RPO導入事例の成果は2つの型に分かれる
導入事例を成果の中身で並べ直すと、大きく2つの型に分かれます。
型 | どんな状態から導入するか | 何が成果として現れるか |
|---|
工数削減型 | 候補者との接点はある程度作れているが、絞り込みや連絡に手が回らない | 自社の作業量の減り方 |
母集団形成型 | そもそも要件に合う人と出会えていない | 決まった人数と、そこまでにかかった期間 |
事例に載っている「導入から◯ヶ月で◯名」という数字は、このどちらの型かによって意味が変わります。
工数削減型は自社の作業量が減る
代表が株式会社スタジオ・アルカナの事例です。採用担当と採用広報の2名がどちらも他の業務と兼任する体制で、候補者の絞り込みからスカウト送信までを運用代行に委ね、面談での企業説明と魅力づけだけを自社に残しました。
ここで減ったのは、自社が費やす作業量です。候補者との接点がどれだけあったかは、事例ページには明記されていません。
母集団形成型は出会える相手が変わる
代表がベルベットジャパン株式会社の事例です。英語で海外チームを率いられる日本人エンジニアという要件に該当する人は、他のプラットフォームでは見つからない状態が続いていました。Offers の契約から約1ヶ月で、リードエンジニア1名が入社しています。
ここで動いたのは、出会える相手の集合そのものです。なお、専任担当が不在のまま中堅のデータサイエンティストを探した株式会社GRI(データサイエンスの受託と自社プロダクトを手がける企業)のように、両方の型が重なる会社もあります。
この2つを区別せずに事例を読むと、判断を誤ります。工数が足りない会社が母集団形成型の事例を見て「半年で1名か、遅い」と評価してしまう。逆に、母集団が薄い会社が工数削減型の事例を見て「業務を任せれば決まるのか」と期待してしまう。
用語の整理と業務範囲そのものは採用代行(RPO)の定義と業務範囲に譲り、この記事では実際の成果の側から型を分けていきます。まず14社の全体像を一覧で示し、そのあと課題の段階ごとに各社の経過を追います。
14社の導入事例を課題の型・期間・人数で並べる
Offers の導入事例14社を、課題の型と入社が決まるまでにかかった期間で並べました。正社員として決まった人数は、1回の導入あたり1〜2名が中心です。
このうち期間が読み取れるのは9社で、そのうち8社は約1ヶ月から1年弱に散らばります。株式会社日本トレカセンターは導入後半年の累計ではなく、採用が決まった人の約半数以上が決まった最初の1カ月を期間としました。株式会社SmartHR だけは6ヶ月契約と12ヶ月契約をまたぐため、この幅の外に置きました。
企業 | 事業領域 | 課題の型 | 期間 | 成果 | 主に使った支援 | 本文が示す時点 |
|---|
ベルベットジャパン株式会社 | リユース × AI・ブロックチェーン | 母集団(英語で海外チームを率いる人材) | 約1ヶ月 | リードエンジニア1名 | 代行・伴走:募集要項の作成支援(スカウトは自社運用) | 記載なし |
株式会社スタンバイ | 求人検索エンジン | 母集団 + 工数(採用体制のリソース不足) | 2ヶ月 | 内定者の決定(人数の明記なし・取材時点で2ポジションの入社が決定し、うち機械学習エンジニアは入社済み) | 代行・伴走:リテーナー | 2023年4月導入・取材は導入2年後 |
株式会社QuackShift | AI開発 | 母集団(リファラル中心からの移行) | 3ヶ月 | プロジェクトマネージャー1名 | 代行・伴走:運用支援の伴走・AIスカウト文面 | 記載なし |
株式会社日本トレカセンター | トレーディングカードのEC | 母集団(開発人員の不足・外部サービスの利用が初めて) | 約1カ月(採用者の約半数以上・正社員以外の採用を含む) | 採用者の約半数以上が最初の1カ月で決定 | 自社運用:求人掲載 | 記載なし |
株式会社GRI | データサイエンス・AI | 母集団 + 工数(専任担当が不在) | 半年弱 | 入社予定1名/採用工数を体感で約70%削減 | 代行・伴走:戦略設計・スクリーニング・代理送付 | 記載なし |
HapInS株式会社 | 受託開発 | 母集団(応募不足と採用コストの上昇) | 約半年 | 正社員2名(うち1名はデザイナー)/40〜50名と面談 | 自社運用:AIスカウト文面・ストーリースカウト | 2025年11月頃導入 |
株式会社コアソフト | 受託開発・SES | 母集団(リーダー層) | 8ヶ月 | ハイクラス層のエンジニア2名(テックリード・プロジェクトリーダー) | 代行・伴走:担当者による文面提案・AIスカウト文面の作成 | 2026年4月にテックリード入社 |
株式会社クリア | SES | 母集団(経験者の応募数) | 1年弱 | 即戦力人材の正社員採用(人数の明記なし) | 自社運用:スカウト | 記載なし |
株式会社SmartHR | HR SaaS | 母集団(既存チャネル以外の接点) | 6ヶ月+12ヶ月 | サーバサイドエンジニアの正社員採用(人数の明記なし) | 自社運用:オファー・「気になる」 | 2021年後半 |
