採用代行(RPO)とは、採用業務の一部または全体を外部の専門パートナーに委託するサービスです。グローバルのRPO市場は2030年に229億ドル規模に達する見通しです(Research and Markets『RPO Strategic Business Report 2025』・2026年1月)。
本記事は、掲載する10サービス(9社)の目的別比較、選び方の評価軸、料金相場、導入事例、そしてAI活用で広がる「AI RPO」という新しい選択肢までを整理した内容です。
採用代行(RPO)比較の前に押さえる基礎知識
採用代行は Recruitment Process Outsourcing の頭文字からRPOとも、「採用アウトソーシング」とも呼ばれる委託の形です。企業の採用プロセスの一部または全体を外部の専門パートナーへ預けるもので、求人媒体の運用からスカウト送信、面接日程の調整、内定者フォローまで、幅広い業務を委託できます。
採用代行が注目される背景には、慢性的な人材不足があります。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」(出生中位・死亡中位推計)では、生産年齢人口(15〜64歳)は2021年の7,451万人から2050年に5,540万人へ、約26%減る見通しです。限られた候補者を複数の企業が取り合う状況では、採用の専門家の手を借りるほうが合理的だという判断が広がりました。
採用代行で委託できる業務範囲
採用代行で委託できる業務は、大きく6つのフェーズに分けられます。
- 採用戦略・計画策定。求人要件の定義、採用計画の立案、ペルソナ設計、採用チャネルの選定
- 母集団形成。求人媒体の運用、スカウトメールの配信、ダイレクトリクルーティング、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)運用
- 応募者管理。応募受付、書類選考、ATS(採用管理システム)の運用
- 面接調整・実施。面接日程の調整、面接代行、オンライン面接の運営
- 内定・入社フォロー。内定通知の代行、条件交渉サポート、入社手続き支援
- 採用ブランディング。採用サイトの制作、採用広報、SNSマーケティング
すべてを委託する「フルプロセス型」と、特定フェーズだけを切り出す「部分委託型」があり、自社の課題に応じて使い分けることが一般的です。
採用代行と人材紹介の違い
「採用代行」と「人材紹介」は混同されがちですが、サービスの構造がまったく異なります。
比較軸 | 採用代行(RPO) | 人材紹介 |
|---|
サービス内容 | 採用プロセスの代行・運用 | 候補者の紹介・推薦 |
料金体系 | 月額固定型と従量課金型が主流(BOXIL 342人調査・複数回答)。実支払額は最多層が月額10万円〜20万円未満、中央値は40万円〜60万円未満 | 成果報酬型。常用就職1件あたりの手数料は実測で約103万円(厚生労働省・令和6年度) |
コスト特性 | 採用人数が増えるほど単価が下がる | 1名ごとに費用が発生 |
向いている場面 | 複数名を継続的に採用したい | ハイクラス・専門職を少数採用したい |
人材紹介は1名ごとに手数料が立つのに対し、採用代行の月額は採用人数によらず一定です。したがって同じ期間に複数名決まるほど1名あたりのコストが下がります。実額での比べ方は「採用代行と人材紹介の費用を1人あたり単価で比べる」で扱います。
採用代行と人材紹介は排他的な関係ではなく、併用するケースも少なくありません。採用代行でオペレーションを回しつつ、特定のハイクラスポジションだけ人材紹介を使う、という組み合わせが実務では有効です。
採用代行市場はグローバルで2030年に229億ドル規模へ
採用代行市場は拡大を続けています。
Research and MarketsのRPO Strategic Business Report(2026年1月)がRPO市場を2024年の97億ドルから2030年に229億ドル(CAGR 15.4%)と予測。成長の牽引役はAIとデータ分析の導入で、RPOプロバイダーがAIプラットフォームへの投資を拡大していると報告しています。
採用代行比較で失敗しない7つの評価軸
採用代行の比較で最も重要なのは、サービスの「社数」ではなく、自社の課題に合った「評価軸」を持つことです。以下の7つの軸で各社を評価すれば、候補を3〜5社に絞り込めます。
採用代行比較軸1. 対応可能な業務範囲(フルプロセス型 vs 部分委託型)
