単価とは、1単位あたりの価格のことです。式は総額を数量で割るだけで、計算そのものに難しいところはありません。
それでも社内で単価の話が食い違うことがあります。原因は計算ではなく、割ったあとの「1つ」が何を指すのかがそろっていない点にあります。
この記事で扱うのは次の3点です。
- 単価の定義と、単位をそろえないと比べられない理由
- 国が公表している単価が、どの単位でいくらなのか
- 人月単価や客単価といった複合語の読み解き方
単価は「総額 ÷ 数量」で求める1単位あたりの価格
単価とは、商品やサービスの1単位あたりの価格です。読み方は「たんか」で、英語では unit price と表します。計算式は総額を数量で割るだけです。
総額 | 数量 | 単価 |
|---|
1,000円 | 5個 | 200円 |
240万円 | 3人月 | 80万円 |
600万円 | 4人 | 150万円 |
1行目は物の値段です。2行目はシステム開発の見積もりで使われる形、3行目は採用にかけた費用を採用できた人数で割った形になります。式は同じでも、数量に何を置いたかで指している中身は別物です。
見積書や請求書の明細では単価を単独で書き、単位は別の欄に置きます。比べる場面では、客単価・時間単価・人月単価・坪単価・労務単価のように、前に単位や対象を示す語が付くことが多くなります。その前半部分が、何で割ったかを示す情報です。
単位が違う単価は、金額の大小を比べても意味がない
国が公表している単価は、統計ごとに単位が違います。下の表は、直近に公表されたものを単位の細かい順に並べたものです。
何を1単位としているか | 何の単価か | 直近の値 | 出所 |
|---|
1時間 | 地域別最低賃金(全国加重平均・令和8年度) | 1,177円 | 厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」(令和8年9月3日) |
1時間 | パートタイム労働者の時間当たり給与(所定内給与) | 1,460円 | 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年7月分結果速報」(2026年9月8日) |
1人1日(8時間) | 派遣料金(全業務平均) | 26,257円 | 厚生労働省「令和6年度労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(令和8年3月31日) |
1人1日(8時間) | 公共工事設計労務単価(全国全職種加重平均) | 25,834円 | 国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(令和8年2月17日) |
1人1か月 | 現金給与総額(就業形態計・事業所規模5人以上・2026年7月分で、賞与などの特別に支払われた給与134,819円を含む) | 436,401円 | 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026年7月分結果速報」(2026年9月8日) |
常用就職1件 | 職業紹介の手数料 | 約103万円 | 厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」(令和8年3月31日) |
この6つはどれも1単位あたりの金額ですが、資料での呼び名は最低賃金額・派遣料金・労務単価・現金給与総額・手数料とばらばらです。ところが1,177円と436,401円を並べても、どちらが高いかという議論は成り立ちません。前者は1時間、後者は1か月の金額だからです。
単価を受け取ったときに最初に確かめるのは、金額ではなく単位です。単位が書かれていない単価は、比較にも検算にも使えません。
最低賃金は、法律で1時間あたりと決まっている
単位が制度で固定されている単価もあります。最低賃金がその例で、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)第三条は「最低賃金額(最低賃金において定める賃金の額をいう。以下同じ。)は、時間によつて定めるものとする。」と規定しています。月給制の社員であっても、最低賃金法施行規則(昭和三十四年労働省令第十六号)第二条により、月給は、最低賃金に算入しない賃金(最低賃金法第四条第三項・同施行規則第一条)を除いたうえで、その金額を月の所定労働時間数で割って時間あたりに換算し、最低賃金と比べます。
出所:e-Gov法令検索「最低賃金法」・「最低賃金法施行規則」(いずれも現行版)。
令和8年度の改定額は、令和8年9月3日に厚生労働省が取りまとめました。
項目 | 値 |
|---|
改定額の全国加重平均額 | 1,177円 |
昨年度の全国加重平均額 | 1,121円 |
引上げ額の幅 | 54円〜65円(47都道府県) |
最高額 | 1,280円(東京) |
最低額 | 1,085円(宮崎) |
最高額に対する最低額の比率 | 84.8% |
出所:厚生労働省「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」(令和8年9月3日)及び別紙の答申状況。
