エンジニアの求人倍率が13倍を超え、2030年には79万人が不足すると言われる採用難の時代に、企業はどのように人材を獲得し、育てていけばよいのでしょうか。採用責任者から人事、経営層まで、多くの方がこの問いと向き合っています。
生成AIの急速な普及により、「採用」と「育成」のどちらにもAIを取り入れる動きが広がっています。一方で、AIをうまく活用できている組織とそうでない組織の差は、ツールの有無だけでは説明できないところに生まれています。
2025年4月24日、株式会社overflow代表取締役CEOの鈴木裕斗、株式会社エクサウィザーズ/株式会社Exa Enterprise AI取締役の半田頼敬様、パーソルイノベーション株式会社 Reskilling Camp Company 事業開発責任者の渡邉大瑛様が登壇しました。
テーマは「AI時代に組織を強くする『採用×育成』のベストプラクティス」です。
本記事では、AIスカウトによる採用効率化、スキルの可視化と人事データ分析を組み合わせた育成、リスキリングによる適材配置という3社それぞれの実践と、採用・育成・評価を客観データで一気通貫につなぐという共通の思想を、パネルディスカッションを含めてお届けします。
求人倍率13倍の現実──主流化するエンジニアのダイレクトリクルーティング
――大谷:まず鈴木様から、エンジニア採用市場の現状についてお話しいただきます。
鈴木:前提のすり合わせとして、エンジニア採用市場の現状からお話しします。求人倍率は13倍を超える推移で、2019年頃からずっと上がり続けています。DXやAIなどさまざまなトレンドの中で、エンジニアを必要とする企業は増え続けています。

「採用が十分にできている」という企業には、6〜7年事業をやっていて一度もお会いしたことがないというのが実情です。基本的に皆様、エンジニア採用に苦しんでおられます。2030年には79万人が不足するという推計も出ており、このトレンドは続いていくと捉えています。
参考までに、米国の求人ではChatGPTが登場してからAI関連の求人が1.5倍ほどに急増しています。日本にはまだそこまでのインパクトは出ていませんが、AI関連の求人は引き続き注目すべきトレンドではないでしょうか。
――大谷:そうした市場の中で、採用の手法はどのように変化しているのでしょうか。
鈴木:我々のデータ上でも、今エンジニア採用の4割がダイレクトリクルーティングで行われています。
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ハイレイヤーの方にはエージェント経由で出会いにくいことや、エージェント自身がエンジニア出身でないため最適なキャリア提案が難しいことなどから、エンジニアと自社をよく理解している企業が直接候補者にアプローチするのがスタンダードになっています。
ただ、多くの企業がスカウトを打つ状況になり、振り向いてもらうために大きな工数と時間がかかっているのが現実です。いわゆる「ワンメッセージ」と呼ばれる個別カスタマイズは、まず返信率が高くなります。
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候補者のレジュメを確認し、自社求人のどこがフィットするかを考えて送ると、返信率が通常より20%ほど高くなるというデータがあります。
その方のキャリアに沿った提案をスカウトの中ですることで、初回面談時点での志望度を高められ、その後の選考もスムーズに進みます。一方で、これをやり続けるには膨大な数と時間がかかるのが、今の市場の課題です。
AIスカウトで工数8割削減・返信率2.4倍──個別最適化が変える初回接点
――大谷:その工数の課題に対して、overflow様はどのような機能を提供されているのでしょうか。
鈴木:我々が提供しているのがAIスカウト機能です。スカウトがほぼ自動で作れるようになり、スカウト工数の8割を削減できています。質の面でも、従来のテンプレートからAIに変えることで返信率が2.4倍になった実績が出ています。
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最も多いニーズは、採用担当の多くがエンジニア出身ではなく総合職を経験された方であるため、エンジニアの気持ちが分かりづらいという課題です。我々のAIを使えば、エンジニア知識がなくても、エンジニアが興味を持ってくれるスカウトを作っていけます。
――大谷:具体的には、従来のスカウトと何が変わるのでしょうか。
鈴木:従来のテンプレートでは、相手の名前や送り主の名前はデフォルトでセットできます。ただ、「なぜあなたにスカウトを送ったのか」という理由や、「あなたに提供できるキャリアの機会」を書く部分に最も時間を使っていました。