採用プロセス全体を任せたいのか、スカウト送信や日程調整など特定業務だけを委託したいのか。フルプロセス型のサービスに部分委託を依頼するとオーバースペックになりますし、逆に部分委託型のサービスに戦略策定を求めても期待通りの支援は受けられません。
まず「何を委託したいか」を明確にしてから比較を始めることが、ミスマッチを防ぐ第一歩です。
採用代行比較軸2. 得意な職種・業界
採用代行サービスには、それぞれ得意な領域があります。エンジニアやデザイナーなどのデジタル人材を採用したい場合、技術スタックを理解したコンサルタントがいるかどうかで成果が大きく変わります。
営業職や事務職の大量採用と、エンジニアのスカウト採用では、必要なノウハウがまったく異なるという点は見落とされがちです。
採用代行比較軸3. 料金体系の透明性
月額固定型なのか、従量課金型なのか、成果報酬型なのか。見積もり段階で「何にいくらかかるか」が不明瞭なサービスは、運用開始後に想定外のコストが発生するリスクがあります。
月額の基本料金に加えて、スカウト送信やATS利用にオプション料金がかかるケースもあるため、契約前に総額のシミュレーションを依頼しましょう。
料金をどれだけ公開しているかにも実測があります。法人向けサービス比較メディアのボクシル(BOXIL)を運営するスマートキャンプ株式会社が主要26サービスの公式サイトを調べた集計では、公式サイトに料金の記載がないサービスを除いた最低表示金額の中央値は月額180,000円(価格帯29,800円〜600,000円)で、料金を公開している14社のうち11社が月額10万〜30万円に収まっていました(同社「採用代行サービス(RPO)の費用調査」)。
これは各社が公開している最低金額を集めた中央値であり、実際に払う額そのものの中央値ではありません。公開料金が無い事業者を候補に残すなら、見積もりの段階で総額のシミュレーションを必ず依頼してください。
採用代行比較軸4. 実績・導入社数
導入社数が多いサービスはそれだけ多くの企業課題に対応してきた経験を持ちます。ただし「1万社導入」のうち自社と同じ規模・業界の実績がどれだけあるかも確認が必要です。
レジェンダは創業30年で889社の支援実績とリピート率90%(同社サイト・2026年9月10日確認)、ネオキャリアは累計10,000社以上の採用支援実績(同社サイト・2026年9月9日確認)を公開しています。Offersの導入企業数は累計1,000社以上です(株式会社overflow・AI RPO サービスサイト・2026年1月時点)。
採用代行比較軸5. コミュニケーション体制(専任担当の有無)
専任のカスタマーサクセスやコンサルタントがつくかどうかは、運用品質に直結します。特定領域の要件定義からスカウト運用までを一貫で伴走できるかは、ハイクラス・専門職の採用成否を分けるポイントです(具体例は後述の導入事例を参照)。
担当者が複数社を兼務しているのか、何名体制でサポートするのかも確認すべきポイントです。
採用代行比較軸6. テクノロジー活用度(AI・自動化の有無)
人的オペレーション中心の従来型RPOと、AIを組み込んだRPOでは、書類選考の処理速度とスクリーニング基準の一貫性に差が出るのが実情です。比較の際は「テクノロジー活用度」を評価軸に入れてください。
採用代行比較軸7. セキュリティ・法令遵守体制
採用業務では個人情報を大量に扱います。プライバシーマークや国際標準化機構(ISO)の27001認証の取得状況、データの保管・廃棄ポリシーを確認してください。
もう一つ、比較の段階で必ず確認したいのが委託募集の扱いです。自社の被用者以外の第三者に報酬を与えて労働者の募集に従事させると職業安定法第36条第1項の「委託募集」に当たり、許可が要ります(募集人員の規模により厚生労働大臣または都道府県労働局長。詳細は後掲の章)。
許可を受けずに行った場合は同法第64条第7号により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科され得ます(職業安定法・昭和二十二年法律第百四十一号・2026年9月9日にe-Gov法令検索で条文を確認)。どの業務までを頼むと許可が要るのかは「採用代行の法的注意点と委託募集の許可」で扱います。
目的別に見る採用代行10サービス(9社)
採用代行サービスは「大手総合型」「スタートアップ・ベンチャー向け」「エンジニア・IT人材特化型」「AI活用型」の4カテゴリに分けて比較すると、自社に合ったサービスが見つかりやすくなります。