厚生労働省の全国集計(令和8年9月3日)は各都道府県の審議会が答申した改定額を取りまとめた資料で、その時点で既に労働局長が改正を決定し官報で公示を終えた都道府県もありました。答申を受けた都道府県労働局長が、労使からの異議申出の手続を経て改正を決定し、官報で公示した時点で初めて確定します。決定・公示は都道府県ごとに進み、全国集計の公表を待って一斉に行われるわけではありません。実際、東京労働局は全国集計より2日早い令和8年9月1日付の官報で、東京都最低賃金を答申どおり時間額1,280円(54円引上げ)に改正決定し、効力発生日を令和8年10月1日とすでに公示していました。
出所:東京労働局「東京都最低賃金を1,280円に引上げます」(令和8年9月1日公示)。
発効日も都道府県ごとに分かれており、厚生労働省「令和8年度 地域別最低賃金 答申状況(別紙)」(令和8年9月3日)の「発効日(予定)」欄では、東京を含む15都道府県が令和8年10月1日、最も遅い沖縄が令和8年12月2日の予定です。同じ「令和8年度の最低賃金」という言い方でも、答申段階の見込み額なのか、労働局長が決定し官報に公示した確定額なのかで、数字の確からしさは別物です。単価を扱うときは、金額だけでなく「答申・決定・公示のどの段階の数字か」まで確認してください。
単価には、このように単位だけでなく適用時点が付いて回ります。年度をまたぐ資料を扱うときは、金額と一緒に適用開始日を控えておくと後で困りません。
派遣料金と派遣労働者の賃金は、同じ1日8時間でも別の金額
単位がそろっていても、それだけでは足りません。誰から誰への価格なのかが決まっていないからです。
厚生労働省の労働者派遣事業報告書は、この違いをそのまま2つの数字で示しています。令和6年度の集計では、派遣料金(8時間換算)の平均が26,257円、派遣労働者の賃金(8時間換算)の平均が16,735円でした。どちらも派遣労働者1人1日(8時間)あたりの平均額で、単位は同じです。
項目 | 令和6年度の平均 | 何の金額か |
|---|
派遣料金(8時間換算) | 26,257円 | 労働者派遣の対価として派遣先から派遣元事業主に支払われるもの |
派遣労働者の賃金(8時間換算) | 16,735円 | 派遣労働者に支払われる賃金 |
出所:厚生労働省「令和6年度労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(令和8年3月31日公表)。
同じ資料の注記には「『派遣料金』は、労働者派遣の対価として派遣先から派遣元事業主に支払われるもの」「派遣料金は、消費税を含む額の記載である」と書かれています。消費税を含むと明記されているのは派遣料金の側だけで、賃金の側にその注記はありません。
社内で単価を突き合わせるときも同じことが起きます。発注側が見ている単価と受注側が見ている単価は別の数字です。税込か税抜かでも見た目は変わります。単価を1つに決めるには、単位・立場・税の3つをそろえる必要があります。
単価に何が含まれるかは、公表する側が定義している
単価が何を含んで何を含まないかを決めるのは、資料を公表する側の定義です。公共工事設計労務単価はその典型です。国土交通省は、構成と除外項目を発表資料に書き下ろしています。
区分 | 中身 |
|---|
含まれる | 基本給相当額/基準内手当/臨時の給与(賞与等)/実物給与(食事の支給等) |
含まれない | 時間外・休日・深夜の労働についての割増賃金 |
含まれない | 通常の作業条件または作業内容を超えた労働に対する手当 |
含まれない | 現場管理費(法定福利費(事業主負担分)、研修訓練等に要する費用等)及び一般管理費等の諸経費 |
出所:国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(令和8年2月17日発表)。
単位についても「所定労働時間内8時間当たり」「所定労働日数1日当たり」と明示されています。同じ発表資料(国土交通省・令和8年2月17日)によると、令和7年度の公共事業労務費調査で集めた有効標本は、全職種で85,670人でした。
ここで大事なのは、除外されているものが消えたわけではない点です。法定福利費の事業主負担分や研修訓練の費用は、積算上は現場管理費等に計上される扱いです。発表資料は「下請代金に必要経費分を計上しない、又は下請代金から値引くことは不当行為です」とも明記しています。
自社で単価を出すときも同じ整理が要ります。人件費に社会保険料の会社負担分を入れるのか、教育研修費を入れるのか。入れる・入れないのどちらでもかまいませんが、決めて書き残さなければ翌年の数字と比べられなくなります。
単純平均か加重平均かで、同じ資料でも単価は変わる
同じ元データからでも、平均の取り方を変えると単価は動きます。国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について」(令和8年2月17日発表)に載る平均は2つです。全国全職種の単純平均は前年度比4.5%の引き上げで、加重平均値は25,834円です。前者は伸び率、後者は水準を示すために使い分けられています。
厚生労働省「令和6年度労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(令和8年3月31日公表)の表6にも、平均の取り方の注記があります。表6の「全業務平均」は各業務の単純平均額で、業務ごとの人数による重み付けをしていません。人数の多い業務と少ない業務が同じ重さで扱われるので、実際の支払総額を人数で割った金額と一致するとは限りません。
