生成AIを使ってはいるが、いまいち使いこなせている気がしない。期待した品質のアウトプットが返ってこない。プロンプトが難しそうで手が出ない。そんな苦手意識を抱える人事・経営層は少なくありません。

しかし、AIへの「問いの質」は経験に比例します。むしろマネジメント層こそ、生成AIで大きな成果を出せる立場にあるのです。

本記事は、2025年11月27日に開催したウェビナー「採用でAIはどう使う!? 人事責任者が押さえるべき生成AIマネジメントと組織定着の壁の超え方」のレポートです。

株式会社overflow 代表取締役CEOの鈴木裕斗と、株式会社HR Force 事業開発企画 ゼネラルマネージャーの石川徹氏が登壇しました。

プロンプト設計の黄金律から、画像生成による品質マネジメントの実演、そしてAIと人の「暗黙知」の違いまで。明日から使えるAIマネジメントの要点をお届けします。

なぜ人事・経営層こそ生成AIを使うべきなのか

――鈴木:今日のテーマは「人事責任者が押さえるべき生成AIマネジメント」です。石川さん、まず前提から伺えますか。

石川様:はい。総務省の調査では、生成AIの利用経験は2023年度の10人に1人から、2024年度は3人に1人へと広がりました。


注目したいのは年代別です。新しいツールは普通20代が最も多いのですが、このツールは40代の方が30代より使っているのです。

理由を調べると、世代によってAIのイメージが違います。若い世代は「面白いコンテンツを生み出すもの」、マネジメント層の世代は「仕事を手伝ってくれるもの」と捉えています。


つまり経営層・人事ほど、AIを遊びではなく業務を助ける道具として使っている。だからこそ、生成AIは人事や経営者ほど使うべきツールだと考えています。

――鈴木:なぜマネジメント層が向いているのでしょうか。

石川様:AIへの「問いの質」は、経験がないと出てきません。経験が蓄積していい問いができるようになるのが40代以降です。

加えて、批判的思考も仕事で鍛えられています。AIの生成結果に対し「この方向性もあるよね」と発想を広げられる。経験に裏付けされた問いこそが、大きな成果につながるのです。


プロンプト設計の黄金律──「明確な指示」と「お手本」

――鈴木:そのうえで、具体的なプロンプトの作り方ですね。

石川様:はい。OpenAIやGoogleの資料をまとめ、「プロンプト設計の黄金律」を1枚にしました。デスクトップの壁紙にしていただきたい思いで作っています。


特に大事なのは、明確にしっかり指示することと、意外なところで「お手本を見せる」ことです。

人に指示する時もお手本資料を添付すると成果物がよくなりますよね。AIも同じで、具体的に指示してお手本を添付するだけで生成結果が大きく変わります。

――鈴木:AIはどう処理しているのでしょうか。

石川様:プロンプトで指示すると、AIはそれをトークンという言葉の塊に分解し、推論して生成します。

ここで前提にすべきがハルシネーションです。事実と異なる回答が混じる前提で、批判的思考で確認し、再生成するか使うかを判断します。


なぜプロンプトの質が問われるのか。企画立案、データ分析、コード開発、自動応答ボットまで作れますが、各工程を分解して指示するのは人間の力だからです。


良い指示の4要素と構造化──役割・ゴール・フォーマット・制約

――鈴木:良い指示には、何が必要でしょうか。

石川様:4つあります。役割を与える、ゴールを明確にする、フォーマットを指定する、そして制約をつけることです。


制約は意外と抜けがちで、だらだらと長い文章を見続けることになります。この4つを満たすだけで、プロンプトは大きく変わります。

その前提として、自分の仕事のプロセスや意味合いを言語化することが先です。これが曖昧だと、何を作ればいいか分かりません。

「いいプロンプトをください」とよく言われますが、何をさせたいかが定まっていないと、設計だけ渡しても出力は安定しないのです。

――鈴木:さらに精度を上げるコツはありますか。

石川様:お手本を与えることです。よく使う修正例や言葉を例としてプロンプトに入れるだけで、生成結果が大きく変わります。


加えて、区切り文字でセクションを分けると、AIの誤読を防げます。シンプルなプロンプトはサクっと、構造化したプロンプトは精度重視と、目的で使い分けるとよいです。

チェックリストは5つです。ゴールは明確か、例を入れたか、優しく肯定的に接しているか、ペルソナを与えたか、区切りで誤読を防いでいるか。これをぜひ習慣にしてください。


画像生成で学ぶプロンプトの質──5大要素とYAML形式

――鈴木:2章は実践編ですね。今回は画像で見せていただきます。

石川様:はい。今回はGemini 3.0のNano Banana Proを使います。プロ品質のビジュアルをサクっと作れるモデルです。

テキストは曖昧な指示でも意外と成立しますが、画像は曖昧だと期待から大きく外れます。「猫の絵」とだけ言うと、何だか分からない画像になります。

そこで画像プロンプトの5大要素です。被写体、スタイル、場所、アクション、そして構図。とくにカメラの位置を意識すると、精度の高い画像になります。


――鈴木:求人バナーで試すとどうなりますか。

石川様:営業職募集のバナーを口語で「30代の仕事ができそうな男性が自信たっぷりに立っている感じで」と指示すると、解釈の余地が大きく、情報配置がばらついた気持ち悪い画像になります。手の形が不自然になることもあります。