株式会社スタジオ・アルカナ | 受託開発・自社プロダクト | 工数(採用担当2名が兼任) | 記載なし | エンジニアの正社員採用(人数の明記なし) | 代行・伴走:運用代行 | 記載なし |
株式会社クロスビット | シフト管理SaaS | 母集団(フルスタックエンジニア) | 記載なし | チームを率いるエンジニアが入社(人数の明記なし) | 自社運用:人材検索のフィルタリング | 記載なし |
株式会社Gaji-Labo | 開発支援 | 母集団(社内に前例のない職種) | 記載なし | プロダクトマネージャーが入社(人数の明記なし) | 代行・伴走:担当者の助言による伴走 | 記載なし |
株式会社ビットキー | homehub・workhub の開発 | 母集団(クラウドから組込みまで横断) | 記載なし | Software Edge Device チームに入社(人数の明記なし) | 代行・伴走:リテーナー・伴走 | 記載なし |
ナイル株式会社 | 自動車産業のDX | 母集団(ハイクラス層) | 記載なし | 正社員1名 | 代行・伴走:運用代行(RPO)から内製化 | 記載なし |
出所:Offers 導入事例(株式会社overflow・offers.jp の各社ページ・n=14・2026年9月6日時点)。
この表から読み取れることが3つあります。
短期で決まった会社には、接触の速さが共通していた
14社の型の内訳は、母集団形成型が11社、母集団と工数の併記が2社、工数削減型のみが1社で、型の違いだけでは期間の差を説明できません。期間の記述と接触の速さの記述がそろう会社は少ないため、ここから言えるのは傾向までです。
1ヶ月から3ヶ月で決まった4社のうち2社は、原典に接触の速さの記述がありました。ベルベットジャパンは新着登録者を毎日確認して熱量のあるうちにアプローチし、QuackShift は迅速な返信とスピード感のある選考を徹底したと述べています。
株式会社日本トレカセンターは採用が決まった人(正社員以外を含む)の約半数以上が最初の1カ月で決まっていましたが、事例ページに自社の接触や選考の速さについての記述はありません。
スタンバイは逆に「転職を急いでいらっしゃらない分、決定から入社まで期間が長くなることはありました」と書いており、決まってから実際に出社するまでには別の時間がかかりました。
半年前後かそれ以上かかった案件のうち、株式会社GRI(半年弱)・HapInS株式会社(約半年)・株式会社コアソフト(8ヶ月)の3社は、要件や訴求の言語化、スカウト文面の作り直しといった前工程の見直しを挟んでいます。ただし、それが期間を延ばしたとまでは事例ページに書かれていません。
正社員として決まるのは1〜2名で、採用計画とは一致しない
Offers の導入事例で、正社員の人数が明記されているものに限ると1回の導入あたり1〜2名が中心で、これは事業計画上の採用数とはたいてい一致しません。
株式会社SmartHR は事例ページによれば、取材時点の2021年後半にエンジニアだけで年間30名以上を計画しており、その規模の会社にとって、Offers を自社で運用して決まったサーバサイドエンジニアの正社員採用は、チャネル全体の一部にすぎませんでした。
導入の判断は「採用計画を丸ごと満たせるか」より「特定の職種の穴を埋められるか」で下すほうが実態に合います。
接点の量が開示されている3社を並べると、採用1名の裏側の規模も見えてきます。
企業 | 接点の量 | 正社員として決まった人数 |
|---|
株式会社QuackShift | 半年で約45名と面談 | 1名 |
HapInS株式会社 | 40〜50名と面談 | 2名(うち1名はデザイナー) |
株式会社コアソフト | 応募約13件・面接3名 | 2名 |
各社の事例ページの数字では、この3社に限れば面談ベースで20〜45名に1名、応募ベースでは6〜7件に1名という水準です(HapInS株式会社の2名にはデザイナー1名が含まれ、エンジニアに限った比率ではありません)。
この比率を先に置いておくと、「スカウトを100通送って返信が数件」という段階で運用をやめてしまう判断を避けられます。
自社の要件に該当する候補者が市場にどれだけいるかも、この比率と合わせて先に確かめておきたいところでしょう。Offers の AI RPO で母集団の厚みを確かめるところからでも、判断の材料は揃います。
工数削減の効果は、人数では表現されない
表の支援欄にある株式会社GRIの70%削減(同社の事例ページの回答)や、スタジオ・アルカナが示した工程の切り分けのように、成果が自社の作業量として現れる案件では、採用人数だけを見ると成果を過小評価してしまう。
事例を比べるときは、人数の欄と工数の欄を別々に読む必要があります。
採用0名で契約期間が終わった事例と立て直し方
株式会社SmartHR の事例ページには、最初に結んだ6ヶ月プランの期間中、採用人数が0だったと書かれています。事例ページで振り返られているのは採用代行ではなく自社の運用です。最終選考まで進んだ候補者は複数いたものの、決まらないまま契約期間が終わりました。
同社はあらためて1年間しっかり運用すると決めて、12ヶ月契約へ更新しています。更新後はこまめに候補者へアプローチする運用に切り替え、サーバサイドエンジニアの正社員採用に至りました。