以下、各カテゴリの代表的なサービスです。
採用代行の大手総合型(実績・規模重視)
大量採用や複数職種の一括対応が必要な企業に向いています。
ネオキャリア採用代行 累計10,000社以上の導入実績を持ち、大規模コールセンターを保有しているため土日祝・夜間の対応も可能です。中途採用の幅広い職種に対応しています。
マンパワーグループRPO 世界規模で展開する総合人材サービス会社が提供するRPOサービスです。採用プロセス全体を任せる「フルパッケージ型」と、特定業務を選んで委託する「選択型」の2プランから選べます。
レジェンダRPO 創業30年で889社の支援実績、リピート率90%を公開しています(同社サイト・2026年9月10日確認)。採用プロセス設計とブランディングに強みがあります。
doda RPO(パーソルキャリア) doda求人データベースとの連携が最大の特徴です。求人媒体運営の知見を活かした母集団形成に強みを持っています。
スタートアップ・ベンチャー向けの採用代行
少人数のチームで採用活動を回す企業に適しています。月額固定型で、必要な業務だけを柔軟に委託できるサービスが中心です。
まるごと人事(マルゴト株式会社) ベンチャー・成長企業向けに特化した採用代行サービスです。同社が公開している料金は初期費用10万円・月額25万円〜(いずれも税抜)、契約期間は1ヶ月から(同社サイト・2026年9月9日確認)。最短1ヶ月から契約できるため、採用状況に応じたボリューム調整がしやすいのが特徴です。
ポテンシャライト スタートアップの採用支援に特化し、採用戦略の立案から求人票作成、スカウト配信まで幅広くカバーします。エンジニア採用にも対応しています。
HeaR(HeaR株式会社) 採用マーケティングに強みを持つスタートアップ特化のRPOです。採用ブランディングとオペレーション代行を組み合わせたサービスを提供しています。
即戦力RPO(株式会社ミギナナメウエ) ベンチャー・スタートアップ向けに、採用の「即戦力」となる代行サービスを提供。現場目線の実務支援に特徴があります。
エンジニア・IT人材特化型の採用代行
向くのは、エンジニアやデザイナーなどデジタル人材の採用に課題を抱える企業です。
Offers RPO(株式会社overflow) 多数のプロダクト開発人材が登録するデータベースを基盤に、AIを活用したスカウト・マッチングと採用戦略設計を一連の流れで提供します。1,000社以上の導入実績があり、スカウトから面談設定までの運用を採用戦略と一体で設計できる点が特徴です。具体的な導入事例は後述の「導入事例(課題別マトリクス)」にまとめています。
採用代行のAI活用型(次世代RPO)
AIによるスクリーニングやマッチングを組み込んだ、次世代型の採用代行サービスです。
Offers AI RPO(株式会社overflow) 従来のRPOにAIを組み合わせた「AI RPO」を提供。AIスキル登録・可視化機能(株式会社overflow プレスリリース・2024年12月23日)により、AI人材のスキルとポジション要件のマッチング精度を高めています。
採用代行10サービスの比較一覧表
サービス名 | タイプ | 得意領域 | 料金目安 | 導入実績 |
|---|
ネオキャリア | 大手総合型 | 全職種・全雇用形態 | 要問合せ | 10,000社以上 |
マンパワーグループ | 大手総合型 | グローバル対応 | 要問合せ | グローバル展開 |
レジェンダ | 大手総合型 | プロセス設計 | 要問合せ | 889社 |
doda RPO | 大手総合型 | 母集団形成 | 要問合せ | doda連携 |
まるごと人事 | ベンチャー向け | 成長企業全般 | 月額25万円〜 | 多数 |
ポテンシャライト | ベンチャー向け | スタートアップ | 要問合せ | 多数 |
HeaR | ベンチャー向け | 採用マーケティング | 要問合せ | 多数 |
即戦力RPO | ベンチャー向け | ベンチャー実務 | 要問合せ | 多数 |
Offers RPO | エンジニア特化 | デジタル人材・AI活用 | 要問合せ | 1,000社以上 |
Offers AI RPO | AI活用型 | AI×エンジニア採用 | 要問合せ | 1,000社以上 |
出所:各社の公式サイト掲載値(2026年9月9日〜10日確認・Offers は株式会社overflow の自社掲載値)。
