スカウトを送っても返信がない。テックブログを更新しても応募につながらない。エンジニア採用に取り組む企業の現場で、こうした声をよく聞くようになりました。
背景には、AI検索の急速な普及があります。Geminiが検索結果をその場で要約してしまうため、ユーザーは検索結果からどこにもクリックせず去ってしまう「ゼロクリック」の割合が、2024年の36%から2025年9月には63.5%まで上昇しました。候補者が企業の採用ページにたどり着く前に、AIが提示する数社の候補から意思決定を済ませてしまう時代に入っています。
2026年4月21日、note株式会社 noteプロデューサーの徳力 基彦様と、株式会社overflow 共同創業者CTOの大谷 旅人をスピーカーに迎え、「AI検索時代の採用コンテンツ戦略 〜noteとOffersが語る候補者の心を動かす一次情報の作り方〜」と題したウェビナーを開催しました。
本記事では、AI検索が採用市場に持ち込んだ構造変化から、一次情報の定義、noteが「AIに引用される」外れ値である理由、AIルートとファンルートの二軸、社員インタビューによる発信プロセス、続く会社の条件、そしてイベントと記事を連動させてAI引用を獲得する設計までを再構成してお届けします。
ゼロクリック63.5% ── AI検索が採用市場に持ち込んだ構造変化
――大谷:徳力様、AI検索が普及して、ユーザーの情報行動はどう変わったのでしょうか。
徳力様:AIによって消費者・求職者の情報検索ルートはかなり変わるんじゃないかとよく言われています。私自身、生成AIが普及してしまうと企業の情報発信も無駄になるのかなと、一時期「生成AIうつ」のような状態になっていた時期もあるんです。今年に入ってnoteでも生成AIのイベントを多く開催させてもらい、有識者から得られた整理を共有させていただきます。
Valuesさんのリサーチによれば、検索エンジンからAIに完全に移行しているわけではなく、従来の検索エンジンの利用自体は今のところ減っていません。何が大きく変わったかというと、まさに「ゼロクリック」という現象です。検索行動の数自体は変わっていないんですが、検索結果を見た後にどこかをクリックしている人がほとんどだったのが、半分以上の人がクリックせずに帰ってしまうようになりました。

ゼロクリックの割合は2024年の段階では36%と半分以下でしたが、2025年9月の段階では63.5%まで上昇し、毎月0.5%ずつ実は上がっているらしいんです。Googleが要約を出して終わってしまう、Geminiが教えてくれたらそれで満足する。商業系のメディアサイトはトラフィックが平気で3〜4割減っていて、海外のメディアでは大規模なリストラに追い込まれているケースもあります。
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――大谷:私も同じ感覚を持っています。私たちが出している採用ページが、候補者の手元にたどり着く前にAIが要約してしまう。だからこそ、AIの引用先として残るコンテンツを設計する重要性が増していると捉えています。
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エンジニアが見ているのは「中身」── 顕在層8%と潜在層の構造
――大谷:エンジニア採用市場の構造についても触れさせてください。Offers登録ユーザーへのアンケートで、転職する際に見ているポイントを整理すると、表面的な理由(給与・勤務地)と本質的な理由(事業テーマ・経営者の本気度・技術環境・成長機会)の二層構造になっています。
ハイクラスエンジニアと数多く接していますが、口を揃えて言われるのが本質的な理由の方です。職場への不満の第1位は「技術的負債」で6割、開発環境の満足度も24.7%と世界的に見ても低い水準にあります。一方で、転職時にどこに情報を求めるかというと、企業の口コミサイトの利用率が38.6%。
つまり、エンジニアが見ている一次情報は、求人票に書かれている理想像ではないんですね。表向きのブランディングではなく、口コミ・テックブログ・登壇資料の中身で見抜こうとしている。これはエンジニア出身の私自身の感覚としても腹落ちします。
キャリアドリフト ── 候補者の心理は7段階で揺れ動く
転職の心理変容をモデル化したのが「キャリアドリフト」です。現状維持から入社後オンボーディングまで7段階あり、多くの企業のスカウト・求人広告・採用広報は「もう限界だ」となるトリガーイベントの直前と、見極めフェーズだけを取りに行っています。すでに動き出している人だけを見て消耗戦をしている状態です。