成果が出なかった契約期間と、そこから立て直した経過の両方が社名つきで公開されている事例は珍しく、契約期間の設計を考えるうえではここが一番の材料になります。
立ち上がりでつまずきやすい3点
立ち上がりでつまずく点は、運用が回らないこと・期間の見積もりが短いこと・要件が言語化されないまま外に出すことの3つです。
つまずく点 | 何が起きるか | 事例に現れた形 |
|---|
運用が回らない | 接触頻度が落ちて選考が進まない | 株式会社SmartHR「しっかりと運用ができたかというと、残念ながらそうではなかった」(理由の記載なし) |
期間の見積もりが短い | 立ち上がりの遅い案件が成果の前に終わる | 株式会社クリアの1年弱、株式会社コアソフトの8ヶ月は6ヶ月では途中経過 |
要件が言語化されないまま外に出す | 代行できる作業が限られる | 株式会社GRI「人材要件は原稿に落とし込みづらく、当社の魅力も伝えることが難しい」 |
ひとつめの運用が回らない型は、どれだけ良い母集団があっても、候補者との接触頻度が落ちれば選考が進まないという単純な話です。
ふたつめの期間の見積もりについては、14社の一覧表のとおり、母集団形成型の案件は半年から1年かかる例が珍しくありません。6ヶ月で判断すると、立ち上がりの遅い案件は成果が出る前に終わります。
みっつめは、要件が言語化される前に業務だけを外に出す型です。情報処理推進機構『DX動向2026』によれば、人材像や評価基準を整備できている企業はDXに取り組む企業のなかでも2割に満たない。多くの会社が、この工程を先に済ませないまま外部に依頼していることになります。
判定の時期を先に決めておく
契約期間の設計そのものにも、この空白は関わってきます。
株式会社SmartHR が6ヶ月から12ヶ月へ切り替えたのは、自社の運用を立て直す時間を確保するためでした。導入を検討する段階で「最初の3ヶ月は運用の型づくりに使い、成果の判定は6ヶ月目以降に置く」と決めておけば、同じ空白でも打ち切りの理由にはなりません。
判定の時期を先に決めておくことが、空白への備えになります。
空白そのものを短くする打ち手
ベルベットジャパン株式会社は新着の登録者を毎日チェックし、プロフィールの記入が不十分でも基本スキルが合えば熱量のあるうちに接触する運用で、契約から約1ヶ月でリードエンジニアの入社に至りました。
株式会社QuackShift も、メッセージへの迅速な返信とスピード感のある選考を徹底したと述べています。株式会社コアソフトは面接を原則1回に絞り、優秀な人ほど他社の選考も進むという前提で途中離脱を防ぎました。
母集団を増やす取り組みと、決まるまでの工程を短くする取り組みは別の打ち手です。後者は自社だけで着手できます。
求める人材への届き方をこれから決める企業のRPO導入事例
求める人材にどう出会うかが社内で固まる前の段階では、RPO の成果はまず要件や訴求の言語化として現れます。誰に何をどこで伝えるかが決まらないまま接触の数だけ増やしても、返信が返ってこないからです。
ここに挙げる3社は、いずれも導入の時点で、求める人材への届き方をこれから組み立てる段階にありました。ターゲットの解像度をこれから上げる会社もあれば、要件は明確なのに該当する人が既存の経路では見つからない会社もあります。
探す経路をゼロから設計した事例(株式会社QuackShift)
株式会社QuackShift は、リファラルを中心に採用してきた会社です。次の段階として、継続的に母集団を作れる経路をこれから用意するところにありました。
同社の事例ページでは、どのプラットフォームが適切なのか、どうやってターゲット人材にリーチするべきかが、導入前の論点として挙げられています。AI領域の開発ではスキルセット自体が短期間で変わるため、要件の見極めにも判断が要ります。
導入後は定例ミーティングでスカウト文面の改善とターゲット選定の見直しを重ねました。導入から3ヶ月でプロジェクトマネージャー1名の入社が決まり、半年間で約45名との面談を実施しました。
注目したいのは、45名という面談数のほうでしょう。採用1名の裏に、その45倍の接点が積まれています。
要件は明確で、届く経路だけが無かった事例(ベルベットジャパン株式会社)
ベルベットジャパン株式会社は、要件そのものがはっきりしていた側です。
事例ページによれば、ブロックチェーン領域かつ英語が堪能という条件を軸に探していたものの、該当する人材に他のプラットフォームでは出会えていない状態です。専任の採用担当が不在の状態で、導入初期に募集要項の作成支援を受けたうえでスカウトを開始し、契約から約1ヶ月でリードエンジニア1名が入社しています。
読み取れるのは、外部に任せた範囲と自社が動いた範囲がはっきり分かれていたことです。
外部が担ったのは募集要項の作成までで、候補者への接触は自社で回していました。スカウト文に代表者のインタビュー記事を添えて反応率を上げ、新着登録者を毎日確認して基本スキルが合っていれば熱量のあるうちにアプローチする運用は、同社が続けています。
社内に前例のない職種を採用した事例(株式会社Gaji-Labo)
