採用業務でのAI活用は「作業の効率化」に偏りがちです。ただ、本当に問われるのは「AIにどこを任せ、何を人に残すか」という切り分けではないでしょうか。
2026年8月21日、Offersのウェビナーに、株式会社HERP 取締役の河井龍太郎氏をお迎えしました。採用管理システム「HERP Hire」などの事業責任者を務める立場から、弊社代表 鈴木裕斗との対談形式でお届けします。
河井氏が公開したnote「AIが進むほどHRテックはおもしろくなる」がきっかけで実現した回です。意思決定の核となる「人間どうしのすり合わせ」は残り続けるという問題意識を出発点に、4つのテーマを行き来しました。
AIに任せる領域と人に残す領域を、どの軸で分けるか

――鈴木:まず、そもそも採用活動ってどういう工程があるんだっけというところですが、母集団の形成をして、書類選考して、面接をして、評価をして、オファーを出して、入社後の立ち上がり。こういったプロセスが基本的な部分かなと思っております。
この中で人とAIをどう区分けしていくべきか、3つ提示させていただくと。
1つ目が不可逆性。間違えたときに取り返しがつくかどうかですね。特に候補者様へオファーレターやメッセージを送るところで、内容に何か間違いがあると、候補者体験を非常に毀損してしまうかもしれない。そういったところはAIを慎重に使わなければいけないよね、と。
真ん中が暗黙知の量です。AIは結局、与えている情報で精度が変わるところがあるので、皆様が行われている作業が作業者の方の中にあってしまうと、なかなか期待するような効果が得られなくなってしまう。
最後が説明責任。何か起きてしまったときに誰がどう説明するんだっけとか、この作業はどういう背景・意思決定があってこうしてるんだっけ、ということを誰かに聞かれたときにどう答えるか。そういった部分も、この線引きに対して重要なポイントになってくるのかなと思っております。
HERPが最初に入れたのは「不可逆性が限りなく低い領域」
河井様:まさに、こういった3つの軸は、どこまで任せるかというところに考慮すべきポイントかなと私も思っていますね。この中でも1番大きいのは、やっぱり不可逆性が特に大事になってくるのではないかなと思ってます。
弊社の採用であったり、弊社のAI関連のプロダクトで1番最初に出した、実際に社内で使い始めた、お客様に使っていただいたというのは、この不可逆性が限りなく低い領域からスタートさせていただいたんですね。
具体的に言うと、元々は面接官の方が手元で取っていた面接のメモを、もうAIに任せて、面接が終わった後の社内用の議事録を全部、面接が終わって1分以内に返すみたいなところから始めました。
これって全て社内であったり面接官ご自身に閉じた話なので、かなり不可逆性が低い領域だったのかなと思ってますし、だからお客様にも使い始めていただきやすかったのかなと思っていますね。
意思決定のファクターが多い採用ほど、人が主体になる
河井様:前提として、採用や転職においてもいろんなケースがあるかなと思っていて。意思決定のファクターの数が多い採用なのか、少ない採用なのかというのを、我々よく社内で話してたりします。
例えば勤務地の条件があって、条件面もあって、企業目線で特定の免許や資格さえ持ってさえいれば大体OKみたいな採用も、もしかしたら世の中にはあるかもしれない。
そういった採用や転職においては、どんどんAIに判断の部分も任せていきやすいんじゃないかなと。
一方で、ファクターの数がすごく多かったり複雑だったりする採用。例えばオファーが2つあって、条件がこっちの方がいいから条件が高い方に絶対行くとも限らない、こういう転職活動ってあると思うんですよね。
そういった採用や転職において、AIにほとんど任せていけると言えるかで言うと、まだまだそうではないのかなと、企業側でも求職者さん側でも思っているところがありまして。
ファクターの数が多い転職や採用って、やっぱり未来に向かった意思決定をどうすり合わせていくかがすごく大事になってくるかなと思ってます。そういったコミュニケーションを通じたすり合わせの部分は、まだまだ人が主体で動いていかなきゃいけないかなと。
