採用管理システム(ATS)を入れても、内定辞退がそれだけで減るわけではありません。候補者が辞退を決める理由は、年収などの条件や他社の選考の進み方にあり、システムはそこに直接は触れないからです。
それでも中途採用では、内定を出してから返事をもらうまでの短い期間に連絡が途切れたり、誰が何を候補者と話したのかが社内で分からなくなったりして、防げたはずの辞退が起きます。採用管理システムが役に立つのはこの部分です。中途採用の採用担当者が、システムの設定と日々の運用で決められることに絞ってまとめました。
採用管理システムが内定辞退に対して担う記録・通知・集計
採用管理システムが内定辞退に対して担えるのは、候補者ごとの選考の経緯と連絡を1か所に記録すること、回答期限や連絡の空白を担当者に知らせること、辞退を段階・経路・理由ごとに集計することの3つです。候補者が辞退を決める理由そのもの(条件、他社の内定、現職からの引き留め)は、システムが変えられるものではありません。システムで減らせるのは、連絡の遅れや社内の引き継ぎの漏れのように、企業側の運用が原因になって起きる辞退です。
役割 | 内定辞退に対して働く場面 | 設定するもの |
|---|
記録 | 面接官や紹介会社の担当者が聞いた懸念を、次に候補者と話す人が読める | 選考ステータス・辞退理由の選択肢・面談メモの欄 |
通知 | 回答期限が近い、面接の評価の入力が止まっている、内定承諾後の連絡が空いている | 期限の項目と通知の条件 |
集計 | どの段階・どの経路・どの理由の辞退が多いかを見る | 段階別・経路別・理由別のレポートか、表計算ソフトへの書き出し |
検索で上位に出るページ(本文を取得できた8件)で最も多いのは採用管理システムで内定辞退を防ぐ方法の解説で4件、内定者フォローツールの比較記事は2件でした(2026年10月3日時点の検索結果での実測)。学生向けの施策を中心に置くページが多く、中途採用に絞ったページはありませんでした。中途採用で採用管理システムの設定を考えるときに中心になるのは、内定者向けの研修より手前の、内定通知から回答までの期間です。選考全体で辞退を減らす設計は内定辞退防止の進め方で扱っています。
中途採用の内定辞退率は2025年実績で15.0%
マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」によると、企業1社あたりの内定者数と採用者数の平均から計算した中途採用の内定辞退率は、2025年が15.0%でした(調査時期2025年12月17〜22日・2025年全体n=1,327)。2024年の9.3%から5.7ポイント上がっています。同じ調査のp.76では、内定を通知してから応諾を得るまでの平均日数が、1次面接をWebで行った企業(n=934)で8.9日、対面で行った企業(n=1,306)で8.4日でした。
内定通知から応諾までの平均日数(Web面接) | 企業の割合 |
|---|
1週間未満 | 46.7% |
1〜2週間未満 | 36.8% |
2週間〜1ヶ月未満 | 9.7% |
1ヶ月以上 | 6.7% |
出所:マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」p.76(1次面接をWebで実施し内定者が1名以上いる企業n=934)。
内定通知から応諾までの平均日数が2週間以上の企業は、Web面接で合わせて16.4%です(表の「2週間〜1ヶ月未満」と「1ヶ月以上」を本稿で合計)。言い換えると、Web面接の企業の多くは、内定通知から応諾までの平均が2週間未満に収まっています。採用管理システムで回答期限を候補者ごとの項目として持たせ、期限の前に担当者へ知らせる設定が意味を持つのは、候補者の判断がこれだけ短い期間で決まるためです。
採用管理ツールの利用は28.5%で、メイン利用者の満足計は前年から23.3ポイント下がった
