週次のレポートをまとめるのに数時間。求人票は媒体ごとに書き分けて、また数時間。材料はすべて手元にあるのに、整えて共有する作業そのものに時間が消えていく。
株式会社kickflowの小澤雄二氏は、そこにClaudeとGeminiを入れました。ATSから出したCSVを渡すだけで採用レポートが出る状態まで持っていき、求人票は7媒体分を一括で生成できるようにしています。
ただし、この日の講演でいちばん長く語られたのは成功談ではありません。「人事見送り」という言葉の定義ひとつで3回書き直し、最後は関連する記述をすべて削除したという失敗の顛末でした。
2026年9月11日に開催したOffersウェビナーの内容を、当日の質疑応答も含めてお届けします。
材料は揃っているのに、まとめる作業に時間を取られていた

小澤様:当社で採用活動をしている中で、レポート作成や求人票作成にすごく時間を取られていました。その課題をAIでどう解決したか、失敗で間違いながらお話しさせていただければと思っております。
簡単な自己紹介になるんですけれども、エンジニアを2年ほどやっておりまして、その後は営業や情シスを経験して人事になったという、少し変わった経歴です。kickflowでは採用を中心に人事企画も担当してきまして、現在は人事企画チームのマネージャーとして組織課題の解決に取り組んでおります。
まず課題として感じていた部分から。レポート作成と求人票作成は、どちらも手作業の繰り返しになっていました。
レポートはATSからCSVを出して、手作業で集計して手で整える。求人票は現場に要件をヒアリングして、ペルソナをゼロから考えて、媒体ごとに文面を書き分ける。当社は今7媒体を使っておりますので、これを書き分けるだけでもかなり時間がかかります。
どちらも材料としてはしっかりと整っているのにも関わらず、まとめるですとか書くという作業に時間を取られていた。これが課題でした。
「材料があるなら、AIに渡せばいいのでは」

小澤様:採用におけるAI活用を考える中で気づいたのが、材料があるんだったらAIに渡せばできるんじゃないか、ということでした。
これまでは採用チーム全員の頭の中だけでゼロから組み立てていたわけですが、材料を渡せば下書きを作ってくれる、その仕上げだけ人がやればいい。これが今日お話しする2つの取り組みの出発点です。
そもそもの始まりはレポート作成でした。週次や月次のレポートを手作業でまとめるのに想像以上に時間がかかっていて、メンバーからも実はかなり相談されていた部分です。
材料もデータも揃っているのに、整えて共有するだけで時間がかかる。まずはここからAIを試してみることにしました。その後、AI活用を自分のチームに推進していく中で、この発想を求人票にも当てはめてみようと。ある程度AIを使い慣れてきたところで、ここにも着手した流れになります。
事例① レポート自動化 — ATSのCSVを渡すだけ

小澤様:1つ目はレポートの自動化です。今の形は非常にシンプルで、ATSからCSVを出してAIに添付して送信するだけで、手集計はゼロになりました。
週次・月次それぞれの構成に沿ったレポートが、そのまま出力されます。ただ、この4ステップにたどり着くまでには結構やり取りを重ねました。本当に最初からこの形だったわけではありません。今日はこの構成の中身と、その試行錯誤のプロセスをお話しさせていただければと思っております。
週次は速報性、月次は振り返りを厚く
小澤様:週次のレポートに入れているのは、数値のサマリー、選考フェーズ別の人数、ポジション別の進捗、それから今週の課題や所感です。これは速報性重視で、なるべく少ない情報でシンプルに出す設計にしています。
一方で月次のレポートには、累計の推移や応募経路別の内訳、それに振り返りを厚めに入れました。
この構成も最初に決めた形のままではありません。実際に使いながら「やっぱりこれがいいよね」というところを修正しながらやって、今の形になっています。
失敗談① 「人事見送り」の定義だけで3回書き直し、最後は全部消した

