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リファラル採用ができない原因と立て直し方|詰まる5段階

リファラル採用ができない原因と立て直し方|詰まる5段階
鈴木 裕斗監修者

株式会社overflow / 代表取締役 CEO

鈴木 裕斗

株式会社サイバーエージェントに新卒入社。広告営業を経て、Amebaプラットフォームの管轄責任者に就任。その後、スタートアップ企業に入社、代表取締役就任を経て2ヶ月後に株式会社ディー・エヌ・エーにM&A、子会社化。子会社代表取締役とDeNA広告部長を兼任。2017年6月、株式会社overflowを創業。2018年から2020年9月末までエキサイト株式会社の社外取締役を兼任。

「社員紹介制度をつくったのに、紹介が1件も来ない」「報酬を上げてみたが、動きがない」。リファラル採用がうまくいかない会社の人事から、よく聞く声です。

社員の紹介は、制度を思い出し、紹介したい人が頭に浮かび、自社を勧めたいと思い、実際に声をかけ、人事がそれを受け止める、という順に進みます。どこか1か所で止まると、その先の紹介は出てきません。

止まっている場所によって、打つべき手は変わります。報酬の額を上げるだけでは解けないことが多いのも、そのためです。

リファラル採用ができない原因は紹介に至る5段階にある

リファラル採用ができない会社では、社員が紹介に至るまでの「制度を思い出す」「紹介したい人が思い浮かぶ」「自社を勧めたいと思う」「声をかける」「人事が紹介を受け止める」の5段階のうち、どこかで流れが止まっています。止まっている段階が違えば打ち手も違うため、最初の仕事は、自社がどこで止まっているかを見分けることです。

当たりをつけるには、段階ごとに社内で聞こえる声と、確かめられる数字を並べて見ると早く進みます。

段階

社内で聞こえる声

確かめる数字

主な打ち手

1. 制度を思い出す

「そんな制度があったのか」

制度を知っている社員の割合

求人の更新や全社の場に合わせて繰り返し知らせる

2. 紹介したい人が思い浮かぶ

「誰を紹介すればいいか分からない」

募集中のポジションを言える社員の割合

求める人物像を「周りにいるこういう人」の言葉に直す

3. 自社を勧めたいと思う

「友人に勧められる会社か自信がない」

友人に自社を勧めたいと答える社員の割合

働く環境への不満を先に拾い、社外に見せる情報を整える

4. 声をかける

「誘い方が分からない」「断られたら気まずい」

紹介の意向はあるのに声をかけていない社員の数

選考ではなく、食事やカジュアル面談への誘いから始める

5. 人事が受け止める

「紹介したのに、その後どうなったか分からない」

紹介の受付から候補者への初回連絡までの日数

初回連絡までの期限を決め、紹介者に進捗を返す

表の声・数字・打ち手は、上位の解説記事や公表調査で挙がる原因を、編集部が段階ごとに並べ直したものです。

段階1と2は情報が届いていない問題、段階3は会社そのものへの評価の問題、段階4と5は運用の問題です。どの段階で止まっているかで、人事が動かす相手も、経営層に相談する中身も変わります。

紹介が出ない理由が「社員の知り合いに、もう声をかけられる相手が残っていない」ことなら、原因は5段階の外です。紹介が出尽くしたあとの広げ方はリファラル採用が尽きたときの母集団の広げ方で扱っています。

国内データに見るリファラル採用の広がりと報酬の影響

国内では人のつながりを経路にした入職が大きな割合を占め、社員紹介を募集に使う企業も多い一方で、紹介報酬の額と紹介の出やすさには明確な相関が見られないという調査があります。制度を入れても紹介が出ない会社が直すべきなのは、報酬の額よりも、紹介に至る段階のほうです。

入職者の約2割は「縁故」を経路に職に就いている

厚生労働省の「雇用動向調査」年次別推移 第7表 入職経路別入職者数によると、2025年の入職者7,526.8千人のうち、入職経路が「縁故」だった人は1,609.2千人で、割合にすると約21.4%でした。この節の割合は、いずれも同表の人数から編集部が算出したものです。

経路別に並べると、「広告」の2,428.2千人(約32.3%)に次ぐ規模で、「職業安定所」の915.5千人(約12.2%)や「民営職業紹介所」の581.0千人(約7.7%)を上回ります。