株式会社Gaji-Labo の例は、社内に前例のない職種を採用する場面にあたります。
同社の事例ページによれば、開発実装を担う人の採用には経験があった一方で、支援範囲を広げるために必要なプロダクトマネージャーは「これから確立していく段階」の職種でした。採用ターゲットの解像度がまだ高くない段階でも担当者から的確な助言を得られた、と記されています。
採用に至った理由として挙げられていたのは、会社の現状と課題を隠さず共有し、そのうえで一緒に取り組めるかをすり合わせた点でした。
要件がこれから固まる職種では、候補者を増やすより先に、自社が何を約束できて何を約束できないかを言語化する作業が要ります。
専門職の母集団づくりに時間がかかった企業のRPO導入事例
要件に該当する人が市場に薄い場合、入社までの期間は月単位から年単位まで開きます。母集団を作る工程そのものに時間がかかるからです。
この型では、決まった人数より「何人と会えたか」「面接の通過率がどう変わったか」を見たほうが実態に近づきます。
歩留まりが数字で開示されている事例(株式会社コアソフト)
株式会社コアソフト の事例は、その数字が細かく開示されている例です。
同社はプロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダー、テックリードといったリーダー層の母集団づくりが課題で、採用は人事グループマネージャー1名で回していました。AIによるスカウト文面の作成と「気になる」の自動送付を使い、文面はフォーマル寄りとフランク寄りの両方を検証したうえで、中間のトーンが最も反応が良かったと報告しています。
結果は、導入から8ヶ月でハイクラス層のエンジニア2名。受託開発チームのテックリードと、SES(システムエンジニアリングサービス)チームのプロジェクトリーダーが、それぞれ1名ずつ入社しました。
応募は約13件、そのうち要件に合致した3名と面接し、2名が内定を承諾しています。応募13件から2名という歩留まりは、母集団形成型の実像に近い数字です。
母集団の薄さと工数不足が重なった事例(株式会社GRI)
株式会社GRI は、母集団の薄さと工数不足が同時に起きていた例にあたります。
同社の事例ページによると、組織は若手とマネジメント層の2層に分かれる砂時計型で、その間を支える中堅データサイエンティストが手薄でした。求める人物像は投資計画の立案からデータの可視化・分析・施策立案までを担う複合的なもので、求人原稿に落とし込みにくい要件です。
導入後は採用戦略のすり合わせによってスクリーニングの精度が上がり、半年弱で入社予定の方が1名決まったうえで、採用業務の工数が体感で70%ほど抑えられました。
経験者に絞ると、応募の確保に時間がかかる
株式会社クリアは、経験者に絞った採用で応募の確保に時間をかけた例です。事例ページによれば、SES事業で経験者に特化した採用を行っており、最大の課題は応募数の確保でした。1件ずつ丁寧にスカウトを送る運用を続け、利用開始から1年弱で即戦力人材の正社員採用に至っています。
株式会社クロスビットの事例ページには期間の記述が無いため、入社までの長さは読み取れません。シフト管理サービス「らくしふ」の開発を担うフルスタックエンジニアが必要になり、リファラル中心だった採用に人材検索のフィルタリング機能を組み合わせました。
同社は入社したエンジニアを「フルスタックエンジニアのチームを率いて主要な機能を実装」する存在と評し、ほかのエンジニアへの指導やチーム全体のスキル向上への貢献も挙げています。
規模が大きくても、詰まり方は同じ
株式会社ビットキーの事例ページによると、住宅向けの「homehub」とオフィス向けの「workhub」を開発する約90名の組織を抱えながら、クラウドから組込みまで横断する専門知識を持つ人の採用に時間がかかっていました。あらゆる採用手法を試した後にリテーナープランを選び、Software Edge Device チームに入社が決まっています。
株式会社スタンバイの事例ページでは、設立5年目で採用体制のリソースが不足していた状態から2023年4月に導入し、その2ヶ月後に内定者が決まりました。
開発組織が約90名の会社でも、設立から5年目の会社でも、要件に該当する人へ届かないという詰まり方は同じ形で起きています。
他の手段を一通り試した後の導入(ナイル株式会社)
ナイル株式会社の事例は、他の手段を一通り試した後の導入という点で共通しています。
事例ページによれば、自動車産業DX事業部でハイクラスエンジニアの採用を強化するにあたり、主要な求人媒体もエージェントも動かしていたものの、求める人材像に合致する母集団はこれからという状態でした。同社の担当者は、ほかの手段で成果が出ていなかったため「今回も一人も採用できない可能性もあると考えていました」と振り返っています。
社内リソースが限られていたため、初期フェーズは母集団形成とスカウト送信を運用代行に委託し、現在は内製化して運用を続けているとのことでした。結果は正社員1名の採用です。
人材像の言語化をやり直した3社
専門職の母集団づくりに時間がかかった7社のうち期間が読み取れるのは4社で、2ヶ月から1年弱の幅に収まります。