「要問合せ」が並ぶのは、公開料金を持つ事業者がそもそも少ないためです。自社の職種と採用予定人数を決めたうえで、同じ条件で複数社から見積もりを取ってください。エンジニア・デザイナーの採用で条件を当てて話したい場合は、OffersのAI RPOプランから相談できます。
エンジニア採用に強い採用代行の選び方
エンジニア採用の代行では、「技術スタックへの理解」「候補者データベースの専門性」「技術選考の工程をどこまで担えるか」の3つが、一般的な採用代行にはない固有の評価軸になります。
エンジニア採用の採用代行で重視すべき3つのポイント
- 技術理解の深さ 「フロントエンドエンジニア」と「バックエンドエンジニア」の違いを説明できない担当者に、エンジニアのスカウト文面は書けません。採用戦略の設計段階でチーム構成を適切に言語化できるかが、RPOパートナーの技術理解度を測る指標になります(具体例は後述の導入事例を参照)。
- 候補者データベースの質 エンジニアは転職サイトよりもダイレクトリクルーティングでの採用が主流です。RPOパートナーがアクセスできるデータベースに、ターゲット層の候補者がどれだけ含まれているかを確認してください。Offersには多数のプロダクト開発人材が登録しており、エンジニア・デザイナーに特化した母集団を持っています。
- スカウト文面の質 テンプレートの一斉送信と、候補者の技術経験に合わせたパーソナライズされたスカウトでは、返信率に大きな差が出ます。スカウトの送信と初期対応を代行に預けられるかどうかで、母集団形成にかけられる工数が変わります(後述の導入事例参照)。
採用代行が担う技術選考の運用範囲を確かめる
エンジニア採用では、カジュアル面談・コーディング課題・技術面談と選考の工程が多く、日程調整と候補者連絡の量がそのまま現場の負荷になります。どこまでを代行が引き受け、どこから自社のエンジニアが出るのかを、契約前に工程ごとに割り付けてください。
代行できる範囲は事業者ごとに違うところです。技術面談の同席可否と、候補者への技術的な質問に一次回答できるかどうかは、エンジニア採用の採用代行を選ぶ際の判断基準になります。
採用代行の料金相場と費用対効果
採用代行の料金体系は「月額固定型」「従量課金型」「成果報酬型」の3つに大別されます。相場は1つの数字に収束しません。導入企業が実際に払っている額の分布で帯を押さえたうえで、人材紹介と同じ土俵に並べる手順を示すのがこの章の狙いです。
採用代行の料金体系3分類と相場感
導入企業の実支払額は、法人向けサービス比較メディアのボクシル(BOXIL)を運営するスマートキャンプ株式会社が、採用代行の導入に携わった342人へ行った「採用代行サービス(RPO)の費用調査」(インターネット調査・2025年11月25日〜12月2日実施)で公開されています。
月額費用の有効回答325件のうち最多は「10万円〜20万円未満」の18.8%で、次いで「40万円〜60万円未満」が14.2%、「5万円〜10万円未満」が13.8%、「20万円〜40万円未満」が10.5%と続き、この4区分で全体の約57%を占めました。一方で月額100万円以上の企業も2割あります。同調査は月額費用の中央値を「40万円〜60万円未満」としており、最多層と中央値は別の帯にあります。
相場を1点で言えない領域だと読むほうが実態に近いでしょう。初期費用も同じで、最多層は「5万円〜10万円未満」、中央値は「20万円〜40万円未満」でした(有効回答328件)。
なおBOXIL「採用代行サービス(RPO)の費用調査」のページは、調査対象を「採用代行サービス(RPO)の導入に携わった342人」と記す箇所と「人事評価システムの導入に携わった342人」と記す箇所があり、対象の記述が一致していません。分布を読むときはこの点を踏まえてください。
料金体系 | 目安として示されている水準 | 費用が動く要因 | 向いているケース |
|---|
月額固定型 | 月10万〜40万円前後(BOXIL「採用代行サービス(RPO)の費用調査」のQ&A) | 委託する業務範囲 | 継続的な採用活動がある企業 |
従量課金型 | 公的統計に相当する一次データは無く、単価は見積もりごとに決まる | スカウト送信数・面接設定数などの実施量 | 採用ボリュームに波がある企業 |
成果報酬型 | 採用者の年収の15〜30%程度(同調査のQ&A) | 採用の成否 | 採用人数が少なく、確実性を重視する企業 |