AIは過去に強く、未来は人が担う
――鈴木:未来・過去っていうのは1つ、いい観点かもしれないですね。AIはデータがあれば処理ができるので、データがあるということは全て過去に行われたこと。結構AIは過去に対して性能が高いなと思うんですけど。
おっしゃっていただいた通り未来、その方とどういう事業を作っていくんだとか、どうしてその方が入ると、この会社の未来が変わるんだというところの説明とか熱量。そういう部分は確かに人間にしかできないし、AIにはその処理するデータがない。
河井様:まさにそういった候補者の方のモチベーションの源泉は何で、それは自社に入ったときに未来で再現するのか、という確認作業やすり合わせは、やっぱり人が担っていくところだと思います。
一方で、経歴書の確認みたいな、この候補者さんはこういう経歴があって、それは求人で記載してる経歴とどの程度整合してるのか、というところは過去に向かった確認作業になるので、AIに任せていけるんじゃないかなと。
その確認した過去から、じゃあそれを持って自社における未来はどうなんだっけ、みたいなところの解釈や判断は、ある程度人間が担保していった方がいい部分なんじゃないかなと引き続き思ってますね。
効果が出るのは、面接の「前後と最中」
――鈴木:御社のプロダクトで、利用者の方が「これはめちゃめちゃAIで削減できた」みたいなところは何かありますか。
河井様:1番大きいのは、この面接の前後・最中です。面接そのものを置き換えるわけではなく、引き続き面接官の方が面接をするというところに立ったときの、前後および最中が1番効果を実感していただく声が多いですね。
企業と候補者さんのマッチングなので本来対等だと思うんですけど、企業は複数人で、候補者さんは1人という非対称性が結構大きいなと思ってて。
候補者さんからすると、ある企業という1つのまとまりから得るコミュニケーションなのに、実は企業の人は入れ替わり立ち替わりいろんな人が出てくる。従来の採用活動における難しいポイントかなと思っていて。
候補者さんとその企業がこれまでやってきたコミュニケーションをできるだけ全部把握しながら、次のコミュニケーションに1番いい品質の準備ができるか。この営みはすごく大事なんだけど、これまでやりきれてなかったポイントかなと。
どういった経緯で応募してきて、どういう書類を見て、どういう判断をして、前の面接でこういうことを話して。だから次の面接はこういう前提で、こういうところは話さなくてよくて、と。
それが、短い時間の中で次の方が理解できる形で準備できる。革命的に体験が変わったとおっしゃっていただくことがすごく多いなと思ってます。
それを準備するために、従来は人間が頑張ってシステムに残さなきゃいけなかった記録を、逆にAIがやってくれるようになっている。差分として大きいと思ってますね。
――鈴木:逆に我々はダイレクトリクルーティングプラットフォーム、今はAI RPOと呼んでるんですけども、母集団形成と書類選考の部分がフォーカスになります。
その辺りが今、プラットフォーム上だとほぼほぼ自動化ができてる状況になってるので。作られたスカウトが、実はやっぱり人間が作るよりも、もう今、精度が高い状況にもなってきちゃったりして。前半3つぐらいは結構もう、どんどんAIが侵食してきている可能性は高そうだなと。
AIのスコアと人の直感が食い違ったとき、どちらに倒すか

――鈴木:AIのスコアが高い・低い、人の評価が高い・低いという4象限があって。AIも高い、人も高い。これはもう普通に選考を進めていきましょうという話ですし、低い・低いの場合は見送るでいいかなと思うんですが。
AIのスコアが高いんですが人間の評価が低いとき、AIのスコアが低いんだけど人間が高いとき、どうしていきましょう、と。
河井様:このマトリクス、めっちゃ分かりやすいなと思いながら拝見してたんですけど。私は、食い違ってるときにどちらかに倒すと言われたら、どちらかというと人の直感をまだ優先した方がいいかなと思っているというのがあってですね。
