ダイレクトリクルーティング(DR)のメリットとデメリットは、どの解説でもほぼ同じ項目が並びます。判断を分けるのは、それぞれがどれくらいの大きさなのかです。
マイナビが毎年公表している中途採用状況調査には、採用手法ごとの採用到達率・満足度・年間費用・採用人数が並んでいます。メリットとデメリットを同じ物差しで比べられるうえ、前年版から順位が入れ替わった項目もあります。自社で運用を始めるか、続けるかを決める材料として読んでください。
ダイレクトリクルーティングのメリットとデメリットの全体像
ダイレクトリクルーティングのメリットは、候補者を自社で選べること、転職を急いでいない層にも届くこと、メインで使った企業の満足度が高いこと、1社あたりの年間費用が人材紹介の半分以下で済むことの4つです。デメリットは、中途採用者が1人以上いてDRを使った会社の4割でDR経由の採用が0人だったこと、使っても応募者が出ない会社が約4社に1社あること、運用の手間が採用担当者に乗ること、急ぎ・大量の採用に向きにくいことの4つです。
ダイレクトリクルーティングとは、企業が候補者データベースから要件に合う人を探し、スカウトで直接声をかける採用手法を指します。定義や求人広告・人材紹介との違い、始め方はダイレクトリクルーティングとは?利用率37.3%、費用・メリット・始め方で扱っています。
区分 | 項目 | 大きさを示す数値(2025年実績) |
|---|
メリット | 候補者を自社で選べる | 参考値:面接を設定した企業のうち内定を出した比率 97.9%(全サービス平均 95.1%) |
メリット | 転職を急いでいない層に届く | (調査の設問なし) |
メリット | メインで使った企業の満足度が高い | 満足計 84.3%(前年 78.2%) |
メリット | 1社あたりの年間費用が小さい | 年間実績の平均 173.9万円(人材紹介 375.5万円) |
デメリット | DR経由の採用が0人の会社がある | 0人の比率 41.0%(人材紹介会社 35.8%) |
デメリット | 使っても応募者が出ない会社がある | 応募者が出た比率 74.6%(人材紹介会社 77.5%) |
デメリット | 運用の手間が採用担当者に乗る | (調査の設問なし) |
デメリット | 急ぎ・大量の採用に向きにくい | (調査の設問なし) |
出所:マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」(2026年3月公表)。
2025年実績で変わった答えは採用到達率の順位
マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」で、ダイレクトリクルーティングの採用到達率は62.7%と前年の60.5%から上がりましたが、順位は1位から3位に下がりました。人材紹介会社が66.0%、転職サイトが63.3%で上回っています。「使えば採用につながりやすい手法の筆頭がDR」という2024年実績の答えは、2025年実績では成り立ちません。
採用手法 | 2024年実績 | 2025年実績 |
|---|
ダイレクトリクルーティング | 60.5%(1位) | 62.7%(3位) |
転職サイト | 60.0%(2位) | 63.3%(2位) |
人材紹介会社 | 59.8%(3位) | 66.0%(1位) |
求人検索エンジン | 58.2%(4位) | 59.9%(4位) |
出所:マイナビ「中途採用状況調査2025年版(2024年実績)」「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」(各n=1,500)。
採用到達率は、その手法を使った企業のうち、その手法で採用に至った企業の比率です。候補者1人あたりの合格率ではなく、会社単位で「使って採用まで届いたか」を数えています。
上位3手法の差は3.3pt以内で、大差ではありません。変わったのは、DRを入れれば他の手法より採用に届きやすい、とまでは言えなくなった点です。人材紹介会社は1年で6.2pt伸びており、伸び幅でDR(2.2pt)を上回りました。
メリット1は候補者を自社で選べること
ダイレクトリクルーティングの1つ目のメリットは、会う前に候補者の経歴を企業側が確かめてから声をかけられることです。マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」では、面接を設定した企業のうち内定を出した企業の比率が97.9%で、利用率上位5手法の中で最も高くなりました。
