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エンジニア採用の売り手市場とは|企業への影響と採用策

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エンジニア採用の売り手市場とは|企業への影響と採用策

エンジニアの中途採用は、求人の数が求職者の数を上回る売り手市場が続いています。ただ、売り手の強さは「どの統計の、どの倍率を見るか」で大きく変わり、直近の公的統計では前年より少し緩んだ動きも見られるのが2026年の状況です。市場の数字を正しく読めば、採用が進まない原因を「人がいないから」で片づけずに済みます。採用担当者が自社で変えられるのは、求人票・スカウト・選考の進め方です。

Offers HR Magazine編集部監修者

株式会社overflow / 編集担当

Offers HR Magazine編集部

Offers HR Magazine 編集部は、株式会社overflow が運営する採用メディアの編集チームです。エンジニア採用に取り組む人事・採用担当者に向けて、採用手法・人事制度・組織づくりの情報を届けています。

エンジニア採用における売り手市場の意味

エンジニア採用における売り手市場とは、エンジニアの求人数が仕事を探すエンジニアの数を上回り、候補者が複数の企業から選べる立場にある状態です。採用市場では、労働力を提供する求職者を「売り手」、人材を求める企業を「買い手」と呼びます。

売り手市場では、企業が候補者を選ぶよりも先に、候補者が企業を比べて選ぶ立場です。逆に、求職者の数が求人数を上回り、企業が応募者の中から選べる状態は「買い手市場」と呼ばれます。

売り手市場かどうかを判断する有効求人倍率

売り手市場かどうかを判断する代表的な指標は、厚生労働省が毎月公表する有効求人倍率です。有効求人倍率は、公共職業安定所(ハローワーク)に登録された有効求人数を有効求職者数で割った値で、1倍を上回れば求人のほうが多い売り手市場、1倍を下回れば買い手市場と読みます。

たとえば有効求人数が1,500、有効求職者数が1,000なら、有効求人倍率は1.5倍です。仕事を探す人1人あたり1.5人分の求人がある計算になります。

同じ統計には「新規求人倍率」もあります。有効求人倍率が前月から引き継がれた求人・求職を含むのに対し、新規求人倍率はその月に新しく出た求人と求職だけで割った値です。その月に動いた求人と求職の関係は新規求人倍率に、前月から続く分を含めた市場全体の関係は有効求人倍率に表れます。

エンジニアの求人倍率は全職業の平均を上回る

エンジニアの求人倍率は、全職業の平均を上回っています。厚生労働省『一般職業紹介状況(令和8年8月分)』参考統計表8-1(全国計・常用(除パート))によると、情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.48倍、新規求人倍率は3.13倍でした。

区分(2026年8月・常用(除パート)・全国計)

有効求人倍率

新規求人倍率

情報処理・通信技術者

1.48倍

3.13倍

職業計

1.17倍

2.06倍

同じ資料でパートを含む常用の表を見ると、職業計の有効求人倍率は1.06倍、情報処理・通信技術者は1.33倍で、除パートの表より低くなります。記事や資料で「エンジニアの求人倍率は◯倍」という数字を見たら、有効か新規か、パートを含むかを確かめてから比べます。

ハローワークの統計は、転職サイトや人材紹介会社を通じた採用を含みません。民間の転職サービスが公表する倍率は、自社の会員登録者を分母にするなど定義がそれぞれ違うため、公的統計と同じ物差しで並べることはできません。

2026年のエンジニア採用市場は前年より緩んだ売り手市場

2026年8月時点のエンジニア採用市場は、求人が求職者を上回る売り手市場のままですが、ハローワークの統計では前年より売り手の強さが少し和らいでいます。同じ資料の参考統計表8-2(常用(除パート))によると、情報処理・通信技術者の有効求人倍率は前年同月から0.10ポイント、新規求人倍率は0.44ポイント下がりました。

動きの中身を見ると、有効求人は前年同月比で0.9%減、有効求職は5.8%増でした。求人がわずかに減り、仕事を探すエンジニアが増えたため、倍率が下がった形です。一方で就職件数は前年同月比7.0%減で、求職者が増えてもハローワークを通じた就職の件数は増えていません。

採用担当者としては、「応募してくる人は増えても、自社の要件に合う人に届き、選ばれる難しさは変わっていない」と見ておくのが安全です。倍率が少し下がったことを理由に、待ちの採用に戻すのは早すぎます。採用が難しくなる理由を整理した記事として、エンジニア採用が難しい理由もあわせて参照してください。

エンジニア採用が売り手市場になっている3つの背景

エンジニア採用が売り手市場になっている背景は、IT人材の需要の伸びに供給が追いつかないこと、DXやAI活用でエンジニアを求める企業が業種を問わず広がったこと、経験のあるエンジニアの多くが転職を急いでいないことの3つです。前の2つは市場全体の条件で、3つ目は企業の採用の進め方で差がつく部分です。

