「採用にAIを使った方がいい」とは聞くものの、具体的にどの業務で、どう使えば成果が出るのか。その実像はまだ見えにくいのではないでしょうか。

生成AIの進化は速く、半年も経てば「できること」が大きく変わります。だからこそ、一般論ではなく「実際に成果が出た事例」を知りたいというニーズが、採用の現場で高まっています。

2025年8月28日、株式会社overflow 代表取締役CEOの鈴木裕斗と、株式会社HR Force 事業開発企画 ゼネラルマネージャーの石川徹様が登壇し、「採用でAIはどう使う!? 8社の事例から学ぶ最新活用術」をテーマに、好評だった第1回の続編ウェビナーを開催しました。

本記事では、石川様が支援した採用業務での生成AI活用8事例と、鈴木が実践する採用コンテンツ生成の方法まで、当日の内容をまとめてお届けします。

4ヶ月でAI活用は次のステップへ──「具体的なユースケース」が知りたいフェーズに

――鈴木:前回(2025年4月)から4ヶ月が経ちました。この間の変化をどう見ていますか。

石川様:状況は大きく変わりました。前回は、ペルソナ作成やスカウト文の自動生成、求人の叩き台づくりといった話をしました。今回はその復習に加えて、進化した部分と、何より「どの会社でどう使っているか」という具体的なユースケースをお伝えします。

――鈴木:面接領域でも進化を感じます。面接や面談が終わった瞬間に、内容の評価や「次はこういうアトラクトをしましょう」というフィードバックを返せるワークフローを使う企業も増えてきた印象です。

石川様:そうですね。まず前提として、AIと人の役割分担を整理させてください。AIにできないのは意思決定です。「この人だ」と決めること、人の心を動かし志望順位を2位から1位に上げることは、人間が頑張るべきポイントです。

一方でAIが得意なのは、情報の整理と、人間の指示を実行して成果物を作ること。採用フローの中でも、興味関心や認知を得るのは人間ですが、それ以外の多くはAIだけでもやれるところまで来ています。その成果物を、今日は8事例お持ちしました。

広告・求人をAIで生み出す──社労士・人材派遣・教育の3事例

――鈴木:では、具体的な事例からお願いします。

石川様:採用業務での生成AI活用を、テンポよくご紹介します。

事例1:社労士事務所──専門外の領域を「専門家のように」

石川様:ある社労士の先生が、エンドクライアントから施工管理の求人セミナーを依頼されました。先生は施工管理の求人を作った経験がありません。そこで弊社のAIを使い、広告もセミナーのコンテンツも作って、専門外の採用の話をして大成功を収めました。

AIはすでに専門的な知識を持っています。上手にプロンプトを作れば、専門家がやったような内容を簡単に扱えるのです。情報検索や資料作成だけでなく、「自分にできないことをやらせる」という能力拡張の方向に使うと効果的だと考えています。

事例2:人材派遣──半日の作業が1時間に

石川様:今まで半日かかっていた業務が1時間で終わったケースです。お客様先でヒアリングをしながら、その場でAIツールでペルソナを作り、市場調査もAIで実施します。商談を一旦終え、帰宅後に求人を作成してお客様へ提案する、という流れです。

目の前で成果物が組み上がっていく体験は、お客様にとっても驚きで、関心を持って商談を進められたそうです。質を上げながらスピードも大きく引き上げた事例だと捉えています。

事例3:教育事業者──応募率・応募数が2倍に

石川様:当初「原稿を変えても大して変わらないでしょう」と言われたお客様です。そこでチューニングを施し、先方専用のAIをお渡ししました。結果、Indeedや求人ボックスでの応募率(CVR)が2倍、応募数も2倍になり、正社員の採用にも成功しました。

仕組みとしては、汎用AIに先方のデータを連携させた形です。「うちのペルソナを作って」と言うだけで、その会社専用のペルソナが出てきます。公開・非公開を問わず、後ろでRAGのように情報を入れていくイメージです。

――鈴木:技術的に大変そうに見えますが、実際はシンプルなのですね。

石川様:今日でもできてしまう形だと思います。GPT-5になって読み込めるデータも増えたので、情報を縮めて渡すといった工夫すら不要になり、簡単に作れるようになりました。