この調査の「縁故」は、友人・知人等も含む経路の区分です(労働政策研究・研修機構 労働統計用語解説)。社員紹介制度を通した入社だけを数えた値ではなく、縁故のうち「前の会社」に当たる330.6千人も含みます。それでも、人のつながりが求人広告に次ぐ大きな入り口であることは読み取れます。

中小企業の46.4%がリファラル採用を実施したことがある

商工中金の「中小企業の人材確保に関する調査」(2024年1月調査・n=4,067)では、これまで実施したことがある募集方法として「自社従業員からの紹介による採用(リファラル採用)」を挙げた中小企業が46.4%でした。

同じ調査は、人材の確保では外部のサイトや事業者の活用が効果的である様子、人材の定着では紹介経由の採用に高い効果を実感している様子がうかがえたとまとめています。紹介で入った人は定着しやすいという手応えがある分、紹介そのものが出ないことが課題になります。

紹介報酬の額と紹介率には明確な相関が見られない

株式会社TalentXが2,073社のデータをまとめた「2026年版リファラル採用の実施状況に関する企業規模・業界別統計レポート」(2025年1月〜2026年7月)では、リファラル採用の実施率は70.5%で、紹介報酬の平均額は121,806円(最頻値・中央値とも100,000円)でした。一方で、インセンティブの金額別に友人を紹介した社員の比率を見ても、報酬制度の有無や金額の差による大きな変化は見られなかったと報告しています。

調査の対象は同社に問い合わせや相談をした企業が中心で、国内企業全体の実施率を表す数字ではありません。

同社はこの結果を、報酬は紹介数を直接増やす手段ではなく、社員に制度を思い出してもらうきっかけとして働いていると分析しています。編集部の見立てでは、5段階に当てはめると報酬が動かすのは主に段階1で、段階2から5の詰まりは報酬の額では解けません。報酬の決め方と相場はリファラル採用の報酬相場にまとめています。

社員が紹介しない5つの原因と、段階ごとの打ち手

社員が紹介しない原因は、制度を知らない・誰を紹介すればよいか分からない・自社を勧めたいと思えない・声をかけにくい・紹介後の対応が見えない、の5つです。段階1から5の順に、原因と打ち手を並べます。

社員が制度の存在を思い出さない

社員が紹介しない原因で最も手前にあるのは、社員紹介制度があること自体を、紹介できる場面で社員が思い出さないことです。入社時の説明や社内ポータルの1ページだけで告知を終えていると、知人が転職を考えていると聞いた瞬間に制度が頭に浮かびません。

打ち手は、告知を1回で終わらせず、思い出すきっかけを定期的につくることです。

  • 新しい求人を出した日や、求人の内容を変えた日に、社内チャットで募集中のポジションを流す
  • 全社の定例会議で、採用の状況と紹介から入社した人を短く紹介する
  • 紹介の窓口を1つに決め、どこから紹介すればよいかを毎回同じ場所に案内する

告知文や依頼文の文例はリファラル採用のテンプレートに載せています。

社員が誰を紹介すればよいか分からない

制度を知っていても紹介が出ない場合に疑うべきなのは、社員が募集中のポジションと求める人物像を自分の知り合いに結びつけられていないことです。求人票の「必須スキル」「歓迎スキル」の言葉のままでは、社員は友人の顔を思い浮かべられません。

打ち手は、求める人物像を、社員の周りにいそうな人の言葉に言い換えることです。たとえばエンジニアの募集なら、「前の職場で一緒に設計の議論をしていた人」「勉強会でよく登壇している知り合い」のように、場面と関係で書きます。

エンジニアの募集を例に、求人票の言葉と、社員に伝える言葉を並べると次のようになります。

求人票の言葉

社員に伝える言葉

Webアプリケーションの設計・開発経験3年以上

前の職場で、画面とサーバーの両方を自分で作っていた人

チームでのコードレビューの経験

一緒に働いていて、レビューのコメントが丁寧だった人

技術選定に関わった経験

「次はこの技術で作ろう」と言い出して、周りを動かしていた人

右の列は、社員が特定の誰かの顔を思い浮かべられる程度まで具体的にするのがコツです。言葉の候補は、現場のエンジニアに「この求人に合いそうな知り合いを思い浮かべたとき、その人はどんな人か」と聞いて集めると作りやすくなります。