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実際は、「モヤモヤ」や「ウィンドウショッピング」というもっと前のフェーズが数として圧倒的に多く、しかも本人は転職するとは一言も言っていない。ここは競争相手がほぼいないブルーオーシャンです。スカウトデータで裏付けると、Offers上では「今は転職を考えていない」と設定している層の返信率が29.3%で最も高く、「すぐ転職したい」層よりも高い数値が出ています。
――大谷:採用ページを作り込んでも、候補者が動き出した瞬間に読んでもらうのではもう間に合いません。動く前から中身が見える状態を作っておくこと、つまり一次情報を継続的に発信して「観察される企業」になっておくことが起点になります。
一次情報の定義 ── 固有の事実・数値・文脈で「その会社にしか書けない話」
――大谷:では、一次情報として具体的に何を書けばいいのか。私の答えはシンプルで、固有の事実・数値・文脈の3つが揃ったもの、つまり「その会社でしか書けない話」です。この定義に当てはまるかどうかで、AIにも候補者にも刺さるかが決まります。
NGテーマ ── 他社でも書ける内容は届かない
NGテーマは3つあります。1つ目は会社紹介・サービス紹介。どの会社でも書ける構成なので、一次情報として刺さりません。2つ目は一般的な入門記事。AIがそのまま回答できる領域なので、企業ブログとして読む動機が薄れています。3つ目は成功自慢・サクセスストーリーで、「急成長中」「離職率ゼロ」のようなものは採用コピーにしか見えません。共通するのは「他社でも書ける内容」だという点です。
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OKテーマ ── 実務の試行錯誤こそが採用広報になる
逆に刺さるテーマは、実務の失敗、独自の選定プロセス、却下の理由、開発文化の思想、AI導入の検証と定量成果です。共通するのは「その会社で実際に起きたプロセスの記録」で、これは他社には書けません。エンジニアの目線では、求人票よりも試行錯誤の記録を熱心に読みます。
具体例として、Zenn上で公開されているClaude Code選定記事があります。Copilot・Cursor・Devinを検証したうえでClaude Codeを全社導入したという内容で、採用しなかったツールとその理由まで書かれていました。「この会社は真面目に試行錯誤しているな」と伝わり、求人票1ページよりも強い採用広報になります。
AIだけに向けて書くと無味乾燥になりますし、ファンだけ意識するとAIに拾われない。両方を同時に効かせるのが、一次情報として最も重要なポイントだと捉えています。
noteは「AIに引用される」外れ値 ── トピックハブとしてのオウンドメディア
――大谷:noteは生成AI経由の流入が期待値比で4倍に増えている、と事前にお聞きしました。これは何が起きているのでしょうか。
徳力様:私もnoteの人間として、生成AIが普及したらオウンドメディアは意味がなくなるのではないかと当初は誤解していたのですが、Valuesさんの調査でその誤解が解けました。
検索対策と生成AI対策は、基本的にシンクロします。検索エンジンに表示されていれば生成AIにも表示されて流入が残る、というのが基本構造です。ただ、この相関の外れ値が2つあります。WikipediaとnoteのS2つです。
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Wikipedia ── まとめサイトはAIに置き換えられる側
Wikipediaは検索時代も最強でほぼトップに出ていましたが、Geminiが Wikipediaの内容を要約してしまうため、ユーザーがWikipediaまで飛ぶ必要がなくなり、アクセスが極端に減りました。大谷さんが何度もおっしゃった「一次情報がなくまとめなので、実は生成AIで置き換えられてしまう可能性が高いもの」の象徴と言われています。
noteは「専門性のある長文」が掘り起こされる側
逆にあるのがnoteです。「noteは生成AIに強い」と短絡的に言うコンサルタントが増えているんですが、私は違うと思っています。これは「検索では今まで見つかっていなかったが、生成AIが紹介してくれるコンテンツが実は増えた」ということなんです。
