AI活用は、自分の業務の効率化から組織へ広がった 安達様:私は新卒で大手の生命保険会社に入社し、営業と営業教育を担当していました。その後、HR領域のスタートアップ企業でエンジニアの採用支援を経て、2023年にエンジニア採用担当としてサイバーセキュリティクラウドに入社しています。
産休・育休を経て、採用業務と人事企画を担当しています。この後お話しする採用業務におけるAI活用で、WOMAN AI AWARD 2026のカンパニー・イノベーター賞をいただきました。
私はエンジニアではなく、ITの専門職でもありません。ただ、非エンジニアとして、どのようにAI活用を進めていけばよいのかを考えながら取り組んできました。今日は、そうしたリアルなお話ができればと考えています。
私がAIを本格的に使い始めたのは、産休・育休からの復職がきっかけでした。最初は自分の業務の効率化が目的でしたが、工数削減だけでなく、自分だけでは出せない品質もAIを使うことで出せるようになってきたんです。
それを実感してから、自分の業務だけでなくグループや部、全社に同じノウハウを広めていけば、大きなインパクトが出るのではないかと考えました。そこから組織へ広げていった形です。
AIを活用する目的は会社によってそれぞれあると思います。私たちは、人が本来向き合うべき仕事に集中するためにAIを活用する と目的を置いているんです。そのために今の業務をどう可視化し、AIと協働する仕組みをどう作ったのかをお話しします。
採用業務を55工程に分解し、スコアで最初のAI化の対象を決めた 安達様:人事業務、採用業務には、本当にたくさんの仕事があります。採用業務だけを切り取っても、その範囲はかなり多岐にわたるという実感です。どこからAI化していくかを考えるとき、私は3つのステップで進めました。
1つ目は、今どんな業務があるのかをすべて棚卸しして可視化すること。2つ目は、その中でどこから着手するのか優先順位をつけること。3つ目は、何を解決したいのかというゴールを決めることです。
定型か非定型か、人の判断が必要か。2軸で人とAIの役割を4つに分類 安達様:採用業務を棚卸ししたところ、55工程に分解できました。そこから、定型か非定型か、人の判断が必要か不要かの2軸で、人とAIの役割を4つに分類しています。
スライドの左に行くほど人が担うのが適した業務で、右に行くほどAIが担う方が適した業務です。棚卸しした一覧では、具体的な業務の横にカテゴリ整理の列を設け、4分類のどれに当たるかを書き込んでいます。
工数削減効果・品質改善効果・実現可能性の合計点で優先順位をつける 安達様:どれからAI化するかを決めるために、スコアリングをしました。工数削減効果、品質改善効果、実現可能性のそれぞれに点数をつけ、合計点が高いほど優先度が高いと評価しています。
工数削減効果は、発生頻度(1・3・5点)と1回あたりの工数(1〜5点)の合計で、最大10点として算出しました。品質改善効果はAIが成果物をどこまで担えるか、実現可能性は今の環境ですぐ導入できそうか、導入の障壁はどの程度かを、それぞれ5段階で評価しています。
スコアの上位にはスカウト文のカスタマイズ作成や求人票のドラフト案作成も並びました。その中から、全社的な課題感があるところと、関わる人数の多さを加味した上で、最初にAI化に着手するのは面接評価ドラフトの作成だと決めています。
面接評価の課題は、品質と工数の両面にあった 安達様:面接評価の課題は、品質面と工数面の両方にありました。品質面では、評価項目はもともとあったものの、判定の基準や記録の粒度が面接官頼みになっていて、見極めの質にばらつきが出ていたんです。
工数面では、評価入力や申し送りの負担が重く、1回あたり約30分かかっていました。入力のタイミングも面接官によってばらばらで、当日の夜に書く方もいれば翌日になる方もいて、選考スピードに影響が出ていたんです。
そこで、品質面では誰が面接しても共通の基準で見極められる状態を、工数面では面接終了後に速やかに入力・共有が完結し、選考スピードを最大化させる状態を目指しました。
AIを前提に評価基準をスコア化し、人とAIの役割を分けた 安達様:今回は主に3つの取り組みを行いました。1つ目は評価基準のスコア化です。面接官によって評価の目線が分かれていたので、全社で統一した共通の基準でスコア評価できる状態にしています。