特に、AIのスコアが低くて人の評価が高い場合はかなり注意というか。やっぱり一度見送りという判断をしてしまうと取り返しがつきづらいよね、というところはあると思うんですよね。
それと、その次の工程で「このずれは何で起きたんだっけ」を確かめていくきっかけにしていくというのが、すごく大事なんじゃないかなと思ってます。
従来、AIがここまで浸透してなかった時代だと、人の直感や主観でひとまとめで通過してたものが、「それは組織がこれまでの判断に基づいて想定してきた基準と、ここがずれてるよ」と分かるようになってきた。それがすごく大きいと思っていて。
じゃあそのずれって何で起きたんだっけ、そのずれがあることを前提に次の選考でどこを重点的に確認していくんだっけ、というネクストアクションに折り込んでいくのがすごく大事なんじゃないかなと思ってますね。
ずれた場合の選考フローを用意している企業もある
――鈴木:実際にHERPを通じて議事録が来たり、次の申し送りも自動化されているという話があったと思うんですけども。そういうときにうまく使われてる会社ってどんな感じなんですかね。
河井様:弊社のユーザーさんで多いのは、人が最終判断を下すときに扱う優先順位を、それに基づいて変えるですね。例えばAIのスコアが高い方から書類選考を最終確認していくみたいな形です。
逆に、解釈がずれてる場合に専用の選考フローに流す、ずれた場合の選考フローをご準備されてるケースもいらっしゃいます。今まで確定的に、人が合格なら合格、お見送りならお見送りとしてきたところの、さらなる分岐を増やしていただいてるみたいなケースもあるかなと。
従来だと、もしかしたらそのまま見送りにしてしまってた方を、実はすごく合うということが次の工程で分かったから採用に繋がった、というケースもあると思います。
――鈴木:優先順位付けをAIに組み立てさせて、例えば100名面談したときに1人ずつ順番にみたいなじゃなくて、AIスコアが高い方から見ていけば、より自社と合う可能性が高そうな人に素早くご連絡できる。やっぱり採用ってスピード感がすごく大事だと思うので、確かに効果ありそうだなと聞いて思いました。
求人票の精緻化にも使う
河井様:また、求人票の精緻化という、候補者さん単体にとどまらない材料に使っていかれるケースもすごくお伺いします。
これはちょっと弊社の事例にはなるんですけど、ずっと未経験を出してた求人が、蓋を開けてみたら、未経験の方を最終的に誰も採用できてなかったみたいな。ちょっとお恥ずかしい話なんですけど。
それを、それまでのAIの判定と照らし合わせたり、まとめて後で振り返った事実で。我々として改善の余地がとてもあるところですし、そのまま出てたらマーケットに対しても申し訳ない。早急に求人を修正したりとか、そういったことに繋げたこともありますね。
――鈴木:定期的な分析じゃないですけど、今までその求人でやって本当に取れてたんだっけ、みたいなのを見直すと、確かにそういうところ見えてきますね。
河井様:まさにおっしゃる通りですね。ずれたときも、何がずれてるのかをちゃんと言語化しておく。それを元に求人の改善につながることもありますし、このずれを面接でちゃんと確かめようという申し送りをちゃんとすることにもつながっていく。
そこをまず一定、練度を高めた上で、ここまで来たらあんまりずれなくなってきたなと思えたら、ある程度AIに任せる領域をより増やしていくというのも、全然ありえなくはないんじゃないかなと思いますよね。
両側がAIを持つと、量のシグナルが壊れる

――鈴木:今起きてることとしては、企業側もAIを使い始めている。候補者側もAIを使い始めているという形になってまして。
アメリカやヨーロッパだと、コーポレートサイトの採用ページに1日何千通という応募が来たので、もう止めていますとか。ないしは、そこに対してのスクリーニングにAIを使ってるから、双方でトークンを使い合って無駄な使い方をしてるみたいなのも起きちゃってる。日本はまだそこまで行ってないですけど。
企業側で言うとスカウト文面、スクリーニング、評価の下書き。候補者側で言うと職務経歴書の作成、応募の一括化。これが双方で行われることによって、むやみやたらに来たものを全て接触していくことに関しては、もうコストが見合わない状況に近いうちになってきます。
