採用に力を入れているのに、優秀な候補者ほど途中で離れていく。面接の評価は人によってばらつき、申し送りの作成にも時間が奪われる。多くの採用現場がこの悩みを抱えています。
候補者は複数社を同時に比較し、面談慣れもしています。そんな時代に選ばれるには、面接を「見極めの場」から「惹きつけの場」へと捉え直す必要があります。
本記事は、2025年11月21日に開催したウェビナー「なぜ優秀な候補者ほど辞退するのか? AIで解決する『評価のブレ』と『候補者を惹きつける面接』の作り方」のレポートです。株式会社overflow 代表取締役CEOの鈴木裕斗と、株式会社ポテンシャライト HRパートナーの峯菜穂氏が登壇しました。
カジュアル面談で覚えておくべき数値から、引きつけテクニック5選、人とAIの役割分担、そしてAIによる面接支援の実際まで。「採用実務のための生成AI活用術」第3回をお届けします。
なぜ優秀な候補者ほど辞退するのか──カジュアル面談が勝負になる理由
――鈴木:まず峯さんに、採用現場で意識すべき数値から伺えますか。
峯様:はい。あるIT特化型エージェントの保有求人数は約8000社と言われます。一方で、キャリアアドバイザーが面談で丁寧に紹介できるのは5〜10社程度です。
推薦から応募に至る割合は約60%なので、求職者が実際に応募する企業数は3〜7社にとどまります。8000社のうちの数社という、かなり狭き門なのです。
エージェント経由で応募をいただけている時点で、その狭き門を通っている。この実態を知らないと、面談を雰囲気で進めてしまいがちです。
そして2016年にWantedlyがカジュアル面談を生んでから、もう9年が経ちました。各社の引きつけ力は強まり、求職者も面談慣れして他社比較の目を持っています。
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――鈴木:歩留まりの実感値はいかがですか。
峯様:支援先の平均で、カジュアル面談32件・一次面接13件・二次面接4件・内定2件・内定承諾1件が、1内定に必要な歩留まりです。
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選考途中の目線を下げるのは本質的ではありません。だからこそカジュアル面談が勝負で、弊社は引きつけ100%で臨んでいます。
引きつけが効くと候補者の意欲が上がり、面接でのパフォーマンスも上がります。通常30%の一次通過率が50%に、二次も70%に上がることもある。結果として選考遷移率が確実に上がるのです。
引きつけテクニック①②──専門用語の言語化と「結論か背景か」
――鈴木:ここから具体的なテクニックですね。15選のうち5つを紹介いただきます。
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① 専門用語の言語化
峯様:1つ目は専門用語の言語化です。当たり前のようですが、私たちは無意識に専門用語を使い、しかも他人に指摘されないと気づきません。
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例えば「MVPフェーズでPSFとPMFを目指すが、デューデリジェンスもあるため」と言われても、伝わらない方は調べることになります。
おすすめは「おばあちゃんも理解できるか」という基準です。以前は専門用語を3秒と13秒で補足説明する練習もしていました。端的に伝える力と、補足する力の両方が鍛えられます。
② 結論から話すか、背景から話すか
峯様:2つ目は、結論から話すか背景から話すかです。どちらが分かりやすいかは場面によるので、使い分けが大切です。
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回答が頭の中で整理できていない時は、「整理し
ながら話しますね」と前置きを置くのが有効です。聞き手も身構えずに済み、理解しやすくなります。
引きつけテクニック③──質疑応答は「魅力を伝える場」
――鈴木:3つ目が、僕も一番印象的だった「質疑応答」ですね。
峯様:はい。質疑応答をただの質問対応にするのは、非常にもったいないです。1時間の面接でも10分は質疑に取るので、10分間引きつけられる大チャンスと捉えています。
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例えば「詳しい仕事内容を教えてください」に、「営業です」だけで終えてはいけません。チーム構成や現在の課題、なぜあなたにお任せしたいのかまで返すと、有意義な時間になります。
質疑応答にはレベルがあります。回答できない段階から、固有名詞や数値・比較観点を入れて答える段階、最終的にはストーリーで語れる段階まで。練習すれば習得できます。
――鈴木:質問は「確実に知りたいからやっている」という明確なシグナルですよね。自分なりの回答を持っているから、確認しに来る。
そこをさらっと流して期待値を下回るとネガティブになりますが、熱量と分かりやすさで上回ると一気に良い印象になります。
峯様:質問には2つのパターンがあると感じます。本当に分からなくて確認する質問と、興味があるからこそ自分の解釈が合っているか確かめる質問です。
この見極めができると、回答の仕方も変えられます。ただキャッチボールするのではなく、自社のどこに紐づけられるかを考えながら聞くことが大切です。
引きつけテクニック④⑤──数値で語る/合理と情理を入れる
④ とにかく数値を用いて説明する
峯様:4つ目は、とにかく数値で説明することです。「ものすごく成長しています」では解釈が人それぞれになります。
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「前年比155%成長で、成長ランキング2位」と言えば、すごさが具体的に伝わります。相手に推測させないコミュニケーションが、事実を魅力に変えるのです。
⑤ 合理と情理を入れる
峯様:5つ目は、合理と情理の両方を入れることです。合理だけでは人は動かず、情理だけでは納得しません。