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生成AI経由で多いコンテンツは、政府団体・ウェブツール・論文・研究データベース、つまり一次情報です。専門性があり独自性が高い深い情報をAIがユーザーに教えてくれている。noteで生成AI経由のアクセスが多い記事を分析すると、平均文字数が6000文字。ネットメディアでは一般的に2000文字が良いと言われていますから、6000文字は結構な長文で、今までの検索ではうまく見つけられなかった記事です。
カテゴリ別で見ると、検索経由は旅行・グルメなど検索数が多いものが上位ですが、生成AI経由は実はビジネスIT系情報が1位です。本当にニッチで専門性のある情報こそが見つかっている。さらに、60日以内の記事は3〜4割で、180日以前のものが4割。通常の検索だとタイムスタンプの新しさが優遇されるので新しい記事が半数以上になりがちですが、AIは「探している人にとって大事であれば古い記事も紹介する」傾向があります。
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Googleの普通の検索だと、SEO対策で頻繁にタイムスタンプを書き換えて新しい記事に見せかけたスパムサイトが上位に並んでしまう構造があります。生成AIは「この人がどういう情報をいつから書き続けているのか」を見て、同じテーマであれば過去から書いている発信者を優遇しているようなんです。
つまり、自分たちが取り組んでいる事業領域に関する情報を継続的に出して、「うちの会社はこのエリアに何年も取り組んでいるからこそ詳しい」と発信し続けることが、採用面でもお客さん向けにも生成AI向けにも、非常に意味がある時代になっているのです。
AIルートとファンルート ── 候補者の半数がすでにAIに就活相談している時代
――大谷:候補者がAIに相談する流れは、若い世代ほど顕著だと感じています。徳力様、現場で見えている肌感覚を教えてください。
徳力様:私も驚いたデータがあります。就活総合研究所の調査によれば、26卒・27卒の就活生の半数がすでにAIに就活相談しているそうなんです。AIの利用率が高いエンジニア層では、この数字はさらに高くなる可能性があります。
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会社が世の中にこれだけたくさんある中で「どういう会社がいいか教えて」とAIに聞き、5〜10個の候補が出てきたら、多くの人はその中から選んでしまう。自分が知らない会社は、多分調べようとすらしない。だからこそ、生成AIにいかに知ってもらうかが採用広報の前提として重要になっています。
師匠の佐藤直之さんの『AIに選ばれ、ファンに愛される』という書籍では、AIがこれから「世界一詳しい我々にとってのアドバイザー・パートナー」になり、企業が今まで消費者にぶつけてきた情報をAIが全部ブロックする、という構造が解説されています。
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その上で、AIをブロックを突破する唯一の道がファンルートです。ご主人様が企業のファンであれば、「他にもいいのある?」とAIに聞き直してくれる。採用候補におけるファンとは、私は「社員」だと考えています。社員が「日々大変なこともあるけれど、うちの会社はこういうサポートがあるから頑張れる」と発信してくれるかどうかで、AIが「この会社はいい会社だ」と候補者に伝えるかどうかが大きく変わってきます。
つまり、AIに正しく引用されるAIルートと、社員=ファンが発信して候補者に確信を与えるファンルート、この二軸で設計することが採用広報の新しい標準になっていくと捉えています。
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――大谷:私も企業情報をAIに調べさせる時、noteの記事は本当に過去のものから幅広く紹介してくれます。社員の方の発信や、エンジニアリングの観点の記事を幅広くキャッチできる構造になっていて、発信の積み重ねの意味を改めて実感します。
一次情報の作り方 ── 社員インタビューとA面/B面の発想転換
――大谷:では一次情報を実際に作るには何から始めればよいのか。noteプロの現場から、続いている企業のパターンを教えていただけますか。
徳力様:noteプロは月額8万円の企業向けプランで、利用社数は7000社近くまで増えています。バナー広告を一切表示しないモデルが企業利用と相性が良く、ブランディング・採用広報・サブスクリプションメディアなど多様な使われ方をしていますが、最もうまくいっているのが採用広報です。
