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FDEの事例11件と組み方、偽装請負を避ける受け入れ方

FDEの事例11件と組み方、偽装請負を避ける受け入れ方
鈴木 裕斗監修者

株式会社overflow / 代表取締役 CEO

鈴木 裕斗

株式会社サイバーエージェントに新卒入社。広告営業を経て、Amebaプラットフォームの管轄責任者に就任。その後、スタートアップ企業に入社、代表取締役就任を経て2ヶ月後に株式会社ディー・エヌ・エーにM&A、子会社化。子会社代表取締役とDeNA広告部長を兼任。2017年6月、株式会社overflowを創業。2018年から2020年9月末までエキサイト株式会社の社外取締役を兼任。

FDE(フォワードデプロイドエンジニア)を置く企業は、2025年から2026年にかけて国内外で一気に増えました。

ただ、社名を並べただけでは自社の判断材料になりません。事例で見るべきなのは、何人で組み、どれくらいの期間で、どう終わらせたかの3点です。

本稿では海外6社と国内5社の公式発表・求人票をこの3点で読み、外部のFDEと組むときに契約の前に決めることまで示します。事例を並べてみると、差が出るのは始め方より終わらせ方でした。

FDEの定義や年収の相場から知りたい方は、先にFDEとは?役割・年収・採用方法を採用担当向けに解説をご覧ください。

FDEの事例は何を定着させるかで3つの型に分かれる

公式発表を読むと、FDEの事例は「FDEが顧客のもとで何を定着させるか」によって3つの型に分かれます。自社の製品か、自社のAI基盤の上に作る仕組みか、自社の製品に限らない技術か、の違いです。

型

海外の事例

国内の事例

FDEが定着させるもの

自社製品を定着させる型

Salesforce、ServiceNow、Palantir

LayerX、ログラス

自社の製品

自社のAI基盤の上に仕組みを作る型

AWS、Microsoft

ソフトバンク(SB OAI Japan)

自社の基盤で動く顧客専用の仕組み

製品を問わず技術を選んで定着させる型

アクセンチュア

SHIFT、クラスメソッド

顧客に合わせて選んだ技術

出所:各社の公式発表・公式ブログ・求人票(2026年9月26日確認)をもとにOffersが分類。

自社で採用するなら1つ目の型、外部に支援を頼むなら2つ目か3つ目の型が、比べる相手になります。

1つ目の型の事例が5件と多いのは、自社製品の導入支援として体制や期間を公開しやすい業態だからです。外部支援を検討する場合は、件数の少ない2つ目と3つ目の事例を、契約の組み方に注目して読むと判断に使えます。

自社製品を定着させる型の事例

自社のAI製品を持つ企業が、顧客の業務に合わせて製品を作り込み、使われる状態まで伴走させる。これが1つ目の型で、体制の組み方が最も具体的に公開されています。

Salesforceはストラテジスト1人とFDE2人で組む

Salesforceは2025年4月にFDEのチームを発足させました。体制は同社の公式ブログ(2026年3月27日)に詳しく書かれています。

FDEが1人で顧客を担当する形に加えて、ストラテジスト1人とFDE2人の3人組で動く形が増えているそうです。ストラテジストが使いどころとAI活用の方針を決め、FDEが設計・構築・展開を担います。

項目

Salesforceの公開内容

チームの発足

2025年4月

基本の体制

ストラテジスト1人+FDE2人

1社あたりの期間

約3か月の専任(1〜2の用途で定着するまで)

顧客の利用条件

担当営業の推薦を受けた一部の顧客に無償で提供(Momentumプログラム)

新任者の育成

6週間のオンボーディング(Ready in Six)

出所:Salesforce公式ブログ(2026年3月27日)。

同じブログは、トラブルを抱えた顧客のAIエージェントを、FDEが製品チームを巻き込んで1週間で立て直した例も紹介していました。今後1年のうちに、FDEの支援を有償でも提供する予定だと書かれています。

LayerXはFDEとストラテジストがペアで動く

国内では、LayerXのAi Workforce事業部が同じ組み方です。LayerXの採用情報によると、Deployment Strategist(DS)がFDEとペアを組みます。顧客や業界ごとに、AIエージェントを2人で設計・構築する体制です。

さらに、アカウントの責任者が、営業担当(AE)・DS・FDEをまとめてリードします。同社のエンジニアブログ(2026年9月10日)は、AEが契約の管理とプロジェクトの費用感の設定を受け持つと説明していました。

技術はFDE、解く課題の設定はDS、契約はAE。役割を3つに分けている点が読み取れます。

ログラスは4〜5名のチームをFDEが率いる

経営管理のクラウドサービスを提供するログラスは、大規模言語モデル(LLM)の基盤チームを作り、FDEという職種を新たに設けました。

ログラスの求人「【新規事業】Forward Deployed Engineer(FDE)」には、チームの構成が書かれています。コンサル・エンジニア・PdM・デザイナーの4〜5名で組み、FDEがプロジェクト単位でチームをリードする形と明記されていました。