小澤様:ここからは、レポート自動化のプロンプトがどうやって今の形になったかを少しお話しします。先ほどもお伝えした通り、一発では全くうまくいきませんでした。細かい修正も含めると、大きくは8回ほど改修しています。
内容をざっと挙げると、選考結果データの追加、ファイル添付の変更、振り返りのセクションを分ける、見送り理由の分析の追加、フェーズの分割といった具合です。
その中でも「人事見送り」という定義を作ったところが、なかなかうまく動きませんでした。かなり時間を使ってしまったので、この顛末を少し詳しくお話しさせていただきます。
v6: 「不採用×エントリー=人事見送り」と伝えたら、範囲を誤解された
小澤様:不採用の理由がなかなかうまく出てくれなかったので、それをもっと明確にしようと思いました。エントリー段階での不採用、つまり人事時点で見送った方を「人事見送り」としてAIに伝えて、数値サマリーに注釈として明記してもらう形です。
ところが、出来上がったものを見てみると、説明が十分ではなかったようで、非選考対象——いわゆる選考対象ではなかった方にも、同じ「人事見送り」の注釈がついてしまっていました。
v7→v8: 説明を明確にしても、まだ動かなかった
小澤様:見ていく中でそれに気づいて、不採用だけが人事見送りであること、非選考対象の方は案内後の返信がなかった、重複応募だったなど別の理由であることを、改めて詳しく伝え直して修正してもらいました。
ただここは、AIが読み違えたというよりも、自分の最初の説明が曖昧だったのだろうと思います。すごい反省でした。
v9: 結局、関連する記述を全部削除した
小澤様:それでも結局うまくいきませんでした。色々丁寧に定義を書いたんですけれども、AIが「人事見送り」という定義にかなり引っ張られてしまって、本来見たかった分析がかすんでしまう。
「人事見送り」にかなり寄った出力になってしまったので、最終的にはこの人事関連の記述を全て削除して、シンプルな形に戻しています。
8回の修正のうち3回が、この1つのテーマに費やされました。丁寧に説明しようとすればするほど、AIはそこに引っ張られる。私自身のすごく1番の学びだったなという風に思っております。
残り3つの学び — 箇条書き、フェーズ混在、データ不足
小澤様:残り3つの学びも簡単にご紹介します。
まず1つ目。箇条書きで簡単に書いてください、と最初は指示していたんですけれども、箇条書きなせいもあって分析がすごく表面的になってしまう。そこでセクションを分けて、観点ごとに書かせるようにしました。
2つ目。見送り・合格理由を1つのセクションにまとめていたら、書類選考と面接の結果の内容が全て混ざってしまいました。フェーズごとに分けて、より正確な分析が出るように変更を加えています。
3つ目。データが少ない週があったんですけれども、AIがその少ないデータの中で推測で埋めてしまう。適当なデータを出さないよう、「データ不足のため分析できません」と明記させるようにしました。
今つくるなら、制約を独立したセクションに書く

小澤様:最後に、今作るならこうするな、というところにも少し触れておきたいと思います。
1つ目は、制約を独立したセクションに具体的に書くこと。除外条件やデータ不足時の挙動を、プロンプトの中で明確に指示していきたいですね。
2つ目は、取りこぼしなく全件を集計する形にしたい。応募が多い週でも、データが漏れないような設計を目指したいと思っています。
3つ目は、週次データを蓄積して月次レポートも自動化できるんじゃないか、と。今作るならここでしょうね。手作業をさらに減らして、振り返りの精度を上げていく取り組みをやりたいです。
作って終わりではなく、失敗をたくさんして学びを重ねて仕上げていくのが大事だと思っております。これらの失敗を私自身も今後活かしていきたいですね。
事例② 求人票生成 — ペルソナ3種から7媒体へ展開する

小澤様:2つ目の事例が求人票の生成です。まずAIに要件を渡して、AIが要件を整理した上で、そこからペルソナを3種類作り、それぞれに合わせた求人票を全媒体分生成します。
媒体ごとに文体や書けることが少し違いますので、例えばある媒体はエンジニア寄りの訴求にする、ある媒体は給与を出さない、ある媒体はビジネス寄りの訴求にする。そういった違いを踏まえて出し分けています。
これは指示書・参照ファイル・出力を一まとめにした、Claudeのスキルと言われる機能で作りました。毎回同じような精度で出せるようにしています。こちらも先ほどのレポートと同じく、何度もテストを重ねて今の形にたどり着きました。
ペルソナは3種つくって、1つの求人票に統合する