これをAIテンプレートにすると、候補者のマッチした経験業務、たとえばどこの会社で何年こういう業務をやっていたか、といった情報や、自社とマッチするスキルが箇条書きで入ってきます。求人との照らし合わせという、最も時間を使う部分を叩きとして出してくれるので、効率が大きく進みます。
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――大谷:実際の導入事例についてもお聞かせください。
鈴木:すでにグロース市場に上場している、マーケティング事業の約300名の企業様の事例です。元々スカウトを積極的に打たれていましたが、プロフィールの読み込みに手間がかかり送信数が増えない、エンジニア向けに刺さる文面を作れない、という課題を感じておられました。
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AIスカウト機能を導入したことで、返信率が13%ほどから31%ほどに上がりました。文面作成の時間も大幅に圧縮され、スカウト作成が難しいという状態から、非エンジニアの方でも高い返信率のスカウトを書けるようになっています。
スキルの可視化と人事データで回す、採用から育成までの一気通貫
――大谷:続いて半田様から、エクサウィザーズ様の育成の取り組みについてお願いします。
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半田様:人事戦略は採用だけでなく、その後の育成も一気通貫でやることが重要だと考えています。具体的には、個人のスキルを可視化し、人事データと掛け合わせることで、採用基準の見直し、育成方針の策定、評価基準づくり、異動の判断などを組織として回しています。
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その中核にあるのが、我々が独自開発した「デジタルイノベーターアセスメント」です。経済産業省が定義するデジタルスキル標準に完全準拠した形で、ビジネスパーソンのDXリテラシーや、推進に必要なマインドセット、ヒューマンスキルを可視化します。
組織内での分布を見たり、他業界と比較したり、部署ごとの平均を取ったり、育成対象を誰にするかを見られます。これまで延べ30万人以上にご利用いただき、シェアNo.1をいただいています。
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データに基づく育成カルテと組織の意思決定
――大谷:そのアセスメントデータを、育成の現場ではどのように活用されているのでしょうか。
半田様:社内データと突き合わせると、誰が活躍しているか、誰がハイパフォーマーかをアセスメントデータと付き合わせて見られるので、それをベースに人事の意思決定をしています。
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たとえば新卒入社者に対して、どこが重点的に弱いか、現在地点と仕上がりをデジタルのスキルやスタンスに特化して見て、全体で研修を設計します。組織全体としてデジタル人材に必要なところは、まず一括で補填します。
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その上で、我々はAIの会社なので、個別にスキルを見ながら個別の育成プランを立てるのにも使っています。
本人や、次のグレードの活躍人材の特徴がデータとして取れているので、それを起点に本人の業務内容・目標・上長のフィードバックなどを投入し、個人の育成カルテを作って上司と共有し、育成プランを検討しています。
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この辺りは生成AIと相性が良く、材料となるデータがあれば、なんとなく合う・合わないではなく、根拠を持って組織の中で育成のPDCAを回せます。
中途採用・オンボーディングでの定量活用
――大谷:中途採用やオンボーディングの場面ではいかがでしょうか。
半田様:中途採用でも、年間でかなりの人数が入るので、入社1ヶ月・2ヶ月・3ヶ月で定量的なデータを取り、パフォーマンスやグレードが上がるまでの相関を分析しています。
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オンボーディングで何をすべきか、どこに注力すべきかを定量的に見つつ、それがどう活躍につながるかを人事として共通見解を持つよう意識しています。
自然言語で動くコードインタープリタと「人事データ分析の民主化」
――大谷:そうしたデータ分析は、人事にとって工数の負担も大きいかと思います。その点はどう解決されているのでしょうか。
