人材エージェントを活用しているのに、思うように候補者を紹介してもらえない。マッチ度が低い、ペルソナのニュアンスが伝わらない、レスが遅い──こうした採用現場の悩みは、多くの企業に共通するものです。

その「紹介されない理由」には、エージェントが表向きに伝える理由とは別に、なかなか口にされない「裏の理由」が存在します。

2025年4月28日、株式会社overflow Offers事業部でカスタマーサクセスマネージャーを務める光山豪太が登壇し、「【元・人材エージェントが教える】エージェントに候補者を紹介されないウラの理由」をテーマにウェビナーを開催しました。光山は前職で約10年間、転職エージェントに在籍していました。

本記事では、エージェントから紹介されない「表と裏」の理由、多くの採用担当が見落としている本当の問題である「本気度」、そしてエージェントが本気で動きたくなる「超本気な会社」の具体的な3つの事例まで、当日の内容をまとめてお届けします。

エージェント活用のすれ違いと、紹介されない「表と裏」の理由

エージェント活用でよく聞くお悩みとして、私がエージェント時代にクライアントから実際にいただいたご意見をご紹介します。「そもそもマッチ度が低い」「紹介をもっと多くしてほしい」「ペルソナのニュアンスが伝わっていない」「フィードバックの頻度が少ない、レスが遅い」「最終フェーズで期待値がずれている」「情報不足で何を伝えたらいいか不明確」といった声です。

今日の内容ですべてが解消されるわけではありませんが、こうしたお悩みに対してどんなアクションを取ればエージェントをよりアクティブに動かせるのか、そのヒントになればと思っています。

そのうえで、エージェントから紹介されない理由を「表」と「裏」に分けてお話しします。表の理由は、私自身もエージェント時代によく言い訳に使ってしまっていたものですが、「マッチする候補者がいない」「御社の魅力を伝えきれていないので興味を持ってもらえない」というものです。もちろん、こうした表の理由も実際にあります。

ただ、裏にはもう一つの理由があります。候補者が求人に魅力を感じていない、あるいは感じてもらえるだけの魅力出しができていない。推薦しても通過率がとても低い。企業とのコミュニケーションが取りづらく、フィードバックが遅い、または不十分である──こうした状況です。エージェント側のコンサルタントとしての責任もありますが、推薦がなかなか通らなかったり、フィードバックがなかったりすると「ちょっと紹介しづらいな」というのが、正直なところありました。

多くの採用担当が気づいていない本当の問題は「本気度」

本当の問題は「本気度」だと考えています。その本気が、エージェント側に正しく伝わっていないのではないか、ということです。採用に関わる方はやはり本気だと思うのですが、その本気がエージェント側に正しく伝わっているのか、日々の行動に本気が現れているのかを、少し振り返っていただきたいのです。

エージェントが「本気じゃないかも」と感じてしまうのは、次の3点です。「レスポンスが遅い」「フィードバックが短く具体的でない」「事前情報がない、または広く浅い」。

レスが遅いと「本気じゃないのかも」「ちょっと放置されているな」という感覚になります。フィードバックが一行しかなかったり、事前にお伝えいただく情報が少なくて、どのエージェントにでも使い回せるようなものになっていたりすると、「広く浅くなっているな」「もっと濃い情報をいただきたいな」と感じてしまいます。そうしたお付き合いになっていると、どうしても「本気じゃないかも」と受け取ってしまうのです。

エージェントが本当に組みたいのは「超本気な会社」

実際のところ、エージェントは「超本気な会社」とお付き合いしたいと思っています。超本気な会社はスタンスがまったく違いますし、その本気を当てられると、こちらも「やらなきゃ」という気持ちになってきます。だからこそ超本気な会社とお付き合いしたいですし、それをどうアクションに落とし込んでいただくかが、エージェントを動かすポイントだと思っています。