この実支払額の分布(最多層10万円〜20万円未満・中央値40万円〜60万円未満)は、料金体系別に切った内訳ではありません。BOXIL「採用代行サービス(RPO)の費用調査」は料金形態を別の設問(複数回答可・n=336)で聞いており、月額固定217人・従量課金216人・成果報酬104人、1人あたり平均1.57件を選んでいます。つまり月額固定と従量課金を組み合わせたプランが前提になっており、体系ごとの実支払額を分けて読むことはできません。
同じ「月額固定型」でも、含まれる業務範囲は事業者ごとに違います。見積もりを取る段階で「何が含まれて何が含まれないか」を書面で確認してください。
採用代行と人材紹介の費用を1人あたり単価で比べる
料金体系の違うサービスを並べるには、単位を揃える必要があります。人材紹介側の単価は年収に対する料率から見積もるのが一般的ですが、ここではもう一つの物差しとして、実際に支払われた手数料の全国平均を置きます。
厚生労働省の「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」(令和8年3月31日公表)によると、民営職業紹介事業所(有料・無料)の手数料収入は約9,835億円(対前年度比17.6%増)、うち常用就職に係る手数料が約9,136億円(同16.8%増)で、常用就職1件あたりの手数料は約103万円(同10.9%増)でした。これは事業者が実際に受け取った手数料を常用就職の件数で割った値です。
厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」の「常用」は4か月以上の期間を定めて雇用されるものと期間の定めなく雇用されるものを指し、正社員に限りません。企業側が回答した採用コストとは測り方が違う点にも注意してください。
月額20万円の採用代行を6か月使う場合と並べると、次のようになります。
比べるもの | 1人あたり単価 | 計算根拠 |
|---|
人材紹介(実測) | 約103万円 | 厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」の常用就職1件あたり手数料 |
採用代行(月額20万円×6か月で3名採用) | 40万円 | 20万円 × 6か月 ÷ 3名 |
採用代行(月額20万円×6か月で1名採用) | 120万円 | 20万円 × 6か月 ÷ 1名 |
同じ条件なら、採用が2名決まった時点で1人あたり60万円となり人材紹介の実測単価を下回ります。1名にとどまれば120万円で、逆に上回る計算です。採用代行の月額は採用人数に関わらず発生するため、有利になるかどうかは委託期間中に何名決まるかで反転します。
この約103万円は常用就職すべての全国平均で、正社員に限らない値です。年収の高いポジションや専門職では、年収連動の成功報酬がこれを上回ることが多くなります。自社で比べるときは、この全国平均を下限の目安として置いたうえで、各社が提示する料率を自社の想定年収に当てた上振れ側も並べてください。
この試算には初期費用・求人媒体費・スカウト送信費を含めていません。初期費用の最多層は「5万円〜10万円未満」・中央値は「20万円〜40万円未満」です(BOXIL「採用代行サービス(RPO)の費用調査」・有効回答328件)。実務ではこれらが別途かかります。自社で見積もりを比べるときは、月額だけでなく初期費用と媒体費まで足したうえで採用予定人数で割ってください。
採用予定人数と委託したい業務範囲が決まっているなら、OffersのAI RPOプランで、その条件での進め方と体制を相談できます。
採用単価40-50%削減という目安の出どころ
採用代行の導入効果としてよく引かれるのが、Everest Group が海外のRPO導入企業について示したとされる採用単価40-50%削減・充足期間30-40%短縮という数字です。ただし出所とされるRPO State of the Market 2025(2025年12月公開)は会員限定の有料レポートで、公開されている要旨にこの2つの数値は載っていません。海外集計であることと併せて、裏が取れていない目安として扱ってください。
この数字は海外のRPO導入企業を対象とした集計であり、国内でそのまま当てはまるわけではありません。ただし、採用プロセスの標準化とテクノロジー活用が進むほど効率改善の幅が大きくなるという傾向は共通しています。
採用代行のメリット・デメリット