半田様:おっしゃる通り、データ分析は人事で工数をかけてやるのが大変です。この部分もAIでできることが多くあります。我々が使っている法人向け生成AI基盤でモデルを選び、データを載せて、自然言語で指示を出すとPythonが勝手に動き出す「コードインタープリタ」というサービスがあります。
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「複数の観点で分析してください」とやや雑に入れても、数十秒から1分ほどで分析が走り出し、特に指示しなくてもどんどん分析が進みます。「関係性について分析してください」と荒く指示しても、何が相関しているか、何が特徴量として強いかを分析できます。
コンディションサーベイのような組織状況や、離職者と在職者の違いも分析可能です。
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――大谷:データリテラシーがそれほど高くないメンバーでも使えるものなのでしょうか。
半田様:AIでデータが溜まる一方、使いこなす人事側のデータリテラシーを付けるのは大変ですが、こうしたツールを使えば、データ分析の専門家が隣にいるような形で、深く考えずにシートを投げてみると、PythonやRで勝手に動き出します。データが足りなければ、ここが足りないと補足してくれます。
実際にエクサウィザーズでは、入社2ヶ月目のメンバーが、会社にそれほど詳しくなくデータ分析に明るくなくても、分析レポートをどんどん出せています。人事のデータ分析の民主化だと捉えています。
――大谷:分析以外にも、育成の場面で使える機能はありますか。
半田様:目標設定をAIにやらせる、作った目標設定が妥当か・実現可能かをレビューを通じて組織の中で目線を揃える、といった人事が使うシーンに合わせたテンプレートが多数入っています。育成の場面でも使えます。
我々は正社員14名ほどで回していますが、2年間で180時間ほどの工数インパクトが出ており、感覚的には1日1時間ほど早く帰れるようになっています。これによって、より人間がやらなければいけない業務に集中できる状況が、少しずつ生まれています。
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この「デジタルイノベーターアセスメント」と、法人向け生成AIサービス「エクサベース」を提供しています。社内ITからも独立した環境で、給与情報や評価情報といったセンシティブなデータも扱えます。
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リスキリングによる適材配置──ビジネスアーキテクトをどう育てるか
――大谷:続いて渡邉様から、パーソルイノベーション様のリスキリング支援についてお願いします。
渡邉様:「リスキリングによる適材配置」というテーマでお話しします。DXは、デジタルを使って競争上の優位性を確立しましょうと国が言い始めて早10年です。
日本企業の現在地として、デジタル化は一定程度進んできていますが、組織文化も含めてデジタルをベースにトランスフォームできているかという点では、日米で比較すると大きく差がついています。
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DXは、IPA・経済産業省の定義によれば戦略・人材・技術の3要素で構成されます。我々はReskilling Campという名前でやっているので、特に人材の側面からお話しします。DXに貢献できる人材、特にDX推進をリードする人材は「ビジネスアーキテクト」と定義されています。
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我々は「攻めのDXの中核人材」と捉え、ここが最も重要だとお客様と会話しながらリスキリングを伴走しています。
ビジネスアーキテクトが「攻めのDXの中核」である理由
――大谷:ビジネスアーキテクトという職種が重要だと考えられる理由は、どこにあるのでしょうか。
渡邉様:役割としては、新規事業の開発、既存業務のコード化・社内業務の効率化が挙げられます。これらが全て中期経営計画に直結している点が、重要性の理由です。
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デザインやサイバーセキュリティはAIにサポートしてもらえる伸び代がある一方、ビジネスアーキテクトは役割の特性上、自社の商習慣・カルチャー・サービスの歴史・顧客との関係性を踏まえてデジタルをどう使うかを考えます。そのため、AIに全部を置き換えることにはならないだろうと考えています。
だからまずビジネスアーキテクトを育てましょう、とお客様と会話しています。
営業リーダー層をリスキリングの主対象にする
――大谷:実際には、どのような人材をリスキリングしていくのでしょうか。