面接をAIが評価する──経営層への「気づき」と可視化

――鈴木:4番目以降は、面接評価の事例ですね。

石川様:東京のデジタルマーケティング会社の事業部長と、仙台の葬儀社の社長、2社の事例です。社長や事業部長は、面接の進め方をなかなか指摘されず、同じ面談を続けてしまいがちです。そこをAIが指摘することで、新しい気づきが生まれました。

「この立場になると褒められることがなく、詰められることばかり。AIが褒めてくれるのでメンタルケアにもなる」という声や、「ずっと気になっていたことを指摘してもらえた」という声をいただきました。普段フィードバックを受けにくい立場の方ほど、率直な感想を得て見識が広がっていくのです。

――鈴木:評価の「理想形」は、どう作っているのですか。

石川様:FAQ形式にしています。「この発言は加点」「この発言は減点」というものを作り、AIに学習させます。類似の発言があればプラス・マイナスが付く仕組みです。理想のFAQは、まず経営者と2〜3時間ほどインタビューして作っていきます。

――鈴木:レポートのアウトプットも工夫されていますね。

石川様:面接官のレポートは、AIに頼めば簡単に作れます。テキストだけでは伝わらないものも、グラフなどでリッチに表現すると伝わります。

応募者視点と面接官視点のフィードバックをAIからもらい、次回のアクションにつなげる。テキストだけでなくビジュアル化も今は簡単にできる、というのはぜひ知っていただきたいです。

「できないこと」を超える──介護のチラシ生成と消費財メーカーの選考自動化

――鈴木:後半の事例もお願いします。

石川様:能力拡張と業務圧縮の事例です。

事例6:介護事業者──手書きの図からチラシのイラストを生成

石川様:札幌の介護事業者様から、ご家族を招くチラシのイラストを作りたいと相談を受けました。手書きの図をスライドで作り、「Aにお祭り会場、Bに住宅地のイラストを」とプロンプトで指定して渡すと、絵心がなくても図を簡単に作れます。著作権にだけ注意すれば、Googleマップなどの素材でもいい形になります。

これも「できないことをできるにする」能力拡張の使い方です。なお、SNS広告のアイデアがマンネリ化したという別の相談には、AIに30案を作ってもらう形で対応しました。

事例8:消費財メーカー──選考工程をAIが代替し85時間を創出

石川様:一次・二次面談の判断工程をAIに任せ、属人性を排除して業務を圧縮したいというご要望でした。専用のAIフローを構築し、データを連携させて、判断工程をAIに委ねました。

約1ヶ月で構築し、6月から運用した結果、9,400分かかっていた工程が4,000分まで削減され、2名体制が1名になりました。書類選考と一次工程をAIが担い、最終面談などは人間が行います。

結果として85時間分の作業時間が生まれ、勘と経験の採用からデータ駆動の採用へ進化しました。客観評価により、面接官ごとの通過率のばらつきも見えるようになっています。

――鈴木:8事例を貫く要点は何でしょうか。

石川様:3つあります。専門分野を拡張すること、能力を拡大すること、そしてAIと分業・協力体制を築くことです。AIはドキュメンテーションや調査だけでなく、自分の代わりに働ける存在になっている、と知っていただきたいです。

採用コンテンツをAIで作る──「らしさ」のスコアリングと音声ナレッジ

――鈴木:ここからは採用コンテンツへの活用です。石川さんは「らしさ」をスコアリングされているとか。

石川様:書き言葉ではニュアンスが伝わりにくいので、最近は声を録り続け、AIと会話しながら作っています。経営者や幹部は自由に話した方がいいことを話す、という持論があり、音声や動画を情報として取り込んでいます。

その内容をもとに、経営者の思いを「らしさ」と表現してスコアリングするテストをしました。動画やインタビューでお話しいただいた内容からキーワードを5つほど抜き出し、企業の「らしさ」をAIに判定させ、面接でのカルチャーフィットを見る試みです。

――鈴木:「らしさ」は要素分解すると変数が100ほどあり、言語化を求めても難しい。だからインタビューで聞き出すのが一番楽なんですよね。私自身、夜に1人で3時間ほど、創業の理由や会社で実現したいことを話し続けたことがあります。

テキストに起こすと思いが削ぎ落とされますが、話していると生い立ちから枝葉に広がり、「こう生きてきたから起業した」という流れが全部つながります。それを貯めておくと、候補者ごとに刺さる訴求ポイントをAIが返してくれます。経営者や責任者の頭の中を口語で貯めておく価値は、今後さらに高まると考えています。