同じ比率は、人材紹介会社が97.7%、転職サイトが95.5%、求人検索エンジンが94.6%、企業ホームページが92.4%です(出所は同じ2026年版)。求人広告は誰が応募してくるかを選べませんが、DRはスキル・経験・職種で絞り込んでから声をかけます。
人材紹介会社との差は0.2ptしかありません。紹介会社が候補者を選んでから推薦する人材紹介と、企業が自分で選ぶDRは、どちらも面接の前に選別が済んでいる点で同じ性質を持ちます。違いは、選ぶ目が紹介会社にあるか、自社にあるかです。ただし同じ比率は全サービス平均でも95.1%あり、応募者を選べないフリーペーパー(97.5%)も同じ水準にあるため、97.9%は候補者を選べることの効果を測った数字ではありません。
メリット2は転職を急いでいない層にも声をかけられること
ダイレクトリクルーティングでは、求人に応募してこない人、つまり今すぐは転職活動をしていない層にも、企業から先に声をかけられます。求人広告や人材紹介では候補者が転職を決めて動き出してから接点が生まれるのに対し、DRなら動き出す前に接点を作れる、という違いです。
Offers のリテーナープランを2023年4月に導入した株式会社スタンバイの事例では、候補者へのアプローチからクロージングまでを Offers 側が担いました。導入から2か月後に内定者が決まり、機械学習エンジニアとバックエンドエンジニアのポストで入社が決まっています。担当者は、Offers の登録者について「すぐに転職を考えていないハイクラス潜在層」にも届いた一方で、転職を急いでいない分、決定から入社までの期間が長くなることがあったと話しています。スタンバイの結果は Offers の登録者層に Offers 側が声をかけた1社の事例で、自社でスカウトを送るDRがどの媒体でも同じように潜在層に届くことまでは示していません。
潜在層に届くことと、入社までの時間が延びることは、同じ性質の表と裏です。欠員をすぐ埋めたいポジションでは、後者がデメリットとして前に出ます。
メリット3はメインで使った企業の満足度が84.3%と高いこと
マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」で、2025年にダイレクトリクルーティングを最も多く使った企業(n=140)のうち84.3%が満足と答え、前年の78.2%から上がりました。人材紹介会社をメインに使った企業(n=191)の満足は69.6%で、前年の76.6%から下がっています。
ここでの満足は、前年と比べて「前年より満足」「前年並みに満足」と答えた比率の合計です。同じ2026年版の解説は、DRの利用意向率を9割強としています。
採用到達率では人材紹介会社が上回った一方、満足度ではDRが上回りました。費用の小ささや自社で候補者を選べる点が評価された可能性はありますが、満足の理由は調査で聞かれていないため、ここは推測にとどまります。
メリット4は年間費用が人材紹介の半分以下で済むこと
マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」で、ダイレクトリクルーティングに使った1社あたりの年間費用は実績平均173.9万円で、人材紹介の実績平均375.5万円の半分以下でした。DRの実績は前年から58.8万円減り、予算は平均223.9万円で前年より37.2万円増えています。
この金額は、採用1名あたりの採用単価ではありません。設問は「直近1年間の予算と実績は年間いくらか」を聞いており、得られるのは1社が1年間にその手法へ払った総額です。1名あたりに直すには同じ会社の採用人数で割る必要があり、調査の公表値からは出せません。
料金の形は大きく2つです。採用が決まったときに払う成功報酬型と、月額や年額で払う定額型で、定額型は採用人数が増えるほど1名あたりの負担が下がります。反対に、採用が0人でも費用が発生する点には注意が必要です。doda のコラム「ダイレクト・リクルーティングとは?メリット・デメリットと成功事例を解説」によると、どちらの型でもサービスによっては人材データベースの利用料が別にかかる場合があるため、サービス選定時に確認しておきます。人材紹介の手数料の決まり方は人材紹介の費用、職種別の1件あたり実額と課金モデルで整理しています。
デメリット1はDR経由の採用が0人の会社が41.0%あること
マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」で、2025年に中途採用者が1人以上いてダイレクトリクルーティングも使った企業(n=329)のうち、41.0%はDR経由の採用が0人でした。前年の43.6%(n=417)からは下がりましたが、人材紹介会社の35.8%より5.2pt高い水準です。