2つ目は評価入力の効率化で、ここがAIを活用した部分です。AIに面接の要約と評価ドラフトを自動作成させて入力工数を大幅に削減し、速やかに入力・共有が完結する仕組みを作っています。
3つ目は面接の情報の引き継ぎと蓄積です。申し送りの仕組みはもともとあり、ATSに入力していましたが、面接官によって記録の粒度や情報量にばらつきがありました。AIで均一な議事録と評価のログを取り、次の面接官に適切に連携できる状態にしています。
ATSにデータを蓄積していくことで、今後の評価基準の改善に活かせる状態も作りました。AI化したのは2と3ですが、全体を通して一番時間をかけたのは、1の評価基準のスコア化 だったと振り返っています。
カルチャーフィット4項目とロールフィット3項目を、5段階で評価する 安達様:面接の評価をAIで行う前提に立ったとき、評価基準はどうあるべきかを考えました。AIで判定するときにも定量的に判断できるように、スコア化することにしたんです。
もともと面接では、カルチャーフィットとロールフィットの2つの観点で見極めていました。
カルチャーフィットは会社の価値観であるMVCを、Security Agent for Success、Speed、Improve、Data-Drivenの4項目に落とし込んでいます。ロールフィットはシンプルに、知識・経験・スキルの3項目です。
合計7項目を面接で確認し、それぞれ1〜5段階で評価する設定にしました。カルチャーを評価基準にするにはどうすればよいか、かなり考えましたが、AIを前提にするなら定量的で測りやすい定義が必要だという結論になりました。
例えばData-Drivenという項目なら、何を体現していたらData-Drivenといえるのかを言語化しています。5段階は3を標準とし、5は非常に優れている、1に行くほど不足しているという評価です。5ならどういう状態かという定義を、7項目すべてで行いました。
これは全職種・全グレード共通の基準です。実際の採用では想定のグレードがあるので、グレードごとに合格ラインを設けた上で、AIに評価ドラフトを作ってもらっています。
AIは評価を代替しない。確認できなかった項目は次の面接に申し送る 安達様:面接のフェーズすべてで、人は何をして、AIは何をするのかという役割分担を明確にしました。一番大事なのは、AIは評価を代替しないこと です。合否と面接評価のスコアは必ず面接官が最終的に判断することを徹底しており、AIへのプロンプトにも厳密に指示として入れています。
もう1つ、大事なポイントがあるんです。7つの評価項目の中には、面接の中で聞ききれない部分も出てきます。確認できなかった項目がある場合には、AIに「今回の面接では確認できず」と出力するよう指示しています。
そうすることで、次の面接で確実に聞きましょうという申し送りが可能になるのです。面接を通じて、会社の評価基準を網羅的に確認できる仕組みを整えました。
Google Workspace内で完結させ、ATSへの入力は貼り付けだけにした 安達様:AIはGeminiを選びました。全社で契約済みのGoogle Workspace環境内で安全に使えることと、もともと面接をGoogle Meetで実施していたため、最もスムーズに連携できることが理由です。
Geminiで文字起こしをする前には、必ず候補者様の同意をいただくことを徹底しています。また、現場への導入では、余計なタスクを生み出さず、シンプルな動線になるように全体を設計しました。
面接の評価をATSに登録するフローはもともとあったので、そこは変えずに、評価ドラフトを貼り付ける形で完結する仕組みにしています。
Google Meetで文字起こしし、Gemで評価ドラフトを作る 安達様:具体的なフローです。面接はGoogle Meetで実施し、Geminiの文字起こし機能を使います。面接が終わったら、「面接評価ドラフト作成Gem」に文字起こしを送ると、評価基準に沿って評価ドラフトを作成してくれます。
その内容を面接官が確認・修正し、合否とスコアを最終的に判断してATSへ入力する流れです。なお、2027年3月よりGemが廃止されスキルへ移行されるという発表がありました。私たちも今はGemを使っていますが、移行に伴って運用の変更を検討しています。
評価ドラフトでは、カルチャーフィットとハードスキルのそれぞれでスコアを出し、総合として印象と懸念点なども出力させる設計です。次の面接で何を魅力付けしてほしいのか、何を見極めてほしいのかも作成させ、最後に今回の面接の議事録の要約を項目ごとに出力させています。