Salesforceの3人組より大きく、デザイナーまで含めている点が特徴といえます。

ServiceNowは提携先のFDEと顧客環境で組む

業務プラットフォームのServiceNowは、2026年5月6日、アクセンチュアとFDEの共同プログラムを発表しました。

ServiceNowのFDEチームとアクセンチュアのFDEが、共通の顧客の環境の中で一緒に働く形です。製品を知るFDEと、業界の業務を知るFDEを組み合わせています。

Palantirの求人票は出張の上限を25%と書く

FDEの原型を作ったのは、米国のデータ分析企業Palantir Technologiesでした。先のSalesforceのブログによれば、Palantirは2010年代初頭にFDEを始め、2016年まではFDEの数が製品開発のエンジニアより多かったとされます。

現在のPalantirの求人票は、顧客先への出張を最大25%と書いています。2026年9月26日に確認した求人票1件に書かれた上限で、実際の出張の割合や他社の働き方までは分かりません。

自社のAI基盤の上に仕組みを作る型の事例

クラウドやAIモデルを持つ企業が、自社の基盤の上に顧客専用の仕組みを作るのが2つ目の型です。2026年の春から夏にかけて、Amazon Web Services(AWS)とMicrosoftが投資額と人数を公表しました。

企業

発表日

投資額

規模

AWS(Amazon)

2026年6月30日

10億ドル

数千人規模の専門家を顧客のチームに配置

Microsoft

2026年7月2日

25億ドル

業界・技術の専門家6,000人を顧客先に配置

出所:Amazon、Microsoftの公式発表・公式ブログ(2026年6〜7月)。

AWSは顧客が自走するまでを設計に入れた

AWSの新組織は、Amazonの公式発表(2026年6月30日)で説明されました。終わり方まで踏み込んで書いている点が、他の事例と違います。

顧客側の技術者は、見学者から共同の作り手へ、最後は自分たちで運用する側へと段階を踏んで役割を移します。支援が終わったとき、顧客が自分で回せる状態にしておくことを最初から組み込んでいるわけです。

作ったものは顧客自身のAWSアカウントに置く。契約も、共通の目標と事業成果を軸に組むとしています。

発表時点で、NFL(米国のプロフットボールリーグ)やリコーなどがAWSのFDEチームと協働していました。NFLは、数週間で本番のサービスを公開したと紹介されています。

Microsoftは6,000人を顧客先に置く

Microsoftは2026年7月2日、公式ブログ「Microsoft Frontier Company」で新しい事業組織を発表しました。

これまでFDEと呼ばれてきたものを超える組織だと位置づけ、25億ドルを投じて専門家6,000人を顧客先に置く計画です。事例としては、ロンドン証券取引所グループ(LSEG)の情報サービスにAIを組み込んだ取り組みを挙げています。

ソフトバンクは合弁会社への出向で正社員を募集する

国内では、ソフトバンクがFDEを正社員で募集中です。ソフトバンクのFDEの求人票では、入社後にOpenAIとの合弁事業(SB OAI Japan合同会社)へ出向する形です。

求人票は、日本を代表する企業とともに、AIモデルを実際の事業に実装する役割だと書いています。想定理論年収は812万3,000円〜2,034万6,200円でした(2026年9月26日時点)。

親会社で雇用し、実務は合弁会社で担う形です。FDEを別会社の事業として立てる場合の、1つの雇い方として参考になります。

製品を問わず技術を選んで定着させる型の事例

特定の製品を売ることを目的にせず、顧客に合う技術を選んで定着させる型です。システム開発やコンサルティングの会社が、FDEの考え方を自社のサービスに取り入れています。

SHIFTは特定の製品に縛られないFDEを始めた

ソフトウェアやサービスの製品づくりを支援する株式会社SHIFT(本社:東京都港区)は、2026年1月21日に「アドバンスドFDE」の提供を始めたと発表しました。

従来のFDEは自社製品の定着を目的とするのが一般的だと、同社は整理しています。そのうえで、技術中立の立場から、AIエージェントや生成AI製品の選定から定着までを支援するというものです。

アクセンチュアはMicrosoftと数千人規模の実務組織を作った

アクセンチュアは2026年3月18日、MicrosoftとFDEの実務組織を立ち上げたと発表しました。

数千人のAI技術者が顧客と直接働く体制です。Microsoftが基盤と技術を、アクセンチュアが変革の管理や業務プロセスの作り直しを受け持ちます。

クラスメソッドはFDE候補を採用して育てる

クラスメソッドは、入社後の育成を前提にした「FDE候補」を募集しています。同社のキャリア採用ページで、2026年9月26日に確認した内容です。

入社後の現場での実務指導(OJT)と実案件を通じて、段階的にFDEの力を身につけてもらう設計です。経験者が少ない職種を、社内で育てて増やす道を選んだ事例といえます。

FDEを自社で採用するときの設計

ここからは後半です。事例のなかには、FDEを自社で採用して組織を作る動きも目立ちます。採用の設計で参考になる点は3つです。

1つ目は、経験者だけを狙わない募集の段階づけ。LayerXはFDEの募集をAssociate・通常・Seniorに分け、1週間と実務の2種類のインターンも用意しています。クラスメソッドは候補者を採用して育てる形でした。

