸惑うことがあります。現場が掲げるペルソナと合っているかを、配属先のエンジニアと一緒に判断するのが確実です。

採用基準は、選考の結果を見て定期的に直します。書類選考で通過する人がほとんどいない、面接で同じ項目を理由に見送りが続く、内定を出した人に他社と比べて辞退される、といった状態が続くなら、基準のどこかが市場とずれている合図です。見送りの理由を項目ごとに記録しておくと、どの条件を緩めればよいか、あるいは提示している年収や仕事の内容の側を見直すべきかを判断できます。

採用した優秀なエンジニアの定着は評価と成長機会で決まる

採用は入社して力を発揮してもらって初めて成功です。優秀なエンジニアほど他社からの声も多いため、入社後に成長の見通しと正当な評価が得られないと、早い段階で転職を考え始めます。

  • 技術への挑戦の機会をつくる:新しい技術を使う案件に関わる機会や、本人の希望に合わせた育成の計画を用意する
  • エンジニアの仕事に合った評価にする:運用・保守のように売上に直結しにくい仕事や、チームへの貢献も評価に入れる。専門を深める人と幅を広げる人で、評価項目を分ける
  • 入社直後の相談先を決める:直属の上司とは別の先輩社員がメンターとして付き、定期的に話す場を設ける
  • 採用に現場を巻き込む:採用基準を決める段階から配属先のエンジニアが加わると、入社後に期待とのずれが起きにくい

入社後の評価の基準は、採用基準と同じ言葉でつないでおくと運用しやすくなります。選考で「設計の考え方」を見て採用したのなら、入社後の評価でも設計への貢献を見る、という形です。選考で期待した役割と入社後に任せる仕事、評価される項目が一致していれば、本人も何を期待されているかを理解しやすくなります。

早期退職の理由と防ぎ方は「エンジニアの早期退職の理由は?」で詳しく扱っています。

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Offers は、株式会社overflowが運営する、エンジニアの正社員の中途採用に向けた採用サービスです。企業は登録しているエンジニアのプロフィールを見て、転職を考え始める前の層にもスカウトを送れます。この記事で紹介した働く環境の希望と転職意向も、Offers の登録者データを集計したものです。

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