マイナビの同じ調査で、2025年の中途採用に採用管理ツールを利用した企業は回答者全体の28.5%で、2024年の26.5%から2.0ポイント増えました(マイナビ「中途採用状況調査2026年版」p.13・n=1,500)。一方、2025年に最も利用したサービスとして採用管理ツールを挙げた企業のうち、「前年より満足」と「前年並みに満足」を合わせた割合(満足計)は66.7%で、2024年の90.0%から23.3ポイント下がっています(同p.91・メイン利用者n=45)。調査の中で採用管理ツールは、転職サイトや人材紹介会社と並ぶ採用サービス・手法の1つという扱いです。
メイン利用者の母数は45と小さく、調査は不満の理由を示していないため、満足度が下がった原因はこの数字からは分かりません。ここから言えるのは、ツールを入れることと、ツールで辞退が減ることは別の話だという点までです。辞退に備えて何を記録し、何を通知させるかは、導入する企業が自分で決めて設定する必要があります。
内定辞退を数えるには、選考ステータスを辞退の時点で分けておく
採用管理システムで内定辞退を数えるには、辞退が起きた時点ごとに選考ステータスを分けて設計します。最低限分けたいのは、内定を出す前に候補者が選考を降りる「選考辞退」、内定を通知した後に承諾しないまま断る「承諾前の辞退」、承諾した後に入社日までに断る「承諾後の辞退」の3つです。3つを1つの「辞退」ステータスにまとめると、どこで候補者を失っているかが集計に出てきません。
ステータス | 入る条件 | 次に進む先 |
|---|
選考中(段階ごと) | 書類選考・1次面接・最終面接などの段階にいる | 内定通知済/選考辞退/不合格 |
選考辞退 | 内定の前に候補者が辞退を伝えた | 終了 |
内定通知済(回答待ち) | 内定を通知し、回答期限を入力した | 内定承諾/承諾前の辞退 |
承諾前の辞退 | 承諾の前に候補者が辞退を伝えた | 終了 |
内定承諾 | 承諾を受け、入社日が決まった | 入社/承諾後の辞退 |
承諾後の辞退 | 承諾の後、入社日までに辞退を伝えた | 終了 |
入社 | 入社日を迎えた | 終了 |
マイナビの調査の内定辞退率は、内定者数と採用者数の平均を用いて計算しているため、内定を出したのに採用に至らなかった人を、承諾の前後を区別せずに含む値です。自社で同じ考え方の率を出すなら「(内定通知済になった人数-入社した人数)÷内定通知済になった人数」で計算します。ステータスを上の表のように分けておけば、承諾前と承諾後の内訳も同じデータから出せるのが利点です。分母に何を置くかで率が変わる点は、承諾率の分母の置き方で詳しく扱っています。
辞退理由は自由記述だけでなく選択肢の項目で残す
辞退理由を自由記述の欄だけで残すと、後から集計できません。採用管理システムには辞退理由を選択肢の項目として持たせ、自由記述は補足に回すのが基本です。選択肢は、候補者が実際に挙げた理由を後から迷わず振り分けられる粒度にし、「不明(理由を聞けていない)」も1つの選択肢として残します。
- 条件(年収・役職・仕事の内容)
- 他社の内定を承諾した
- 現職に残る(引き留めを含む)
- 家族の意向
- 勤務地・働き方
- 選考中の対応や面接の印象
- 不明(理由を聞けていない)
選択肢と一緒に残したいのは、誰がいつ聞いたかと、候補者本人の言葉か担当者の推測かの2点です。紹介会社経由の辞退では、理由が紹介会社の担当者の要約で届くことがあるため、本人の言葉と区別しておかないと集計の意味が崩れます。「不明」を選択肢に残すのは、理由を聞けていない辞退がどれだけあるか自体が、運用を見直す材料になるからです。
辞退を防ぐ通知は回答期限・選考の滞留・連絡の空白の3つ
採用管理システムの通知で防げる辞退は、企業側の連絡の遅れから起きるものに限られます。設定する通知は、内定の回答期限が近づいたとき、選考の段階が決めた日数を超えて止まったとき、内定承諾から入社日までのあいだに候補者との連絡が決めた日数以上空いたときの3つです。日数の基準は自社の選考の実績から決め、外部の平均値をそのまま当てはめないようにします。
通知 | 条件の例 | 通知を受けた担当者がやること |
|---|
回答期限 | 回答期限の2営業日前になった | 候補者に残っている懸念が無いかを確かめる連絡を入れる |
選考の滞留 | 面接の評価が入力されないまま2営業日が過ぎた、次の面接の日程が決まらない | 面接官に評価の入力を頼む、日程の候補を出し直す |
