スカウト媒体を比べようとすると、登録者数と料金表が並びます。どれも似た説明で、決め手が見つかりません。
足りていないのは料金の情報ではなく、その媒体で何人の採用に至ったのかという一点です。国の委託調査には、その数字が採用手段どうしの並びで残っていました。
この記事では、まずその2つの数字を置きます。そのうえでスカウト媒体を4つの型に分け、契約する前に確かめる項目を順に示します。読み終えたときに決まるのは、自社がどの型を選ぶべきかと、契約前に何を数えておくべきかの2点です。
スカウト媒体は候補者データベースへ直接送る仕組み
スカウト媒体とは、求職者が登録した経歴データベースを企業が条件で検索し、個別にメッセージを送れるサービスを指します。応募を待つ求人広告とも、人材を紹介してもらう人材紹介とも、企業側の動き方が違うのが特徴です。
手法 | 候補者を探すのは誰か | 費用の発生 | 企業に必要な作業 |
|---|
求人広告 | 候補者(応募を待つ) | 掲載時 | 原稿の作成、応募対応 |
人材紹介 | 紹介会社 | 採用が決まったとき | 要件の共有、選考 |
スカウト媒体 | 企業自身 | 契約時、または採用が決まったとき | 検索、文面作成、送信、返信対応 |
違いは費用だけではありません。スカウト媒体では、候補者を探して口説く作業が自社に残ります。手法そのものの仕組みはダイレクトリクルーティングの解説記事で扱っているため、ここでは媒体の選び方に絞ります。
使っている企業は、まだ多数派ではない
スカウト媒体は目にする機会が増えました。ただし企業側の利用率は、それほど高くありません。
国の委託調査が尋ねた人材確保の方法では、上位3つと比べたスカウトサービスの位置がはっきりします。
人材確保の方法(複数回答) | 挙げた企業の割合 |
|---|
インターネットの求人情報サイト | 33.1% |
民間職業紹介事業者(紹介会社) | 26.8% |
求人情報誌・チラシ | 22.9% |
インターネットの求人情報まとめサイト | 6.0% |
スカウトサービス | 5.8% |
出所:厚生労働省『令和3年度厚生労働省委託調査 採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 報告書』(求人企業1,142社)。
過去1年間に正社員の求人を出した採用手段に絞ると、スカウトサービスは9.1%でした。同じ設問で公共職業安定所は57.4%、インターネットの求人情報サイトは45.3%を占めます。出所:同調査(n=561・複数回答)。
つまりスカウト媒体は、まだ標準的な手段になっていません。だからこそ導入を決める前に、費用と成果の実態を確かめる価値があります。
1件あたりの採用コストは平均91.4万円
スカウト媒体は「人材紹介より安い」と説明されがちです。ただし採用1件あたりの総額で見ると、その説明は成立していません。
同じ調査が採用手段ごとに尋ねた、1件あたりの平均採用コスト(正社員)が下の表になります。
採用手段 | 1件あたりの平均採用コスト(正社員) |
|---|
スカウトサービス | 91.4万円 |
民間職業紹介事業者(紹介会社) | 85.1万円 |
インターネットの求人情報サイト | 28.5万円 |
インターンからの就職 | 12.4万円 |
求人情報誌・チラシ | 11.3万円 |
委託募集 | 10.0万円 |
新聞広告・屋外広告 | 7.1万円 |
インターネットの求人情報まとめサイト | 6.4万円 |
知り合い・社員等からの紹介(縁故) | 4.4万円 |
自社HP等からの直接応募 | 2.8万円 |
出所:厚生労働省『令和3年度厚生労働省委託調査 採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 報告書』(スカウトサービスの回答は51社・調査期間は令和3年6月)。
スカウトサービスの91.4万円は、人材紹介の85.1万円を6.3万円上回っています。求人情報サイトの28.5万円と比べると3.2倍です。
料金表の金額と、1件あたりの総額がずれる理由
媒体の料金表に載るのは、多くの場合、年間の利用料か1名あたりの成功報酬になります。一方で91.4万円は、その手段で1名を採用するまでにかかった総額を企業が答えた数字です。
ずれが生まれる場所は3つあります。
- 返信が来なかった分の費用が、採用に至った1名に寄る
- 途中で辞退された場合も、そこまでの費用は戻らない
- 掲載課金型では、採用人数が0人でも利用料が発生する
