AIで採用業務の時間を半分に減らした。それは成果でしょうか。
多くの企業がAI活用に着手していますが、事例の大半は業務効率化です。効率化それ自体を否定する人はいません。ただ、そこで止まったままでよいのかという問いが残ります。
2026年9月4日、Offersのウェビナーに、KDDIアジャイル開発センター株式会社 CHROの土橋孝充氏をお迎えしました。同社は2026年6月にClaude Codeを全社導入し、エンジニアだけでなく人事・総務を含む全社員が使っています。
弊社代表 鈴木裕斗の進行で、「効率化の先に人事は何を置くのか」をうかがいました。
AIの現在地は「業務効率化」に留まっている

土橋様:まずAIの現在地についてですが、この辺りは本日ご参加の皆様の方がお詳しいでしょう。AIが人事の業務の中にもかなり溶け込んでいて、いろんなものを効率化してきていると思っています。
採用であれば書類選考のところとか、スカウトを自動生成するとか、こういったところに活用されている企業様も非常に多いのではないでしょうか。
労務管理においては、社員からのお問い合わせ対応だったり、給与計算。育成・評価のところでは、いろんなデータを分析・集計するという業務が出てきます。ここもAIを利用しやすい領域でしょう。
ここで1つ押さえたいなと思うところが、AIを活用した事例ってたくさんあると思うんですが、この業務効率化の事例であるというところが、いまの特に国内のAIの利用実績ではないかなという風に思っています。
現在のAIの人事領域における活用領域は、大体6種類ぐらいに大別されるのではないでしょうか。採用、配置異動、育成学習、エンゲージメント、労務管理、マネジメント全般ですね。
ここもですね、時間をいかに削減するか、いかに人の工数を削減していくかといったような軸で利用されている実績が、私が聞いている限りでは非常に多いかなという風に思っております。
Claude Code を全社導入して、人事は何を作ったか

土橋様:我々の会社においても、今年の6月にClaude Code、Claude Enterprise を全社導入いたしました。エンジニアのみならず、私のような人事、総務、そういったコーポレート、全社員にClaude Codeを配布し、いま利活用を進めているところです。
人事業務の中でもAIを使った業務の改善みたいなところは当然ながら取り組んでおります。あくまで一例ですが、3つご紹介したいと思います。
書類選考レポート、人事規定の案内、評価集計
土橋様:1つ目は書類選考レポート作成アプリです。候補者の皆様の履歴書だったり、適性検査の結果だったり、一次面接の概要、こういったものを定型フォーマットで吐き出すような仕組みを整えることで、最終面接での候補者との対話をより解像度高く進めることができるようにしました。
2つ目は人事規定の案内です。様々な人事規定があります。それを個々に読むのはなかなか難しいので、そういったものを食わせておくことで、チャットボット形式で制度に対して答えてくれるような仕組みですね。
3つ目は評価集計レポートです。期末に部署単位での評価の分布を見ていったり、評価のブレみたいなところはどの程度起きているかといったところの点検にも使うような、こんなアプリケーションも作りました。
こちらについても、前段でお話をしたような業務効率化の域をまだまだ出ていない事例なんじゃないかなという風に思ってます。
AI活用にはレベル1・2・3がある

土橋様:AIの活用にはレベル段階があるかなという風に見ています。これまで述べたようなものは、1番左側のレベル1、効率化のところですね。人がやるものをAIに任せることによって、いろんなものの時間を短縮していくといったグルーピングになってくるようなものだと思っています。
だんだんその目線をレベル2およびレベル3の方に向けていかなければいけないんではないかなというところが、本日、皆さんと共に一緒に考えていきたいポイントです。
レベル2は業務プロセス変革で、AIと人の役割を業務単位で見直して再設計するもの。レベル3は経営マネジメント変革で、意思決定・事業貢献・組織運営を変革するものと置いています。
人事の価値の本丸にAIをどう使うか
土橋様:レベル3のところを見ていただくと、やっぱりもう人事って何のためにあるのかというところに繋がるような話なんですけども、人の意思決定を変えていく、事業に貢献していく、さらにはその先にある組織の運営の仕方も変えていく。
こういったところに人事の価値というものはあると思っているので、その人事の価値の本丸にAIをどう活用していくか、AIの価値をここにどう繋げていくかといったところが、まさに我々に課されている命題ではないでしょうか。
これまでの効率化の世界観から、経営変革への世界観に変えていきませんかという、そんなお話を今日はしていきたいと思っております。
人事部を問い直す — 上流と下流