IT人材の需要の伸びに供給が追いつかない

経済産業省の『IT人材需給に関する調査(概要)』(2019年4月)は、IT人材の供給が2030年まで増える見通しを示したうえで、中位・高位のシナリオでは需要がそれを上回って伸び、需給ギャップが残ると試算しています。供給が減るのではなく、需要の伸びが供給の伸びを上回るという見通しです。

不足の大きさは前提によって変わります。同じ資料で、需要の伸びを年平均2.7%程度、労働生産性の上昇を年0.7%とした場合、2030年の需給ギャップは45万人です。年3.54%の労働生産性上昇を実現すれば、2030年時点で需要と供給は均衡するとも書かれています。

よく引かれる「最大約79万人」は、需要の伸びを年4.4%程度とした高位シナリオの数字です。概要版では、高位シナリオの2030年の需要が192万人、2030年の供給が113万人で、差を取ると約79万人になります。IT人材不足が起きる仕組みは、IT人材不足はなぜ起きるかで詳しく扱っています。

DXやAI活用でエンジニアを求める企業が広がった

エンジニアを求めるのは、IT企業だけではありません。製造・金融・小売・医療などの事業会社でも、業務システムの刷新、データの活用、生成AIを使ったサービスづくりを社内で進めるため、エンジニアを中途採用する動きが広がっているのが現状です。

事業会社がエンジニアを募集すると、IT企業や受託開発の会社と同じ候補者を取り合うことになります。業種をまたいで候補者が比較されるため、年収や働き方の条件だけでなく、どんな技術で何を作る仕事なのかを示せない求人は、候補者の比較の段階で外れやすくなります。

経験のあるエンジニアの多くが転職を急いでいない

即戦力のエンジニアほど、現職で待遇や役割を得ていて、急いで転職する理由を持っていません。求人を出して応募を待つだけでは、こうした人の目に自社の情報が入りにくくなります。

Offers の登録者が選んだ転職意向(Offers(株式会社overflow)調べ・登録者 n=31,649・2026年9月時点)を見ると、「今は考えていない」が47.5%、「良いオファーがあれば検討」が31.4%で、合わせて78.9%でした。「すぐ転職したい」は10.8%です。

エンジニアなどが登録する転職サービス Offers でも、登録者の約8割は今すぐには動かない層にあたります。売り手市場の採用難の大きな部分は、条件と情報がそろったときに動く層に、自社の求人を見てもらえていないことから生まれています。

売り手市場がエンジニア採用に与える3つの影響

売り手市場がエンジニア採用に与える影響は、求人が候補者の目に届きにくくなること、採用が決まるまでの期間と費用が増えること、選考の途中や内定後の辞退が起きやすくなることの3つです。どれも、候補者が複数の企業を比べられる立場にあることから生まれます。

求人が候補者の目に届きにくくなる

求人が多い市場では、自社の求人が他社の求人に埋もれやすくなります。求人の内容が良くても、候補者に見てもらえなければ応募にはつながりません。

応募が集まらないと、書類選考や面接に進む人数が足りず、採用の工程全体が止まってしまう状態です。エンジニアのポジションが埋まらない期間が長引くほど、開発やシステム刷新の計画が遅れ、事業への影響も大きくなります。

採用が決まるまでの期間と費用が増える

要件に合うエンジニアが見つからず採用活動が長引くと、求人広告費、人材紹介の手数料、スカウトサービスの利用料、担当者や面接に出る現場社員の人件費が積み上がります。

候補者を他社と取り合う場面では、提示年収や待遇の見直しを迫られることも珍しくありません。社内の他職種と同じ給与テーブルで年収帯を決めていると、候補者が比べている市場の水準と合わず、比較の段階で選ばれにくくなります。

選考の途中や内定後の辞退が起きやすくなる

経験のあるエンジニアは、複数の企業の選考を同時に進めていることが多く、条件や対応の早さで他社を選べば、面接や内定を辞退するのが一般的です。選考に時間がかかる企業ほど、途中で他社に決まってしまう可能性が高くなります。

辞退が出ると、候補者探しから選考をやり直すことになり、それまでにかけた時間と費用は戻りません。売り手市場では、選考の各段階で候補者に「この会社に進みたい」と思ってもらえるかどうかが、内定承諾までたどり着けるかを左右します。

売り手市場でエンジニア採用を進める5つのポイント

売り手市場でエンジニア採用を進めるには、求人票と採用ページに仕事の中身を書く、採用条件を必須と歓迎に分けて市況に合わせる、スカウトで転職を急いでいない層と接点をつくる、採用手法を組み合わせる、選考を短くして辞退を減らす、の5つに取り組みます。市場の需給は企業が変えられないため、差がつくのは自社が出す情報と選考の進め方です。

