採用したはずの人材が早期に離職した、思ったようなパフォーマンスが出なかった。そんな「採用の失敗」を経験したことのある採用担当の方は、少なくないのではないでしょうか。

問題は、その失敗の多くが「経歴は良かったんだけど」「嫌な予感はしたんだよね」という感覚的な振り返りで終わってしまうことにあります。失敗を定義し、損失を可視化し、再現性のある対策に落とすこと。ここに経験者採用の勝ち筋があります。

2025年6月23日、合同会社エンジニアリングマネージメント代表の久松剛様をスピーカーに迎え、株式会社overflow Offers事業部 Sales EvangelistのRIKUがモデレーターを務め、本ウェビナーを開催しました。

テーマは「なぜ、あの採用は失敗したのか?しくじり事例から紐解く経験者採用の"勝ちパターン"とは」です。20社以上のIT組織づくりを支援する久松様に、しくじり事例から勝ち筋を伺いました。

本記事では、採用失敗の定義とELTVによる損失の可視化から、早期離職を生む3つのミスマッチ、スキル・カルチャー・ストレス耐性それぞれの対策、リファレンスチェックの落とし穴、そして「違和感」の扱い方までをお届けします。

採用の「失敗」をどう定義するか──ELTVで損失を可視化する

――RIKU:本日は「しくじり事例から紐解く経験者採用の勝ちパターン」がテーマです。まず久松様から、採用の失敗をどう捉えるか、というところからお願いします。

久松様:良くない組織では、短期離職した、思ったようなパフォーマンスが出なかった、というところで愚痴を言い合って終わってしまいます。もっと悪いと、飲んで忘れる。これは論外です。

まず「どういう状況を失敗とするのか」という定義から始めましょう、というのが出発点です。

振り返りでありがちなのが、「パフォーマンスが悪かった」「経歴は良かったんだけど」「2人のうち1人の面接官の評価は高かったんだけど」と、だんだん要因が多になっていくことです。

ここでのポイントは、感覚で振り返っていないか、候補者や面接官のせいにしていないか、です。採用の失敗ではそうなりがちなので、まず振り返りの仕方そのものから見直しましょう。

――RIKU:失敗を測る物差しのようなものはあるのでしょうか。

久松様:1つの考え方がELTV(従業員生涯価値)です。入社時は採用コストがかかり、オンボーディングで周囲の手助けを借りるので、バリューはマイナスからスタートします。

そこから立ち上がってプラスマイナスゼロを過ぎ、オンボーディング完了でタスクを消化できるようになり、やがて成果が最大化します。その後、退職を考え始めるとバリューが落ち、退職する頃にはゼロに戻ります。

構成要素は、横軸の在籍期間と、縦軸の在籍中のバリューです。営業職なら「いくら売り上げたか」が縦軸で分かりやすい。エンジニア職はアウトプットの金額換算が難しいので、マーケティング組織を巻き込んで見積もったり、インパクトの指標で確認したりしてもいい、という話をよくしています。

――RIKU:そのバリューって、なかなか見えづらいですよね。なんとなく長くいてくれたらいいかな、ぐらいが最初は多い気がします。

久松様:そうなんです。特に事業会社の間接部門だと、さらに分からなくなります。そうなると、短期離職するよりは長期離職の方がマシか、という発想にまで落ちていくところは正直あります。だからこそ、まず失敗の定義を持つことが出発点になります。

早期離職を生む3つのミスマッチ──スキル・カルチャー・ストレス耐性

――RIKU:採用失敗の中心にある早期離職は、どう分解できるのでしょうか。

久松様:早期離職の要素は、スキルミスマッチ、カルチャーミスマッチ、ストレス耐性の3つに分類されます。いろんな現場を見てきましたが、だいたいこの3つに収れんします。