石川様:まさにその通りで、話したことは忘れても、どこかに貯めておけば後で活用できる。そういう時代だと感じています。

ナレッジを貯めてnoteを生む──AIを「育てる」4ステップ

――鈴木:私はnoteのような記事制作にも使っています。最も大事なのは「ナレッジ収集」です。AIの使いやすさはAI側が勝手に良くしてくれます。それより、料理するための情報をどれだけ貯め、的確に渡せるか。そこでアウトプットが会社らしさや伝えたいことになります。

記事制作は4ステップで考えています。ステップ1は、既存記事やインタビューを読み込み、文体・トーン・構成を分析すること。私の場合はGoogleのドキュメントやスプレッドシートを横断的に参照させます。

ステップ2は、説明の順番や読者の課題解決につながるストーリーラインを設計すること。ステップ3で実際に記事が書かれていきます。

ステップ4が意外と効きます。AIが作ったものを、もう一度AIにレビューさせるのです。指示が多すぎると見落としが出るので、最後にルールへ適合しているか自己チェックさせると、品質が担保されます。

最後に、自分の最近の関心や感情を乗せて仕上げます。「AIを育てておけば後で楽できる」というのが実感です。育てておくほど、ポンと成果物を出すことが簡単になります。

Q&A|AIと縁遠い業種ほど効く理由・面接評価の作り方

――鈴木:葬儀社など、AIと縁遠く見える業種でも使われているのが意外でした。どんな考えで導入されるのでしょうか。

石川様:高齢化で業務が増える中、採用に人を割けないので「自分以外でやりたい」という相談が起点でした。経営の壁打ち相手が欲しいが、コンサルはコストが高い。それならAIで、という流れです。「学ぶと数十万のビジネスクールが必要、どうすれば」という相談にも、AIとの会話で1人学習できると提案しています。

――鈴木:人が足りない業界ほど、一見AIと遠そうでも、使わないと立ち行かない。だから浸透が早いのかもしれませんね。

石川様:そうですね。私のお客様は8割が地方です。最新事例にアクセスしにくい地方ほど、東京の最新事例を学んだAIを通じて情報を得られるので、むしろのめり込んでいくケースが多いです。

――鈴木:「面接官フィードバックは、面接を録画して読み込んで評価する形ですか」という質問です。

石川様:録画した動画をそのまま読み込むと量が多く、モデルによっては拒否されます。そこで録画を文字起こしし、そのテキストをもとに評価します。口語体の発言を拾ってプラス・マイナスを付ける形です。Geminiなら動画も読めますが、コンテキストの都合上、文字起こしデータが扱いやすいと思います。

AIを活用した採用ソリューション

――鈴木:最後に、両社のサービスをご紹介します。まず石川さんからお願いします。

石川様:HR Forceは、中小企業の業績を支援する船井総研グループのグループ会社として、「デジタル×人」をドメインに事業を行っています。主力はリクルーティングクラウドや採用代行です。

本日の事例で使った「専門家としてのAI」もご案内しています。最新の事例や成功パターンをAIを通じて取得し、採用に役立てていただくカスタムAIです。

鈴木:Offersは、ハイクラス人材の採用プラットフォームです。とくに最近はAIエンジニアが急増しており、ご登録者数も今年は2倍近くに増えています。

スカウトはすでに90%以上のお客様がAI機能を利用しており、工数削減と返信率の向上が見込めます。ナイル様では、返信率の伸び悩みやスカウト作成の時間を、AIスカウトの活用で改善できたという声をいただいています。

おわりに

採用におけるAI活用は、4ヶ月で「何ができるか」から「どう成果を出すか」へと進みました。広告・求人の生成、面接の評価、チラシやコンテンツの制作、そして選考工程の一部代替まで、8社の事例はいずれも具体的な業務に根ざしています。

鍵になるのは、AIを単なる検索や資料作成の道具と捉えず、専門分野の拡張・能力の拡大・分業の相手として使うこと。そのために、自社の「らしさ」やナレッジを口語で貯めておく姿勢が、これからの採用活動を支えていきます。

明日からの一歩として、まずは自社の情報をひとつ、AIが料理できる形で貯めるところから始めていただければ幸いです。