平均の種類 | 何をしているか | 読むときの注意 |
|---|
単純平均 | 区分ごとの値をそのまま足して区分数で割る | 規模の小さい区分が大きく響く |
加重平均 | 件数や人数で重み付けしてから割る | 全体の実勢に近いが、区分差が見えにくい |
厚生労働省が令和8年9月3日に取りまとめた最低賃金の全国加重平均1,177円も後者です。加重平均だけを見ていると、東京の1,280円と宮崎の1,085円という開きは表に出てきません。厚生労働省の発表資料は、平均とは別に最高額に対する最低額の比率84.8%も示しています。
「平均単価」とだけ書かれた数字を受け取ったら、単純平均か加重平均かを確かめてから使ってください。どちらかによって、その数字で説明できることが変わります。
採用・人事で使う単価は「1件あたり」で置かれる
採用の文脈で単価といえば、ふつうは1人あるいは1件あたりの金額です。国の統計にも同じ形の数字があります。
令和6年度の職業紹介事業報告書によると、民営職業紹介事業所(有料・無料)の手数料収入は約9,835億円で、うち常用就職に係る手数料は約9,136億円、常用就職1件あたりの手数料は約103万円でした。この1件あたりの金額は、常用就職件数の合計値と常用就職に係る手数料の総額から厚生労働省が算出したものです。ここでいう常用とは、4か月以上の期間を定めて雇用されるもの、または期間の定めなく雇用されるものを指します。
出所:厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」(令和8年3月31日公表)。
自社の採用単価も考え方は同じで、採用にかけた総額を採用できた人数で割ります。分子に何を入れるか、分母をいつ時点で数えるかで金額が動く点は、他の単価と変わりません。
単価は結果の数字なので、これだけを見ていても下げ方は決まりません。どの段階で候補者が減っているかを先に押さえると、費用のかかっている場所が特定できます。候補者から見た自社の採用情報の見え方を外から点検したい場合は、エンジニア採用力チェックで、AIが採用ページ・求人票・技術発信などの公開情報を5指標24項目で採点したレポートを、原則1営業日以内にメールで受け取れます。段階ごとの見方は採用の歩留まりの記事にまとめました。
客単価・人月単価・坪単価は「何で割ったか」で読み解ける
単価の前に付く語は、分母の宣言だと思って読むと迷いません。代表的なものを並べます。
語 | 分母 | 主に使う場面 |
|---|
客単価 | 顧客数(または購買回数) | 小売・飲食・EC の売上分析 |
時間単価 | 労働時間 | 賃金の比較、作業原価の把握 |
人月単価 | 人月(1人が1か月従事する量) | システム開発の見積もり |
坪単価 | 面積(坪) | 建築費・賃料の比較 |
労務単価 | 1人1日 | 工事費の積算 |
人月単価だけは少し注意が要ります。1人月が何時間の稼働を指すかは統計で決まっておらず、契約ごとに定めるためです。同じ人月単価でも前提の時間数が違えば、時間あたりに直したときの金額はそろいません。人月で見積もりを受け取ったときは、1人月の時間数の下限と上限を合わせて確認してください。
客単価も分母が揺れやすい語です。レジを通った回数で割るのか、来店した人数で割るのかで数字が変わります。ここでも先に分母を決めておかないと、前年との比較が成り立ちません。
自社で単価を決めるときは分子・分母・期間・税を書き出す
社内で単価を定義するときは、次の4つを文章にして残しておくと、翌年も同じ数字が出せます。本記事で引いた国の統計も、何を含めるか・何で割るか・いつの数字かを注記や定義に書いています。ただし税の扱いまで注記しているのは派遣料金(消費税を含む額)だけです。
決めること | 問い | 決めた例 |
|---|
分子 | どこまでの費用・金額を含めるか | 外部支払いのみ(社内人件費は含めない) |
分母 | 何を1単位として数えるか | 入社日を迎えた人数 |
期間 | いつからいつまでを集計するか | 会計年度(4月〜翌3月) |
税 | 税込で持つか税抜で持つか | 税抜(発注書の金額に合わせる) |
この4つが決まっていれば、単価は誰が計算しても同じ値になります。決まっていなければ、同じ社内でも人によって違う数字が出てきます。単価の食い違いは、たいていここが原因です。
外部の平均値と自社の単価を並べるときも、まず4項目を突き合わせてください。分子の範囲が違えば、差が出たこと自体には意味がありません。
単価を読むときの要点
単価を読むときに欠かせないのは金額そのものではなく、単位・平均の取り方・数字が確定した段階(答申なのか決定・公示済みなのか)の3点を確かめることです。
- 単価は「総額 ÷ 数量」で、割ったあとの1単位が何かを示さなければ比べられない
- 国の統計は1時間・1人1日(8時間)・1人1か月・就職1件という別々の単位で単価を公表しており、単位も含まれる範囲も資料に明記されている
- 最低賃金のように答申・決定・官報公示という手続き段階を持つ単価もあり、金額だけでなくどの段階の数字かも確認する
- 自社で単価を持つときは、分子・分母・期間・税の4項目を先に決めて書き残す
単価という語そのものは単純です。難しいのは、その数字を他の数字と並べる場面にあります。金額を見る前に単位を確かめる習慣があれば、社内の議論は数段早く進みます。