これをYAML形式の構造化プロンプトにすると整います。横長画像・ターゲット層・CTAボタンの色・コピーと人物の配置などをブロックで記述すると、勝手に構造化して整えてくれます。

同じキャッチコピーでも、コピーと人物のエリアが分かれ、目線が誘導され、ボタンのバランスも整います。手は崩れやすいので、あえて構図で制御しています。


プロ品質へ──技術要件の作り込みと「楽に作る」コツ

石川様:さらに技術要件を作り込むと、クオリティが一気に上がります。レイアウトを「右60%・左40%」と数値で指定し、解釈の余地を与えません。

被写体の服装や色、背景、カメラ設定、ライティングの方向まで指定します。色はコードで、テキストは書体や色まで指定すると、透かしや陰影まで精巧な仕上がりになります。


――鈴木:(ライブ生成を見て)めちゃめちゃいいじゃないですか。指示していない背景のマークまで消えていますね。

石川様:そこは指示していないのに整いました。お任せでも、イラストと実写のハイブリッド画像をここまで作れます。

――鈴木:YAMLを作るのは大変そうですが、楽にする方法はありますか。

石川様:2つあります。1つは、いい感じのバナーをキャプチャして「YAML形式にして」と頼み、フォーマットを作ってから自分で調整する方法です。

もう1つは、背景・人物・コピーのパーツを個別に生成し、Canvaなどで重ね合わせる方法です。レイアウトはセンスに任せますが、5分ほどで作れます。

――鈴木:私がよくやるのは、思いつきのまま打ち始めて、最後にいい出力が出たら「これを再現するプロンプトを書いて」と頼む方法です。初期のハードルが下がるのでおすすめです。

石川様:設計前提で考えると疲れてしまうので、思いつきベースで進めて最後にまとめるのは良いやり方ですね。

AIマネジメントと人のマネジメント──決定的な違いは「暗黙知」

石川様:最後はマネジメントの話です。今日お伝えしてきたのは、プロンプトでAIをどうマネージするか、でした。

人のマネジメントとの決定的な違いは「暗黙知」です。人は「いい感じにやっといて」「前と同じイメージで」が通じます。

例えば家族と目が合った瞬間に意図が分かる。対人コミュニケーションは、関係性に基づく暗黙知で成り立っています。

一方でAIは、その「いい感じ」が分かりません。曖昧に頼むと手戻りが発生します。だから「いい感じ」を定義してプロンプトに起こすことが必要なのです。

――鈴木:裏を返せば、これから人に求められるのは暗黙知を処理する仕事ですね。タスクの実行はAIに任せ、ふわっとした粒度を噛み砕く力が問われます。

石川様:おっしゃる通りです。加えて環境の入力も重要です。言葉だけでなく、自社のデータや独自の慣習を言語化して入れると、ずれを直す材料になります。

この自社環境の値は、馬鹿にならない財産になります。独自のノウハウを言語化していくことが、AI活用の質を左右します。

――鈴木:私たちも、NotebookLMにこのYAMLのデザイン性を転用し、会社概要や候補者とのやり取りをソースに入れると、オファーレターやスライドをほぼワンポチで生成できます。採用のアトラクトにも使えそうです。

Q&A・サービス紹介

――鈴木:Q&Aです。「AIで生成された画像に著作権・肖像権は発生しないのか。Web広告で使ってよいか」というご質問です。

石川様:肖像権は、基本的に人物画像には発生しません。ただし著作権は、既存の著名なキャラクターに似てしまうと侵害になるケースがあるので注意が必要です。

商用利用の可否は、使うモデルの利用規約に書かれています。そこを必ず確認していただくのがよいです。

――鈴木:最後にサービス紹介です。石川さん、お願いします。

石川様:弊社HR Forceは船井総合研究所グループで、「人×デジタル」で業績アップを支援しています。母集団形成で溜まったナレッジをAIに学習させ、AIの環境を提供しています。

「リクルーティングクラウド」は機械学習で母集団を形成し応募数としてお戻しするサービス、「AIアシスタント」は我々の運用ノウハウをAIに学習させ独自の出力をお届けするサービスです。

――鈴木:Offersもハイクラス人材の採用プラットフォームで、直近AIエンジニアの登録が2倍弱に増えています。面接後に申し送りを自動生成し、面接官へのフィードバックを返すサービスも展開しています。

本セッションが、生成AIへの苦手意識を解消するヒントになれば幸いです。

おわりに

生成AIは、経験に裏打ちされた「問いの質」を持つ人事・経営層こそ活かせる道具です。役割・ゴール・フォーマット・制約を明確にし、お手本を添えるだけで、出力は大きく変わります。

画像生成でも、YAML形式で構造化し技術要件まで作り込めば、クオリティは一段上がります。そして人とAIの決定的な違いは「暗黙知」。「いい感じ」を言語化し、自社の環境を入力することが鍵になります。

明日からの一歩として、まずはプロンプト設計の黄金律6要素をチェックリストにして、手元のプロンプトを見直すところから始めていただければ幸いです。