土橋様:人事っていうのは何をする組織なのか。ここから問い直したいんです。
従来の人事部の仕事ということで、例えば採用であり、育成であり、労務管理。こういった世界は、ある程度の自由度はもちろんあるとは思いますけれども、決められたことを改善をしながら正しく回すというところがやはり色濃く求められる領域でしょう。
昨今であれば、人的資本経営だったりウェルビーイングだったり、こういったお題が特に経営の方から色々降ってきて「これも考えなさい」みたいなお題を抱えていらっしゃって、結構人事の現場ってかなり大変になってきてるという印象です。
正確かつ迅速なオペレーションが求められてきたという中で、やっぱりまだまだそこに留まっているというか、そういった組織も、これ私のところも含めてですけども、多いんじゃないかなという風に思ってます。
上流の世界が、現場で語られていない
土橋様:採用について考える時に、下流の方を見ていただくと、求人票を作ったり、スカウトを送ったり、面接の日程調整をしたりといったところ。これは人事担当の皆様が実際に手を動かしながらやる仕事だと思うんですけど、こういったものが具体の世界観でしょう。
一方で上流に行くと、例えば事業戦略から要員計画を作るとか、5年10年先の事業の見通しを立てるって、これも人事担当の仕事の1つだという風に思います。
ただ、なかなかこの視点を持って日々仕事をする人事パーソンって、あんまりいないかなと思ってます。この上流の世界がそんなに現場で語られてない。ここに1つ問題提起をしたいんです。
もちろん下流の実務の仕事が価値がないとか価値が低いというつもりは全くありませんし、ここがなければ組織は回っていかないんですけれども、上流の視点を持った上でこの下流の視点を進めていく、この往復が必要なんではないかなと思っています。
反応型と思考型

土橋様:今の話に少し繋がる話を、反応型と思考型というテーマでお話しします。
例えば現場において「人が足りない」という表面事象があった時に、採用担当がそこにいれば「すごく採用しなければいけない、どんどん打っていこうぜ」みたいな。こういった表面事象から直接的な解決策に繋げていくような仕事のスタイルってあると思います。
一方で、人が足りないという表面事象に対して1段抽象レベルを上げていくと、そこに本質的な課題というものが見えてくると思います。人が足りない原因って何だろう、人が足りないことによって何が起きるんだろうというところに1つ立ち返っていく。
そうすると単なる採用ではなく、育成が必要だったり、場合によっては評価制度とか人事制度の改善が必要かもしれません。社員雇用ではなくて業務委託みたいなところの方がベターであるといった解決策も生まれてきます。
事業的な視点、事業課題を見据えていくような視点がない場合には、意外と反応型と呼ばれるような思考に陥りやすいのでしょう。なかなかこんな単純なことはないよねって思われる方もあるかと思いますが、これ私も含めて意外とこういう思考に陥ってることってあるなって、自戒も込めて書いております。
AIに代替されやすい仕事、されにくい仕事
土橋様:ポイントは、具体の仕事というところは、決められたルールであったり、ある程度の定型に沿って行うような業務が多いので、やはりAIに代替されやすい領域ではないでしょうか。
一方で事業視点のところは、非常に抽象度の高い世界線になってきます。いまある現場から将来にわたって仮説を立てて、人としての意思決定をそこに組み込んでいく。
こういった未来に向けての仮説検証・実行みたいなところは、まだまだAIに代替されにくい領域だと思っておりますので、ここに人間の価値が宿ってくるのでしょう。
効率化と価値創出は別の営み

土橋様:ここからが核心です。AIによって効率化というものは進むという話は、特に前半にしたかと思います。
それと価値の創出っていうものは、まず別の営みだという風にまず分けた方がいいかなと思っていますので、AIを使ってどう業務を変えていくんだ、どう使っていくんだといった時に、どちらの軸で語ってるのかといったところに、まず意識を向ける必要があるでしょう。
よく「採用業務にかかる時間を50%削減しました」みたいな話、よく出ると思うんですけども、これは価値創出ではなく効率化の世界になりますので、そちらの世界を語っているということをまず認識することが必要だと思ってます。
「100名採用」は成果物であって、価値ではない