小澤様:実際の出力では、ペルソナを3つ書いています。安定志向で裁量が欲しいペルソナA、経験はこれからだけどもフラットな環境で伸ばしたいペルソナB、それから複数社からオファーを受けているペルソナC。この3人が出てくる形ですね。
ただ現状、3人それぞれ別の求人票として出てくるわけではありません。ある程度全員に刺さるような形で、1つの求人票に統合して出力しています。そこから媒体ごとのトンマナに合わせて、7媒体分に展開する流れです。
失敗談② 「可能であれば」は、全部スキップされた

小澤様:求人票生成の方も、先ほどお伝えした通り同じようにうまくいかなかった点があります。
1つ目。当社のバリューの確認を「可能であれば」という緩い指示にしていたんですけれども、実際テストした時に全てで確認がスキップされてしまっていた。
実際に見てみると、バリューがちょっと古いままになっていました。ちょうどバリュー名が変わっていたタイミングだったので、このまま生成し続けるところだったな、と。結構危なかったところです。そこでかなりハードにして、「必ず確認する」という強制表現に変えることで解決しました。
2つ目。求人票の項目構成が、スキルの指示書本文と参照ファイルと実物の3箇所で微妙に食い違っていました。ちょっと日を跨いで作ったせいもあります。そこで実物サンプル、いわゆるATSと同じ形に合わせて統一しました。
3つ目は、レポートと似た話です。配属の背景など情報が足りない項目を、AIがそれらしい理由をでっち上げて埋めてしまう。本来求めている内容と異なるものになってしまったことがありました。
これを防ぐため、情報が不足する場合は足りない情報をピンポイントで質問するように、改めて直しています。
プロンプトは業務設計そのもの

小澤様:今日はぜひ皆さんに持ち帰っていただきたいことを、3つほど書かせていただきました。
1つ目。プロンプトというのが業務設計そのものだという風に私は感じております。
プロンプトが動かない時はAIの性能の問題だけではなく、自分の中の業務ルールみたいなところが曖昧なまま残っていたというのが非常に多い印象です。しっかりAIを活用するためにも、業務をマニュアル化・言語化させられるとよいのではないでしょうか。
2つ目。レポートも求人票も、材料さえあれば下書きは作れます。ここはぜひお試しいただけたらと思っております。
3つ目。完璧じゃなくてもいいので、ぜひ使いながら育ててください。今日話した内容も本当に一発でできたものではなく、何回も何回もやり直しながら今の形になりました。最初から完璧を目指さず、1つ1つ小さいところからやっていくのがいいんじゃないかなと思っています。
明日から始められる3つのこと
小澤様:明日から始められるのではないか、と思うことも3つほどお伝えします。
1つ目は、材料がすでに揃っている業務を1つ選んでみること。2つ目は、プロンプトを1度書いたら型として保存しておいて、他の方も使えるようにすること。3つ目は、完璧を求めないこと。
私自身も何度もミスしながら少しずつ良くしてきました。まずは小さく始めて育てていただくのがおすすめです。
「分からない」と言わせる指示を、必ず入れる
――岡田:狙い通りのアウトプットにする際には、どこまでをプロンプトで持っていくのか、どこからスキルに仕組みを渡すのか。線引きも含めて、実際にやっていることを改めて詳しく伺いたいのですが、いかがでしょうか。
小澤様:まずやっぱり、制約は独立セクションにしっかりと書く。ここは意識をしています。除外条件や、データ不足でどう振る舞ってほしいかを、本文に埋め込むのではなく、はっきり分けて指示する形ですね。
それから、分からないというところはもう「分からない」と言わせるのが非常に大事だと思っていて、適当なことを言わせないためにこれは必ず入れています。実際、データが少ない週に推測で埋めてしまったり、求人票でもない項目を勝手に推測で埋めてしまったことがありましたので。
あとは、指示書だけではなく実物のサンプルを渡すようにしました。サンプルを渡すことで、構成の項目が少し違ったとしてもそちらに近づいてくれるので、本当に実物に近い形で実装できます。
表現の強さも結構気をつけていますね。「可能であれば」は私の失敗例として挙げた通りで、見ないことが多い。見てほしいものは「絶対見なさい」という、かなり強い表現として書くように意識しています。
あとは、いい例・悪い例を両方見せる。それからテストをしっかりやっていくことで、人がレビューする工程を残す。このあたりが私たちの方でやっていることかなと思います。
作った仕組みを、使われ続ける状態にどう保つか