情報処理推進機構『DX動向2026』が指摘した「人材像を設定し社内に周知している企業は2割に満たない」という数字は、この型の事例と重ねると示唆的です。
株式会社GRI と株式会社スタンバイは、導入後に求める人材像や自社の魅力の言語化を外部と一緒にやり直しています。株式会社ビットキーは同じ工程を導入前に置いており、事例ページでは事前のディスカッションや事例共有を通じて自社ならではの魅力の伝え方を一緒に考えたことを導入の決め手に挙げていました。
母集団づくりに時間がかかる原因は市場の薄さだけではなく、探す条件と伝え方が定まっていないことにもある。この3社では、その工程のやり直しが起点になっていました。
採用のやり方を切り替えた企業のRPO導入事例
ここに挙げる4社は、それまでの採用のやり方だけでは必要な人材に届きにくくなった段階で導入しています。リファラル一本で回してきた会社もあれば、エージェントも媒体も並行して動かしていた会社もあり、切り替えた地点はそれぞれ違います。
詰まっているのが自社の作業量なら工数削減型、既存の手段の外に接点が無いなら母集団形成型で、同じ「行き詰まった会社」でも打ち手は別です。
委託した範囲と残した範囲を工程で切り分けた事例(株式会社スタジオ・アルカナ)
冒頭で工数削減型の代表として挙げた株式会社スタジオ・アルカナは、委託した範囲と残した範囲が工程の単位で明確なので、負荷が減った理由も追えます。結果として、エンジニアの正社員採用に至っています(事例ページに人数の明記はありません)。
足りなかったのが開発人員そのものだった事例(株式会社日本トレカセンター)
株式会社日本トレカセンターは、事業成長に開発体制を合わせる段階での導入です。
同社の事例ページは課題を「実際に実装を担えるエンジニアの数が不足していた」と書いています。開発の要望が増え続けるのに人が追いつかない状態で、足りなかったのは開発人員そのものでした。
それまでの採用は知人や社内のつながりを通じたリファラルが中心で、外部サービスの利用は今回が初めてです。型としては母集団形成型にあたるので、冒頭の一覧表でもそちらに分類しました。
コード生成の9割以上をAIに任せる体制を作った結果、設計や品質の担保にあたる工程で人の必要性が増したという経緯も記されています。導入から半年で採用に至り、採用が決まった人の約半数以上が最初の1カ月で決定しました。
接点の量を先に増やした事例(HapInS株式会社)
HapInS株式会社も母集団形成型で、接点の量を先に増やした例です。
事例ページに記載されているとおり、売り手市場で応募が集まりにくく採用コストも上がっていた状況で、以前のサービスのテンプレートを流用したスカウトは、反応が伸び悩んでいました。
AIによる文面作成機能で受託開発の魅力が伝わる内容に見直し、転職意欲を7段階でとらえるキャリアドリフトモデルにもとづくストーリースカウトを併用したところ、40〜50名と面談できています。2025年11月頃の導入から約半年で、受託開発事業部の正社員2名を採用しました。
自社の運用を仕切り直した事例(株式会社SmartHR)
株式会社SmartHR は、エージェント・媒体・自社サイト・リファラルを並行して動かすなかで、既存チャネルの外に接点を作るために導入しました。型としては母集団形成型です。初回の6ヶ月契約で採用数が0だった経過は、採用0名の章で見たとおりです。同社の振り返りは「しっかりと運用ができたかというと、残念ながらそうではなかった」にとどまり、うまくいかなかった理由そのものは事例ページに書かれていません。
スカウト運用そのものを外部へ寄せる選択肢については、AI RPOの記事に整理しました。
事例の背景にある採用市場の数値
エンジニア採用の難しさは、求人倍率よりも「求人が就職に変わる比率」に現れます。
求人は積み上がるが、就職は増えない
厚生労働省『一般職業紹介状況(令和8年7月分)』参考統計表は、公共職業安定所(ハローワーク)における求人・求職・就職の状況をとりまとめた業務統計です。民間の人材紹介会社・求人媒体・ダイレクトスカウト経由の分は含まないので、市場全体の充足率ではありません。
その条件のうえで、情報処理・通信技術者の数字を並べます。
情報処理・通信技術者(令和8年7月・常用) | パートを含む | パートを除く |
|---|
有効求人 | 52,623件 | 51,741件 |
有効求職 | 39,193人 | 34,555人 |
有効求人倍率 | 1.34倍 | 1.50倍 |
新規求人 | 18,977件 | — |
新規求職 | 6,365人 | — |
新規求人倍率 | 2.98倍 | 3.25倍 |
紹介件数 | 6,732件 | — |
就職件数 | 390件 | 332件 |
就職件数 ÷ 紹介件数 | 5.8% | — |
出所:厚生労働省『一般職業紹介状況(令和8年7月分)』参考統計表6・7-2(令和8年8月28日公表)。比率は同表からの算出値。
『一般職業紹介状況(令和8年7月分)』で見ると、情報処理・通信技術者の有効求人倍率1.34倍は、職業計の1.05倍より少し高い程度です。有効求人52,623件は月末時点で有効な求人の総数(ストック)で、就職件数390件はその月に成立した件数(フロー)なので、この2つを割って充足率とは読めません。