土橋様:そもそも価値は何かという話も、ここでちょっと皆さんと考えてみたいなと思うんです。
価値っていうのは、私たちが生み出した成果物そのものではなく、それがユーザーに届いて利用されることで、提供先のユーザーの状態だったり行動・感情に望ましい変化が生まれた時に初めて成立するもの。一旦こう定義してみたいんです。
例えば活動します。それによって成果物が得られます。これは採用活動して人が採れたっていうのが活動と成果物みたいなところかもしれません。これは人事の中である意味閉じた世界ですることができることだと思うんですけども。
じゃあその先にある利用、変化、最終的な価値ですね。ここは人事の中にだけ留まっていては見えない世界だと思っています。入社した社員が社内でどのように活躍し、どのような行動を起こし、その先にいる顧客にどのような価値を届けたかみたいなところって、人事から結構遠いところにあると思うんです。
やっぱりそこに自分たちの仕事がどのように影響を及ぼしたかというところを考えなければ、価値が出せたって、価値のある仕事をしたって言えないと思うんですね。ここを価値のところまでこだわり抜くことができるかといったところは、人事として非常に大事なポイントだと思っています。
「必要な人材を100名獲得する」っていう人事目標を掲げている組織って結構多いと思いますし、なんなら私のところも意外とこうだったりします。ただ、100名獲得することって価値ではないんですね。あくまで成果物です。
100名を採用することで人事が生み出せる価値があるとするならば、適材適所の配置を行い、事業機会を逃さず、新しいサービスを生み出し、売上や顧客価値を成長させる。
ここまで人事がやり切ったかどうか、ここにちゃんと思いを寄せられるかどうかが、人事としての価値そのものに直結してくるんじゃないかなと思っております。
価値創出につながりそうな打ち手
土橋様:人事として価値創出に繋がりそうな打ち手として考えているものが3つあります。
例えばスキルベースの人材配置ですね。
社内にいらっしゃる社員の方々が持っているスキル、専門性みたいなところをAIの力も借りながら可視化していき、5年後、10年後を見た事業変動に対して、その社員をどう育成していくのか、どう配置していくのかといったところを、しっかりと考え抜く力が人事には求められるでしょう。
我々がソフトウェア開発をやっているので開発生産性という言葉も挙げておりますが、いろんな人事施策をやることがその開発の生産性にどう寄与しているのか、ここもAIの力を借りながら分析していく必要がある領域だと思っております。
ポイントはどれもですね、人事が人事だけの領域で仕事をしていては成し得ることができない仕事であり価値だと思っておりますので、いかに我々が事業の言葉を理解し、実践していくか、こういったことが求められてくるのではないでしょうか。
5年後の事業を語れるか

土橋様:事業視点で我々がどう想像することができるかというところに尽きると思うんですよね。事業がどう変わるかというものを、これ私、最近まで結構語れなかったんですよ。
5年後に我々の会社が事業環境の中でどう生き残ることができるのか。意外と人事の仕事をやってると考える機会がなかったりするので。
事業がどうなるかというものを考え抜くと、じゃあ5年後に必要な人材であり組織っていうものはどうなる必要があるのかといったところも朧げながら見えてきます。
そのために今何をしなければいけないのか、どんな人を採らなければいけないとか、評価制度もこうあらねばならない。そういったところがようやく語れるようになるんです。
これこそ戦略人事と言われるものに求められてくるものではないかなと思っています。
まず人事視点で書いてみる
土橋様:例えば市場成長性とか競争優位性みたいな軸があった時に、数年後の世の中の環境を想像した時に、なんとなくで言うとこういう形になっているんじゃないかとか。
それが自社にとってバッドともグッドとも当然ブレ幅あると思いますので、そういった時にどのような競争関係に置かれるのかというところを、まず人事視点で書いてみる必要があるかなと思います。
結構これ書くのに苦労しましたが、こういったところを知ること、想像することが、事業を知るということにも直結してくるかなと思います。
数年後の外部環境変化、世の中で色々言われてるものがあると思うんですよね。人口減少による労働供給の制約だったり、賃金・物価の上昇とか、多様化みたいなところ。じゃあその労働供給制約があった時に、人事として何を考えなければいけないか。多分採用だけではおそらくないと思います。
いろんな働き方が出てくることになると思いますので、労務の仕組みを変えなければいけない。評価の仕組みも変えなければいけない。賃金も一律なものでは叶えなくなってくる。こういったものを、いろんな事象に対して全体として人事の設計をしていかなければいけない。
それがOSとしての役割という風な表現をしておりますが、経営と人事って本当に一体のものだと思いますので、そこにどれだけ我々が近づけるか、近づくことができるかといったところも非常に問われてるかなと思います。
AIは「無難な多数派」に収斂する