起きることとして3つ挙げています。
1つ目は量のシグナルが壊れる。応募が来る数、書類選考が通過する数、面接に至る数、みたいなファネルで皆さん計測されてると思うんですけれども。入り口の量が10倍、100倍になってしまうと、これまでの歩留まりは全く通用しなくなってくる。
2つ目は選ぶ側と選ばれる側が入れ替わる。候補者もAIで企業を絞る。接点を持つ前に、企業の方が先に候補から外れている場合がある。すでに選ばれない側に入ってしまっている企業になると、採用したい人材との接点が著しく下がってしまう可能性もある。
3つ目は残るのは時間を使った事実。カジュアル面談から1次面接、2次面接、候補者の方が望めば他の社員とも会っていただいて合計10回会ってますとか。そういうところは、デジタルには測れない、AIにはできない、採用の魅力付けになってくるかなと。
練度の上がり幅は、求職者側の方が大きい
河井様:まさに「選ぶ側と選ばれる側が入れ替わる」というところで。入れ替わる、ないしは「すでに企業って選ばれる側だよね」というのがさらに強化されるみたいなのは、特に日本ではかなりあるんじゃないかなと思ってますね。
昨日、弊社がHERP CareerというメディアでClaudeのMCP連携というリリースをさせていただいたんですけど、弊社で想定してた何倍も実は反響があったんですね。
AIが出てきたことによって、企業の採用活動の練度がどれぐらい上がるのかと、求職者さんの転職活動の練度がどれぐらい上がるのかを天秤にかけると、私の感覚では、求職者さんの方が上がり幅が全然大きいんじゃないかなと捉えてます。
企業はこれまでも四六時中、採用活動をやってきてるので、一定の知見や練度があると思うんですけど。求職者さんは、多くても数年に1回とかだったわけで。そこにAIの力を借りながら練度を高めていく、その伸び代が全然、求職者さんの方にあると思うんですよね。
それから転職軸やキャリアの軸について、やっぱり言語化が難しいという要素がすごくあると思うんです。企業はずっと採用をやってるから人材要件は比較的言語化しやすい。でも求職者さん側のキャリア要件や企業要件は、これまで言語化が結構難しい領域だった。それがどんどん言語化しやすくなってきてる。
従来よりも候補者さんの中で意思決定のフェーズがすでに進んだ状態で転職活動が始まるケースが増えてくると、企業としてどれだけ初期段階から意向が高い状態にいられるか。言語化された選定軸の中に残っていられるかが、結構シビアだなと想像をしてますね。
なので、より積極的かつオープンな発信やメンテナンス、いわゆる採用および企業の広報活動みたいなものは、これまでもすごく重要だと思ってましたけど、さらに高まるんじゃないかなと。
歩留まりの定義そのものを見直す必要が出てくる
――鈴木:企業側の皆様は、どういう準備をしておいた方がいいか、今からできることとして何かあったりしますか。
河井様:1つ分かりやすいところとして、ボリュームの分析をしたいとなったときに、従来決めてたファネルの定義よりも、もっと後ろ側から計算しないと、そもそも計算の意味がないよね、というのは全然あるかなと。
それこそスカウト送信数からの返信数みたいな歩留まりって、どんどん意味がなくなってきたよね、となったときに。じゃあそれを返信から選考獲得に移すのか、さらに下流に移すのか。そういった検討はおいおいやっていかないといけなくなるだろうなと思います。
採用のポジションによっては、欧米だといわゆるAIによる面接がどんどん当たり前のように組み込まれてきてますけど、日本はまだそんなに、特に中途採用の市場では広がってない。
一方でこういう変化が起きてくるとしたら、そういうところに向かって動かざるを得ないよね、というのも業界としては起きるんじゃないかなとは思いますね。
じわじわ来る変化と、ある日突然の変化がある
――鈴木:こういう変化って急激に起きるものではなくて、日々ゆっくり変わっていって、振り返ったらすごく変わってた、というケースが多いかなと思っていて。