面接官の全員が工数削減を実感。運用から見えた課題と人事企画への展開 安達様:面接官にアンケートを取ったところ、評価入力の工数は、面接官全員が削減を実感したと回答し、そのうち57.1%は工数が半分以下になった と回答しています。
面接官は議事録を自分で取る必要がなくなり、その時間を候補者様と向き合う時間に充てられるようになりました。対話と見極めに集中できる環境を整えられたと感じています。
候補者様にとっては、前回の面接の内容が次の面接官に適切に引き継がれるので、同じような質問をされることがなくなりました。その分、会社の魅力付けの時間を多く取れるようになり、会社や業務への理解が深まる選考体験を受けていただけるようになっています。
組織としては、評価の内容をATSに記録していくことで、MVCを体現する人材をより見極めるための判断材料ができてきました。データ分析に活用できる基盤が整ってきたと感じています。
評価基準の網羅性と、面接力の差が見えてきた 安達様:取り組みを通じて見えてきた課題もあります。1つは評価基準の網羅性です。今回設計した基準は全社共通だったので、面接官からはグレードやポジションに合わせた評価基準が欲しいという声をいただきました。レベルに合わせた評価基準は、すでに設計しています。
もう1つは面接力の差です。議事録を取ることで、面接官の質問力、面接力の差も見えてきました。面接力のトレーニングや構造化面接の仕組み化に着手しているところです。
部内で完結する業務から、人事企画領域全体へ 安達様:人事企画領域へのAI活用も進めています。面接評価は主に人事部の中で完結する業務なので、部内でスピーディーにAI化できました。その後、人事企画領域全体に活用を広げています。GeminiとNotebookLMを使った目標設定支援ツールを作成し、全社に展開して活用してもらっているところです。
AI活用の目的はさまざまですが、人が本来向き合うべき仕事に集中するためにAIを使いたい方には、4つのポイントを参考にしていただけると嬉しいです。
業務を分解し、基準を決めて優先順位をつけること。AIを入れる前に、AIを前提とした業務の基準をそろえること。AIに判断を委ねず、人が本来向き合うべき仕事に集中すること。そして、課題から始めてAIを使いながら育てて広げることです。
私たちも今まさに取り組んでいるところで、まだまだやっていきたいことがたくさんある状況です。皆さんと一緒に勉強しながら、頑張っていけたらと思っています。
使い方を個人に委ねず、関わる人が多い業務から仕組みにする ――岡田:ここからはディスカッションです。55の工程の中から、最初に面接評価を選ばれました。AIを全社に配っても成果が出ない会社は、どの業務から始めていけばよいのでしょうか。
安達様:成果が変わらない理由の1つは、使い方を個人に委ねていることではないかと思っています。使い方は人によって変わるので、一定の成果が出なかったり、インパクトがあまり大きくなかったりするのです。
AIを全社に配って活用を推進する際は、使い方と出したい結果を設計し、プロセスに組み込むこと がとても大事だと考えています。
どの業務から始めるかでいうと、業務を可視化して優先順位をつけることです。スライドには工数削減、品質改善、実現可能性と書きましたが、もう1つ大事だと思ったのが、何人の人がその業務をやるのかという関係者の多さです。
関わる人が多いほど、結果は出やすくなると考えています。関わる人が多く、かつ工数削減・品質改善が見込めて、実現可能性が高いところを選んでいただくと進めやすいのではないでしょうか。
特に、属人化の解消とAI化は相性がいいと感じているんです。業務の課題の中で属人化しているところがあれば、そこから取り組んでいただくと、より成果が見えやすくなるのではないでしょうか。
――岡田:自社の課題は会社ごとに違うので、その中で標準化しやすい部分を選んでいくとよいということですね。
面接の工数が半分になったら、空いた時間は対話と魅力付けへ ――岡田:面接業務の工数が半分以下になって、面接官の皆さんは空いた時間を実際に何に使うようになりましたか。人事の目線で、何に使ってほしいというお考えもあれば伺いたいです。
安達様:人事、もしくはAI活用を進める立場としては、工数を削減して空いた時間を品質向上のために充てていただきたいと考えています。ここを考えるのがとても大事です。