土橋様:大事だなと思うポイントを3点お話しします。
まずAIの特徴を理解するということですね。
AIってやっぱり最もらしい回答をしてくれますし、すごく適切なアドバイスだったりプランニングをしてくれるものだと思いますが、それって最善なものではなく、やっぱり無難な多数派の意見に収斂するという性質を持っているということを、やっぱり頭の隅に置いておかなければいけないかなと思うんですよね。
AIが出してくれるものをそのまま実行していると、おそらくものすごく凡庸な、差別化もできない、ありきたりの人事制度ができてしまうという構造を持っているということは、非常に押さえておかなければいけないなと思います。
2点目は今の話にも通じますが、AIを使って様々な選択肢を出すということは、皆さん当然やられているでしょう。
どれも最もらしい答えが出てくると思うんですけど、じゃあそれを自社に照らし合わせた時に、AではなくてBだっていう判断ができる人事、人というものが非常に大事になると思いますし、ここが我々に本当に求められてるところです。
じゃあ何が我々自社にとって正解で、何が不正解かっていう目利きっていうのは、具体と抽象を往復していく上で見えてくる事業・経営視点、ここ抜きにはおそらく語れないと思いますので、AIの回答に対して適切に批判をする力を身につけるためにも、事業・経営視点というものを、ぜひ持ちたいなという風に思っております。
質疑応答

――鈴木:EMから人事へ、人事経験なく着任されたということですが、私も似たような立場で今後人事に着任する予定です。土橋様が初めて人事に着任する上で実践したことなど教えていただけますか。
土橋様:私もまさにその通り、「半年後に会社を作るので君、人事やってくれ」みたいなところで、「あ、僕ですか」みたいな、割とそんな感じで始まりました。その時の人事の経験も全くなく、等級制度とか評価制度ってあんまりよく知らなかったんですよね。
まずやったのは、人事の専門家の話をいろんな方々に聞きに行きましたし、当時ジョブ型制度みたいなところが流行っておりましたので、ひたすら本を読むというところをやり始めましたね。
あとは、元々私がソフトウェアエンジニアのエンジニアリングマネージャーをやっていたので、当時の部下だったメンバーが対象にはなってくるんですけど。
彼らの話をもう1回聞きに行って「エンジニアが働きやすい人事制度って何だろうね」っていう話を、20人ぐらいにインタビューをさせていただいて、声を改めて集めました。
――鈴木:一次情報はやっぱり大事ですよね。
人事メンバーが Claude Code を使えるようになるまで
――鈴木:人事メンバーがAIスキル、Claude Codeを使えるようになるまでどう育成したか、可能であれば教えてください。
土橋様:前提として、私もそんなにClaude Codeの達人では全くないので、みんなと共に学んでる、そんなレベル感だと思ってください。
その前提でやるとするならば、Claude Codeをインストールするところから、GitHubに繋ぐところからですね。私もそんなに得意なわけではなかったんですけど、一緒に「なんかうまくいかないね」みたいなところを画面を見ながらオフラインで集まってやっていく。
専門家みたいな方が来て勉強会をしようというよりは、できないものはできないなりに手を動かしていく場を作りました。
実際にATSが作れたりするじゃないですか。そういう動くものが出来上がると「あ、なんか意外と自分でもできるじゃん」っていう小さな成功体験を持ってくださると、その後は正直もう実装できているんじゃないかなと思います。
具体と抽象を往復する力は、どう身についたのか
――鈴木:具体と抽象を往復する力を、土橋さんがどうやって磨いてきたか、あるいは磨こうとしているのかをぜひお聞きしたいです。
土橋様:ここはちょっと自然に身についたみたいなところはあるかもしれませんが、私自身が元々エンジニアバリバリで上がってきてエンジニアリングマネージャーになったタイプではないんですよ。
PMとかプロジェクトマネージャーみたいな仕事を元々やってきた中でエンジニアリングマネージャーとして関わって、いまの組織に関わっているので、自分よりメンバーの方が優秀であり専門性を持ってるという構図で7年ほど仕事を進めていました。
なので、1回抽象レベルを上げて会話するっていうのは、もうこの10年ずっとやってきたことなので、それは結果的にいまの仕事のスタイルに繋がってるんじゃないかなって思います。
――鈴木:自分が分からないからこそ抽象度を上げて理解しようとする姿勢だと思いますし、相手の方も抽象度が上がると「実はその考えはなかったな」ということもあったりしますよね。
事業視点で語れるようになったきっかけ
――鈴木:土橋さんが人事として事業視点で語れるようになったきっかけ、出来事などありましたらぜひ教えていただきたいです。
土橋様:4年前に人事へ役割を変えました。逆にそこまでは事業側にいたので、元々数字で語るとか事業の中で考えることが染み込んでいたので、ちょっと逆説的かもしれませんが、人事側に来て「事業っていう軸がない世界観だな」っていう。
事業を知らなくてもそれなりにできちゃうように見える構造だとも思うので、そこにまず違和感を持ったというところが正直なところかもしれません。「なんで事業のことをもっともっと見に行かないのかな」っていう、その違和感から持論を持つようになったということですかね。
新卒不要論のなかで、新卒に賭ける
――鈴木:AI活用のレベルを1・2・3と上げていっている具体的な例はありますか。
土橋様:厳しい質問ですね。難しいですね。経営視点という意味では、新卒ってすごくこだわりを持ってるポイントの1つなので、そこについて語りたいなと思うんですけども。
新卒不要論みたいな話が業界の中では鉄板のような話として扱われてるなって印象があります。ジュニアメンバーっていうものはAIによって代替できるみたいな文脈もあると思うんですけれども、これは自分でも正解かどうか分からないんですけども、私は新卒に賭けているので。
新卒で我々の会社の土台となるような人を育成し、育て、それは将来的にわたって会社を支える中核となるメンバーだと思っておりますので、そこのロードマップをAIの力も借りながら作成し、経営を説得したみたいな。
――鈴木:まさに人事起点で土橋さんが描く「AIによって会社は変わっていくんだ」という中で、新卒はむしろ大事であるっていうことを意思を持って、起点となって経営に上げていったっていうのが、まさにレベル3の「経営を動かす」というところに繋がってくるということですね。
オペレーションに押されないための仕掛け