――RIKU:そもそも、どれくらいの期間でやめると「早期」と呼ぶのでしょうか。

久松様:採用支援の際に必ず「どれぐらいの期間だと早期離職と呼びますか」と聞くのですが、多くの会社さんが「1年未満が2社以上続くと怪しい」と言います。

私の感覚では、1ヶ月・3ヶ月でやめているのは、絶対に何かわけありなのではないか、と警戒モードに入ります。1年未満が続く場合も要注意で、後でフラグが立つことが多い。こうした状態を、ここでは採用失敗と定義します。

久松様:もう1つ見落とされがちなのが、早期離職そのもの以外のマイナス、つまり既存社員への影響です。採用の失敗は、入った本人だけでなく、周囲の士気や組織にまで及びます。

既存社員を壊す採用失敗──ブリリアントジャークと「ハーメルンの笛吹き男」

――RIKU:既存社員への影響とは、具体的にどんなものでしょうか。

久松様:よく見るのが、ネガティブな言動による士気の低下です。「前職ではこうだったのに、現職ではダメだ」と言う人がいますが、だったら前職に帰れよ、とみんな思うわけです。適応ができないと、そうなってしまいます。

アウトプットは優秀でも組織を壊す「ブリリアントジャーク」

久松様:シニアエンジニアやマネージャー以上でよく見るのが、組織破壊です。エンジニア界隈では「ブリリアントジャーク」と呼ばれます。

私が経験したのは「クイズおじさん」で、若手に「君これ知ってる?」とクイズを出題するんですね。最初は若手も答えるのですが、だんだん「君はそんなことも知らないのかね」とマウントが始まり、メンタルを病んでいきます。

アウトプット自体は、品質のいいソースコードや美しい設計でプラスなのですが、それを理由に若手が離職・休職すると、この人を置いたままでいいのか、という話になりやすい。これがブリリアントジャークです。

――RIKU:学ぶことよりも教えることが増えるタイプの人ですね。一定数いますよね。

久松様:そうです。最近は若い人でもいます。外部から仕入れた知識をもとに組織の否定に入り、みんなが病んでいく。承認欲求と顕示欲の扱いが上手でないと、そうなってしまいます。

チームごと引き抜く「ハーメルンの笛吹き男」

久松様:3つ目が、複数の社員を連れてリファラルでいなくなる、というものです。これを私は「ハーメルンの笛吹き男」と呼んでいます。

実際にあったのが、CTO補で入社した人が、何をすればCTO候補になれるかを合意せずに働いていて、いつまでもCTOにしてくれないと激怒してやめたケースです。その後、懐いていた手練れのエンジニア3人を引き連れて抜けていきました。

後日談として、数年後にビズリーチで調べたら、実績に「前職から3人引っ張ってリファラル成功」と書いてあったんですね。危ない人は前回も同じことを繰り返すんだ、と痛感しました。

久松様:これは大手でもよくあります。ある外国籍を多く採る会社さんから1年半で15人リファラルした人もいて、1人当たりの賞与が60万円なら、リファラルだけで1年半に900万円を持っていった計算になります。

1人だけ早期離職するのは構わないのですが、周囲を巻き込まないでほしい。信用の厚いリーダーがチームごと抜けると、分かりやすく戦力ダウンになります。

スキルミスマッチを防ぐ──スキルアセスメントと生成AIカンニング対策

――RIKU:では3つのミスマッチを順に伺います。まずスキルミスマッチはどう防ぐのでしょうか。

久松様:エンジニアでよくあるのが、スキル不足で戦力化しないというところです。エンジニアのQCD(品質・コスト・納期)でいえば、品質と納期が欠けている状態だったりします。

他の業種でも、財務経理担当なのに簿記が通じない、かつて簿記3級を取ったけれどすっかり忘れて役に立たない、といった話はよく聞きます。

スキルアセスメントの手法とツール

久松様:ITエンジニアだと、スキルアセスメントという形で、面接プロセスの一環でスキルを確認します。今は手法が多様化しています。

1つは、プログラミングの宿題を出して提出してもらい、なぜそう書いたのかをインタビューする方法で、だいたい1時間〜1時間半取ります。今まで書いたソースコードで自信のあるものを出してもらう形や、画面共有でのライブコーディングもあります。