採用業務では、候補者との対話と魅力付けにまず時間を使っていただくことを徹底しています。あとは面接の準備と申し送りです。申し送りは、面接官同士で会話することに時間を割いていただくようにしています。
データ分析は人事の仕事になりますが、傾向の把握などにも時間を充てるようにしているところです。
――岡田:AIで効率化できる一方で、空いた時間で仕事がどんどん増えていくこともあると感じています。どういった判断軸で何をするかを決めていく必要がありそうですね。
AIが評価のたたき台を作る時代に、面接官に残るのは判断の説明責任 ――岡田:次のテーマは「AIが評価のたたき台を作る時代に、面接官に残る仕事は何か」です。AIと面接官の線引きは、どういったところになるのでしょうか。
安達様:今、人事に問われているテーマだと感じています。面接のフェーズごとに面接官とAIの役割を定義しましたが、その中でも私が一番大事だと思っているのは、判断した結果に説明責任を持つこと です。
これは面接に限らず、AIを活用する上でも言われていることだと捉えています。「AIがこう言っているから」は、もう通用しなくなってきているのではないでしょうか。
AIの出力を参考にしつつ、面接官である自分が何をもってどう判断したのかを、候補者様にも社内にも説明できるようにするべきだと考えています。自分の判断としてしっかり説明できるかが、今問われているのではないでしょうか。
自社の魅力を伝え、候補者の強みを引き出す人間力 ――岡田:最後に決めるところは依然として面接官に残る、という線引きですね。その中で、面接官に求めるソフトスキルのようなものはありますか。
安達様:抽象的な言葉になってしまいますが、人間力、面接力は問われると感じています。AI面接のサービスもたくさんありますが、一度も候補者とオンラインや対面で会わずに選考が完結する世界観ではまだないと思っているんです。
必ず最後は人が会って判断します。会社側が判断するだけでなく、候補者様側から見られる場でもあるんです。自社の魅力をきちんと伝えられるか、候補者様の強みを引き出せるかが問われます。
入社後のキャリアビジョンを描けるか、一緒に働きたいと思っていただけるかも問われるでしょう。ソフトスキルとまとめてよいのかは分かりませんが、そうした意識を持っておくことが面接官に求められると考えています。
言語化できたらチームの仕組みへ。課題の構造が似ていれば人事企画へ広げる ――岡田:自分の業務で始めたAI活用を、どの段階でチームの仕組みにしていくのでしょうか。チームの仕組みにしようと判断したタイミングや、何が揃ったら広げてよいと判断されたのかを伺いたいです。
安達様:タイミング自体はいつでもいいと思っていますが、これが揃ったら、というものはあると思っています。手順を書き出せる、言語化できること。そして、出力する際の基準をそろえられるか、ここも言語化できるかです。
この2つが揃っていれば、AIに指示ができ、均一な出力が見込めます。 そこが言語化できそうであれば、組織への活用を進めていけるのではないでしょうか。
先ほどもお話ししましたが、組織に広げる際には、相手のタスクを増やさない、余計な工数を増やさないことも、定着しやすくなるポイントだと感じています。
――岡田:インターフェースを変えないことは、定着の上で重要になりますね。私も日々の業務の中で感じているところです。
採用で作ったAIの仕組みは、目標設定にも転用できた ――岡田:最後のテーマです。採用で作ったAIの仕組みを、人事の他の領域にも広げられるのでしょうか。そのまま転用できたところや、変えなければいけなかったところも伺いたいです。
安達様:広げることはできると思っています。ただ、何でもかんでも広げられるわけではありません。広げやすいのは、課題の構造が似ているものです。
私たちの採用での課題は、主に属人化と、工数による選考の遅延でした。この属人化という課題の構造が、目標設定における課題とすごく似ていた んです。
目標設定では、目標の抽象度が高い、粒度に個人差がある、自分の等級・グレードに適した目標になっていない人がいる、といった課題が挙がっていました。属人化や品質の課題で、構造が採用業務と似ていたので、採用でやったAI化がそのまま使えると考えたのが、転用のきっかけです。