同じ月のフローどうしで比べると、紹介件数6,732件のうち就職に至ったのは390件で、5.8%です。新規求人18,977件に対して新規求職は6,365人で、新規求人倍率は2.98倍でした。毎月の新しい求人に対して、新しく職を探し始める人の数が追いついていないことは、フローの数字からも読み取れます。
パートを除いた集計に絞ると、同じ統計で有効求人倍率は1.50倍に上がり、就職件数は332件です。この332件はパートを含む390件の内訳の一部であり、母数の違いによる数字なので、正社員に近い条件ほど決まる件数が減る傾向を示すものではありません。
民間経路の規模は、別の統計で押さえられます。厚生労働省『令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)』によれば、有料職業紹介事業による常用就職は令和6年度で888,993件(全職業の合計)ありました。
ハローワークの業務統計は市場の一部にすぎませんが、紹介から就職に至る割合が1割に届かない職業である点は、求人を出す量だけでは席が埋まらないことを示しています。
不足感は、見る指標によって逆を向く
事業所が感じている不足感を表す正社員等労働者過不足判断D.I.は、情報通信業で産業平均を上回り続けています。ただし2026年に入ってからは差が縮まりました。
正社員等労働者過不足判断D.I. | 調査産業計 | 情報通信業 | 学術研究,専門・技術サービス業 | 建設業 |
|---|
2025年5月 | 44ポイント | 57ポイント | 59ポイント | 58ポイント |
2025年11月 | 49ポイント | 58ポイント | 59ポイント | 63ポイント |
2026年2月 | 49ポイント | 62ポイント | 62ポイント | 60ポイント |
2026年5月 | 47ポイント | 54ポイント | 54ポイント | 59ポイント |
2026年8月 | 47ポイント | 52ポイント | 59ポイント | 59ポイント |
出所:厚生労働省『労働経済動向調査』令和7年5月の概況(表1)・令和8年5月と8月の概況(表3・8月分は令和8年9月29日公表)。
厚生労働省『労働経済動向調査(令和8年8月)の概況』では、情報通信業の不足超過は2026年2月の62ポイントから5月に54ポイント、8月に52ポイントへ下がり、2月からの下げ幅は10ポイントになりました。調査産業計の47ポイントとの差は5ポイントで、2025年5月の13ポイント差から縮んでいます。
同資料が人手不足感の特に高い産業として名前を挙げたのは「運輸業,郵便業」「建設業」「学術研究,専門・技術サービス業」で、2025年5月の概況で並んでいた「情報通信業」は、2026年5月に続いて8月もこの一文に入っていません。5月の概況で挙がっていた「医療,福祉」が外れ、代わりに入った学術研究,専門・技術サービス業のD.I.は、5月の54ポイントから8月の59ポイントへ上がっています。
ただし職種で見ると景色は変わりません。『労働経済動向調査(令和8年8月)の概況』の第3-2表では、専門・技術の労働者過不足判断D.I.は2026年8月に47ポイント(5月は45ポイント)で、8つの職種のなかで最も高い水準が続いています。この区分は調査上「高度の専門的知識を応用し、技術的な業務、研究等に従事する者」と定義され、エンジニアだけでなく研究職なども含みます。エンジニアに限った数字ではないものの、専門職を探す難しさは産業の不足感ほどには和らいでいません。
量として数えた欠員率は、この体感と逆を向きます。厚生労働省『労働経済動向調査(令和7年5月)の概況』によれば、2025年5月1日時点の欠員率は調査産業計3.1%に対して情報通信業2.2%、未充足求人が「ある」事業所の割合も58%に対して44%で、どちらも情報通信業のほうが低い水準でした。
この欠員率と未充足求人の系列は、すでに公表が止まりました。厚生労働省『労働経済動向調査(令和8年5月)の概況』の調査概要には、「常用労働者の中途採用の実績及び予定」「常用労働者数」および「未充足求人数」に関する事項は令和7年5月調査をもって調査を終了した、と明記されています。2025年5月が最後の数字で、欠員率を根拠に語れる人手不足はそこで止まっています。
不足の中身は「質」に寄っている
最も具体的に押さえているのは、情報処理推進機構『DX動向2026』です。
ここで注意が要るのは母数と対象で、集計されているのは「DXに取組んでいる」と回答した企業に限られます。設問が問うているのも、DXを推進する人材の充足状況です。
DXを推進する人材の不足感 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|
「量」が大幅に不足している | 62.1% | 58.5% | 50.1% |
「質」が大幅に不足している | — | 58.9% | 52.9% |
「質」が不足している(やや不足を含む) | — | 86.1% | 88.8% |
出所:情報処理推進機構『DX動向2026』図表4-1・4-3(2026年7月30日公表・2025年度調査)。