――RIKU:ある程度、定量化しつつ判断できる形でミスマッチを解決していく感じですか。

久松様:今の3つは、どちらかというと定性的に近いところがあります。定量的なところでいくと、スキルアセスメントツールです。

日本だとギブリーが出しているTrackやHireRoo、海外だとインドのiMochaやHackerRankがあり、分かりやすくスコアを出せます。もう少し安価に済ませたいなら、paizaにやらせてスコアを出させる、というあたりが考えられます。

――RIKU:これも、ちゃんとやっている会社さんとそうでない会社さんで差が出ますよね。お金もかかると思うので。

久松様:そうですね。例えばSESの会社さんでいい加減なところだと、入社後の活躍よりも、とりあえず案件に放り込めばいい、という発想になりがちです。

上の方の人たちがスキルのレベル感を分かっていない状況だと、実際のコーディングやインタビューをすっ飛ばして「この技術やってたんですね、ええ」ぐらいで終わる。だいたいそういうところでミスマッチが起きます。

営業職の見極めも同じ構造

――RIKU:営業でも同じことがあるかなと思っていて、個人か法人か、無形商材かどうかで全然変わってきますよね。

――RIKU:私からよく外資系で使う質問の形式で、状況確認・何をどう思った結果どうなったのか、というインタビューを通じて、再現性のある考え方やポータブルスキルを確認しています。ただ1個ずれると、ほぼ初めてという方も多く、すごく難しい職種です。

久松様:本当に難しいですよね。スタートアップで営業組織が伸び悩むところは、だいたいそこで行き詰まっている感じがします。そういうタイプの売り物を売ってこなかった、というケースですね。

――RIKU:ITはソリューション解決型が多いので、要件をヒアリングして自社サービスに紐づけて的確に質問する能力が、人によって全然違うんですよね。

久松様:「この質問を10個しなさい」とお題的にだけ出して売れるならいいのですが、なかなかできない。おそらくシナリオベースで質問したり、仮想のセールスをやらせたり、そんな工夫を含めて必要なのでしょうね。

生成AIによるカンニングにどう向き合うか

久松様:エンジニアという観点で今どうしても無視できないのが、生成AIによるチート・カンニングです。就活生や大学生も普段の課題提出から使いまくっているので、やっている人が多い。

ある程度見慣れると「これはAIを使ったコードだな」と分かりますが、限界がありますし、面接官にそこまでのスキルが求められない会社さんもあるので、結構大変です。

久松様:対策の1つは、スキルアセスメントツールで、カンニングが疑われるものはスコアを下げたり、途中で強制終了したりする機能を使うことです。

例えば、Webブラウザで画面を切り替えたりコピペしたりすると終了する。インドのiMochaは対策がめちゃくちゃ激しくて、視線が怪しくないか、後ろに本人以外が映っていないか、というところまで見るツールもあります。

――RIKU:もう、不正が起こること前提で対策する、という感じですね。

久松様:そうですね。もう1つはインタビューで、なぜこの構成にしたのかを深掘りすれば、答えられるかどうかでジャッジできます。

一方で、どうせ業務で生成AIを使うのだから共存してもらっていい、という考え方もあります。ツールでいえば、ギブリーのTrackはカンニング検知の側、HireRooは「AIを使っていい、業務でも使うのだから」という側に近い。

アウトプットを作ってもらい、なぜそうしたのかをインタビューで担保する使い方も広がっています。

カルチャーミスマッチを防ぐ──言語化と構造化面接

――RIKU:2つ目のカルチャーミスマッチは、いかがでしょうか。

久松様:これも「なんか違う」と感覚的になる会社さんが多いのですが、言語化した方がいいです。まず価値観のフィットで、ミッション・ビジョン・バリューや行動規範からずれていると、ミスマッチだね、となります。

久松様:あとは、入った後に完全に孤立して馴染めないケース。本人のコミュニケーション力の問題なのか、受け入れ側の問題なのか。最近は、ずっとリモートワークで顔を合わせずオンボーディングが始まり、前からの顔見知り以外に馴染めなかった、という話もよくあります。