採用代行の最大のメリットは「採用のプロのノウハウを自社のリソースに変換できること」であり、最大のデメリットは「自社にノウハウが蓄積されにくいこと」です。メリットとデメリットは表裏一体の関係にあります。
採用代行の工数削減・専門知識活用・採用スピード向上のメリット
採用担当者の工数を大幅に削減できる スカウト送信、日程調整、応募者対応といった定型業務をRPOに委託すれば、採用担当者は最終面接や入社後のオンボーディングといったコア業務に集中できます。採用専任者がいない企業や、人事が採用以外の業務を兼任している場合に特に効果が大きいサービスです。
採用市場のプロの知見を活用できる 求人媒体の使い分け、スカウト文面の最適化、面接設計のノウハウ。採用代行のパートナーは複数の企業の採用を支援してきた経験を持ち、自社だけでは蓄積しにくい知見の持ち主です。
採用スピードが向上する 海外では充足期間30-40%短縮という目安が語られますが、出所とされるEverest Group『RPO State of the Market 2025』は会員限定の有料レポートで、公開要旨にこの数値は載っていません(2026年9月9日確認)。専門チームが並行して動くことで、候補者への初回コンタクトから内定までのリードタイムが縮まります。
採用代行のノウハウ蓄積・ミスマッチリスク・セキュリティのデメリット
社内にノウハウが蓄積されにくい 採用オペレーションの大部分をRPOに依存すると、「RPOがいなくなったら採用が止まる」状態になりかねません。定期的なナレッジ共有ミーティングや、採用プロセスのドキュメント化を契約に含めることが対策になります。
人材のミスマッチリスク RPOパートナーが自社のカルチャーや求める人物像を十分に理解していないと、書類選考の精度が下がりミスマッチが発生します。導入初期に、自社の採用基準を言語化して共有する工数は惜しまないことが重要です。
情報セキュリティリスク 候補者の個人情報を外部パートナーと共有するため、情報漏洩のリスクは無視できません。プライバシーマークやISO27001の取得状況を確認し、データの取り扱い規程を書面で合意しておきましょう。
採用代行のデメリットへの対処法
上記のデメリットは、導入前の設計で軽減できます。
- ノウハウ蓄積。月次レポートの共有、採用プロセスの標準化ドキュメントの作成を依頼する
- ミスマッチ防止。導入初期に採用担当者とRPO担当者が合同でペルソナを設計し、定例ミーティングですり合わせる
- セキュリティ。秘密保持契約(NDA)締結、データアクセス権限の限定、個人情報の保管期間と廃棄ルールを契約書に明記する
採用代行の導入事例を課題別に見る
採用代行で成果を出した企業に共通するのは、「自社の採用課題を言語化し、RPOパートナーと密に連携した」点です。課題別に事例をマッピングして紹介します。
ビットキーがIoT/組込の母集団限定領域でSWエンジニアを採用
暮らしや働く場における「体験の分断」を解消する事業を展開するビットキーは、約90名の開発組織のうち、IoT・クラウド・ネットワークを横断するSoftware Edge Deviceチームのソフトウェア(SW)エンジニア採用に苦戦していました。転職市場の母集団が限定的なニッチ領域で、事前のブラインドレジュメを用いたディスカッションと事例共有を重ねてスカウト運用を進め、Software Edge Deviceチーム向けのSWエンジニア採用に至っています。採用保証のついた年間確約プランが、成果を読みにくいハイレイヤー採用に踏み出す後押しになったと同社は述べています。
スタンバイがリテーナープランで2ヶ月、ML+BE/FS人材の確保に成功
求人検索エンジン「スタンバイ」を運営するスタンバイは、機械学習とバックエンド・フルスタックの専門人材確保に苦戦していました。Offersのリテーナープランを活用し、検索技術の要件定義からターゲットリスト作成、スカウト運用までを一体で推進。2ヶ月で機械学習エンジニアとバックエンド・フルスタックエンジニアの正社員採用に成功しています。
ナイルのAIスカウト伴走、リードエンジニア1名を正社員採用
デジタルマーケティング事業などを手がけるナイルは、主要媒体・エージェントでは採用に至らない状況で、Offersの運用代行プランを活用。スカウトの送信と初期対応を委託し、リードエンジニア1名の正社員採用につなげました。
Gaji-LaboのPdM採用、伴走型支援でハイクラス人材を確保