承諾後の連絡の空白 | 内定承諾の後、最後の連絡から14日が過ぎた | 入社手続きの案内や配属先との面談など、次の接点を入れる |
条件の例に挙げた日数は、設定を考えるための出発点として置いたもので、調査や基準に基づく値ではありません。自社の基準を決める出発点は、1次面接から内定までにかかっている日数を採用管理システムから出すことです。マイナビの調査では、1次面接から内定までの平均はWeb面接で11.0日でした(マイナビ「中途採用状況調査2026年版」p.71)。自社の日数をこれと比べると、面接から内定を出すまでに時間がかかりすぎていないかの見当が付きます。
通知の条件を自由に組めるか、回答期限を候補者ごとの項目として持てるかは、製品によって違います。導入済みのシステムで設定できる範囲は、提供会社のヘルプや設定画面で確かめてください。
候補者とのやり取りは、経路が違っても1人の記録に残す
候補者とのやり取りは、メール・電話・紹介会社経由の連絡のどれで受けても、採用管理システムの同じ候補者の記録に残します。中途採用では、人材紹介会社の担当者、面接官、配属先の上長と、候補者に接する人が分かれるのが普通です。誰がどの懸念を聞いたかが記録に無いと、次に話す人が同じ質問を繰り返したり、答えるべき懸念を見落としたりします。
面談や電話の後に残すのは、話した日付、話した人、候補者が挙げた懸念、その懸念に誰がいつまでに答えるかの4点で十分です。項目を増やしすぎると入力されなくなるため、最初は少なく始めて、集計で使わなかった項目は削ります。
辞退の原因は、段階別・経路別・理由別の3つの集計で絞り込む
採用管理システムに溜まった辞退の記録は、段階別・経路別・理由別の3つで集計すると、どこを直せばよいかが絞り込めます。段階別で見えるのはどの時点で候補者を失っているか、経路別は人材紹介・ダイレクトリクルーティング・自社サイトからの応募のどこで辞退が多いか、理由別はその辞退が条件の問題か選考の進め方の問題かです。
集計 | 分かること | 次の打ち手の例 |
|---|
段階別 | 選考辞退・承諾前・承諾後のどこで多いか | 選考辞退が多ければ日程調整と面接の進め方、承諾前が多ければオファーの伝え方と条件を見直す |
経路別 | 応募の経路ごとの辞退の多さ | 紹介会社ごとに、求人の情報の渡し方を見直す |
理由別×段階 | 同じ理由が特定の段階に偏っていないか | 「条件」の辞退が承諾前に集中していれば、提示額の決め方を見直す |
段階ごとの通過率の出し方と基準値の置き方は、採用の歩留まりの計算式で扱っています。辞退の集計は、歩留まりのうち候補者の側から選考を降りた分を取り出したもので、どちらも同じステータスの設計から出せるデータです。
中途採用は件数が少ないので、率より件数と理由で見る
中途採用は1つの求人で内定を出す人数が少なく、辞退率は1件の辞退で大きく動きます。内定者が10名の期間に辞退が2名なら辞退率は20%ですが、辞退があと1名増えるだけで30%です。月ごとの率で良し悪しを決めず、半期や1年の単位で件数と理由を並べて見るほうが、偶然の上下に振り回されません。
段階ごとの人数と率を月次で記録する表を一から作るなら、採用の目標設定からKPIの管理までをまとめたExcelのテンプレートを使うのも1つの手です。
→ 採用KPIを管理するための参考シート(Excel)を受け取る
採用管理システムに入らない候補者の意向は、人が聞いて記録する
他社の選考がどこまで進んでいるか、現職から引き留めを受けているか、家族がどう考えているかといった候補者の意向は、誰かが聞いて入力しない限り採用管理システムには入りません。こうした候補者側の事情は辞退の理由になりやすいので、面接やオファー面談で聞く項目を決めておき、聞いた内容を記録に残す運用が要ります。
- 他社の選考の段階と、他社から示されている回答期限
- 転職先を決めるうえで重視していること
- 現職へ退職を伝える時期と、引き留めの見込み
- 家族への相談の状況
- 入社日の希望
聞いた内容には、聞いた日付を添えるのが原則です。他社の選考や現職との話し合いは内定通知から回答までのあいだにも進むため、いつの時点の話かが分からない記録は判断に使えません。