採用手法 | 0人 | 1人 | 2〜3人 | 4〜5人 | 6人以上 | 平均 |
|---|
ダイレクトリクルーティング(n=329) | 41.0% | 18.2% | 17.9% | 10.9% | 11.9% | 3.65人 |
人材紹介会社(n=372) | 35.8% | 14.5% | 18.5% | 13.7% | 17.5% | 5.40人 |
転職サイト(n=453) | 40.8% | 14.8% | 18.3% | 9.5% | 16.6% | 5.16人 |
出所:マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」(n=採用者1名以上かつ当該手法の利用企業)。
DRの平均3.65人は、6人以上の11.9%に引き上げられています。多くの会社にとって実感に近いのは平均ではなく分布のほうで、「中途採用者が1人以上いてDRを使った会社の4割は、その年DRから1人も入社していない」と読むのが正確です。
0人の多さは転職サイト(40.8%)とほぼ同じで、DRだけの弱点ではありません。ただし定額型の契約では0人でも費用が出るため、成功報酬が中心の人材紹介より、空振りの年の負担が重くなります。
デメリット2は応募者が出ない会社が約4社に1社あること
マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」で、ダイレクトリクルーティングを使った企業のうち応募者が出た企業は74.6%でした。人材紹介会社(77.5%)と転職サイト(75.1%)より低く、DRを使った企業の約4社に1社は、応募者を1人も得られていません。
DRでの応募は、スカウトを受け取った候補者が返信し、選考に進むと決めることです。相手は転職を急いでいない層を多く含むため、この段階の数字を左右するのは、誰に送るかと何を書くかの2点です。
媒体ごとの返信の傾向と選び方はスカウト媒体の選び方にまとめています。
デメリット3は運用の手間が採用担当者に乗ること
ダイレクトリクルーティングでは、候補者の検索、1人ずつの文面作成、返信への対応、面談の日程調整を採用担当者が自分で回します。人材紹介なら紹介会社が担う候補者探しと最初の口説きも、DRでは社内の仕事です。
調査に設問はなく Offers の見立てですが、採用担当者が他の業務と兼務している会社ほど、送信数は落ちやすいと考えられます。送る数が減れば、デメリット2の応募者が出ない状態と、デメリット1の0人の年につながります。求人広告のように「掲載して待つ」だけでは回らない点が、DRを始めてから最初にぶつかる壁です。
デメリット4は急ぎの採用や大量採用に向きにくいこと
ダイレクトリクルーティングは1人ずつ声をかけて関係を作る手法なので、短期間に数十名規模を採用する計画や、来月までに1名を埋めたいといった急ぎの採用には向きにくい手法です。転職を急いでいない層に届く強みがある分、返信から入社までに時間がかかります。
急ぎの充足は人材紹介、まとまった人数は求人広告や求人検索エンジン、要件が狭く中長期で探すポジションはDR、と役割を分けて組み合わせるのが現実的です。
デメリットを抑える運用の打ち手は4つ
ダイレクトリクルーティングのデメリットの多くは、声をかける相手の選び方と、送り続けられる体制の不足から生じます。打ち手は、対象を狭く具体的に決めること、1通ごとに声をかけた理由を書くこと、段階別の数字を週次で見ること、社内で回らない工程を外に出すことの4つです。
対象を狭く具体的に決める
ダイレクトリクルーティングの対象は、職種・スキル・経験年数に加えて、どんな不満やきっかけで転職を考えそうかまで書いておくと、検索条件と文面の両方が決まります。対象がぼやけたまま送信数だけを増やすと、応募者が出ない状態から抜けられません。
1通ごとに声をかけた理由を書く
テンプレートの一斉送信は、応募の段階で落ちやすい送り方です。候補者の経歴のどこを見て、なぜ自社のどのポジションに声をかけたのかを1通ずつ書くと、転職を急いでいない相手にも読む理由が生まれます。
文面づくりの手間はAIで減らせます。株式会社overflowのプレスリリース「Offers、「AIスカウト生成機能」の提供を開始」(2024年10月31日公表)によると、同機能でスカウト文作成の工数は80%減りました(2024年10月時点・株式会社overflow調べ)。導入したA社では、スカウト承諾率が13.1%から31.7%に上がっています(2024年10月時点の実績)。