料金表の単価は、いわば「うまくいった場合の下限」です。予算を組むときは、返信が来なかった分を織り込んだ水準で置く必要があります。採用単価そのものの計算方法は採用単価の定義と実額で扱いました。
求人を出した企業の74.5%は採用0人
費用の水準よりも判断を分けるのが、次の数字です。
同じ調査で採用した人数を尋ねたところ、スカウトサービスで求人を出した51社のうち、正社員の採用人数が0人だった企業は74.5%でした。1人が15.7%、2人が7.8%、3人は0.0%になります。
採用手段全体で見た0人の割合は29.5%です。手段ごとに並べると、位置関係がはっきりします。
採用手段 | 回答企業数 | 採用人数が0人だった割合(正社員) |
|---|
採用手段全体 | 471 | 29.5% |
民間職業紹介事業者(紹介会社) | 175 | 45.1% |
インターネットの求人情報サイト | 254 | 52.8% |
公共職業安定所(ハローワーク) | 322 | 59.3% |
求人情報誌・折り込み・チラシ | 113 | 72.6% |
スカウトサービス | 51 | 74.5% |
ハローワークインターネットサービス | 165 | 82.4% |
SNS | 15 | 93.3% |
出所:厚生労働省『令和3年度厚生労働省委託調査 採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 報告書』(正社員・図表IV-9)。
この数字の読み方
74.5%は、そのまま「スカウト媒体では成果が出ない」という意味ではありません。読むときに押さえる点が3つあります。
第一に、母数が51社と小さく、業種も企業規模も混在しています。第二に、調査期間は令和3年6月で、その後にAIによる文面生成や運用支援が広がりました。第三に、求人を出したこと自体が1年以内の出来事なので、選考の途中だった企業も0人に含まれます。
それでも、この順位の付き方には意味があるはずです。企業自身が動く手法ほど、0人の割合が高いという傾向が読み取れるためです。人材紹介は紹介会社が候補者を探すので45.1%、求人サイトは応募を待つので52.8%。スカウト媒体の74.5%は、探す作業が自社に残る手法の水準を示しています。
言い換えると、スカウト媒体の成果を決めるのは媒体の性能ではなく、自社が運用に割ける時間です。媒体を選ぶ前に、ここを見積もる必要があります。
スカウト媒体は4つの型に分かれる
スカウト媒体を「登録者数が多い順」で並べても、自社に合うかどうかは決まりません。候補者の集まり方で4つの型に分けると、比べる軸がはっきりします。
型 | 登録している人の傾向 | 費用の形 | 向く場面 |
|---|
総合型 | 職種を問わず幅広い。転職の意思が明確な層が中心 | 年間の利用料、または成功報酬 | 複数職種をまとめて採用する |
職種特化型 | 特定の職種に絞られ、経歴の粒度が細かい | 年間の利用料が中心 | 要件が細かい専門職を採用する |
つながり型 | 転職活動をしていない層を含む | 月額または年間の利用料 | 転職潜在層と中長期で接点を作る |
求人検索エンジン連動型 | 検索から流入する層。転職の緊急度が高い | クリック課金 | 費用を抑えて母集団を広げる |
総合型は、母集団の広さと引き換えに競合が増える
登録者数が多いほど、同じ候補者に他社からもスカウトが届きます。届く通数が多い候補者ほど、返信率は下がるものです。総合型を選ぶなら、文面の作り込みと送信のタイミングで差を付ける前提が要ります。
職種特化型は、要件の密度で選ぶ
登録者の総数は総合型に及びません。ただし経歴の記載が細かいため、条件での絞り込みが機能します。エンジニアやデザイナーのように、スキルの記述が評価へ直結する職種では、総数より密度が成果を左右するはずです。職種別の媒体の違いはエンジニア採用媒体の比較で細かく整理しました。
つながり型は、返信までの時間が長くなる
転職を今すぐ考えていない層が含まれるため、すぐの採用には向きません。半年から1年の接点づくりを前提に置けるかどうかが、選ぶ条件になります。
求人検索エンジン連動型は、費用と候補者の質が連動する
クリック課金なので費用を細かく調整できます。ただし届く候補者は、検索で自ら動いた層に寄るのが実態です。専門性の高いポジションでは、母集団が想定より薄くなることがあります。
契約前に確かめる5つの項目
型を決めたら、次は個別の媒体を比べます。料金表では差が付かないため、下の5つを契約前に数えましょう。