「踏み台」フリーライドを見抜く

久松様:3点目が、未経験でありがちなのですが、YouTubeや情報商材、転職系のアフィリエイターの「合わなければ1年でやめればいい」という意見を信じて、最初から踏み台で入ってくる方です。

特にひどかった時は、素直そうだったので育ててあげようと採用したものの、4ヶ月でやめて、「俺は4ヶ月でやめて、今フリーランスでこんだけもらってるぜ」というXアカウントが誕生したこともあります。

そこに元々受け入れた社長が「これうちの元社員です」と出てくる、というところまでありました。これはカルチャーミスマッチというより、フリーライドと言われます。

――RIKU:営業職でも、スタートアップと大手を行き来する中でそういう人がいます。結局、何を求めて入るのか、というところがないんでしょうね。

久松様:大手でそれなりの業績を上げた人が、スタートアップに行くと環境の違いでローパフォーマーに分類され、また大きな会社に戻ると生き返る、というパターンもよくあります。自分がどんな状況でパフォーマンスを出せるかの理解が足りていないんですね。

構造化面接で「誰が面接しても一定品質」に

久松様:対応例としては、簡易な構造化面接をお勧めしています。自社の価値観を軸にした面接質問の必須化です。

面接でありがちなのが、面接官になんとなく質問させていること。そこで「必ずこの質問を聞いてください」というものを、例えば3問ほど、ATS(採用管理システム)のテンプレートに入れて抜け漏れないようにします。

久松様:構造化面接は元々アメリカで流行ったものです。日本の面接はファジーで、面接官を増やし複数の目で見ることで質を担保しますが、構造化面接は誰が面接しても一定のクオリティを担保できるよう仕組み化します。

久松様:書籍『ワーク・ルールズ!』で紹介されているPBIという、米国退役軍人省の面接マニュアルがあり、登録するとExcelでダウンロードできて、中途向けに約80問、新卒向けに約50問あります。

元々軍人向けでマッチョなので、私はそれを和らげ、お客さんが大切にしているミッション・ビジョン・バリューをピックアップしてアレンジします。ポイントは、軸に沿った質問内容と、どのレベルなら何点かを明確にすることです。

久松様:例えば対人影響力なら、意見が衝突した時にどう解決したか。ベストは、互いの立場を尊重し、背景を整理しつつ第三者的なデータも用いて、事業として前向きに着地する回答。スコアの低い側に「論破する」がくる、というイメージです。

――RIKU:構造化面接は難しいと思っていて、僕らはChatGPTに「これを大事にしたいので、どんな質問をしたらいいか」と聞くと結構バーっと出てくるので、それをうまく使う手もありますね。

久松様:それも全然いいと思います。適性検査やリファレンスチェックのツールによっては「次はこう質問してください」と出るものもあるので、必須にすると保険的にいい方に働きます。

ストレス耐性とリファレンスチェックの落とし穴

――RIKU:3つ目のストレス耐性のミスマッチは、どう見極めればいいでしょうか。

久松様:入社前からストレス耐性が低かった、今の現場が辛すぎて、休みもせずに入ってきて最初のオンボーディングで潰れてしまう、というケースがあります。

久松様:もう1つが、年収を伸ばすために背伸びして、上位の会社や慣れない仕事に行くパターン。プロジェクトマネージャーがコンサルティングファームに入って「君はこれからコンサルだ」と言われると全然違う仕事になり、ケーパビリティを超えてやめになります。

――RIKU:物理的なストレスだけでなく、期待値から来るストレスですね。

久松様:そうですね。ある外資系コンサルの方に、SIerからコンサルに入る人は大丈夫ですかと聞いたら「ダメです」と。年収をジャンプアップするものの、それに見合うバリューを出せず、申し訳なくなってやめるらしいんです。