なぜ超本気な会社を求めるのか。超本気な会社とお付き合いすると、候補者の方にも全力でおすすめしたいという気持ちになれるからです。「これだけ採用に本気なんですよ」とおすすめしやすくなります。さらに、こうしたお付き合いは他のエージェントとの差別化にもつながり、私たちエージェントとしての付加価値も上がっていきます。

エージェント業というのは、組織に属していても属人的なものです。担当している候補者からの信頼の積み上げが最大のリソースであり、企業と候補者、両方の信頼をいかに築けるかがエージェントにとって一番大事なことです。超本気な企業は、候補者に対する信頼失墜のリスクを減らしてくれる存在でもあります。だからこそ、私たちは超本気な会社と組みたいと思うのです。

「超本気」が伝わる3つの事例

超本気な会社には、「経営陣を巻き込んで採用プロジェクトを推進している」「現場メンバーや役員との接点を作ってくれる」「組織全体で採用に協力的である」という3つの特徴があります。現場や役員の方と直接つなげてくれて、解像度の高い情報をキャッチアップできる場を設けてくれる。企業の側から「こういう場を作りましょう」と声をかけていただくこともあります。

ビジネスサイドであれエンジニアリングサイドであれ、「こういう方が入社しました」「この人と話してみてください」という場が用意されていると、経営陣を巻き込んでくれているのだなと感じます。そして解像度が高まると、「本気でおすすめしたい」という気持ちに切り替わっていきます。特にシニア・ハイクラスの方との面談になるほど、信頼関係を築くためのスピードと質が両方求められるため、この情報提供と人の巻き込みは大きなポイントになります。

ここからは、実際に「超本気」が伝わった3つの事例をご紹介します。

事例1:役員クラスが自らエージェントに人材要件を説明する

1つ目は、役員クラスが自らエージェント側に人材要件を説明してくださった事例です。ある重要なポジションを採用するとき、人事やマネージャーの方だけでなく、担当役員の方も同席してくださいました。役員自ら、求人に期待することや次の事業展開、考えていることを語ってくれるのです。

エージェントが人材要件を固める段階でこうした話をキャッチアップできると、「この方に会ってもらおうかな」「役員の方とディスカッションしてもらえたら合いそうだな」というところまでイメージできます。最初の段階で役員クラスが人材要件を説明してくれたり、求人自体を一緒に作成したりするのは重要なポイントで、ここまでやっていただけると、本当にこの組織・この事業を成長させるために人を紹介したいという気持ちが湧き上がってきます。

事例2:面接担当者が候補者ごとの認識を合わせてくれる

2つ目は、面接の担当者が候補者ごとの認識を一緒に合わせてくださる事例です。二次面接・最終面接の前に、「こういう面接官がいるので候補者に会ってもらえませんか」「一次面接のフィードバックを踏まえてどんなポイントで何を聞きたいのか」「実はこういうところにギャップを感じているのですが、どうですか」といったことをエージェントに聞いてくれて、認識を合わせようとしてくれます。

最終面接の前にも、現場のマネージャーとの面接後に、最終面接官である代表や役員の方が「現場からこういう印象があるが実際どうですか」「こういう点が懸念として上がっています」と踏み込んで、オープンな質問の内容まで共有してくれることがありました。「この質問を開示しても対策できるわけではないので、本人のキャリアやWillをしっかり掘り下げてきてください」というところまで情報を開示してくれて、ステータスごとに見ているポイントや、候補者ごとのポジティブ・ネガティブな印象を包み隠さず話してくれるのです。

こうした認識合わせができると、候補者の方に「意図していないけれど、こういう見られ方をしていますよ」「この面接からこういうポジティブな評価が生まれていますよ」とお伝えできます。ネガティブな点も正直にお伝えすることで、候補者の意欲が上がったり、面接官の印象が良くなったりする。フィードバックと認識合わせには良い効果しかないと思っていますので、面接前の候補者ごとの認識合わせは、ぜひやっていただきたいです。