ただ、面接の評価は全社同一の基準だったので、面接官に1つのGemを配布する形で済みました。目標設定は、各本部の戦略やグループの戦略・目標があり、ポジションごとの役割定義がある部署もあって、全社共通ではありません。
そこで、GeminiとNotebookLMを本部ごとに作成して配布しました。ここは採用のAI化とは少し変えながら進めたところです。
――岡田:標準化できるところは使いながら展開し、部門やポジションごとにカスタマイズしていく必要があったということですね。
質疑応答 55工程の書き出しは、一人で行ったのか ――岡田:ここからは、皆さんからいただいたご質問を読み上げていきます。「55個も業務を書き出すのは、お一人でやったのか、チームで分担したのか気になります」。
安達様:誰が何を担当しているかというざっくりした業務分担の一覧表がもともとあり、それはチームで作成したものでした。そこからさらに細かく、日々の業務まで分解していったのは私自身です。ベースはチームで作ったもので、細かくする作業は自分で担当した形です。
面接評価の基準を作るとき、チームでどう目線を合わせたか ――岡田:「面接評価の基準を作る際、どのようにチームで目線合わせをしましたか。採用チームの中でも微妙なずれが生じそうだと思いました」。
安達様:評価基準は一度でできたわけではなく、かなりディスカッションをしました。会社のMVCの項目で、こういったところが大事だよね、こういう人と一緒に働きたいよね、というふわっとしたものは、もともとあったんです。
それを具体で詰めていき、ここよりもこちらの方が大事だよね、といった話をしながら、チーム内で決めていきました。頭の中にあった評価基準のようなものから、詳細を詰めていく作業をした形です。
グレードごとの合格ラインは、どう決めたか ――岡田:「現在、面接の設計をし直しているのですが、グレードごとの合格ラインはどうやって決めたのでしょうか」。
安達様:グレードごとの定義は、皆さんの会社の中にもあるのではないかと思います。例えば1〜7段階のグレードがあるとしたら、このグレードの方はこういうことができて、こういう役割を担い、こういう行動が期待される、と定義されているはずです。
そこと照らし合わせ、1〜5段階の面接の評価基準で、このグレードであればこの水準まで欲しいよね、と突き合わせて考えていきました。
文字起こしを候補者に断られた場合は、どうするか ――岡田:「面接の文字起こしについて、候補者の方から断られるケースもあるのか。その場合の対処などがあれば伺いたいです」。
安達様:これまで文字起こしをお断りされたことは、実はありません。AIが普及してきたからだと思っています。ただ、業務を設計する上で、そういう場合もあるとは想定していました。その場合は文字起こしをせず、面接官自身が議事録を作成する運用にしています。
別の観点ですが、私たちは対面面接でもこの仕組みを使っているんです。面接官がMeetを立ち上げてスピーカーをつなぎ、対面面接の場で議事録を取らせていただいています。取った議事録から、評価ドラフトを作成させる形です。
ATSの機能を使わない理由は何か ――岡田:「ATSの機能を使わずに対応されている理由と、そのメリットを伺いたいです」。
安達様:ATSにも評価ドラフトを作成する機能があるのに、なぜ使わないのか、というご質問だと受け止めました。ここはセキュリティの観点で、今は使わない意思決定をしています。
ATSや外部の面接ツールに面接のデータをお渡しすることは、私たちのAIのガイドラインでNGになっています。Google Workspace内の環境で完結させることが大前提なので、ATSの面接評価機能や外部企業の面接ツールは使っていません。
メリットとしては、もともとGoogle Meetで面接をしていたので、GeminiやGemにスムーズに連携できたことです。
文字起こしからGemへの投入は、自動化しているか ――岡田:「面接評価ドラフト作成Gemへの文字起こしデータの投入から面接官への共有まで、自動化されていたら方法を教えてください」。エージェントのようなものを組んでいるのか、という趣旨でしょうか。
安達様:AIエージェントなどは組んでいません。デモではファイルを貼り付けていましたが、実際はGemを開くと下の方にプラスマークがあり、そこを押すとGoogle Driveにつながるようになっています。