適性検査は3つ試して選ぶ

久松様:これに対しては適性検査です。星の数ほどあるので、良さそうなものを3つほど、正式導入前に試用できることが多いので、社員で試すことをお勧めしています。

それを部長以上のレイヤーで確認し、一番しっくりくるものを導入する。言葉としてはよく聞きますが、対策をやっている会社は意外と多くありません。

――RIKU:言葉としてはよく聞くのに、対策をやっている会社をあまり知らないんですよ、正直。

久松様:「自分たちと同じような人なら大丈夫」と別の評価基準で決めていることもあります。ただ感覚的なので、再現性という点では、門番のような人がたまたま選考から外れた時に、外れが入りやすいですね。

リファレンスチェックの落とし穴

久松様:リファレンスチェックも流行っていますが、結果を信じすぎるのは危険です。以前、100点満点中95点の方が来て、執行役員も現場も人事も諸手を挙げて合格にしたのですが、パフォーマンスが出ず3ヶ月と1日でやめました。

大反省会で見ると、その方は回答者に上司が入っておらず、みんな部下だったんです。どうやら買収したらしい。これは金銭だけでなく、いい食事を奢るようなものも含まれます。

久松様:誰が回答しているのか、内容が無難すぎるものばかりでないか、は判断基準になります。候補者が「リファレンスチェックはいらない」と渋る場合も、上司と同僚で2人ほしいと頼んで、あだこうだと拒むなら、ちょっと怪しいと見ていい。

久松様:すごく昔の特定の会社のメンバーしか依頼しない方も怪しいです。買収しているか、パフォーマンスの出ない数社が続いた可能性があります。職歴詐称が紛れることもあるので、過信は禁物です。

「違和感」をどう扱うか──言語化と組織合意

――RIKU:見極めの最後に、面接官が抱く「違和感」の扱い方を伺います。

久松様:面接官の誰か1人でも言い知れない違和感を感じたら、それを強い気持ちで尊重してお見送りする。これは鉄則にした方がいいです。複数の目でフィルタリングする、実に日本的な面接のいいところです。

久松様:オフラインの会食を踏まえた人物面のすり合わせも、特にVPクラス・マネージャー以上では必ずやった方がいい。私の友人は、会食の結果として内定がなくなった方もいます。

――RIKU:僕も会食で落ちたことがありますよ。「なぜか違和感を感じた」と。僕も「違和感を感じた」と返しましたけど。

違和感を言語化し、組織で合意する

――RIKU:視聴者からも質問が来ています。1人でも違和感を感じたら不合格にすべきという考えだが、その違和感をどう言語化して社内を説得するかが難しい、と。

久松様:最初に「誰かが違和感を感じたら、その瞬間にお見送り」と強い心で合意しておくと、問題になりにくい。一方で「なぜこんないい人がダメなのか」を言語化しないとダメな組織もあります。

久松様:多くの場合、違和感を感じた瞬間から言語化は始められます。この質問にこう返ってきて点がずれた、会ったら目が泳いでいた、など。最近は「品質向上のため録画していいですか」という会社も増えています。

久松様:それをみんなで振り返り、「確かに変だよね」あるいは「これはこういう意味だからいい」と。その場は1回通しつつ、もう1回面談を挟んで確認する。これはよろしいかなと思います。

――RIKU:誰かの違和感は、逆に言うと自分にないものだったりするので、個人の違和感が組織の違和感になるかは別問題かなと。現場では違和感でも、会社にとっては良いインサイトで、あなたが反応しているだけ、とも見れる。一旦、次の選考で上の役者に確認してもらうのもありかなと。

会食で深掘りし、記録して評価する

久松様:どうしても聞きにくいガードの硬い人には会食です。終わった後、帰り道が長いと、積極的にご一緒しながら聞きたいことを聞きます。

久松様:最近ご入社された方も、希望給与が相場より低く、なんとなく元気がない違和感があったので聞いたら、「実家を相続したので衣食住に困っていない」と。お子さんもおられず、確かに、と違和感が収束し、今ご活躍いただいています。