もしかしたら来年、応募者の数を見てみたら今と比べて10倍ぐらい来てるみたいな。だけどそれがじわじわ来てたので、あまり気づかなかったけど、ということがあるかもしれない。でも実際、その10倍来てる応募者の中で決まってる方の数は変わってない、ということも起きる可能性がある。
振り返って、今の例えば応募人数が月100名っていうのが大事な目標なんですと思ってたけど、それでいいんだっけ、というところは、毎月なり振り返る機会を持ってやっていくといいのかもしれないですね。
河井様:私も知人が求人を開けたら1日で250応募来て、もうその日に求人を下げた、一旦募集停止した、とおっしゃってて。
ある日突然、いろんな企業さんでそれが起きたというのを知人経由で聞いたんですけど。どこかでそういうサービスが生まれて、応募が突然増えるみたいなので、本当に突然起きるという様子もあると思うんで。じわりじわり来る変化もあれば、急に自社の身に降りかかる変化もあるんだなというのは、その時思いましたね。
――鈴木:「あなたに合った企業に勝手に応募しますね」というサービス、実際もうありますからね。海外だと、もうかなり当たり前のように使われてたりもするんで。
最適化が進むほど、詰まる場所が後ろへ動く

――鈴木:最後のテーマです。最適化が進むほど、詰まる場所が後ろへ動くというところで。
今現状、母集団を増やすという話と、選考の精度を上げるというところ。この前半2つに関しては、結構もうAIが使われて、AIに最適化した業務フローに変更されてる企業さんも増えてるかなと。
そういった方が入ってきて、その後の入社後、立ち上がり・オンボーディングの部分。あとはAIを使うことを前提として働く方が増えてくると思うので、人員計画そのものを今のままでいいんだっけというところも、組織戦略の話として立ち上がってくる。
変わるものは3つあります。
1つ目は採用要件。AIを使える人、もしくはAIがもう働いている職場が増えてきたときに、それを前提として人を採用したら採用要件は当然変わるよね、というところ。
2つ目は人員計画。弊社もその1つではあるんですけれども、人を増やさず売上を伸ばすみたいなことが本当にAI時代になってくるとできるな、という感覚を持っています。売上が伸びる、人を採用する、というのが当たり前のように考えられてきたところが見直される。
3つ目は成功指標。今までは採用数の目標に対して充足すればOKというところだったりします。ただ、採用したその先でどういう活躍をしてるのかも、今データで溜まりやすい世界線になってきてる。そういったデータも活用して採用にフィードバックしてくると、おそらく成功指標も変わってくるでしょうと。
立ち上がりの速さが、フィードバックサイクルを速くする
河井様:我々の事業ドメインとして採用をやってるので、そもそも事業成長のために人を採用するという前提が、本当にこの3年とかで大きく変わりつつあるなというのはもちろん捉えてまして。我々の事業自体もそれに合わせてアップデートしていかないといけないなと。
この中で言うと、まさに成功指標みたいなところはすごく興味深いなというか。従来の採用活動の成功指標の定義って、ずっと難しい難しいって言われ続けてきたところだと思うんですけど。
ある種、評価のデータやタレントマネジメントのデータと、採用のデータをAIと一緒に壁打ちすると、どういう傾向が見えてくるのかは、本当にやりやすくなってきてると思いますね。
立ち上がりの速さは、採用の成功をフィードバックサイクル早く測定していくためにはすごく大事なポイントかなと一方で捉えてます。
やっぱり入社後の評価って、どうしてもどんどん遅行指標になっていくと思うんですよね。採用活動そのものはそれでもフィードバックサイクル早く改善していかなきゃいけないとなったときに、1番測定しやすい部分が、この立ち上がりが期待通り、ないし期待を上回る速度で済んだというところになってくるかなと。
例えば採用した方1人1人に、3ヶ月後こういう状態を目指す、半年後こういう状態を目指すというものをどれだけ丁寧に作り込めるか。
