ダイレクトリクルーティングは、人材データベースの中から企業が相手を選び、直接スカウトを送る採用手法です。導入する企業はいまも増え続けています。一方で、1社あたりが1年間に使う金額は前年より下がりました。
広がりながら支出が下がるという動きは、この手法が一部の先進企業のものから、使い方の定まった選択肢へ移りつつあることを示しています。本記事では、定義と仕組み、他の手法との違い、費用、メリットとデメリット、始め方までを、採用担当者1,500名への調査の最新版で確かめながら整理します。
ダイレクトリクルーティングの定義と仕組み
ダイレクトリクルーティングとは、企業が候補者データベースから自社の要件に合う人材を検索し、スカウトメッセージを送って直接アプローチする採用手法です。求人広告を出して応募を待つ手法に対し、企業側から動く点が違います。
英語圏では採用担当者が候補者を発掘する行為を広く指しますが、日本の採用実務では「スカウト型のデータベースサービスを使った採用」とほぼ同じ意味で定着しました。
スカウト送信から採用までの5ステップ
ダイレクトリクルーティングの流れは、大きく5つの工程に分かれます。
- サービスへの登録。企業アカウントを開設し、求人情報と企業ページを作成する
- 候補者の検索と選定。スキル・経験年数・希望条件などで人材データベースを絞り込み、アプローチ先をリスト化する
- スカウトの作成と送信。候補者ごとの経歴に合わせて文面を組み立て、送信する
- カジュアル面談と選考。承諾した候補者と面談し、相互理解を経て本選考へ進む
- 効果測定と改善。送信数と開封率、返信率、承諾率を分析し、ターゲティングと文面を直す
従来の採用は「応募してくれた人から選ぶ」形でした。ダイレクトリクルーティングでは「欲しい人材を自分たちで見つけに行く」形へ発想が切り替わります。
ダイレクトソーシング・スカウトとの用語の違い
3つの語は実務上ほぼ同義で使われますが、厳密には対象とする範囲が違います。
用語 | 対象範囲 | 具体的な活動 |
|---|
ダイレクトソーシング | 候補者の発掘まで | データベース検索、SNSリサーチ、リスト作成 |
スカウト | メッセージを送る行為そのもの | 文面作成、送信、返信対応 |
ダイレクトリクルーティング | 発掘から採用決定まで | 検索 → スカウト → 面談 → 採用 |
日本の採用市場では、この3つを区別せずに使う企業がほとんどです。用語の線引きより、どこまでを自社で回すのかを決めるほうが実務では重要です。
スカウトを送る媒体そのものの選び方は、スカウト媒体の選び方で別途整理しています。
求人広告・人材紹介との違い
3つの手法は、誰が動くか、いつ費用が発生するか、ノウハウがどこに残るかで分かれます。
比較項目 | ダイレクトリクルーティング | 求人広告 | 人材紹介 |
|---|
アプローチの方向 | 企業から候補者へ | 候補者から企業へ | エージェントから候補者へ |
届く候補者層 | 転職潜在層を含む | 転職顕在層が中心 | エージェントの登録者 |
課金の仕組み | 定額型または成功報酬型 | 掲載料(固定費) | 成功報酬(採用者の年収に対する料率) |
1社あたり年間費用の実績平均 | 173.9万円 | — | 375.5万円 |
ノウハウの蓄積先 | 自社 | 媒体 | エージェント |
運用の手間 | 大きい | 小さい | 小さい |
出所:年間費用の行のみマイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」(2025年12月調査・n=当該サービス利用者)。
この表の年間費用は、1名あたりの採用単価ではありません。その企業が1年間にその手法へ投じた金額の平均です。1名あたりの単価に換算するには、同じ手法から何名採用できたかで割る必要があります。
人材紹介側の手数料の決まり方と職種別の実額は、人材紹介の費用にまとめています。
利用率37.3%が示す普及の段階
2025年の中途採用でダイレクトリクルーティングを利用した企業は37.3%でした。利用率は2年連続で増え、採用サービス・手法のなかで5番目に多く使われています。
年 | 中途採用でのDR利用率 |
|---|
2023年 | 35.1% |
2024年 | 36.5% |