『DX動向2026』では、「大幅に不足している」は量も質も下がりました。ところが「やや不足している」を含めた合計で見ると、「質」は2024年度の86.1%から2025年度の88.8%へむしろ増えています。同資料の概要も「依然として9割近くの企業が不足を感じており、慢性的な人材不足の状況に大きな変化は見られない」と結論づけていました。
あわせて、人材像を設定して社内に周知している企業は2割に満たず、評価基準を整備している企業も2割に満たない、と書かれています。そのうえで「評価基準を設定している企業やスキルを把握している企業ほど不足感が低い傾向があり、特に質の確保において差が大きい」としていました。
不足感の一部は、自社の側の未整備から来ているわけです。先に取り上げた株式会社Gaji-Labo が、採用ターゲットの解像度がまだ高くない段階から伴走を受けて前例のない職種を採用したのは、この未整備の工程から始めた例にあたります。
RPOで成果が出る型と出にくい型
成果が出やすいのは、どこで詰まっているかがはっきりしている会社です。逆に出にくいのは、何が足りないのかが定まらないまま業務だけを外に出す会社になります。
事例と統計を重ねると、この境目は次の3つで説明がつきました。
状態 | 何が起きるか | 判断材料 |
|---|
作業量で詰まっている | 成果が自社の作業量として早く出る | 候補者との接点が足りているか |
接点の作り方だけが合っていない | 比較的短期間で改善する | スカウトの返信率 |
市場が薄く、人材像と評価基準もこれから | 送る先が増えないので数字が動きにくい | 自社に人材像と評価基準があるか |
作業量で詰まっている会社
候補者はいるのに絞り込みと連絡が追いつかない状態は、作業を移せば解消します。
冒頭の2つの型でいえば工数削減型で、14社では工数の課題だけを挙げた株式会社スタジオ・アルカナと、母集団の課題と併記した株式会社GRI・株式会社スタンバイがこれにあたります。
ここでの判断材料は「候補者との接点が足りているか」の一点です。足りているなら、外部委託は投資というより負荷の付け替えに近い。
接点の作り方だけが合っていない会社
株式会社コアソフトが文面のトーンを複数検証して反応の良い型を見つけた例や、HapInS株式会社がテンプレートの流用をやめて自社の魅力が伝わる文面に書き直した例がこれにあたります。
母集団そのものは市場にあるのに、こちらの伝え方が届いていなかった。この状態は、スカウトの返信率という測れる指標で判定できます。
市場が薄く、人材像もこれからの会社
成果が出にくいのは、要件に該当する人が市場に薄く、かつ自社の人材像と評価基準がこれからという会社です。ここに業務代行だけを入れても、送る先が増えないので数字が動きません。
採用市場の数値の章で見た統計も、この状態と整合します。厚生労働省『一般職業紹介状況(令和8年7月分)』では、ハローワーク経由の情報処理・通信技術者は、2026年7月の紹介件数6,732件のうち就職に至ったのが390件でした。求人を出すことも紹介することも行われているのに、成立まで届く割合は1割に満たない。
そして『DX動向2026』が示すとおり、DXに取り組む企業のなかでも人材像を設定し社内に周知している企業、評価基準を整備している企業はいずれも2割に満たず、同資料は評価基準を設定している企業ほど不足感が低い傾向にあると述べていました。
外に頼む前に、自社が何を基準に合否を決めるのかを決める工程が要るわけです。
この見立ては、事例という形式そのものからは出てきにくい内容でもあります。事例ページに載るのは、契約が成立して成果が出た案件だからです。「その会社にはまだ早かった」という判断は、事例の形では残りません。だからこそ、採用数0のまま契約期間が終わった経過まで公開している事例が、判断材料として重い。
自社がどの型にあたるのかは、社内だけでは判断がつかない場合も多いでしょう。エンジニア採用に限れば、Offers の AI RPO で現状を相談するところから、候補者データベース上に要件へ該当する人がどれだけいるのかを確かめられます。
母集団の厚みが先に分かれば、工数の問題なのか母集団の問題なのかを取り違えずに済みます。
RPOの費用の目安を職業紹介手数料の公的統計で押さえる
導入事例のページに費用が書かれることは、まずありません。料金体系ごとの相場は各社の説明として流通していますが、出所のある実額として比べられる数字は公的統計から取れます。
指標(令和6年度) | 値 | 対前年度比 |
|---|
常用就職1件あたりの手数料 | 約103万円 | 10.9%増 |
うち常用就職に係る手数料(103万円の分子) | 約9,136億円 | 16.8%増 |
手数料収入の合計 | 約9,835億円 | 17.6%増 |
常用就職件数(有料職業紹介事業・全職業) | 888,993件 | 5.3%増 |
事業報告を提出した有料職業紹介事業所 | 30,561事業所 | — |
うち就職実績のあった事業所 | 13,946事業所 | — |
出所:厚生労働省『令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)』(令和8年3月31日公表・n=30,561事業所)。