それが達成できたかどうかをちゃんとフォローして、情報として残せていけるか。アクションに移しやすいですし、採用そのものを改善していくところにも効きやすい施策になってくるのかなと思います。
入社初日に「アーマードスーツ」を渡す
――鈴木:まさにその立ち上がり、オンボーディングの仕方も結構AI時代で変わってきてるなと。
うちの場合だと全員Claude Codeを使えるし、もう使わないと業務が回らないぐらいの量をやってるので全員使ってるんですけども。いわゆるスキルですね。スキルの .md ファイル、あれが最小単位のAIエージェントだと私は理解してるので。
あれを持っていれば、例えば候補者から来たメールの下書きを勝手に作っておいてくれる、企業側に対しての紹介をするときの下書きを作ってくれる。それ1つ1つが小さいAIエージェント、イコール、スキルだと思ってるんですけども。
そういうスキルを結構、立ち上がりの段階で渡しているという言いますか。アーマードスーツ、鎧みたいなイメージなんですけど。
入社して今までって、毎日素振りをして、筋トレして、自分自身の実力を上げていくのに3ヶ月かかりますという感じだったと思うんです。今はもう入社初日にそのアーマードスーツをバチンって渡すと、なんとなく進んでいく。
0デイ、ワンデイで即戦力化するというところが、AIネイティブな組織でそういったスキル・エージェントを渡していくと、速攻で立ち上がるみたいなことは、かなり起きていきそうだなと。
もちろん、その方自身のドメイン知識を作っていくためには、実務のところで時間をかけてやっていかなきゃいけない。ただ、その実力・アウトプットと、その方が学んでいくスピードは、結構時間軸が変わるというか、パラレルに動くなというのを最近感じています。
選考プロセスにも「アーマードスーツ」を渡せるかもしれない
河井様:弊社ってほとんどの職種において、自社の採用でいわゆるワークサンプルやトライアル入社みたいなプロセスを組み込んで、実際に弊社が取り組んでるような課題に近しいものを一緒にディスカッションさせていただいて、相互理解を深めることを選考プロセスに取り入れてるんですけど。
その際に、おっしゃってたような、社内の環境で渡せるものを選考にも用意しておいて、お渡しして、それ前提にいろいろ取り組んでいただくことで。
自社におけるその方のアウトプットベースの活躍の度合いを、より深く見極めに行くとかが、もしかしたらできるかもな、とお話を伺いながら思ったりしたので。
選考の最中でも、そのアーマードスーツみたいなものを工夫して渡すことによって、選考の品質自体を上げるとか、もしかしたら取り組みとしてできたりするのかなと思いました。そういったプロセス自体が、オンボーディングの1番最初にあったりするとかも、全然ありえない話じゃないかなとも思ったので。
――鈴木:確かに、そのトライアル入社の段階で、例えば3日間働くって言っても、1日か2日ぐらいはドメイン知識のキャッチアップで費やしてしまう。
河井様:いや、本当にありそうですもんね。
質疑応答

AIが過去の活躍人材を学習すると、似た人ばかりを採用してしまうリスクは
――鈴木:AIが過去の活躍人材を学習して採用すると、似た人ばかりを採用してしまう可能性はありませんか、ということなんですが。
河井様:その傾向は、もしかするとAIの使い方によっては起きる現象なのかもしれないなとは思うんですけど。
採用で挑戦して非連続に伸ばしていくとなったときに、組織にとって、ややこれまでの傾向とは異質な方を採用していくというのもすごく大事な意思決定かなと思ってるので。その上で、そこをある種リスクを受け入れるみたいな判断は、まだまだ人に残された責任領域なのかなと思いますね。
ただ、AIの技術自体もどんどん進展してるので、そういったところも折り込んだ何かしらのスコアや出力をしてチューニングしていくということも、もちろんできるとは思う。そこをどれぐらい作り込むのか、もしくは人で最後を見ていくのかは、スタンスが分かれてもいいところなのかなと思いますね。
AIスカウトが高度化した先、採用はアナログに回帰するか