2つ目は、入社後の育成期間を最初から設けることです。Salesforceは新任のFDEに6週間のオンボーディングを用意しています。

3つ目は、チームで配置する前提で人数を見積もること。FDEは他の職種と組んで動くため、FDEの採用人数だけを決めても体制は組めません。

人数は、任せる範囲で変わります。Salesforceの3人組は1〜2の用途に絞って約3か月で定着させる前提でした。ログラスの4〜5名はデザイナーまで含み、画面や業務の設計まで引き受ける構成です。事業の規模が違う2社なので、人数そのものより、任せる範囲と人数の対応を参考にするのが実用的です。

AWSやMicrosoftが数千人単位で同じ人材を探すなかで、求人を出して待つだけでは候補者に届きにくくなりました。自社の採用の進め方がこうした競争の激しい職種で通用するかは、採用の進め方を項目ごとに採点するエンジニア採用力チェックで点検できます。

外部のFDEを受け入れる側が先に決める3つのこと

外部のFDEの支援を受ける企業が、契約の前に決めておくべきことは3つあります。期間と出口、作る場所、指示の経路です。

決めること

事例と資料から読めること

期間と出口

Salesforceは1社約3か月、AWSは顧客が自分で運用できる状態をゴールに置く

作る場所

AWSは顧客自身のAWSアカウントに作り、ServiceNowは顧客の環境の中で作る

指示の経路

対等に協働するなら適正。自社の社員が作業の進め方や労働時間を直接指示すると、準委任契約でも偽装請負になりうる

期間と出口を最初に決める

FDEの支援は、終わり方を決めずに始めると、いつまでも外部に頼る形になりがちです。

Salesforceは1社あたり約3か月を目安にしていました。AWSは、顧客側の技術者が見学者から運用者へ移ることを支援の設計に組み込んでいます。

受け入れる側も、「いつまでに、誰が引き継いで運用するか」を契約の前に決めておく。そうすると、支援の成果を測りやすくなります。引き継ぐ側の体制づくりは、内製化とは?完全内製4.5%と工程別の進め方も参考になるはずです。

作る場所を自社の環境にする

作ったAIの仕組みやデータをどこに置くかは、支援が終わったあとで差が出る論点です。

AWSは顧客自身のアカウントに、ServiceNowとアクセンチュアは顧客の環境の中に作ると明言しました。自社の環境に残っていれば、支援が終わっても仕組みを使い続け、自分たちで直せます。

費用の見積もりと合わせて検討するなら、AI導入の費用、公的統計でわかる実額と内訳で内訳を確認しておくと比べやすいでしょう。

指示の経路を契約の前に決める

国内でFDEの支援を受けるときに特に注意したいのが、指示の出し方です。海外の事例には出てこない、日本の法律上の論点になります。

厚生労働省の「37号告示に関する疑義応答集(第3集)」は、2026年5月25日に項目が追加された資料です。回答A1は、準委任契約で進める開発でも、発注者と受注者側の技術者のあいだに実態として指揮命令関係があれば、労働者派遣に当たるとしています。

回答A2によると、両者が対等に協働し、受注者側の技術者が自分で判断して開発を進めていれば、密に連携していても偽装請負にはなりません。一方で、発注者側が作業の進め方や労働時間を直接指示すれば、偽装請負と判断されます。

状況

疑義応答集の判断

対等に協働し、受注者側が自分で判断して進める

適正な請負等

会議やチャットに双方の全員が参加する

実態が対等な協働なら偽装請負ではない

発注者側が作業の進め方や労働時間を直接指示する

偽装請負

指示が必要になった

受注者側が管理責任者を選び、受注者から指示する

出所:厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に関する疑義応答集(第3集)(2026年5月25日更新)。

表の3行目と4行目はA6の内容です。A8は、この考え方がアジャイル型以外のシステム開発にも当てはまると明記していました。

FDEは現場に深く入るほど価値を出す職種です。だからこそ、現場の社員が「これを先にやって」と直接頼みたくなる場面が増えます。指示の窓口を受注者側の誰にするかは、契約の前に決めておく必要があります。

FDEの事例は体制・期間・終わり方で読む

FDEの事例は、社名の一覧ではなく、体制・期間・終わり方の3点で読むと自社に置き換えやすくなるはずです。外部のFDEと組む前に、支援する会社へ次の4つを確かめておくと、事例で見た違いを自社の契約に落とし込めます。

確かめること

事例での答え方の例

何人・どの職種で入るか

Salesforceはストラテジスト1人とFDE2人、ログラスは4〜5名

いつ、どの状態になったら終えるか

Salesforceは約3か月、AWSは顧客が自分で運用できる状態

作ったものをどこに置くか

AWSは顧客自身のアカウント、ServiceNowは顧客の環境

指示を受ける窓口は誰か

疑義応答集A6の考え方では、受注者側の管理責任者

最後の1行は、海外の事例だけを読んでいると抜け落ちます。契約書の前に、疑義応答集(第3集)の原文を一度読んでおくと安心です。

FDEそのものの役割や年収の相場は、FDEとは?役割・年収・採用方法を採用担当向けに解説で詳しく整理しています。

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