2025年 | 37.3% |
出所:マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」(2025年12月調査・n=1,500)。
企業規模による差も出ています。2024年実績では、従業員1,001名以上の企業の利用率は51.1%で、過半数を超えていました(マイナビ「中途採用状況調査2025年版(2024年実績)」・2024年12月調査・n=481)。
市場規模は2024年度に1,275億円の見込み
サービスを提供する事業者側から見た市場も拡大しています。矢野経済研究所の調査では、2023年度の市場規模は事業者売上高ベースで1,074億円、前年度比23.2%増でした。2024年度は18.7%増の1,275億円に達する見込みとされています。
出所:矢野経済研究所「ダイレクトリクルーティングサービス市場に関する調査(2024年)」(2024年8月6日発表)。
利用する企業も、提供する事業者も増えている状態です。ここまでは多くの解説で共有されている前提にあたります。
1社あたりの年間費用は前年から58.8万円下がった
利用率が上がる一方で、1社が1年間にダイレクトリクルーティングへ使った金額は減りました。2025年の実績は平均173.9万円で、前年の232.7万円から58.8万円下がっています。
同じ調査で、年間の予算は平均223.9万円と前年より37.2万円増えています。予算は積んだが、使い切らずに終わった構図です。
項目 | 2025年 | 前年からの変化 |
|---|
DRの年間予算(平均) | 223.9万円 | +37.2万円 |
DRの年間実績(平均) | 173.9万円 | −58.8万円 |
人材紹介の年間実績(平均) | 375.5万円 | — |
出所:マイナビ「中途採用状況調査」2026年版(2025年実績)と2025年版(2024年実績)(2025年12月調査・n=当該サービス利用者)。
中途採用費用の実績合計も平均609.9万円で、前年から40.7万円減っています。採用費用全体が絞られるなかで、ダイレクトリクルーティングの減り幅がそれを上回った形です。
出所:マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」(2025年12月調査・n=本調査回答者全員)。
導入企業が増えながら1社あたりの支出が下がるのは、使い方が絞り込まれてきた段階に見られる動きになります。全職種へ一律に投じる段階から、成果の出るポジションへ寄せる段階です。
自社の採用体制がいまどの段階にあるかは、エンジニア採用力チェックで確かめられます。
料金モデルは成功報酬型と定額型の2つ
サービスの課金方式は大きく2つです。どちらを選ぶかで、採用人数が増えたときのコストの動き方が変わります。
成功報酬型は採用が決まったときに支払う
入社が確定した時点で費用が発生する方式です。料率は年収に対する一定割合か、1名あたりの定額です。採用できなければ費用が発生しないため、採用人数が読めない段階では始めやすい方式になります。
一方で、採用人数が増えるほど総額が積み上がります。年間で複数名の採用を計画しているなら、定額型のほうが総額は小さくなりがちです。
定額型はデータベースの利用期間に対して支払う
契約期間中はスカウト送信数や検索が使い放題になる方式です。採用人数が増えるほど1名あたりの単価は下がります。
ただし運用が止まれば、発生するのは費用だけです。送信の手を動かし続けられる体制があるかが、この方式を選べるかの分かれ目になります。
運用代行を足す場合は別途費用が発生する
候補者の選定とスカウト送信を外部に委託する場合、サービス利用料に運用代行の費用が加わります。委託できる業務の範囲と法律上の線引きは、採用代行(RPO)の仕組みと委託範囲にまとめました。
メリットは採用への到達率と自社への蓄積
ダイレクトリクルーティングの利点は、実測値で確かめられるものと、運用を続けた先に出るものに分かれます。
利用した企業の62.7%が採用に到達している
利用した企業のうち、実際に採用まで至った企業の比率は62.7%でした。人材紹介会社の66.0%、転職サイトの63.3%に次ぐ3番目の水準です。