面接はGoogle Meetで実施しているので、Geminiの文字起こしはすべてGoogle Driveに格納される仕組みです。Gemのプラスボタンを押してGoogle Driveに接続し、そこから文字起こしを選んでGemを動かしています。ここは手動にしています。
面接官へのアンケートは、導入からどのくらいで取ったか ――岡田:「面接官へのアンケートは、導入からどのくらい経ってから取りましたか」。
安達様:面接官へのアンケートは、導入から1か月半くらいで取りました。それより前に、人事部内で1か月程度テストをしています。人事メンバーも面接官になっているので、まずそこでアンケートを取り、その次に現場のアンケートを取った形です。
人事企画の仕事と並行して、AIの取り組みに使う時間をどう確保しているか ――岡田:「人事企画の仕事と並行して、AIの取り組みに使う時間はどう確保されているのでしょうか」。
安達様:難しい問いですが、私の場合は、採用業務や全社のAI活用推進を人事企画としてのミッションとして持っています。自分の目標の中にも割合を置いているので、業務の中で自然にAIの取り組みに時間を使えるようにしているんです。
上司にも理解していただいていますし、会社としても理解しているので、そういった形で確保しています。個人の工夫ではなくて申し訳ないのですが。
カジュアル面談でも活用しているか ――岡田:「カジュアル面談の議事録などで活用されている事例があれば教えてください」。
安達様:カジュアル面談でも、Geminiの文字起こしで議事録は作成しています。ただ、あくまでカジュアル面談なので、評価のようなことはしていません。面接官がカジュアル面談の内容を整理する形で使っていて、カジュアル面談用のGemを組んでいるわけではありません。
目標設定支援ツールで、GeminiとNotebookLMをどう掛け合わせているか ――岡田:「目標設定支援ツールで、GeminiとNotebookLMをどのように掛け合わせているのか、おっしゃれる範囲で伺いたいです」。
安達様:NotebookLMには、各本部の戦略のマスターになるものと、グループごとの目標を入れています。あとは会社の人事制度のドキュメントと、等級の役割定義をまとめて入れている状態です。
Geminiは主にマネージャーが使うようにしていて、配下のメンバーの情報を整理するツールとして使っています。例えばインサイドセールスというポジションで、グレードはいくつか、といった情報をNotebookLMに入れるためのドキュメントを作るGemです。
Gemが整理したメンバーの情報、たとえば名前、所属、グレード、ありそうなキャリアビジョンをまとめたドキュメントをNotebookLMに入れます。すると、もともと入っている戦略のマスターや等級の役割定義、部のミッションに応じて、この方にはこんな目標が適しているのではないかと提案してくれるツールです。
面接評価ドラフトGemの精度を、どう上げて担保しているか ――岡田:「面接評価ドラフトGemの精度を上げる、担保するために取り組まれていることがあれば伺いたいです」。
安達様:ずれを検知する仕組みなどは、まだ作れていません。取り組んでいることとしては、議事録の内容や録画の内容を確認して、面接官へフィードバックをしています。
Gemの精度を上げるという観点では、Gemのプロンプトを頻繁に書き換えるようにしているんです。面接官から「Gemはこう言っているけれど、実際はこうだと思います」というフィードバックをいただくことがよくあるので、それに合わせてGemを日々修正しています。
産休・育休から戻ったばかりのとき、どの業務から使い始めたか ――岡田:「産休・育休から戻ったばかりだと、新しいことを試す余裕はなさそうに感じます。最初はどのような業務から使い始めたのでしょうか」。
安達様:本当に共感します。当初は私も品質の向上まではあまり目的にしておらず、まずは工数削減を主な目的にしていました。
例えば、人事担当者の仕事としてスカウト文のテンプレート作成がありますが、そのたたき台を作ってもらうところからです。採用ペルソナの設計でも、ペルソナのたたき台を作ってもらうことをAIに任せていました。最後はもちろん自分でスカウト文を修正して送りますが、元になるたたき台はAIに任せていました。
最後に安達様は、参加者にこう呼びかけました。
安達様:私たちもまだまだこれからで、AI活用をどんどん進めていかなくてはいけないと思っています。皆さんと一緒に頑張っていけたらと思います。本日はありがとうございました。