――岡田:次は仕組みのところにお話を移れればと思っております。こういった仕組み化は、小澤様の中でどういった形で進めていったのでしょうか。
小澤様:正直言うと、これは最初はあまり意識していませんでした。失敗して気づいたことが実は多かったですね。本当に仕組みだけ作って、実際はほとんど動いていなかったみたいなことが私自身もありました。実際に使われることと作ることって別の話だ、というのを痛感しています。
なので今意識しているのは、まずわざわざ見に行かなくていい場所に置くこと。Slackなど普段見えるような場所に出力するだけで、皆さん目につくので、生き残る確率が全然違うような気がします。
それから、完璧じゃなくてもいいので、何度も何度も直していくつもりで作ること。あとは、無理に新しい行動をAIで運用しようとしないこと。小さく始めたり、効果が見えるようにしたり、失敗しても大丈夫な設計にしたり。このあたりが私の中で意識しているポイントでしょうか。
――岡田:先ほどのSlackの話はまさしくだなと思っていて、使われ続けるという点では、トップダウンで進めるとなかなか進みづらいところがもちろんあります。
例えばインターフェイスをガラっと変えてしまうと、そのタイミングで皆さん使いづらくなってしまう。すぐ改善していく上で、使い手を意識していくのが仕組み化では非常に大事なのかなと感じました。
小澤様:そうですね。属人化してしまうと本人にしか直せないので、他の方は使えないとなってしまう。そこら辺もやっぱり、皆さんが使えるというところが大事なのかなと思います。
次にAIへ任せる業務は、どう選ぶか
――岡田:レポートの次が求人票に移られたかと思うのですが、それがどういった変遷を経てこういった決断に至ったのか。さらに小澤様が次にどういったところをAIに任せていこうとお考えなのか。そういうところも含めてお伺いできればと思っております。
小澤様:なぜこれを選んだかで言うと、材料やデータ・要件がすでに揃っている業務を選んだ、というところがあります。それから、作業に近いようなもので時間がかかっているというのが着眼点でした。レポートも求人票も、この基準に沿っています。
あとは、自分が触っているシステムを使っていくのがいい。要は自分が分かる業務領域からやっていくのがいいと思っているので、まずそこから着手しました。
もう1つ、定量指標ではなく現場の痛みが大きい業務をヒアリングして選ぶ。これも結構大事なのかなと思っているので、任せる業務を選ぶ基準になるんじゃないでしょうか。
チームで回すために、全員が見て直せる場所に置く
――岡田:AIの使い方を個人ではなくチームで回すために、何をしていらっしゃるか。今の現状だとチームのどなたかが回していらっしゃるのかなとも思うのですが、ここの再現性をどう持たせていくのか。ぜひお伺いできればと思います。
小澤様:チームで運用する際に意識しているのは、私1人しか作れないものにはしたくない、ということです。全員が見て、いつでも変えられるようなものを目指しています。
全員が見れるような場所に置くのも意識していますね。それこそスキルなんかもGoogleドライブの共有できるところに置いて、「ここに置いてます」とチームメンバーに伝えて、必要に応じて直してまた上げ直してください、という形でお願いしています。
本当に属人化を防ぐために型にしていくのもそうなんですけれども、皆さんが使えるような形というところを1番意識しているかなと。
あとは、意識していたわけではないですけれども、権限やガバナンスをちゃんと整備するのも大事なのかなと思うので、この辺りもチームで運用する際には意識した方がよさそうです。
それから今回のセミナーのように、失敗例を共有することも、個人個人のレベルを上げるための取り組みの1つだと思っています。この辺りを共有するのも非常に大事なのかなと。
――岡田:人事チームが自分で持てる範囲と、例えばエンジニアの方や情シスの方に頼む範囲。そういったところはもちろん出てくると思うのですが、どういった形で切り分けだったり、ガードレールを引かれていらっしゃるんですか。
小澤様:そもそもの大前提のルールは会社として定めているものがあります。個人で利用する範囲で言うと、私たちの中で自分で作れるものは作る。作れないところは情シスの方に相談しながら進める、という形ですね。
効率化よりも、業務の解像度が上がった