事例3:組織全体で採用活動にコミットする

3つ目は、同じ部署のメンバーや役員だけでなく、組織全体で採用活動にコミットしている事例です。たとえば最終面接合格が近づき内定を出したいというとき、その前後でメンバーとのミーティングやディスカッションの場を設けてもらい、入社後のイメージを候補者に掴んでもらうカジュアル面談のような場を、最終面接前に用意していただいたことがありました。

また、内定後に他社と迷っている候補者に対して、出社日に合わせて現場の方やマネージャーとの交流会を開いてもらったこともあります。同じチームや横の組織の方々が入って、候補者1人に対して7〜8人でいろいろと話せる場を設けていただきました。その中に役員やマネージャー、まったく別の部署の方もいて、いろいろな角度から話を聞くことができ、「この人の採用に本当にコミットしてくれたな」と感じた経験です。

超本気な会社は、ここまで組織全体で採用活動にコミットしてくれますし、何かあったときにこうした連携ができます。エージェント側としても「一緒にやっている」という感覚が持てますし、担当だけが頑張るのではなく、一緒に頑張れる。今あげた3つの事例のうち一つでも実践していただくと、エージェントのコンサルタントの意識が、どんどん企業の方へと向いていくと思います。

エージェントを動かす秘訣は「ワンチーム」

エージェントを動かす秘訣は「ワンチーム」です。広く浅くではなく、ど真ん中に情報の厚みと熱量を加えていただいて、一緒にスクラムを組んでほしいのです。一緒にスクラムを組むと一体感が生まれますし、パスを繋いでもらえる一員だという実感が持てると、巻き込んでもらえている感覚にもなります。そんな超本気な熱を帯びた人たちと一緒に働けると、「なんとか一名紹介したい」という気持ちにつながっていくのではないかと思います。

エージェントは、基本的に人や組織が好きです。巻き込んでもらえればもらうほど、「その方の役に立ちたい」「自分が紹介した方でその事業を成長させたい」という気持ちになります。採用成功は皆さんのゴールだと思いますが、その採用成功というトライに向かって「ともに走らせてくれる企業と出会いたい」とエージェントは思っています。ぜひ、ワンチームの一員として巻き込んでいただければと思います。

参加者Q&Aで深掘りする実践のポイント

ウェビナーの後半では、視聴者から寄せられた質問に光山が回答しました。エージェントとの接点づくりやコミュニケーション頻度など、現場で実践しやすい問いが並びました。

質問: 企業側が本気だという姿勢をエージェント側に示す方法として、具体的にどんなやり方がありますか?

光山:先ほどのアクションの中にもありましたが、現場の方や役員との接点を作ることだと思います。エージェントは候補者に企業のカルチャーや仕事内容を代わりに伝える立場ですので、解像度の高い情報をどれだけキャッチアップさせてもらえるか、そういう接点をどれだけ作るかが、具体的なやり方として一番効果的だと思います。

質問: 採用活動でエージェントからの紹介に依存している状況ですが、やはり問題なのでしょうか?

光山:「問題です」という言い方はしませんが、完全に依存するのは避けたほうがいいと思います。エージェント自体は採用パートナーとして非常に有用ですので活用いただきつつ、ダイレクトリクルーティングなど他の手法も検討いただければと思います。やり方と状況を踏まえて、エージェントや他の手法を採用戦略に組み込んでいただくのがよいかと思います。

質問: スタートアップだと代表や役員が出てきやすい体感がありますが、大企業でも出てきているのでしょうか?

光山:私が経験してきた中では、一番大きいところで800〜1000名規模の企業でも、役員の方が出てきてくださっていました。事例に挙げた「直接人材要件を説明してくれる」「最終面接前に認識を合わせてくれる」というのは、その規模の役員の方でも経験があります。企業規模に依存するというより、スタートアップだけではない、という認識を持っていただければと思います。

質問: 候補者向けのPDF資料をエージェントにシェアしている企業は多いですか?また、それは効果的ですか?

