生成AIで作ったスカウトが当たり前になった今、候補者の受信ボックスには「AIが書いたような文章」が並びます。そのなかで、どうすれば返信したくなる一通になるのでしょうか。
採用現場の半数以上がすでにAIをスカウトや求人作成に使っています。便利になった一方で、誰が書いても似たような文面になり、差別化がいっそう難しくなっているのも事実です。
本記事は、2025年9月18日に開催したウェビナー「返信率を2倍にするAIを活用したハイクラス採用の実践講座」のレポートです。株式会社overflow 代表取締役CEOの鈴木裕斗と、株式会社ポテンシャライト HRパートナーの峯菜穂氏が登壇しました。
スカウトを「ラブレター」として設計する考え方から、AIに命を吹き込むプロンプト設計、そしてライブデモでの比較まで、AIスカウトの差別化に必要な実践知をお届けします。
AIスカウトが当たり前になった今、どこで差がつくのか
――鈴木:まず前提として、ハイクラス層はAIをどう受け止めているのでしょうか。Offersでは毎月100〜200名のハイエンドなエンジニアと面談しています。
その初発言を集計すると、AIへの感情はポジティブが80%、中立が11%、ネガティブが7.7%でした。対象は経験5年以上の方が中心で、今はポジティブな受け止めが大勢を占めています。

ポジティブの理由は「スキルアップの機会」「業務効率化への期待」「キャリア機会の拡大」の3つに整理できます。市場価値を高められる、生産性が上がる、転職市場で有利になる、という実感が背景にあります。
一方ネガティブは少数ですが、「技術習得への不安」と「置き換え懸念」に分かれます。職場のAI活用についていけるか、プログラマーの需要が減るのではないか、という声です。
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峯様:採用現場の側も、半数を超える方がすでにAIを活用していました。なかでもスカウトや求人情報の自動生成・改善には、かなりの方が使われています。
だからこそ今回は、AIスカウトを作るなかで「どう差別化するか」をテーマにお話しします。
スカウトは「ラブレター」──訴求の魅力をTIMで言語化する
――鈴木:峯さんはスカウト文章をどう設計しているのでしょうか。
峯様:私はスカウトをラブレターだと捉えています。あえて文章チックに書くのは、なぜあなたに声をかけたのかを伝えたいからです。
実は私が例として使った文章は、手を一切加えずすべてAIが書いたものです。私の経歴を読み込ませると、惚れた点や依頼したい理由が伝わる文面になりました。
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ただ、AIは指示する人やプロンプト次第でクオリティが大きく変わります。AIスカウトが当たり前になる世界線では、いかに他者と差別化するかが重要な課題になると考えています。
その土台になるのが、弊社が提唱するTIMという概念です。Tがターゲット、Iがインサイト(潜在ニーズ)、Mがメッセージを指します。
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転職を考える候補者のモヤモヤがインサイトです。その潜在ニーズを想定し、それに沿ってメッセージを設計する。この頭文字を取ってTIMと呼んでいます。
同じ会社でも、コンサルタントとして働く魅力と、エンジニアとして働く魅力は違います。だからこそスカウト文に落とし込むことが大切で、今回はTIMのなかでもインサイトに注目します。
ターゲットのインサイトを設計する
――鈴木:インサイトはどう捉えればよいのでしょうか。
峯様:人によって大事にするものが違うので、まずは相手の志向性を想像することが起点になります。
志向性とレイヤーでインサイトは変わる
峯様:エンジニアは大きく、技術志向型・組織志向型・プロダクト志向型の3つに分かれると捉えています。何を実現したくて転職するかが、それぞれ異なります。
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営業職も、独断と偏見ですが顧客志向・目的達成志向・創造志向で分けられます。さらに年齢やレイヤーでもインサイトは変わります。
ジュニアはとにかく技術スキルを上げたい。ミドルは今後のキャリアの選択肢を考える。シニアは家庭に理解のある環境を求める、といった具合です。
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つまり人間の数だけペルソナがあり、その分インサイトも存在します。全パターンにアプローチするのは不可能なので、どこに狙いを定めるかの設計が重要なのです。
鉄板の型3つはマズローの欲求に対応する
峯様:訴求の鉄板の型は3つあると考えています。経歴を褒める、解決できそうな課題を訴求する、希望を叶えられる環境だと伝える、です。
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この3つは、実はマズローの5段階欲求に対応していました。承認欲求が「褒め」に、所属の欲求が「課題訴求」に、自己実現が「希望を叶える環境」に当てはまります。