ハイクラスのエンジニア採用で、候補者の意向の確認や内定後のフォローを社内の人手だけで回しきれない場合は、外部に任せる方法もあります。OffersのAI RPOは、選考中の候補者の意向確認や競合の選考状況の把握、内定後から入社までの候補者フォローと辞退リスクの早期検知までを支援に含む、エンジニア職向けの採用代行サービスです。
辞退者のデータは利用目的の範囲で保管し、不要なら削除する
辞退した候補者の情報も、採用管理システムに残っている限り求職者の個人情報です。職業安定法第5条の5は、求人者を含む事業者に対し、求職者等の個人情報を業務の目的の達成に必要な範囲内で、目的を明らかにして収集し、その目的の範囲内で保管・使用するよう定めています。辞退した候補者のデータを、将来の求人の案内など選考とは別の連絡に使うなら、その目的を候補者に示しているか、同意を得ているかを先に確かめることが前提です。
職業安定法の厚生労働省の指針(平成11年労働省告示第141号・最終改正 令和6年厚生労働省告示第318号)は第五で、求人者を含む事業者に対し、保管・使用する個人情報について、収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を破棄または削除するための措置を講じ、求職者等の求めに応じてその内容を説明するよう定めています。採用管理システムで決めて設定するのは、辞退者のデータの保持期間、閲覧できる担当者の範囲、期間を過ぎたデータを削除する手順の3つです。法令上の義務とシステムの設定項目の対応は、採用管理システムの定義と法令上の義務で扱っています。
内定辞退の観点で採用管理システムを選ぶときに確かめる5項目
内定辞退への備えとして採用管理システムを選ぶとき、または今使っているシステムを見直すときは、選考ステータスを自社の定義で作れるか、辞退理由を選択肢の項目として持てるか、期限と滞留の通知を条件で組めるか、段階別・経路別のレポートか表計算ソフトへの書き出しがあるか、データの保持期間と削除を管理できるかの5つを確かめます。
確かめる項目 | 確かめる理由 | 確かめ方 |
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ステータスを自社の定義で作れるか | 選考辞退・承諾前・承諾後を分けて数えるため | 試用環境でステータスを追加・名称変更してみる |
辞退理由を選択肢で持てるか | 理由別に集計するため | 任意の項目を選択式で追加できるかを見る |
期限と滞留の通知を条件で組めるか | 回答期限と連絡の空白を担当者に知らせるため | 日付の項目を条件にした通知を作れるかを見る |
段階別・経路別のレポートか書き出しがあるか | 辞退の原因を絞り込むため | 応募経路と辞退の段階を掛け合わせて出せるかを見る |
保持期間と削除を管理できるか | 不要になった個人情報を削除するため | 期間を過ぎた候補者を抽出し、まとめて削除できるかを見る |
機能の名前は製品ごとに違うため、提供会社の資料にある機能名だけで判断せず、試用環境か商談の場で上の操作を実際に見せてもらうと確実です。導入した企業が導入前後で何の数字を見たかは、採用管理システムの導入事例にまとめています。
採用管理システムで内定辞退に向き合うときの要点
採用管理システムは、候補者の辞退の決断そのものを変える道具ではなく、企業側の連絡の遅れと引き継ぎの漏れから起きる辞退を減らし、辞退を数えられる形にする道具です。中途採用の内定辞退率は2025年実績で15.0%、内定通知から応諾までは平均8.9日(マイナビ「中途採用状況調査2026年版」・Web面接)で、候補者の判断は短い期間で決まります。
- 選考ステータスは、選考辞退・承諾前の辞退・承諾後の辞退を分けて設計する
- 辞退理由は選択肢の項目で残し、「不明」も選択肢に入れる
- 通知は回答期限・選考の滞留・承諾後の連絡の空白の3つに設定し、日数は自社の実績から決める
- 辞退は段階別・経路別・理由別で集計し、件数が少ないうちは率より件数と理由で見る
- 他社の選考状況や現職の引き留めは、人が聞いて日付つきで記録する
- 辞退した候補者のデータは、利用目的の範囲で保管し、保持期間を過ぎたら削除する