光山:シェアしている企業さんは多いですね。エントランスブックやコンテンツを提供してくださる企業さんも多いです。ただ、いただくことはいただくのですが、どのポイントをそのポジションの方に「刺さる部分」として話すのかは、資料を見るとどうしても満遍なく話してしまいます。「実は刺さる情報はここなんです」「このポジションはこのページを一番厚く伝えてください」というコミュニケーションが必要です。シェアした後のフォローを、ぜひいただければと思います。

質問: 役員や現場メンバーとエージェント担当者の接点設定は、どのタイミングがいいですか?

光山:二次面接・三次面接など、面接が通過した時点でフィードバックをいただき、接点を設けていただけたらと思います。内定前だとポジティブ・ネガティブや懸念点が上がってくると思いますので、それを踏まえてフィードバックをテキストに起こしていただく機会もあります。実際のセッションとして場を設けるのが、タイミングとしてはベストだと思います。

質問: エージェント時代に重視していたKPIは何でしたか?また、企業の本気度を数値で表すとしたら?

光山:私が重視していたKPIは、書類の通過率と内定の取得率です。紹介した方がどれだけ通過するかは目線が合っているかどうかに直結しますし、内定の取得率は、どれだけ一緒にスクラムを組んで情報提供し、候補者に「いい」と思ってもらえるかに関わります。企業の本気度を数値に表すとしたら、内定の取得率に近いと思います。いかに情報提供してアトラクトし、内定取得率を上げるか。これは一緒に取り組むKPIだと思います。

質問: 本気でお付き合いするエージェントは何社くらいが適切ですか?数十社契約していますが、すべてと密にコミュニケーションを取るのは現実的ではないと感じています。

光山:確かにそうですね。エージェント側としても「広くアサインされているな」と感じることがあります。いろいろな採用担当の方に聞くと、一番手厚くできるのは5社ぐらいだという話を聞きます。5社ぐらいと月1回の定例を組んで、各社ごとに試行錯誤したり採用の相談をしたりする、というイメージです。数十社の中から、エージェントが持つネットワークやデータベースの相性を踏まえて5社ぐらいに絞ってみると、いろいろなことが見えてくると思います。

質問: 信頼を得るために、日頃どういったやり取りをすべきでしょうか。頻度のアドバイスをお願いします。

光山:コミュニケーションはスピードだと思っています。書類推薦・面接・面談のフィードバックを、翌日もしくは翌々日以内にいただけると、「この会社は超本気なんだな」と感じます。それぐらいの目安で、ぜひ返答していただければと思います。

質問: 少し前はフィーアップのキャンペーンが効果を発揮したと思いますが、最近はそうでもない印象です。現在効果的な取り組みはありますか?

光山:最近はフィーアップの話自体もあまり聞かなくなってきました。シニア・ハイクラスの方々へのアクションは、フィーアップよりも、いかにエージェントと企業がタッグを組めるかになってきています。特にエンジニアの場合、候補者が選択肢として有利に立つことが多いので、その方のWillを叶えるために「社内でこういう人を引っ張ってきました」「この方はVPoEと話しましょう」というように、他社がやっていない付加価値を一緒に作れるかが効果的だと思います。採用競合になりそうな候補者に対して、社内で誰が口説けるのか。そこにぜひ取り組んでいただきたいと思います。

おわりに

エージェントから候補者を紹介されない「裏の理由」をたどっていくと、行き着くのは企業の「本気度」が伝わっているかどうかでした。レスポンスのスピード、フィードバックの具体性、事前情報の厚み。そして、役員や現場を巻き込んで解像度の高い情報を共有し、組織全体で採用にコミットする姿勢です。

エージェントを「外注先」ではなく「ワンチームの一員」として巻き込むこと。それが結果的に、候補者紹介の量と質を引き上げていきます。まずはフィードバックのスピードと、現場・役員との接点づくりから。明日試せる第一歩として、持ち帰っていただければ幸いです。