「採用広報なんて難しいことやったことない」と思われがちですが、実は「面接で喋っているような内容」を記事にしているケースが多いんです。社員が普段こだわっていることや部署の特徴を社員インタビュー形式で記事化しています。
書くのではなく、まず「話を聞く」
自分の中から言葉を生み出して記事にするのは難しいんですが、メールやLINEは皆さん書けるはずです。今おすすめなのは「もう話を聞く」スタイルです。社員に話を聞いて文字起こすと、意外と読めるものになります。生成AIがあるので、Zoomで話を聞いた音声・動画ファイルをそのままAIに投げると、それっぽいインタビュー記事を作ってくれます。
A面とB面 ── 人事が書きがちな情報と、求職者が読みたい情報
意識していただきたいのが、A面とB面の発想です。会社情報・事業内容・福利厚生のようなA面情報は、人事の方が作りがちで、絶対に必要な情報ではあります。でも、求職者が本当に求めているのは実はB面です。
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会社の雰囲気、社内の意思決定プロセス、先輩と後輩の人間関係、育休が本当に取れるのか・取った後に復帰できるのか。10年前なら面接に来てくれれば教えますよ、で済んだ情報こそが、会社のカルチャーを定義づけていて、エンジニアでも意外にこういうちょっとしたところで「あ、この会社いいじゃん」と思うのです。
これが欠落していると、求職者からするとオンライン上で雰囲気がわからない、怖いから面接にも行かない、という判断になってしまうリスクがあります。
――大谷:本当にB面しか見ていないのかもしれないですね。逆に「俺が入ってこの会社を良くしてやる」というアグレッシブな方だと、一緒にやれるチームメンバーがちゃんといるかどうかが重要だったりします。エンジニアリングの観点で結構はっきり傾向が出るのは、「このツールを採用した理由」よりも「他に比較候補があってなぜそちらを選ばなかったのか」、つまり選ばれなかった方の理由を踏まえた記事の方が、3倍ぐらい読まれる印象があります。
徳力様:採用コンサルの方から面白い話を聞いたことがあって、「社員インタビューをやるなら1人よりも2人の方がいい」とおっしゃっていました。上司と部下、あるいはチームメイトの2人に同時に話を聞いて、人間関係が見えるインタビュー記事の方が採用には数倍効くらしいんです。
従来は採用パンフレットで1人のできる社員をキラキラに見せる構造でしたが、実は社員同士のやり取りや、選ばなかった方の理由に会社の文化が現れる。昭和の時代の採用パンフレットの常識から、ちょっと頭をずらす必要があります。
――大谷:技術選定のプロセスでも、テックリードと現場のメンバーで複数インタビューするのはかなり良いです。「これは却下した」「これはダメだった」「これはなぜ選定したのか」というディスカッションは必ずその会社固有の事実を含みますし、見ている側も楽しい。AIも細かいプロセスを拾いやすくなります。炎上リスクはコントロールできますから、恐れずに踏み込むのがいいと考えています。
続く会社の条件 ── トップが背中を見せ、社内に発信者を増やす
――大谷:一次情報を発信していく上で、継続が一番難しいところです。続かない会社に共通するパターンはあるでしょうか。
徳力様:「1人でやるパターン」が一番大きいですね。日本企業はどうしても経営者が「俺はデジタルようわからんから、若いお前1人でやっといてくれ」となりがちです。これは大きく間違っていると思っていて、今、特にエンジニアや求職者はオンライン上でおしゃべりしている。お客さんはみんなオンラインにいるのに、なぜか大企業は経営者をオンラインに行かせず、若い担当者1人で全員を対応させようとするんです。
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仮にお客さんが100人会社に遊びに来てくれたら社員総出で相手すると思うんですよ。でもオンライン上に100人いても1000人いても、担当者1人にやらせる。全員がオンラインに出ていくことが、本当に重要です。
量で試して、社内のスイートスポットを巻き込む
社員インタビューを増やしていって、社員ができるだけオンライン上にいる状態を作る。顔出しを嫌がる方ならイラストでも構わない。最初は発信を嫌がる人が多いので、発信担当の方がインタビューしてあげる。続けていると「いつうちの部署に来てくれるんですか」「私そろそろインタビューしてほしいんですけど」と言ってくれる人が必ず出てきます。社内公募で発信したい人を集めて、研修した後に自分で発信させる、という形で発信する人数を増やしていく。