段階別の数字を週次で見る
ダイレクトリクルーティングの成果は、送信数・返信数・面談数・応募数・内定数を段階ごとに並べると、どこで詰まっているかが分かります。見直す対象は、応募の段で落ちているなら対象と文面、面談から先で落ちているなら口説きと選考の進め方です。段階別の基準値の置き方は採用の歩留まり|計算式と段階別の基準値の置き方にまとめています。
エンジニア採用で自社の採用力がどこで弱いかを先に知りたい場合は、企業URLから採用力を5指標24項目で採点するエンジニア採用力チェックで確かめられます。
社内で回らない工程を外に出す
ダイレクトリクルーティングの工程のうち、外部の採用代行(RPO)に任せやすいのは候補者の検索とスカウトの送信です。面談での魅力づけと合否の判断を自社に残す分担にしておくと、候補者に会社の考えを直接伝えられます。委託できる範囲と代償は採用代行のメリットとデメリット|委託の線と量の代償で扱っています。
リソース不足から Offers のリテーナープランを選んだ株式会社スタンバイは、アプローチからクロージングまでを任せ、導入の2か月後に内定者が決まりました。
ダイレクトリクルーティングが向いている会社と向いていない会社
ダイレクトリクルーティングが向いているのは、要件がはっきりしていて母集団の小さい職種を、数か月かけてでも自社の目で選んで採用したい会社です。向いていないのは、スカウトに割ける時間を毎週確保できない会社と、短期間にまとまった人数を埋めたい会社です。
観点 | 向いている会社 | 向いていない会社 |
|---|
採用したい職種 | 要件が明確で、応募を待っても集まりにくい職種 | 要件が広く、応募を待てば集まる職種 |
期限 | 数か月単位で探せる | 来月までに埋めたい |
人数 | 1〜数名 | 短期間に数十名 |
社内の体制 | 検索と文面に毎週時間を割ける担当者がいる | 兼務で送信が止まりがち(外部委託を併用するなら可) |
費用の考え方(定額型で契約する場合) | 年間の定額で複数名を狙う | 採用が決まったときだけ払いたい(成功報酬型のDRなら可) |
DRはエンジニア採用の手法と思われがちですが、実際に使われている職種は幅広くなっています。マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」では、DRで広告費をかけた職種の最多は営業で、DR利用企業(n=560)の38.9%が挙げました。管理・事務が30.2%、ITエンジニアが27.1%で続きます。調査で分かるのは使われている職種の幅広さまでで、職種ごとの成果は聞かれていません。向き不向きは職種よりも要件の明確さと社内の体制で分かれる、と Offers は考えています。
ダイレクトリクルーティングを始めるか決める2つの基準
ダイレクトリクルーティングを始めるか続けるかは、定額型で契約するならDR経由の採用が0人の年を許容できるかと、スカウトに毎週時間を割けるかの2点で決まります。候補者を自社で選べて、使った企業の満足度も高い一方、2025年実績では採用到達率が3位に下がり、中途採用者が1人以上いてDRを使った会社の4割はDRから1人も入社していないためです。
区分 | 要点(2025年実績) |
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メリット | 面接を設定した企業の97.9%が内定まで進む/メイン利用時の満足計84.3%/1社あたりの年間実績173.9万円は人材紹介の半分以下 |
デメリット | DR経由の採用0人の会社が41.0%/応募者が出た企業は74.6%で約4社に1社は応募ゼロ/運用の手間と、急ぎ・大量採用への不向き |
前年から変わった点 | 採用到達率は60.5%(1位)から62.7%(3位)へ。率は上がったが、人材紹介会社と転職サイトに抜かれた |
出所:マイナビ「中途採用状況調査2025年版(2024年実績)」「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」。
定額型の契約で0人の年を許容できないなら、成功報酬型の料金でDRを使うか、成功報酬が中心の人材紹介を軸にしてDRは要件の狭いポジションに絞って併用する形が合います。成功報酬型でも人材データベースの利用料が別にかかるサービスがある(doda の同コラム)ので、費用の内訳は契約前の確認事項です。自社の採用のどこが弱いかを先に確かめるなら、エンジニア採用力チェックが使えます。