――鈴木:人事のプライマリーな業務がオペレーションであり、日常的にその業務量に押されてしまうというところがあると思います。そこだけでない活動ができるような、何か組織的な仕掛けがあったかと思うんですが。
土橋様:ちょっと直接的な施策には聞こえないかもしれないんですけれども、やっぱり現場でオペレーションをやってくださってる方は、その領域のプロフェッショナルで、その方に1番の知識と専門性が宿ってると思います。
ですので、いかにその専門性を持ってる現場の方々が、自発的に「新たな仕組みを入れていきたい」という行動を引き起こすかどうか、ここに懸かってると。
「この領域はあなたが専門性を持って進める領域なので」ということを役割と共に渡して、できるだけ私は口出しをしないというか、進め方については全部決めてほしいし、何をやるかも決めてほしい。
そういう権限移譲の仕方をしていることが、結果的にオペレーションに留まらない人事チームに少しずつ近づいてる要因にはなってるんじゃないかなって思います。
次に取り組みたいのは、入社後のマッチング
――鈴木:現状のAI活用度から見て、次に取り組みたいと考えている領域はどんな領域ですか。
土橋様:やりたいなと思うのは、マッチングって言うんですかね。
特に我々、エンジニアを年間100人ずつぐらい採用していくというような計画のもとに動いてる組織です。
新しく入社をしていただいた方が、より早期にオンボーディングできてチームの中でパフォーマンスを出すかっていうところのリードタイムって結構大事ですし、やっぱり人と人の仕事のコミュニケーションによるところもあると思うので。
そういったいろんな変数を集めて、入社時までに得た情報とかを突き合わせることで最適なマッチングであり、その後のオンボーディングのプログラムみたいなところを動かしていくことに挑戦したいなとは思ってます。
おわりに
効率化の事例は、もう十分に世の中にあります。土橋氏が繰り返し置いていたのは、それを価値と呼んでいないかという問いでした。
「100名採用する」は成果物であって価値ではない。価値は、入社した人が社内で活躍し、その先の顧客に何かを届けたときに初めて成立する。人事の中だけでは見えない場所にあります。
そして、その線を引くには事業を語れる必要がある。土橋氏自身が「最近まで結構語れなかった」「結構これ書くのに苦労しました」と認めながら話していたことが、この日のいちばん具体的な示唆だったように思います。