求人票と採用ページに仕事の中身を書く

エンジニアが応募を判断する材料は、求人票と採用ページから読み取れる、入社後に何を作るのか・どの技術を使うのか・誰と働くのかという情報です。情報が少ない求人は、条件が良くても比較の対象から外れやすくなります。

Offers に公開された正社員求人を本文の文字数で比べると(Offers(株式会社overflow)調べ・正社員求人 n=3,292・2022年2月〜2026年9月公開)、閲覧あたりの応募率は、2,792〜3,492字の求人が59〜1,272字の求人の4.7倍でした。3,495字以上の区分は4.1倍で、長いほど応募が増えるわけではありません。

書く順番は、業務内容と開発体制、使う技術、評価と年収の考え方です。法律が求める記載事項と書き方は求人票の記載事項と書き方でまとめています。

自社の採用ページや求人の情報が、候補者からどう見えているかを外から確かめるなら、エンジニア採用力チェックを使えます。企業のURLを入力すると、公開されている採用情報を5指標24項目で採点し、原則1営業日以内に無料でレポートが届く診断で、選考の通過率やスカウトの返信率は対象外です。

採用条件を必須と歓迎に分けて市況に合わせる

求める人材からの応募が無いときは、採用条件が市況に合っていない可能性があります。求める人物像を、絶対に譲れない必須条件と、あれば優遇する歓迎条件に分けて定義し直します。

必須条件が多いほど、該当する候補者は少なくなるのが道理です。入社後の研修や実務で身につけられる知識や技術は歓迎条件に回し、経験は浅くても伸びる見込みのある人材を採用して育てる道も並行して検討します。進め方はポテンシャル採用の進め方で扱っています。

競合する企業の求人の条件や年収帯も定期的に確かめ、自社の求人の掲載内容を更新することも欠かせません。

スカウトで転職を急いでいない層と接点をつくる

今すぐには動かない経験者と接点をつくるには、企業から候補者に直接連絡するスカウトが有力な手段になります。スカウトで詰まりやすいのは返信の段階です。

Offers のスカウト(Offers(株式会社overflow)調べ・スカウト n=31,000・2025年3月〜2026年2月送信)では、送信を100とすると開封が59.7%、返信が6.2%、面談が2.9%でした。返信した候補者のうち46.1%が面談まで進んでいます。

開封した候補者の大半が返信していないため、件名よりも本文と、スカウトから見に行く求人票の中身を見直すほうが改善の余地は大きくなります。候補者の経歴のどこを読んで連絡したのかを書き、求人票と同じ内容を短く伝えるのが基本です。スカウトを含む母集団の作り方は母集団形成の設計で扱っています。

経験のあるエンジニアへ企業から直接連絡する場の1つが、株式会社overflow が運営する Offers です。エンジニアやPdMなどの正社員の中途採用に特化した採用プラットフォームです(Offers 企業向けページ)。

採用手法を組み合わせる

求人広告や人材紹介は応募や紹介を待つ手法で、売り手市場ではそれだけでは母集団が足りなくなりがちです。スカウト、社員から知人を紹介してもらうリファラル採用、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や技術ブログでの発信を組み合わせて、候補者との接点を増やします。

エンジニアは勉強会や技術コミュニティで情報を集めることが多く、自社のエンジニアが登壇や発信を続けると、転職を考え始めたときに思い出してもらいやすいのが利点です。リファラル採用の制度はリファラル採用の仕組みと制度設計、媒体の選び方はエンジニア採用媒体の比較が参考になります。

選考を短くして辞退を減らす

候補者が複数の企業を同時に受けている以上、選考にかかる日数そのものが辞退の原因です。面接の回数、日程調整の手間、合否連絡までの日数を見直し、候補者を待たせる時間を減らします。

現場のエンジニアが面接に加わる企業では、現場が参加する回をどこに置くかを先に決めておくと、日程調整で止まりにくくなります。面接では評価するだけでなく、仕事の中身やチームの話を候補者に伝え、選考の途中で志望度を上げてもらうことも欠かせません。

売り手市場を前提にしたエンジニア採用計画の立て方

エンジニア採用の計画は、売り手市場が当面続くことを前提に、応募を待つ期間を短く見積もらず、候補者に届く情報と選考の速さに予算と人手を割り当てて立てます。労働生産性の上昇を年0.7%とする前提では、IT人材の需要が供給を上回る見通しは、経済産業省の試算の中位・高位のシナリオで共通しています。

2026年8月のハローワークの統計のように、倍率が前年より下がる月があっても、要件に合う経験者を採用する難しさがすぐに変わるわけではありません。毎月の倍率は、有効と新規、パートの含否をそろえて推移を見る材料として使い、採用計画の根拠には自社の応募数・返信率・辞退率の実績を置くと、市場の変化に合わせて打ち手を選びやすくなります。

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