厚生労働省『令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)』によれば、令和6年度の常用就職1件あたりの手数料は約103万円で、対前年度比10.9%増でした。
この103万円の分子は、手数料収入のうち常用就職に係る手数料である約9,136億円です。有料職業紹介による常用就職888,993件で割ると、この水準になります。手数料収入の合計である約9,835億円には臨時日雇に係る分などが含まれるため、1件あたりの単価を出す分子には使えません。
RPO の料金そのものとも別の数字ですが、「1名決まるといくらかかるか」の相場観として、事例に並ぶ1〜2名という成果を金額に置き換える基準になります。
看板を出していることと、実績があることは別
事業報告を提出した事業所30,561のうち就職実績のあった事業所は13,946で、この差が事業者選定の重さを示しています。
『令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)』では、事業報告を提出した有料職業紹介事業所30,561のうち、その年度に就職実績があったのは13,946事業所でした。同表から算出すると45.6%です。半数以上の事業所は、1年間で1件も就職を成立させていません。
RPO と職業紹介は制度上の位置づけが違うものの、「看板を出していることと実績があることは別」という点は変わらないでしょう。事例ページを読むときに社名と成果がひもづいて公開されているかどうかを見る価値は、ここにあります。
手数料の水準は、採用単価の判断にも直結します。
株式会社クリアの事例ページでは、人材紹介は採用単価が高くなりやすいため、コストと採用数のバランスを見ながら効率的な手法を模索していると述べられていました。HapInS株式会社も、導入の背景として採用コストの上昇を挙げています。
職業紹介事業報告書で1件あたり約103万円という水準が10.9%上がった年に、成果連動ではない料金体系の採用手法をどう組み合わせるかは、実務上の論点として残ります。料金体系ごとの比較は採用代行の費用相場と料金体系にまとめました。
自社に近い導入事例の見極め方
導入事例を自社に当てはめるときは、次の5つで照合すると判断を誤りにくくなります。成果の出方を決めていたのは、詰まっている工程と、そこにかかる時間のほうでした。
# | 照合する項目 | 見るポイント |
|---|
1 | どこで詰まっているか | 接点が足りないなら母集団形成型、手が回らないなら工数削減型 |
2 | 対象職種の市場の厚み | 薄い職種は期間を長めに見積もる |
3 | 人材像と評価基準の有無 | 無いまま依頼すると送る相手を決められない |
4 | 期間の見込み | 1〜3ヶ月か、半年〜1年か |
5 | 運用を誰が回すか | 委託する範囲と自社に残す範囲を工程で切り分ける |
1つめは、どこで詰まっているかです。候補者との接点が足りていないのか、接点はあるのに手が回っていないのか。前者なら母集団形成型、後者なら工数削減型の事例を見ます。この判定を外すと、期間の見積もりも指標の置き方も全部ずれます。
2つめは、対象職種の市場の厚みです。情報処理・通信技術者のように、厚生労働省『一般職業紹介状況(令和8年7月分)』で紹介から就職に至る割合が5.8%にとどまる職種では、求人を出す量を増やすだけでは結果が変わりにくい。民間の紹介・媒体を含めれば成立の総数はこれより大きくなりますが、職種単位の需給が薄いことに変わりはないので、期間を長めに見積もります。
3つめは、自社に人材像と評価基準があるかどうかです。ここが空のまま外部に依頼すると、送る相手を決められないので運用が止まります。『DX動向2026』でDXに取り組むと回答した企業を見ても、この整備が済んでいる企業は2割に届いていませんでした。多くの会社にとっては、ここが最初の作業になるはずです。
4つめは、期間の見込みです。冒頭の一覧表のうち期間が読み取れる9社は、1ヶ月から3ヶ月で入社が決まった4社と、半年前後から1年かかった4社に分かれました(株式会社SmartHR だけは6ヶ月契約と12ヶ月契約をまたぐため、どちらにも入りません)。
前者には候補者への接触と選考を速く回した会社が含まれ、後者には要件の言語化やスカウト文面の作り直しを挟んだ会社が含まれます。自社が後者なら、6ヶ月契約は判断の材料が揃う前に終わります。
5つめは、運用を誰が回すかです。委託する範囲と自社に残す範囲を、スタジオ・アルカナの例のように具体的な工程で切り分けておく。自社で運用する場合も体制は同じように問われ、株式会社SmartHR が契約更新後に見直したのは、候補者へこまめにアプローチするという自社側の運用のやり方でした。
この5点を整理したうえで、自社に近い型の事例を持つ支援先を選ぶことになります。サービスごとの業務範囲や料金体系の違いは採用代行サービスの比較にまとめてあるので、選定の段階で併せて確認してください。
エンジニア採用について、自社の要件に該当する候補者が市場にどれだけいるのかから確かめたい場合は、Offers の AI RPO の相談窓口で母集団の厚みと想定期間の目安を出すところから始められます。