渡邉様:多いのは、商習慣や自社プロダクトに詳しい人材、イメージとしては営業リーダークラスでプロダクトもよく分かっている人を、ビジネスアーキテクトという新しい看板に変え、デジタルを今のプロダクトにどう組み込むべきかをリードできる人材に育成していく、という話です。
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とはいえ、研修を考える側は「役割は何か、何を学ばせ、どう測定するか」がありますし、受講者側も「急に言われてもやる気が出ない、何のためにやるのか」となります。ここが我々の対峙している課題です。
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目的の明確化・テーマ選定・経験学習の3ステップ
――大谷:その課題に対して、どのような設計で進めるのが有効なのでしょうか。
渡邉様:結論として、まず目的を明確にし、目的に応じたテーマを選び、経験重視の学習体験を組み込むことです。当たり前に見えますが、未知のテーマに取りかかろうとするとテーマから選びがちです。
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目的の明確化には、eラーニング環境を整える、人材戦略に紐づく形、事業に紐づく形の3つがあり、まずどれなのかを明確にします。その上で学習テーマを設定し、企業としてどの職種をどのレベルで欲しいかを一緒に会話して目指すところを決め、道筋を企画します。
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デジタル育成を短期でやると既存業務がほぼできないほどの勉強量になるため、1年や半年の期間を見ていただきます。基本はeラーニングや書籍でのインプットをベースにしつつ、我々の特徴としてピアラーニング、つまりワークショップを設計し、配置を変えた時にどういう業務をするのかを練習しながら過ごします。
長期に渡るため、AIに詳しいコーチが1対1でつき、中間報告に向けてフォローし、前後にアセスメントを踏まえて全体をコーディネートします。最後に、勉強して終わりにせず、営業なら営業、人事なら人事で「どの業務に何を使いたいか」を研修に組み込む、経験学習への転換を行っています。
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客観データで採用・育成・評価をつなぐ──3社の実践事例
overflow:副業トライアルで採用前にパフォーマンスを定量化する
――大谷:ここからは、各社の成功した実践事例を紹介いただきます。まず鈴木様からお願いします。
鈴木:客観的なデータといっても、人を定量化することは至難の業で、現段階のテクノロジーでは不可能だと個人的には思っています。その中で、実践の中でどれだけミスマッチを減らすかが大事なポイントです。
ある企業様は、弊社プラットフォーム経由で累計10名以上を採用されていますが、会社のポリシーとして全て業務委託から採用していました。目的は、採用のミスマッチを減らしたい、ハイパフォーマーに確率高く出会いたい、というものです。
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1〜2ヶ月ほど副業のトライアルをやる中で、エンジニアの場合はスプリント、2週間ほどのサイクルでタスクをこなすので、その方が何時間動いてどういう機能を開発できたか、どれくらいの難易度のものをどれくらいの時間で作れたかを正確に把握できます。
前回10人いた時の1人目・2人目はこれくらいのパフォーマンス、8人目・10人目はこれくらい、という定量的なデータが溜まるので、この人なら入社後に高い確率でパフォーマンスしてくれるだろうと、採用プロセスの中だけでも取れます。
採用段階でできるだけデータを取るという点で、副業からのトライアルはかなり有効だと考えています。
AIスカウトの返信率と一次データをめぐる議論
――大谷:半田様、今の事例についてコメントや質問があればお願いします。
半田様:冒頭のプレゼンで鈴木さんに伺いたかったことがあります。AIでスカウトを送っていることがなんとなく相手にも分かり始めていて、それによって返信率が下がるという感覚が、我々の採用活動でも一部あります。
その中でも返信率を高くキープできているのは、AIのモデルなのか、運用上の工夫なのか、もしあれば伺えればと思います。
鈴木:2つあります。1つは、テンプレートの青い部分にユニークな情報がしっかり入ると、全体の倍ほどのボリュームになります。8割ほどの内容がユニークになるものになっています。もう1つは、相手は人なので、感情を動かすことがスカウトで残り半分の大事な部分です。
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相手のペルソナを先に学習させておいて、16タイプの性格診断のようなアセスメントを使いながら、このタイプの人にはポップな言い方がいい、といったバリエーションを交えると、より自然になります。