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土台の生理的欲求や安全の欲求は、生活できる給料か、無理のない働き方か、といった点です。候補者は無意識に求人票でこれを感じ取っています。
8つのニーズと「一言の配慮」
峯様:さらに分解すると、転職の意思決定の根底にあるニーズは8つに分類できると捉えています。所属・希少性・自己保存・成長・意味・承認・貢献・希望実現です。
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ただ、すべてを長文で書く必要はありません。一言の補足や配慮で十分で、テンプレ化もできます。
例えば、バンドをしている候補者に「弊社にもバンドをやるメンバーが3人いて気が合うと思う」と添えたところ、それを理由に返信をいただき、内定承諾まで至った事例があります。一言でもこだわる価値があると実感しています。
AIに命を吹き込む①──AIと人間の違いと「コンテキスト」
――鈴木:そのノウハウを、どうやってAIに反映させるのでしょうか。
峯様:AIに命を吹き込むには2つあると考えています。AIと人間の決定的な違いを知ることと、アウトプットを磨く力を持つことです。
決定的な違いは、AIはインプットした内容をそのまま出力するのに対し、人間は思考できる点にあります。
AIスカウトが増え、「これはAIだな」と見抜く方も一定数増えてきました。ありきたりな褒め文章や、「確信しています」のような独特の言い回しに、違和感を覚える方もいます。
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そこで鍵になるのがコンテキスト、つまり言葉が意味を持つための背景や文脈です。
私たちは生まれてから家族・先生・仲間といった変数に出会い、膨大な文脈を脳に蓄積して会話しています。一方AIは、Web上の全てを知る「アインシュタインの脳を持った子供」のような存在です。
知っているがゆえに、どれを引き出せばよいか分からない。だからこそ、適切な指示で欲しい出力を引き出すノウハウが必要になります。
――鈴木:文脈がないと、どう変わるのでしょうか。
峯様:「スカウト送っておいて」だけでは、誰に何通いつまでか分かりません。
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「採用が前に進まないと私たちのミッションが達成できないから」と意味を添えると、作業に意義が宿ります。AIも同じで、なぜその指示なのかを理解させないと、欲しい出力は得られません。
AIに命を吹き込む②──プロンプト設計と「粒度感」
――鈴木:具体的には、どう指示を設計すればよいのでしょうか。
峯様:「何を・どのように・どうやって・なぜ」というコンテキストに、ノウハウを重ねて出力指示を設計します。そうすると、自分の脳をそのまま反映したような文章をAIが書いてくれます。
最初は検算と修正の時期が必要です。ただ、これからの時代はAIの出力を磨ける力が必須になると考えています。70%の品質を99%まで引き上げる力です。
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対話形式の指示に加えて、蓄積型のプロンプトも有効です。ChatGPTのGPTs、GeminiのGemのように、設計したプロンプトを登録しておく仕組みですね。
誰がいつ使っても同じ品質を出せて、自分の出力に近づけられる。設計したプロンプトを自分で作れるようになるのが一番の近道だと捉えています。
登録するプロンプトには8つの公式があります。1つ抜けるごとにAIの推測領域が増え、出力がぶれやすくなります。
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例えば「800文字で」と指定すればその通りに出ますが、文字数を指定しなければ100文字になることもあります。推測の余地を減らす設計が大切なのです。
ライブデモ|指示の粒度でスカウトはここまで変わる
――鈴木:では実際に、指示の違いで出力がどう変わるか見せていただけますか。
峯様:私はGeminiユーザーで、Google Workspaceとの相性からセキュリティ面でも安心して使えます。Gemに、レベル別のカスタムプロンプトを登録してきました。
レベル1は「プロフィールを読んでカスタム文章を作って」だけ。レベル3は、経験を生かした依頼と、次の転職で叶えたい希望に触れ、温かみのある文章で、と指示します。
レベル5は、褒め・課題訴求・希望をそれぞれ200文字で、とカスタム文章だけを依頼します。プロンプト式は、目的・役割・参考資料まで作り込んだ最強版です。
――鈴木:実際の出力はどうでしたか。
峯様:レベル1でも、率直に良いスカウトを書いてくれました。プロフィールが充実していれば成立します。

レベル3は少し硬めですが、人柄まで踏み込んでくれました。一方で「なぜその組織を目指すのか」までは、AIに入れていない企業情報の領域なので踏み込めません。
レベル5は挨拶を省き、カスタム要素だけを出力しました。指示の粒度感がそのまま出力に表れます。