――岡田:AIを使い始めて、効率化以外で明確に変わったポイントはどんなところでしょうか。
小澤様:明確に変わったのは、やっぱり自分たちの業務ルールが自分の中でも明確になったことでしょうか。AIに指示を書くのは、普段の頭の中でなんとなく判断していたことを言葉にして説明する作業だと思っています。
先ほどお話しした「人事見送り」とか「非選考対象」とか、ああいったものの違いは、正直、頭の中にはありました。ただ厳密に言語化したことはなかったんですね。これをAIに伝えようとして初めて、定義できていなかったな、明確にはなっていなかったな、と気づくことが何度もありました。
本当に自分たちの業務の効率化というよりは、自分たちの業務そのものの解像度が上がった。ここは1つ挙げられるかなと思います。
もう1つは、試行錯誤に関する抵抗感が減ったこと。結構しっかり形を整えてからやろうかな、と考えちゃうタイプなんですけれども、一発で完璧なものを作ろうとする感覚がちょっと減りました。
実際レポートも求人票も何回もテストを重ねて今の形になっているので、最初から「何度もかけて直すものだ」という意識で作り始めるようになった。これも仕事の進め方の変化として自分の中では出てきたなと感じます。
アウトプットの質そのものも上がったかな、と感じる場面もありますね。早くなっただけではなく、自分の中で考えるとか見直すとか、そういう時間が増えてきました。分析の質もしっかり上げられているので、質の底上げという面でもプラスになっています。
――岡田:逆に、変わってないというか、変えなかったみたいなところはあったりされるんですか。
小澤様:業務の流れは基本的に変えていません。自分たちの業務の形の中にAIを入れる、という形でやっているので。どうしても、説明できないとAIにも話せないんですよね。自分たちの業務の中でAIにお願いできそうだなというところをしっかりとお願いする形なので、業務そのものが変わるわけではないな、という感じはします。
質疑応答