苦手な人に無理やりやらせるとこれほど難しいことはないので、CTO・CEOが発信タイプじゃなければ、人事や採用担当がインタビューして記事化する。会社の中に絶対数人はやりたい人がいます。その人を見つけて、その人の発信によってその人に良いことがあるという状態を作れば、周りも「じゃあ俺もやろうかな」と続いていきます。自社のスイートスポットを見つけて突破口に巻き込んでいくのがコツです。
トップの発信は現場の数倍のインパクト
――大谷:社員インタビューも大事ですが、CTOやCEO、私のような立場が自分の言葉で書くことも重要だと考えています。トップが背中を見せる効果は大きく、CTOのブログ1本は現場メンバーの記事数本分のインパクトがあると感じています。最初は社員インタビューで広げつつ、CTOやテックリードの本気で向き合っている姿勢を見せる記事を1本作るのは非常に効きます。
量と質 ── 最初はバットを振る、効果測定は面接で
徳力様:採用広報で気をつけないといけないのは、いわゆるインサイト的なPV数値ばかり追うと採用からどんどん離れていってしまう、という点です。読まれる記事を書こうと思えば、会社の近くの花火スポットやグルメ情報を書いた方がPVは絶対増えます。対象が広いから。
でも採用は本来「このポジションにこういう人が欲しい」が重要なら、その記事は数人にしか刺さらないけれど、その刺さった人1人が入ればOKなんです。インサイト的なPVだけで効果測定すると、絶対に間違える。
効果測定は量より質。面接に来た人に「どの記事が印象に残っていますか」と聞いて、出てくる記事を試行錯誤の材料にする。最初からホームラン狙うと体が固まります。最初は全部、空振りでも全然いい。たくさんバットを振る方がいい。オウンドメディア的なものはストック効果があるので、結構後から効いてきます。
イベントと記事のループ ── 登壇・記事・SNSの三位一体でAI引用を獲得する
――大谷:最後に、AI検索時代に勝つための「設計」の話をさせてください。AIは情報を引用する時に文脈を必要としています。記事単体だとAIは「誰がどの立場で言っているのか」の確信度が低い。でも、同じテーマで登壇録があり、レポート記事でも言及されていて、SNSでも拡散されている状態まで来ると、AIはそれを業界の共通認識として使い始めます。
そうなれば、候補者がAIに「今〜で行けてる会社を教えて」と気軽に聞いた時に、その会社が引用回答に出てくるようになります。「登壇して資料公開して記事化して」というイベントとコンテンツのループを回し始めると、1本の登壇記事がどんどん採用リードを生み続ける記事に育っていきます。
公開事例 ── 数字を動かす型
具体例として、テックブログと採用広報の連動で「魅力付け」と「懸念払拭」を二束で行ったケースでは、中途エンジニアの採用内定承諾率が33%から73%へ40ポイント上がっています。自社の良いところだけでなく、候補者が不安に感じるポイントまで先回りして書いたのがポイントです。
別の事例では、100名前後のスタートアップ規模の組織が、月4本の記事を1年継続して82名採用しています。「うちは規模が小さいから無理」と思われがちですが、規模ではなく型の問題だと示してくれる事例です。
レイヤーXは「Bet AI」という行動指針のもと、55日連続でブログ・カンファレンス登壇・ポッドキャストの3つを同時に回し、SaaS企業という認知をAIカンパニーというイメージに刷新しました。三位一体のモデルがAI引用の獲得に直結することを象徴しています。
勝ち筋を整理すると、一次情報を継続的に候補者の心理に合わせて設計すること。どれか1つだけでは数字は動かないけれど、これを意識すると必ず数字は動くようになります。
おわりに
AI検索時代の採用コンテンツ戦略の本質は、「AIに引用されること」と「ファンに愛されること」の両立にあります。固有の事実・数値・文脈で「その会社にしか書けない話」を出し続け、社員という最強のファンを発信者として巻き込み、登壇・記事・SNSの三位一体でAIに文脈を渡していく。
採用ページを作り込むだけでは届かない時代に、企業がやるべきことは「動く前から観察される側に回る」設計です。明日からの一歩は、社員1人にインタビューを依頼するところから始められます。
なお、Offersでは「AIと採用」をテーマにしたカンファレンスを7月に開催予定です。実装ノウハウや最先端の活用事例に関心のある方は、ぜひご注目ください。