出所:マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」(2025年12月調査・n=DR利用者560社)。
面接から内定への移行率は97.9%で利用率上位5手法の首位
面接を設定した企業のうち、内定を出すまで進んだ企業の比率は97.9%でした。人材紹介会社の97.7%、転職サイトの95.5%を上回り、利用率が上位5つの手法のなかでは首位です。
出所:マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」(2025年12月調査・n=DR利用者560社)。
要件を先に固めてから候補者を選ぶため、面接の場で大きくずれにくいことが背景にあります。候補者の見極めよりも、面接に来てもらうまでの設計に労力が集まる手法だといえます。
1サービスあたりの採用人数が増えている
ダイレクトリクルーティング経由の採用人数は、利用企業1社あたり平均3.65人でした。2024年の3.53人、2023年の2.61人から増え続けています。
出所:マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」(2025年12月調査・n=採用者1名以上かつ当該サービス利用者329社)。
利用企業の満足度が84.3%まで上がっている
メインで利用したサービスへの満足度は、前年並み以上に満足と答えた企業が84.3%でした。前年の78.2%から6.1ポイント上がっています(n=140)。
出所:マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」(2025年12月調査・n=当該サービスのメイン利用者)。
転職潜在層へ届く
求人へ応募する段階にない人材にもメッセージを送れます。転職を決めていないが良い話があれば聞きたい層は、求人広告や人材紹介の導線には現れません。
採用のノウハウが自社に残る
どの条件の候補者に、どの文面を送ると返信が来るか。このデータが社内に蓄積されます。送信数・開封率・返信率・承諾率を追える形にしておけば、次の募集の初速が上がります。
外部に委託する場合でも、送信データと結果の記録を自社に残す取り決めにしておくと、蓄積は途切れません。
デメリットと注意点
利点の裏側には、運用の重さがあります。
採用担当者の工数が大きい
候補者の検索から文面の作成、返信対応、面談日程の調整までが自社の担当です。1通ずつ内容を変えるほど承諾率は上がりますが、その分だけ時間がかかります。
大量採用には向かない
1名ずつ探して送る性質上、短期間で多数を採用する用途には合いません。数十名規模の募集は、求人広告や求人検索エンジンと組み合わせる設計が現実的です。
文面と選定のスキルが要る
送信数を増やすだけでは承諾率は上がりません。候補者の経歴のどこに触れるか、自社の何を伝えるかの設計が結果を左右します。
成果が出るまでに時間がかかる
送信して返信を待ち、面談を重ねる工程を踏むため、掲載してすぐ応募が来る手法とは時間軸が別です。3か月から半年の単位で見る前提が要ります。
予算を積んでも使い切れないことがある
前述のとおり、2025年は年間予算の平均223.9万円に対し実績が173.9万円にとどまりました。運用の手が止まると、契約しただけで終わります。導入の可否を決める前に要るのは、誰が何時間を使うのかの見通しです。
向いている企業と向かない企業
条件 | 向いている | 向かない |
|---|
採用人数 | 少数の専門職 | 短期の大量採用 |
求める人材 | 要件が具体的に定まっている | 要件が固まっていない |
社内の体制 | スカウト運用に時間を割ける | 採用担当が兼務で手が空かない |
時間軸 | 3か月以上かけられる | 今月中に決めたい |
要件が固まっていない段階で始めると、検索条件を組み立てられず送信数だけが増えます。まず求める人物像を1枚に落とすところから始めるほうが、結果として早く進みます。
始め方の5ステップ
Step 1. 採用課題とペルソナを固める
最初の作業は、なぜ採用したいのか、どの業務を担ってもらうのかの言語化です。必須要件と歓迎要件を分け、データベースの検索条件に落とせる粒度まで具体化します。
Step 2. サービスを選ぶ