AIに任せるとき、どこが危ないか
――岡田:AIを使う中で危ないと感じた部分はありますか。どのように乗り越えられたかも伺えたら幸いです、というご質問をいただいております。
小澤様:危ないと言うと、やっぱり適当なデータで出てきてしまうところは本当に危ないなと思いました。求人票を適当なデータで上げてしまっていたら、その情報を求職者の方が信じてしまいますので。
レポートであれば本当に社内で止まるので、そこまで大きな問題にはなりません。ただ、これが例えばスカウトの文章をAIで作ったとなった時に、全く違う情報を出してしまっていたら。例えば候補者様の名前を違うもので出していたら、非常に危ないですよね。もう絶対そうならないような仕組みが必要なのかなと思っています。
そのためにも、AIで出力したものを完全に信用するわけではなく、まずは私たちの目でしっかりと見ていく。ここは大事にしているところです。
――岡田:求人票やレポートを作る際に、候補者の個人情報が含まれるデータもAIに渡されているか、可能であればお伺いしたいです、というところもいただいております。
小澤様:まずレポートについては、ATSから出力されたCSVから個人情報を削除して入れるようにしています。とは言っても、完全に除けるかどうかと言われると微妙なところもありますので、当社自体が学習しないモデルを使っていて、そこで担保する形も合わせています。個人情報は極力入れない、というやり方ですね。
求人票については、個人情報は一切入れていません。あくまで私たちの会社の情報を入れることで対応していますので、そこについては個人情報が入る余地もない形です。
求人票・レポート以外の自動化と、今つくり直すとしたら
――岡田:御社の中でこういった取り組みを今実施中ですよ、というところも、現在進行でもしあればお伺いできればと思うのですが、いかがですかね。
小澤様:候補者様の自動スクリーニングも、実は作っています。人事の人間が見るにあたって、参考にするためのスクリーニングの結果を出すようなものですね。
あとはテスト的に作ったものとして、社内の問い合わせのボットがあります。これは実際に問い合わせを対応するだけではなく、分からないものは「分からない」と答えさせる。そしてその分からないと答えたものを、週次で人事側に投げるようにしました。随時データの追加ができる仕組みです。
もう1つ、ドキュメントを管理しているシステムがあるんですけれども、その中で更新があった場合もデータを拾ってきて、「更新があったからこのナレッジを少し変えなきゃだめだよ」とAIから指摘される。そういったシステムも今作っているところです。
――岡田:AIで自動化する方法も日々進化していると思うのですが、採用レポートや求人票作成の自動化を今作り直すとしたらどう作りますか、といただいております。
小澤様:求人票作成で言うと、今の形で一旦ほぼほぼ自分の中ではいいかなと思っています。1つあるとすれば、もう完全な自動化をしていくのもありでしょうか。
どちらかというと、イメージするのはレポートの方です。今はCSVを渡して出力してもらう形になっていますが、ATSからAPIの連携などでデータを引っ張ってきて、自動的に出力させる仕組みを作る。週次と月次それぞれ出ていく形で作れるかなと思っているので、そういった形にしていきたいですね。
どれくらい時間が減り、今の形になるまでどれくらいかかったか

――岡田:実際に自動化してから作業時間はどれくらい短縮されましたか、というご質問をいただいてまして。率直なところは小澤さんいかがですか。
小澤様:定量的に明確に測れているわけではないので、若干感覚値に近いような形になってしまうんですけれども。
レポート作成は、ATSからデータを見て手作業で集計して分析して、で本当に数時間、3時間とか4時間とか。下手したらもっとかかるくらい、特に月次は時間を使っていました。
AIを使うようになってからは、ある程度まとまった結果が本当に数分で出てきます。そこを自分たちの目で見てまとめ直して、30分から1時間くらいで大枠まとまるようになりました。本当に75%くらいは削減できているんじゃないでしょうか。
ただ求人票については、新規を作る機会もそんなに多くはないので、N数がかなり少ないんですね。やっぱりゼロから叩きを作る時には、本当に同じくらい3時間とか4時間とか、しっかり考えて内容を書いて、ある程度叩きが出てくる。これも1時間かからないくらいで作れるようになったなと感じます。
――岡田:レポートや求人票作成を現在のアウトプットができる状態に持っていくまで、どれほど時間がかかりましたか、というところをいただいているのですが、いかがですか。
小澤様:試行錯誤を何回かに分けてやっていたので、具体的に合計するとこのくらい、という形ではないんですけれども。最初の形を作ってから今の形にするまで、レポートで大体1ヶ月ぐらい、求人票作成は1週間ぐらいでしょうか。
社内外に共有するときの見やすさと、共有ツール
――岡田:社内外に展開する際に、レポートや求人票の見やすさで意識していることはありますか。
小澤様:求人票はもう、分かりやすくそれぞれの媒体に合わせた形で書いているので、それぞれに書き分けるところを意識しています。AIが出力したものなので、そのまま出すのではなく、自分たちの目でよりいいものに仕上げてから出す。ここも同じですね。
レポートも同様で、基本的にはドキュメントに一旦AIで書いたものをまとめて、そこから私たちが手直しして見せていく形です。AIで出力したものをそのまま見せると、どうしても明らかにAI感があるというか、ちょっとずれている部分もありますので。そこら辺をしっかり手直しするよう意識しています。
――岡田:出力したレポートを関係者に共有する際には、どのような方法・ツールで共有されていますか。経営陣や現場に共有される際にどういったツール・方法でやられているか、というご質問もいただいております。
小澤様:これはもう当社で使っているので、Googleのドキュメント等でお渡しすることが多いですね。ドキュメントに貼り付けるところを前提に出力しているので、コピー&ペーストをしやすい形で出しています。その上で貼り付けて、私たちの方で形を整えました。
ただ社内展開、チーム内の展開であれば、AIで出力したものだよ、とポンと出すこともあります。基本的には経営陣や他の方に見せる時は、整えたものをGoogleのドキュメントに揃えて見せる形です。
ClaudeとGeminiを選んだ理由と、最初に試すならどちらから