職種ごとに1〜2行のこうした説明を用意し、現場のマネージャーから自分のチームに伝えてもらうのが、人事が全社に流すよりも届きやすい方法です。

社員が自社を友人に勧めたいと思えていない

段階3で止まっている会社では、社員が自社を友人に勧めたいと思えていないことが、紹介が出ない原因になっています。紹介は、社員が自分の人間関係を会社に預ける行為なので、働く環境や待遇に不満があれば、報酬があっても大切な友人には声をかけません。

打ち手は、紹介の促進より先に、社員が何に引っかかっているかを聞くことです。匿名のアンケートで「友人に自社を勧めたいか」と「勧めにくい理由」を聞くと、改善すべき点が具体的になります。

もう1つは、社員が友人に見せられる情報を社外に用意しておくことです。友人に声をかけたとき、相手はまず採用ページや求人票を開いて、どんな会社かを確かめます。そこに職務内容や年収の幅、開発の進め方が書かれていなければ、社員がいくら口で説明しても、相手は判断できません。

エンジニアを紹介してもらう場合、自社の採用ページ・求人票・技術発信が候補者からどう見えるかを先に確かめておくと、社員が声をかけた後の受け皿を整えられます。エンジニア採用力チェックは、企業のURLから採用ページ・求人票・技術発信などの公開情報をAIが5指標24項目で診断し、原則1営業日以内にレポートが届く無料の診断です。

社員が声のかけ方を知らず、断られた後の関係を心配している

紹介したい人がいても動けない社員は、声のかけ方が分からないか、選考で落ちたときに友人との関係が気まずくなることを心配しています。「うちの会社を受けてみない?」と選考を前提に誘うと、社員にも友人にも負担が大きくなります。

打ち手は、最初の誘いを選考から切り離すことです。

  • 最初の接点は、食事や、選考ではないカジュアル面談への誘いにする
  • 社員が使える誘いの文面を用意し、「話を聞いてみるだけでいい」と伝えられるようにする
  • 不採用になった場合は人事から候補者へ直接伝え、紹介した社員に結果の伝達を任せない

不採用時の伝え方と気まずさを避ける面接の組み方は、リファラル採用で気まずくならないための工夫を参照してください。

紹介した後に人事の動きが見えない

紹介が一度は出たのに続かない会社では、紹介した後に人事がいつ・どう動いたかが紹介者に見えていないことが、原因として考えられます。紹介から候補者への連絡まで日が空いたり、結果が紹介者に返ってこなかったりすると、社員は「紹介しても意味がない」と受け取り、次の紹介をしなくなります。

打ち手は、紹介を受けてからの動きを決めて、紹介者に見えるようにすることです。

  1. 紹介の受付から候補者への初回連絡までの期限を、社内で決めておく
  2. 面談・選考の節目ごとに、紹介者へ進み具合を一言返す
  3. 結果が出たら、合否にかかわらず紹介者にお礼を伝える

期限の日数は会社の体制によって決めればよく、大事なのは決めた期限を紹介者にも伝えておくことです。

制度そのものが社内で通らない・始められないときの解き方

リファラル採用を始めたくても社内で止まる理由は、紹介報酬が法令に触れないかという法務の懸念、経営層や現場の協力が得られないこと、社員数が少なく紹介の母数が足りないことの3つにほぼ分かれます。確かめる先はそれぞれ決まっていて、順に潰していけば解ける問題です。

紹介報酬が法務で止まるときは、職業安定法第40条の条文で確かめる

紹介報酬が法務で止まったときは、職業安定法第40条の条文に沿って、誰に・どの名目で払うかを整理すると話が進みます。第40条は、労働者の募集を行う者は、募集に従事する自社の被用者に対して「賃金、給料その他これらに準ずるもの」を支払う場合などを除き、報酬を与えてはならないと定めています(職業安定法・e-Gov 法令検索)。

条文から読み取れる整理は、次の3点です。

誰に払うか

職業安定法の定め

制度での扱い

紹介した自社の社員

第40条: 賃金・給料等として支払う場合は禁止の対象から除かれる

紹介報酬を賃金として給与で支払う

社外の人(取引先・元社員など)