1. 要件に合う候補者が、その媒体に何人いるか
最も重要な項目です。契約前に検索画面を触らせてもらい、自社の要件で絞り込んだ結果の件数を実際に見ます。営業資料の総登録者数ではなく、自社の条件での件数です。
この件数が少なければ、料金がいくら安くても成果は出ません。逆に十分な件数があるなら、あとは運用の問題へ絞れます。
2. 送信できる通数と、返信までの見込み
月あたりの送信上限は媒体ごとに違います。上限が少ない媒体では、返信率が同じでも面談の件数が伸びません。
上の1で数えた候補者数と、月の送信上限を突き合わせましょう。候補者が100人いても月50通しか送れなければ、母集団を使い切るのに2ヶ月かかる計算です。
3. 料金体系が、自社の採用計画と噛み合うか
料金体系は大きく3つに分かれます。
- 掲載課金型:採用人数に関係なく利用料が発生する。複数名を採用する計画なら1名あたりが下がる
- 成功報酬型:採用が決まるまで費用が出ない。1名だけの採用や、初めて使う場合に向く
- 併用型:利用料と成功報酬の両方が発生する。総額の試算を先に出しておく
採用計画が1名なら成功報酬型、3名以上なら掲載課金型が下がりやすい、というのが基本の考え方になります。
4. 週に何時間、運用に使えるか
74.5%という数字が示していたのは、ここです。検索、文面作成、送信、返信対応、日程調整のすべてが自社に残ります。
目安として、月20通を送って返信対応まで回すなら、週に3〜5時間は必要でしょう。この時間を確保できないまま契約すると、送信が止まり、利用料だけが残ります。担当者と時間を決めてから契約しましょう。
時間を確保できないと分かっているなら、媒体選びの前に運用の担い手を決めます。媒体とAIによる文面生成、運用の代行を一体で提供する形もあり、Offers ではAI RPOとして用意しました。
5. やめる条件を、始める前に決めておく
3ヶ月使って面談が0件なら、原因は媒体か、要件か、文面のどれかです。どこまで試して何が起きなければ切り替えるのかを先に決めておくと、費用が伸び続ける事態を避けられます。
判断の材料になるのは、送信数・開封率・返信率・面談化率の4つです。返信率が低ければ文面、面談化率が低ければ要件の置き方が原因になりやすく、スカウトメールの改善で直せる範囲かどうかが見えてきます。
運用の時間が取れないときの選択肢
上の4番で必要な時間を確保できないなら、媒体を変えても結果は変わりません。選べるのは、運用そのものを外に出す道です。
検索・文面作成・送信までを委託し、面談と魅力づけだけを自社が担う分担であれば、担当者が兼任でも運用は止まりません。費用と委託範囲の考え方はスカウト代行の比較にまとめました。
成果が出た企業に共通していたこと
Offers の導入事例を見ると、採用に至った企業には共通点があります。
専任の採用担当がいない企業でも、新着の登録者を毎日確認する運用を続けた結果、契約から約1ヶ月でリードエンジニア1名の入社に至りました。別の受託開発企業では、8ヶ月で応募が約13件、そのうち要件に合った3名と面接して2名が内定を承諾しています。出所:Offers 導入事例(株式会社overflow・offers.jp の各社ページ・2026年9月時点)。
初回の6ヶ月契約では採用に至らず、契約を12ヶ月へ更新して候補者へのアプローチ頻度を見直したところ、サーバサイドエンジニアの正社員採用に至った事例もありました。
共通しているのは、媒体を変えたのではなく、送る頻度と文面を見直したという点です。定例で文面とターゲット選定を見直し続けた企業では、半年で約45名との面談に至りました。
判断の順番を整理します
スカウト媒体の選定は、媒体の一覧から始めると決まりません。順番を入れ替えましょう。
- 自社が週に何時間使えるかを先に決める。時間が取れないなら、運用を外に出す前提で予算を組む
- 要件に合う候補者の件数を、契約前に実際の検索画面で数える。総登録者数では判断しない
- 採用計画の人数から料金体系を選ぶ。1名なら成功報酬型、複数名なら掲載課金型が下がりやすい
国の調査が示したのは、スカウトサービスの1件あたり平均採用コストが91.4万円で人材紹介を上回ること、そして求人を出した51社のうち74.5%が正社員の採用に至っていないことでした。正社員有効求人倍率が1.00倍で需給が拮抗している市場では、媒体を増やすより1つの媒体を使い切る運用のほうが結果につながります。出所:厚生労働省『一般職業紹介状況(令和8年7月分)』(季節調整値)。
スカウト採用そのものの進め方はスカウト採用の基本で扱っています。