――RIKU:違和感を感じたら記録しておき、それが個人1人へのペインなのか、組織へのペインなのかを後で評価して決めるのがいい、ということですね。

久松様:そうです。一番良くないのが「あの時、違和感を感じていたんですけど、やっぱりダメでしたね」という失敗後の振り返り。文句があるなら先に言え、という話です。「俺は違うと思ってた」は一番かっこ悪く、利益にもならないので、違和感があれば言う。

久松様:採用の失敗は、みんなが不幸になります。人材紹介は45%が相場になり、会社によっては50〜60%払うので、その分が削られます。候補者も、短期離職でキャリアを無駄に重ねることになります。だからこそ、厳選に再現性を求めましょう、というのがまとめです。

視聴者Q&A──面接1回での人物トラブルと「踏み台採用」の見抜き方

面接1回での人物トラブルを減らすには

――RIKU:面接は1回しか行えず、違和感の判断が個人的になり、入社後に人物面のトラブルが起きる。人数を増やせない事情がある中で、どうアプローチすればミスマッチを減らせるか、という質問です。

久松様:まず、面接が1回しかないのがまずいのですが、原因が大手人材紹介会社の「ワンデーで内定を」という交渉なのか、自社のリソースなのか。対策として、複数の面接官に同時に出てもらうのが1つです。

久松様:そこで違和感があれば記録し、すぐ内定ではなく「もう1回プロセスを設けていいですか」と後出しで面談を追加し、払拭できたら次に進む。人材紹介会社にも「面接が1回増えるかも」と言っておくと、うまく候補者に伝えてくれます。

――RIKU:組織である以上、現場の一緒に働く人と、経営者クラスとで2回やるとか、会食を1回挟むのもいいかもしれません。今気づいているトラブルの要因が見えてくるかもしれない。

久松様:いいですね。トラブルは掘っていくといい。リファレンスチェックで担保できるものもありますし、フリーランスで犯罪歴が後から出ることもあります。

久松様:人材エージェントもそこまで掘らないので、自社で日経テレコンを契約して名前を検索してみる。CFOなど金絡みだと、ヘッドハンターが裏メニュー的に興信所で身辺調査する、というところもあります。

「踏み台採用」をどう炙り出すか

――RIKU:もう1問。ミスマッチとして、最初から自社を踏み台にするつもりの方を、どう炙り出すか、という質問です。

久松様:いくつかあります。2019年・2020年はプログラミングスクールが盛んで、「エンジニアは楽でいいかも」と転身した人がいます。その時期にエンジニアになった経歴があると、ちょっと警戒します。

久松様:「何を見てエンジニアになろうと思いましたか」ときっかけのメディア名を、「どこで勉強しましたか」とスクール名を聞き出す。悪評の高いスクールは「名前を言うと落ちる」と回っているので、言わないと逆に怪しい、というのもあります。

――RIKU:営業職では、踏み台という野心はあってもいいのですが、「働く理由」「何を持って働くか」をダイレクトに聞きます。お金か、事業か、プロダクトか、人か。踏み台でもいいけれど、長く踏んでほしいので。

久松様:もう1つが「3年後どうしたいですか」という質問です。むちゃくちゃ素直な人だと「次の会社に転職したいです」と言います。せめて「うちの会社で何をやりたい」と言ってほしい。今回入る会社が将来の延長線上にあるかを確認すると、期待値調整込みで見極められます。

おわりに

採用の失敗は、感覚や愚痴で終わらせた瞬間に再発します。まず失敗を定義し、ELTVで損失を可視化し、早期離職を生むスキル・カルチャー・ストレス耐性のミスマッチを、それぞれの仕組みで防ぐ。これが経験者採用の勝ちパターンでした。

スキルアセスメント、構造化面接、適性検査、リファレンスチェック、そして「違和感」を言語化して組織で合意すること。いずれも狙いは同じで、属人的な勘を、再現性のある見極めに変えることにあります。

採用の失敗は、企業も候補者もみんなが不幸になります。まずは自社の選考のどの工程に「定義」と「記録」を持ち込むか。その一歩を持ち帰っていただければ幸いです。