――鈴木:AIによって求人やスカウトが個人ごとに最適化されると、精度が上がるほど候補者はAIによるスカウトだと分かるようになると思います。AIが発展した後は再度アナログによる採用活動に戻りそうな気がしますが、ご意見をお聞きしたいですということですね。
河井様:私はやっぱり最近、スカウトをいかに短くお送りするかをすごく心がけていて。私もスカウトをいただくことがあるんですけど、やっぱりどんどん分量が多くなってるなと思ったりする中で。
パッと拝見して全体像が分かるぐらいのもので、いかにクリスプに伝えるかが、まず大事になってくるのかなと思いますし。
あと、オフラインの会議もどんどん増えてるような気がしますね。オフラインに呼べるだけの関係性ないし、ネットワーク資本みたいなものを、その会社のメンバーが持ってらっしゃるかというところが、顕著に効いてき始めてるなと。いただいたご質問の傾向は結構ありえるんじゃないかなと思います。
――鈴木:確かに、私もかなり似た意見です。オフィスに来てもらうとか、会食を早めに設定するとか、そういったところに時間をかけてる企業さんは、採用がやっぱりうまくいってるなという印象があります。
河井様:アナログが差別化になるというのはありそうですね。ちょっと頑張らないといけないところで差が出るというのが一般としてあったときに、その頑張りどころが今どこに寄ってきてるのかというと、そういうところなのかもしれないですね。
AIに任せすぎると、ジュニア人材の育成機会が失われないか

――鈴木:AIに任せすぎると採用や人事担当のジュニアクラスの仕事がなくなり、結果的に10年後、AIで全て判断したアウトプットをそのまま採用するようになりそうな気がします。
人材育成的な観点で、AIの方が質が高くても社内のジュニアクラスに依頼するなどは必要になってきますでしょうか、というご質問です。
河井様:会社としてやっぱり10年20年と挑戦を続けていく上では、意図的に切り出した機会を設計していくというのは、やはり大事かなと個人的には思っていますし、弊社でもある程度その設計はしているところもありますね。
弊社は新卒採用を実はやってたりするんですけど、そういうところはやっぱりある程度の工夫をした上じゃないと、もう成り立たないような世界は正直来てるかなと思ってるので。
企業の戦略で、育成して中長期の人を育てていくというスタンスを取るなら、ある程度取った方がいいんじゃないかなと思うところはありますね。
ただ、渡す内容は昔のままかと言うと、AIを使わずにやれというのは変だとは思うんで。AIを使いながら取り組んでいただくみたいな前提で、育成プランを練るとかになってくるんじゃないかなと思います。
失敗できる場所をどうつくるか
――鈴木:ちょっと視野を広げる意味で、全然別の観点で言うと。今、LLMを作っているAnthropicやOpenAIは、インターネット上の情報や書籍はもう全部食べ尽くしたと言われています。
今「ワールドモデル」と言ってますけど、物理環境のデータを取りに行くことで、強化学習の世界として、コンピューターの中で運転を再現して、その中でAIがいろいろ事故を起こす。それを学習して起こさないようにする、ということを今ずっとやっていて。
やってることは私も、育成と一緒じゃないかって思い始めてきていて。要は今って、失敗する機会がないから育たないということだと思うんですけども。
現実の職場の空間が再現されていて、その中で何でも失敗してもいいということができる場合に、そこで強化学習をして。「精神と時の部屋」みたいなところが出てきたら、と。ちょっとぶっ飛んだ話かもしれないなとは思いました。
最後に河井氏は、HERPとして採用や転職を通じて世の中に挑戦をいかに増やしていくかをミッションに、プロダクトや事業を作っていきたい、と締めくくりました。
AIにどこを任せ、何を人に残すか。その線引きは、不可逆性・暗黙知・説明責任という軸で分解できる。そして両側がAIを持つ時代には、応募数や返信率といった量のシグナルそのものが意味を失っていく。
残るのは、時間を使った事実と、未来に向かったすり合わせでした。