半田様:候補者のパーソナリティは登録されていないと思うので、そこは類推させて合わせてカスタマイズする、ということですか。
鈴木:おっしゃる通りです。類推させてデータが溜まり精度が上がるパターンと、会員登録のフォームからWillや内面の部分をできるだけ登録いただくようアップデートしていくパターンです。この分野をやり始めて、逆算的に内面情報が大事だと分かってきました。
――大谷:渡邉様からもコメントをお願いします。
渡邉様:工数8割削減と返信率2.4倍を見て凄まじいなと思いつつ、これはいつエンジニア職以外に展開されるのか、という興味がありました。
関連して、採用業務の運用ではRPOを使っている企業もそれなりにいると思います。そうしたものよりAIスカウトなのか、併存なのか、AIスカウトと自社の社員でやっていく体制が望ましいのか。今そういった見立てはありますか。
鈴木:今はエンジニアとデザイナーとPdMにフォーカスしています。RPOとの関係でいうと、結局最後は一次情報・データが重要だという議論があります。プラットフォームでは、公開している経歴やスキルのスコアだけでなく、裏では職務経歴書も取得していますし、表に出ていないWillのようなところも収集しています。
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一次情報の厚さで考えると、汎用的なRPOのAIツールというより、データの深みを考えると各プラットフォームが実装した方がいいのではないか、と私は思っています。もちろん共存する前提でも考えますが、我々としてはその方がベストエフォートだと突き詰めて作りました。
エクサウィザーズ:活躍人材の特徴を面接プロセスへ反映する
――大谷:半田様、続けて事例の紹介をお願いします。
半田様:現在進行系の話ですが、社内での活躍人材のパターンや特徴が見えてきたので、これに合わせて面接プロセスにもしっかり入れていくことを実際にやっています。スコアからギャップがある部分をより深掘りする面接項目を設計し、それをどう聞いてどう返ってきたらどう判断するかを人事の中で試しています。
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採用すること自体を目的とせず、より活躍する可能性が高い人をうまく採用できる形のトライアルです。
採用だけで閉じてしまうところを、採用・評価・育成の人たちが一気通貫で「このデータでやるぞ」と意思を持たないと難しいのですが、これをやると1個1個のデータがちゃんと繋がって、点ではなく線になります。
――大谷:鈴木様、いかがでしょうか。
鈴木:活躍できる方のイメージがついてくると、それを先に立ち戻って、面接の質問やエンジニアなら技術試験の内容にフィードバックされると思いますが、面接で聞く項目はいわゆる構造化面接っぽくなるアプローチが多いのでしょうか。
半田様:前提として、職種やどのポジションで取るかでだいぶ違います。
たとえばコラボレーションスキルが必要な職種で、この候補者はやや懸念がある場合は、コラボレーションの内容を深掘りして寄りで聞く。やり抜く意思は重要だけれどもう十分にあるなら、面接の中でコラボレーションを重点的に聞く。そういう面接設計の中でカスタマイズするイメージです。エンジニアはそもそもこれで本当に特徴量が出るのかが職種によって違うので、そういう学習を回している段階です。
――大谷:渡邉様、いかがでしょうか。
渡邉様:素朴な疑問ですが、必ずしも人事の方々がリテラシーが高いわけではないと思っていて、その時に「使いこなせるのか問題」をどうフォローアップされるのか伺いたいです。
半田様:おっしゃる通りで、先ほどのデータ分析も、やっとここ数ヶ月で興味のある人がいじれるようになってきた感じです。現時点では、伴走やプロジェクトをCS的に支援する形が必要だと思っています。
このツールを使えば一発で終わりということでは全くなく、かなり分厚い伴走や、社内でどうセンスメイクするかが重要論点です。この辺りはまだAIにはできないので、人とAIをセットで支援するのが我々のスタンスです。
パーソルイノベーション:脱落させない計画的な職種転換
――大谷:渡邉様、事例の紹介をお願いします。
渡邉様:まず、育成とデータの話で、極論、研修に1000万円使う分を損益で取ろうとするのはほぼ不可能です。研修をやったからその人がパフォームして売上が上がった、という研修による貢献度を見極めるのはかなり難しい。ここは我々も努力を続けないといけない部分です。
たとえば大手化粧品メーカー様のような、トラディショナルで事業規模も大きくグローバルな会社では、従業員を「脱落させない」ことが非常に重要です。DXをしたいのはあるけれど、従業員に新しいチャレンジを安心して受けてもらいたいという、セーフティネットの観点も重視されます。