プロンプト式では、AIの役割を「経歴を解釈して未来を提示するキャリアのストーリーデザイナー」と定義しました。役割を明確にし、持ち上げるほど精度が上がります。
加えて「事実以外は書かない」「AIっぽい表現にしない」といったルールや、真似してほしい出力形式・トーンを記載します。すると、それを踏まえた文章を返してくれます。
クイズで実感|人間・AIプロンプト・Offers AI自動スカウトの見分けはつくか
――鈴木:ここでクイズです。3つの文面のうち、人間が全部書いたもの、峯さんのAIプロンプトで作ったもの、Offersに無料で備わるAI自動スカウトで作ったものは、それぞれどれでしょうか。
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峯様:半年前に初めてこのテーマでご一緒した時は、明確に見分けがつきました。今回の鈴木さんの自動スカウトを見て、ここまで来たのかと焦りました。
――鈴木:正解は、1番が人間、2番がOffersのAI自動スカウト、3番がAIプロンプトでした。ピタリ賞の方もいて、クイズが成り立つこと自体が進化の証だと感じます。
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ただ、2番には箇条書きや、いわゆるAIっぽい言い回しがまだ残っていますね。
峯様:箇条書きが喜ばれる場面もあるので、一概に悪いわけではありません。私がラブレター調にしたいだけ、とも言えます。
ひとつ持ち帰っていただきたいのは、候補者が要約や自己PRに書いた内容は、一番見てほしいポイントだということです。
そこをピックアップし、経歴から「こう推察しています」と人間ならではの読みを添えると、一気にAI感が消えると感じています。
Offers AI自動スカウトの進化とこれから(サービス紹介)
――鈴木:Offersの自動スカウトは、どう進化してきたのでしょうか。
峯様:先ほどの出力を見ても、本当に楽になっていて驚きました。
――鈴木:1年前はテンプレートしかなく、担当者名や候補者名が差し込まれる程度でした。現状のV1は、候補者プロフィールと求人情報を読み、「この課題があるからあなたに」というフックを作れる点が大きな進化です。
今回お見せするV2は、候補者推測データと志向性データを加えます。技術・プロダクト・組織のどの志向かを経歴から推測し、インサイトに沿った訴求を行います。
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さらに、1通目から3通目までのリマインドのストーリーを文脈として設計します。半年前に峯さんへ抱いた悔しさが、開発の原動力になりました。
V2では箇条書きを抑え、1通目で志向性、2通目で前回の文脈を汲んだ別角度の訴求、3通目で具体的な役割提案と総括、という流れにしています。
峯様:2通目で前回の文脈を引き継ぐ設計は、まさにどう書こうか悩んでいた部分です。ぜひ使わせてください。
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――鈴木:実際、ナイル様では返信率が3倍近くになるなど、成果も出ています。あわせて、面談後の議事録や申し送りを1分以内にSlackへ届ける新サービス「即レポ面接」も提供を始めました。
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理想の面接像と実際のデータを突合し、面接へのフィードバックも返します。申し送りの遅さや品質のばらつきといった課題を解消できるサービスです。
Q&A|志向性ごとに全パターン作る必要はあるか
――鈴木:「志向性が違う相手に、それぞれ全パターンのスカウトを作る必要があるのか。工数が多くなりそうだが、AIで下げられるのか」というご質問です。
峯様:全パターンを作る必要はないと考えています。重要なのは、レジュメを見て「この人は組織志向か、スキル志向か」を見定める力です。
例えば言語が多く書かれている、KPIの達成実績が並ぶ、チームリーダー経験を強調している、といった濃淡が必ずあります。そこから志向性を見極めて書き分けます。
褒めの部分は率直に感じたことで構いません。大切なのは、TIMで「このポジションで働く魅力」のカードを増やしておくことです。
カードが揃っていれば、組織志向の方にはこのカード、技術志向の方にはこのカードと切り替えられます。設計こそが効率化の鍵になります。
なお、ポテンシャライトではHR領域に特化したAI研修やコミュニティも運営しています。ご関心があればぜひご覧ください。
本セッションが、AIスカウトを「自分らしい一通」に磨くヒントになれば幸いです。
おわりに
AIスカウトが当たり前になった今、差がつくのは「誰に・なぜ」を言語化する力です。TIMで訴求を設計し、コンテキストとノウハウをプロンプトに込めることで、AIは自分の言葉を映す相棒になります。
一方で、候補者の経歴から人間ならではの読みを添える一手間が、AI感を消し、返信したくなる一通を生みます。テクニックもAIも、その差別化を後押しする手段にすぎません。
明日からの一歩として、まずは自社のポジションの「魅力カード」をひとつ言語化し、AIに渡すところから始めていただければ幸いです。