登録者の職種構成と規模、料金モデル、運用支援の有無で比較します。自社が求める職種の登録者が薄いサービスでは、条件を広げても候補者が出てきません。
Step 3. 企業ページと求人を作る
スカウトを受け取った候補者が最初に見る場所です。事業の説明だけでなく、入社後に何を任せるのか、どんなチームなのかまで書きます。
Step 4. スカウト文面を作り送信する
冒頭の2文で「なぜあなたに送ったのか」を伝えます。テンプレートをそのまま送ると開封されても返信につながりません。
Step 5. 効果を測って直す
送信数、開封率、返信率、承諾率の4つを週次で見ます。返信率が低いなら文面、承諾率が低いなら面談の設計、と落ちている指標ごとに打ち手は別です。
採用の各段階でどこまで残るのが標準かは、採用の歩留まりで基準値を示しています。
成果を出している企業に共通する4つの点
ここまでに挙げた数値は、運用が回っている企業と止まっている企業を混ぜた平均です。以下は、実務で差が出やすい4点です。
送信先を広げるより絞る
条件を広げれば候補者数は増えますが、1通ずつ書き分ける余力は減ります。要件に合う範囲まで絞れば、1通あたりにかけられる時間が残ります。
返信が来る前提で日程を空けておく
承諾の返信が来てから面談枠を探すと、候補者の熱量は下がる一方です。送信する週のうちに枠を押さえておけば、初回接触までの日数は短いままです。
送信担当を固定して学習を溜める
担当が毎回替わると、どの文面が返ってきたのかが蓄積しません。少人数でも担当を固定し、返信のあった文面を社内で共有する形が要ります。
3か月は続けてから判断する
送信から面談、選考を経て採用に至るまでには時間がかかります。1か月の結果で手法の是非を決めると、改善の途中で止めることになりかねません。
導入企業の実例
Offersを使ってダイレクトリクルーティングを進めた企業の記録です。
株式会社スタンバイの事例では、検索エンジンや広告配信といった特殊な技術領域のハイクラスエンジニアを募集していました。リテーナープランの導入から2か月で、機械学習エンジニアとバックエンドエンジニアの正社員2名の内定が決まっています。
株式会社ビットキーの事例では、IoTプラットフォーム開発を担うSoftware Edge Deviceチームの母集団形成が課題でした。同じくリテーナープランで、IoT・クラウド・ネットワーク・アプリケーション開発を横断する経験を持つ方の入社が決まっています。
ナイル株式会社の事例では、自動車産業DX事業部でハイクラスエンジニアの採用を強化する必要がありました。運用代行プランを使い、リモート勤務のリードエンジニア1名の正社員採用につながっています。
3社に共通するのは、求める人材像を具体的に定めたうえで送信先を絞った点です。運用の手が足りない場合に代行を組み合わせる選択肢もあります(AI RPOプラン)。
AIによるスカウト文面の自動生成
スカウト運用の重さは、文面の作成と候補者の選定に集中します。この2つは生成AIの導入が進んでいる領域です。
株式会社overflowが2024年10月31日に公表した実績では、AIスカウト生成機能の導入前後で承諾率が13.1%から31.7%へ変化し、約2.4倍になりました。別の1社では19.0%から32.4%へ上がっています。文面作成にかかる工数は80%削減されました。
出所:株式会社overflow プレスリリース「AIスカウト生成機能」(2024年10月31日)。
採用領域でのAI活用の全体像は、AI採用とはで整理しています。
この記事の要点
- 企業が人材データベースの中から相手を選び、直接スカウトを送る採用手法である
- 2025年の中途採用での利用率は37.3%で、2年連続で増えている
- 1社あたりの年間費用の実績は平均173.9万円で、前年から58.8万円下がった
- 年間予算の平均223.9万円に対し実績は173.9万円で、積んだ予算を使い切れていない
- 利用企業の62.7%が採用に到達し、面接から内定への移行率97.9%は利用率上位5手法の首位
- 運用の手を動かし続けられるかが、導入の可否を決める分かれ目になる
自社の採用体制がダイレクトリクルーティングを回せる状態にあるかは、エンジニア採用力チェックで確認できます。採用計画の立て方から相談する場合は、Offersの法人向けサービスをご覧ください。