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半田さんの話のように、人っぽくサポートを続けながら脱落させないことが1つの評価ポイントです。
プラスして、計画的な職種転換の蓋然性を高めるところです。たとえば入社5〜10年目の営業が10人来たら、8人ほどは6ヶ月ほどで情シスに職種転換できますよ、というプログラムの耐久性・確実性をいくつか持っておくことが、これくらい大きな会社になると重要です。
ヘッドカウントが足りずうまく回らないのが一番問題だったりするので。マイナスを生まない、その上でどれだけプラスを増やせるか、という2つの観点でお話ししています。
――大谷:半田様、この事例について気になるところがあればお願いします。
半田様:質問です。会社側はチェンジしてほしいけれど、今だと個人が転職してしまう、ということもあると思います。人事の方はどんな苦労や難しさを抱えているのか、実際にやられている中で感じることを伺えればと思います。
渡邉様:人事の方からすると、研修を用意して「じゃあチェンジだ」というのはなかなか難しい。だからこそ、研修で模擬的に、かつ長い期間チャレンジしてもらうインターン的なものを用意し、アセスメントも取るので、それを1つの動機付けのきっかけにしていただく活用設計がいいのではないかと思います。
実際やってみて向いている・成果が出たということで、個人のキャリアと会社の事業ニーズの整合性をうまく合わせていくイメージです。
――大谷:鈴木様、一言コメントがあればお願いします。
鈴木:営業から情シスへというのは大きなキャリアチェンジだと思いますが、それは何ヶ月くらいで実際にできるものですか。
渡邉様:最短だと6ヶ月です。月に100時間ほどは勉強していただくことになるので、社内だと「これはライザップだ」と共通言語になりつつあります。社内要因も外部のマーケット要因も、急速にこの職種が必要だというポジションには、そうした短期で進める判断も必要です。
会社としては引き出しの準備が必要だろうということですね。
視聴者Q&Aとクロージング──HRプロダクト全体で広がるAI活用
――大谷:視聴者の方から質問が来ています。「スカウトメッセージを送られた側としては、AIを用いてメッセージ内容の検討に加え、メッセージ送信者の経歴を含めた検討をすると思います。これらの対応がなされることを前提として、スカウトメッセージを送る側から見て効果的な施策があればお聞かせください」。いかがでしょうか。
鈴木:スカウトの目的はあくまで振り向いてもらうことで、人それぞれ振り向くポイントが違うところにAIを使う、と私は捉えています。メッセージ送信者の経歴は動かせない事実・ファクトなので、ここで嘘をつくことは絶対にしません。
あくまでこの経歴の中で、相手の方のどこをお手伝いできるか、です。
たとえば私にエンジニアの経験が少しあれば、「私はジュニアで諦めてしまったが、その諦めるポイントもお話しできます」「どういう企業でどういうキャリアを作れるか、うちの会社のメンバーの具体的な話ができます」と、いろいろな観点で広げる必要があります。
あくまでその方に振り向いてもらいやすいよう、どうAIを使っていくかだと思います。
――大谷:最後に、鈴木様からまとめをお願いします。
鈴木:改めて半田様、渡邉様、貴重なお話をありがとうございました。私も知らない部分がたくさんあり、採用後の領域がそこまで進化しているのか、という発見がありました。
共通して言えるのは、AIの活用はこれから先も含めて不可逆で、やっていくのなら積極的にスピード感を持ってやっていくべきだ、ということです。
我々のような採用プラットフォーム、リスキリングのプラットフォーム、評価・育成の領域も踏まえて、HRプロダクト全体で、これまでになかったデジタル・AIを使った価値創造ができる時代になってきたと感じています。
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ぜひ競争・協創していきながら、必要なサービスを必要な形で取り入れ、データを無駄なく使っていただけたら嬉しいです。
おわりに
エンジニア採用市場が逼迫する中で、AIは「採用」と「育成」の双方をすでに大きく変えつつあります。一方で、3社の実践に共通していたのは、AIに全てを委ねるのではなく、客観的なデータを起点に採用・育成・評価を一気通貫でつなぎ、その周りを人が伴走するという思想でした。
スカウトの個別最適化、スキルの可視化と人事データ分析、リスキリングによる適材配置。アプローチは異なっても、「点を線にする」という考え方は共通しています。自社のどの工程からデータを取り始めるか、まずはその一歩を持ち帰っていただければ幸いです。