プロダクト開発支援の株式会社Gaji-Laboは、社内でこれから確立していく段階にあったプロダクトマネージャーの採用に取り組みました。Offersの伴走型支援を通じて候補者とのコミュニケーションを設計し、PdMのハイクラス採用に至っています。エンジニアに偏らないプロダクト側の職種でも、要件言語化とスカウト運用の伴走があれば採用できることを示す事例です。
採用代行で成果を出した企業に共通する3つのポイント
- 採用課題と目標の言語化: 「何名を、いつまでに、どの職種で採用したいか」を具体的に定義してからRPOを導入している
- 密なコミュニケーション体制: 週次の定例ミーティングやSlackでのリアルタイム共有で、RPOパートナーとの認識ズレを最小化している
- 選考工程の割り付け: どの工程を代行が担い、どこから自社のエンジニアが出るかを事前に決めている
AI RPOで変わる採用代行
AI RPOとは、従来のRPO(採用代行)にAIを組み込み、候補者のスクリーニング・マッチング・スカウト最適化を自動化した採用代行のモデルです。
従来型の採用代行(RPO)とAI RPOの違い
比較軸 | 従来型RPO | AI RPO |
|---|
スクリーニング | 人手による書類確認 | AIが経歴・スキルを自動分析 |
マッチング | コンサルタントの経験に依存 | AIがデータベースから最適候補を抽出 |
スカウト文面 | テンプレートベース | 候補者ごとにパーソナライズ |
対応スピード | 営業時間内 | 24時間自動処理 |
データ活用 | 過去実績の参照 | リアルタイム分析と予測 |
人的オペレーションに依存する従来型RPOでは、担当者のスキルや稼働時間がボトルネックになります。AI RPOは、AIがルーティン業務を処理し、人はコミュニケーションや意思決定といった高度な判断に集中する設計です。
AI型採用代行が解決する3つの課題
- スクリーニングの精度と速度 大量の応募書類を人手で確認する作業は、見落としや判断のばらつきが避けられません。AIによるスクリーニングは一貫した基準で処理を行い、見落としリスクを軽減します。
- マッチング精度の向上 Offersは2024年12月23日にAIスキル登録・可視化機能をリリースし、候補者のスキルとポジション要件のマッチング精度を高めました(株式会社overflow プレスリリース)。母集団の質を分けるのは、「経験年数」ではなく「実際のスキルセット」で候補者を突き合わせられるかどうかです。
- 採用オペレーションの自動化 面接日程の調整や求人票の下書きといった定型業務をAIが処理することで、RPOのコンサルタントは要件のすり合わせや候補者との対話といった付加価値の高い業務に時間を使えるようになります。
AI型採用代行の導入が進むグローバルの動向
グローバルでは、RPOプロバイダーのAI投資が拡大しています。
Research and MarketsのRPO Strategic Business Report(2026年1月)は、RPOプロバイダーがAIプラットフォームへの投資を拡大していることを報告。
採用代行の導入ステップと運用開始まで
採用代行の導入は「課題整理 → 比較・選定 → トライアル → 本格運用」の4ステップで進めるのが一般的とされます。全体で1〜2ヶ月を見ておくとスムーズです。
採用代行導入Step 1. 自社の採用課題と委託範囲を整理する
まず「何を、なぜ、外部に委託するのか」を言語化します。具体的には以下を整理してください。
- 採用する職種と人数、採用時期
- 現在の採用プロセスのどこにボトルネックがあるか
- 自社で継続すべきコア業務(最終面接、オファー面談等)
- 委託したい業務の範囲(スカウトのみ、面接調整まで、フルプロセス等)
- 予算の上限
採用代行導入Step 2. 3〜5社に絞り込み、比較・見積もりを取る
前述の7つの評価軸をもとに、候補となるサービスを3〜5社に絞り込みます。各社に同じ条件で見積もりを依頼し、比較表を作成しましょう。
見積もり時に確認すべきこと: - 月額費用に含まれる業務範囲の詳細 - オプション料金の有無と内容 - 最低契約期間 - 担当者の体制(専任か兼任か) - 定例ミーティングの頻度
採用代行導入Step 3. トライアル運用で相性を確認する
いきなりフルプロセスを委託するのではなく、まず1〜2ヶ月のトライアル運用で相性を確認することを推奨します。スカウト代行や日程調整など、限定的な業務から始めて、コミュニケーションの質や対応スピードを実感してから本格導入を判断してください。