第36条第1項: 被用者以外の者に報酬を与えて募集に従事させるときは厚生労働大臣の許可が要る

社外の人へ謝礼を払う設計は避けるか、許可の要否を専門家に確かめる

紹介された候補者から受け取る

第39条: 募集に応じた労働者から、いかなる名義でも報酬を受けてはならない

候補者から金銭を受け取る設計にしない

紹介報酬を賃金として払うなら、支給の条件を就業規則や賃金規程に定めておくのが一般的です。常時10人以上の労働者を使用する使用者は、臨時の賃金等の定めをする場合、その事項を就業規則に記載して届け出る必要があります(労働基準法第89条第4号)。規程の書き方と支給のタイミングはリファラル採用の事例と制度設計の要点にまとめています。個別の金額や支給条件が自社の規程に合うかは、社会保険労務士に確認してください。

経営層や現場マネージャーが協力しないときは、紹介を評価とノルマから切り離す

経営層や現場マネージャーが協力しないときは、リファラル採用を「人事の施策」ではなく、採用計画の中の1つの経路として位置づけ直すことから始めます。現場から見ると、紹介の受け付けやカジュアル面談は本業の外の仕事で、時間を割く理由が見えなければ後回しにされがちです。

  • 採用計画に、リファラル経由で何人を目指すかと、そのために現場が使う面談の時間を書き込む
  • 経営層やマネージャー自身が知り合いに声をかけ、紹介した事実を社内で共有する
  • 紹介数を個人のノルマや人事評価に入れない

紹介数をノルマにすると、社員は自分の人間関係を会社の数字のために使わされていると感じます。紹介は社員の任意の協力であることを、制度の説明にも明記しておくと誤解を防げます。

社員数が少なく紹介の母数が足りないときは、他の経路と組み合わせる

社員が数十人規模の会社では、社員の知り合いの中に、募集中のポジションに合う人が限られがちです。この場合、段階1〜5をいくら整えても紹介の件数には上限があるため、リファラル採用を主な経路と決めず、求人媒体やスカウトと組み合わせる前提で計画を立てるのが現実的です。

社員の知り合いの知り合いまで範囲を広げる方法や、社員のつながりを手がかりに人事からスカウトする手順は、リファラル採用が尽きたときの母集団の広げ方で扱っています。

立て直しは止まっている段階を1つ選んで3か月で確かめる

リファラル採用を立て直すときは、5段階すべてに一度に手を入れず、最も多くの社員が止まっている段階を1つ選び、打ち手を入れて3か月後に同じ問いで確かめる進め方が手堅いです。打ち手を一度に重ねると、どれで紹介が動いたのかが分からなくなり、次に何を続けるかを決められません。

社内アンケートで、どの段階で止まっているかを見分ける

止まっている段階は、5段階に1問ずつ対応させた短い社内アンケートで見分けられます。匿名で、回答に1〜2分で済む長さにすると、回答が集まりやすくなります。

1. 当社に社員紹介制度があることを知っていますか(はい/いいえ)
2. いま当社が募集しているポジションを1つ以上挙げられますか(はい/いいえ)
3. 友人に当社で働くことを勧めたいと思いますか(5段階)
4. 紹介したい人がいるのに声をかけていない理由があれば教えてください(自由記述)
5. 過去に紹介した方へ: 紹介後の人事の対応で困ったことがあれば教えてください(自由記述)

設問1・2で「いいえ」が多ければ段階1・2、設問3の点が低ければ段階3、設問4・5に具体的な声が多ければ段階4・5で止まっていると読めます。

打ち手は1つに絞り、3か月後に同じ問いで比べる

止まっている段階が分かったら、その段階の打ち手を1つ選んで3か月続け、同じアンケートを取り直して、答えの変化と紹介の件数を比べるところまでが1回の手順です。紹介から入社までは時間がかかるため、入社の人数ではなく、紹介の件数とアンケートの答えの変化で判断します。

段階1・2の打ち手は人事だけで始められるため、最初の1つに選びやすい段階です。段階3は会社の制度や働き方に関わるため、アンケートの結果を経営層に持ち込み、紹介の促進とは別の課題として扱うほうが進みます。

リファラル採用の定義・メリット・制度設計の全体像はリファラル採用とはで整理しています。

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