例えば自社の強みを語るとき、実績という合理を示したうえで、それを何のために使うのかという思想・情理を続けます。すると人は納得し、心も動かされやすくなります。
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――鈴木:候補者がどちらのタイプか、見極める指標はありますか。
峯様:相手が感情型なら情理を厚めに、合理型なら合理を厚めにと配分を変え、まず試してみます。
――鈴木:指標があるとすれば、質問の数だと思います。情理寄りの質問が増えればそちらへ、論理寄りが増えればそちらへ。自然に偏りが見えてきます。
人とAIの役割整理──採用フェーズで何を任せるか
――鈴木:後半は、人とAIの役割分担ですね。
峯様:採用は市場調査から事業戦略、ブランディング、面談・面接まで大きく10項目に分けられます。その多くでAIの比率が高まっています。
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例えば求人ドラフトは、現在AIの活用が約45%ですが、3年後には約95%まで高まり、人間は最終確認程度になる可能性が高いと見ています。
AIが得意なのは効率化と客観化です。履歴書や職務経歴書の解析・要約、必須スキルや経験年数に基づく一次スクリーニングは、AIが速く正確にこなします。
一方で、感情を伴う対応はまだ人間の役割です。例えば日程のリスケを伝える電話では、AIの声より人間の声で「承知しました」と言われた方が、求職者も気持ちよく受け取れます。
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AIで「評価のブレ」と「申し送り」を解決する──面接支援の実際
――鈴木:ここからは、面接の困りごとをAIでどう解決するかをお話しします。お困りごとは大きく3つあります。
1つ目は申し送りの作成が面倒なこと。そもそも面談を録画している企業は意外と少なく、テキストがないと記憶を頼りに作ることになります。
2つ目は面接官への教育・フィードバック。担当によって引きつけや見極めにばらつきが出て、その均質化が課題です。
3つ目は評価そのもののばらつきです。
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Offersでは、これらを解決する「面接レポ」を提供しています。面談が終わると、まず主観での評価と理由を簡単に入力いただきます。
――鈴木:すべてをAIに任せると最初からフラットな回答になるため、主観を起点にするのがポイントです。
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入力後、Slackに推薦理由や、その会社が理想とする面接像からのアドバイスが返ります。Valueや評価指標を学習させているので、改善点もフィードバックされます。
スコアはスキルマッチ・カルチャーマッチなどの項目ごとに定量化されます。「この人が2点だった理由」「5点の理由」を議論でき、評価の合意が取りやすくなります。
さらに、カスタマイズされたお礼メールもSlackのスレッドにそのまま出力されます。今回の面接で評価した部分を盛り込めるので、定型文にならずに済みます。
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峯様:AIでメールは書けても、開いて読み込ませてリライトして送るのが面倒で進まないものです。それがすっと出てくるのはありがたいですね。
Q&A|評価の定量化と、AIはどこまで踏み込むか
――鈴木:「面接の評価を定量化した方がよいのか。人を点数化することに抵抗もある」というご質問です。
峯様:採用のスコアは、その人の価値を決めるものではありません。会社に合うかどうかは総合的なもので、合えばパフォーマンスが出やすい、それだけです。
点数化はあくまで自社の方針を明確にし、社内で判断軸を持って議論しやすくするためです。市場全体で人物を評価するのは法律上も禁止されているので、その目的では行いません。
――鈴木:「面接でのAIの判断範囲は、間や表情、手足の動きまで、発話内容と連動して解析する未来に踏み込みますか」というご質問もあります。
これは技術的に十分ありうると考えています。私たちの進化というよりLLM側の進化で、動画を高精細に生成できるなら、解析側はもっと正確に読み取れているはずです。
峯様:声のトーンの変化から感情を分析する動画解析ツールも実際にありました。そうした機能は、もうすぐそこまで来ていると感じます。
おわりに
――鈴木:最後に告知です。Offersでは「面接レポ」のご相談を受け付けているほか、組織定着をテーマにしたウェビナーや、私とのカジュアルな壁打ちの会も実施しています。
峯様:ポテンシャライトでは、面談面接トレーニングや無料相談会を行っています。AIコミュニティ「ポテAI」やメディア「ポテAIラボ」では、HR×AIの実践知を発信しています。
ワークショップなども開催していますので、面談・面接に限らず人事採用のお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
本セッションが、候補者を惹きつける面接づくりのヒントになれば幸いです。
おわりに
優秀な候補者ほど辞退する時代、面接は見極めの場であると同時に「惹きつけの場」です。狭き門を通って出会えた一人に、専門用語をかみ砕き、数値で語り、質疑で魅力を伝える。その積み重ねが選考遷移率を押し上げます。
評価のブレや申し送りの負担は、AIで均し、定量化できます。人は最終判断と感情の機微に集中し、AIは効率化と客観化を担う。役割を分けることが、候補者体験の質を高めます。
明日からの一歩として、まずは次の面談で「質疑応答を魅力を伝える時間」と捉え直すところから始めていただければ幸いです。
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