採用代行導入Step 4. 本格運用とPDCAサイクルの構築
トライアルで問題がなければ本格運用に移行します。KPIを設定し、月次でレビューするPlan-Do-Check-Action(PDCA)サイクルを構築することが継続的な改善につながります。
設定すべきKPIの例: - スカウト返信率 - 書類通過率 - 面接参加率 - 内定承諾率 - 採用単価 - 充足期間
採用代行の法的注意点と委託募集の許可
採用代行そのものは合法ですが、自社の被用者以外の第三者に報酬を与えて労働者の募集に従事させる形になると、職業安定法第36条第1項の「委託募集」に該当し、許可が必要になります。
採用代行が委託募集に該当するケース・しないケース
許可が必要なケース 企業が第三者に対して「労働者の募集」を委託し、報酬を支払う場合が委託募集です。具体的には、RPOパートナーが企業名義で求人を出し、応募者に対して労働条件を提示して応募を勧誘する行為がこれにあたります。
許可が不要なケース 採用や選考の判断は自社で行い、RPOパートナーには試験問題の作成や採用戦略の策定、面接日程の調整といった補助的な業務のみを委託する場合は、委託募集に該当しません。
無報酬の場合 報酬を伴わない委託募集は、届出のみで実施可能です。
採用代行の委託募集許可申請の手順と基準
許可の申請先は、募集人員の規模によって分かれます。一の都道府県からの募集人員が30人以上または募集人員の総数が100人以上の県外募集は厚生労働大臣、それ以外は都道府県労働局長が許可を行います(厚生労働省「募集・求人業務取扱要領」Ⅲ 委託募集・2026年9月23日確認)。
許可の基準は、募集主と募集受託者で別に置かれています(同要領「委託募集の許可基準」)。
募集主に求められるのは次の5点です。
- 職業安定法その他の労働関係法令に係る重大な違反がないこと
- 募集に係る労働条件が適正であること(法令に違反せず、同地域の同業種の賃金水準に比べて著しく低くないこと)
- 募集に係る業務内容と労働条件が明示されていること
- 適用事業所であれば労働・社会保険に適切に加入していること
- 厚生労働大臣の認可を受けた報酬以外の財物を与えるものでないこと
募集受託者に求められるのは、同じく労働関係法令に係る重大な違反がないことに加えて、労働関係法令と募集内容・職種について十分な知識を有していることです。募集を行おうとする期間は1年を超えないこととされています。
無許可で委託募集を行った場合、職業安定法第64条第7号により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科される可能性があります(職業安定法・昭和二十二年法律第百四十一号・2026年9月9日にe-Gov法令検索で条文を確認)。採用代行サービスを導入する際は、委託する業務範囲が委託募集に該当するかどうかを、導入前にサービス提供元と確認してください。
採用代行比較のポイント整理
採用代行(RPO)の事業者は多数あり、比較記事によって数え方も掲載社数もばらつきます。「社数の多さ」で選ぶ必要はありません。本記事で紹介した7つの評価軸で自社の課題に合ったサービスを絞り込み、トライアルで相性を確認してから本格導入するのが、失敗しないアプローチです。
ポイントを振り返ります。
- 採用代行は「フルプロセス型」と「部分委託型」がある。まず「何を委託したいか」を明確にする
- 料金体系は月額固定型・従量課金型・成果報酬型の3種類。BOXIL の342人調査では実支払額が1点に収束せず、最多層は月額10万円〜20万円未満、中央値は40万円〜60万円未満だった
- 人材紹介と比べるなら単位を1人あたり単価に揃える。人材紹介側の物差しには、常用就職1件あたり約103万円という厚生労働省の実測(令和6年度)を全国平均の下限として置ける。月額20万円×6か月なら、2名決まった時点でこの水準を下回る
- エンジニア採用には、技術理解・候補者データベース(DB)・スカウト文面の質という固有の評価軸がある
- AI RPOは従来型RPOの限界(人的オペレーション依存)を超える新しい選択肢
- 導入事例から学ぶ成功パターンは「課題の言語化」「密な連携」「選考工程の割り付け」
採用代行の比較・検討を進めている方は、まずは自社の課題を整理したうえで、気になるサービスに相談してみてください。