――岡田:ツール選定にClaudeとGeminiを使われている理由はありますか、といただいているのですが、こちらはどういった形で選定されたんでしょうか。
小澤様:これは実はですね、何か戦略があったわけではなく、結構、時系列の違いというのが1番大きいんです。
元々、今年の頭ぐらいは私がGeminiのGemを主に使っていまして、その時期にレポート作成の機能を作りました。ただ今はClaudeを主に使っているので、求人票はClaudeで作った。使っているものが違った、というだけの話になります。
――岡田:もし今日これから何か1つだけ試すとしたら、レポート作成と求人票作成どちらから始めるのがおすすめですか、といただいているのですがいかがでしょうか。
小澤様:個人的にはレポート作成かなと思います。なぜかと言うと、求人票作成はどちらかというと更新していくもので、新規で作る機会はそんなにたくさんあるわけではないんですね。
なのでレポート作成の方が時間がかかることも多いですし、今後どういう動きをしようかを見ていく上でも、まず取り組むと次の動きを考えやすい時間ができるのかなと。レポート作成から作るのがいいのかな、と個人的には思います。
採用レポートを社外に共有した効果
――岡田:採用レポートを社外のRPOやエージェントの方に共有していますか。その結果、採用進捗にどれくらい影響したのかも、感覚でいいので知りたいです、といただいております。
小澤様:レポートを、エージェントさんには共有していません。RPOの方にはしたことがあります。ずっとしているわけではなく、必要に応じて共有しているぐらいのレベル感ですね。実際どれくらい影響したかと言うと、そこまで大きくは影響してなかったな、というのが正直な感覚です。
ただ、エージェントさんに共有すると、もしかすると今足りてない部分や弱いところ、どういうところが通りやすい・通りにくいかをお伝えできるかもしれません。そこでは変わってくる部分があるのかもな、と個人的には感じています。
RPOの方はどちらかというと進め方や戦略を考えていただく立場です。それよりも、直接候補者の方を送っていただけるようなエージェントさんに展開して、どこの部分が良かった・悪かったかをお見せする方が効果としてはあるのかなと。肌感覚の話になっちゃったんですけど。
おわりに
――岡田:人事の方々がAIで効率化されたその先は、どういったところがコアな部分として残り続けるのか。小澤さんの視点で、今後人事部門の方に求められていく姿はどんなものなのか。率直にいただけたらと思うのですが、いかがでしょうか。
小澤様:AIに色々任せることで、人事も本当に人が考える時間、候補者の方に向き合う時間をかなり増やせるのかなと思っています。
作業やまとめていく作業はAIに任せつつ、しっかりと考えて候補者様と向き合っていく。会社の良さを伝えていく。
候補者様に対してどういう風なアプローチがいいのか。面接官に対してどういう風なのがいいのか。そういったところもしっかりと伝えていける時間はできるでしょう。そういった向き合う時間をしっかり作れるのが理想なのかな、と個人的には思っています。
私もこうやってお話しさせていただいていますが、まだまだAIをちゃんと活用できている部類かと言われると、本当にまだまだだなと思うところもあります。私自身も今後色々進めていきたいですね。
ぜひ今日の話が少しでも皆様の中でお役に立てたら嬉しいです。できるところから少しずつAIを活用し始めていただけると嬉しいなと思っております。