Offers HR Magazine
イベントレポート

【イベントレポート】AI時代の人事データ基盤のつくり方 〜XAION DATA × Offersで考える、分断された人事データをAIが扱える基盤に変えるまで〜

【イベントレポート】AI時代の人事データ基盤のつくり方 〜XAION DATA × Offersで考える、分断された人事データをAIが扱える基盤に変えるまで〜
岡田 宗悦監修者

株式会社overflow / Offers事業部 マーケティング本部長

岡田 宗悦

慶應義塾大学商学部卒業後、株式会社overflowに入社。「Offers」の立ち上げからプロダクトマーケティングマネージャー(PMM)として一貫してマーケティングを担当し、現在はGTM戦略設計を中心にマーケティング・セールス領域を管掌。直近ではマーケティング・セールス領域におけるAI活用の推進にも取り組んでいる。

岸川 哲也監修者

株式会社XAION DATA / HR Platform本部 本部長/人事戦略本部 部長

岸川 哲也

新卒で伊藤忠テクノソリューションズ株式会社に入社し法人営業を経験。その後、パーソルキャリア株式会社で2年半CAを経験後、リードディレクターとしてサービス企画の従事。2022年にXAION DATAに入社し、ヘッドハンティング事業を経て、XAION HRのフィールドセールスマネージャーとして営業組織を管掌。現在は、HR Platform本部と人事戦略本部を兼任。

労務・給与・評価・採用のデータが別々のシステムに分かれ、AIに渡そうとしても突き合わせの段階で手が止まる。人事の現場で、そんな状況に心当たりはないでしょうか。

労働人口の減少で採用が難しくなる一方、人事の打ち手は異動・配置、リスキリング、AXによる省力化へと広がってきました。仕事を人とAIにどう配分するかを考えるには、まず人事データをつなぐ必要があります。

株式会社XAION DATAでHR Platform本部 本部長/人事戦略本部 部長を務める岸川哲也様は、分断されたHRデータの統合と、AI-Ready化されたデータ基盤作りが入り口として重要になると語りました。

2026年10月15日に開催したOffersウェビナーの内容を、講演とディスカッション、質疑応答も含めてお届けします。進行は株式会社overflowの岡田宗悦が務めました。

優秀な人材ほど市場に出てこない。人事アクションは採用だけではなくなった

労働人口の減少と転職求人倍率の上昇を示し、労働供給不足は今後も加速していくと説明した外部環境のスライド

岸川様:XAION DATAは私にとって3社目で、基本的には営業畑を歩いてきた人間です。XAION DATAには4年ほど在籍しています。XAION HRのプロダクトリリースのタイミングからセールスとして参画し、その後はセールス組織のマネジメントを担当しました。

昨年あたりから採用チームにジョインし、中途採用領域の全般を管掌してきました。現在はXAION HRというプラットフォーム側の事業部全体の管掌と、中途採用領域も引き続き見ています。

XAION DATAは、社名の通りデータを取り扱うことに長けた会社です。ウェブ上の各種公開データであるオープンデータと、企業がお持ちのユーザー利用データなどのクローズドデータを、オントロジー化という形で掛け合わせることについて、特許を申請・取得してきました。

それに基づいて、オープンデータとクローズドデータを掛け合わせた独自のデータベースを作っています。セールス向けのXAION Sales、スカウトからタレントマネジメントまで染み出していけるXAION HR、AXコンサルにあたるXAION Intelligence、そして人材紹介の事業も展開しています。

まず外部環境です。労働人口が減少していく一方で求人倍率は上昇しており、企業間の採用競争は今後も激化していくだろうという予想です。

では、優秀な人材はなぜ市場にあまり出てこないのか。現職で活躍している方は、評価をしっかりされ、報酬で還元され、新しいミッションや昇進で刺激をもらうループに乗っているからだと思っています。

そうした方が転職を考えるときも、現職で活躍しているがゆえに独自のネットワークを持っています。転職サイトに登録して大量のスカウトを受け取るより、知人とのつながりから声がかかり、リファラルの延長で転職が決まるケースが多いのではないでしょうか。

一方で、大企業を中心に人材への投資額は大きく増えています。人への投資をBS的な観点で資産として見られる、キャッシュに余力のある大企業ほど、研修も含めてしっかり取り組んでいる印象です。

採用して研修する、から4つの打ち手へ

外部からの採用、社内人材での異動・配置最適化、リスキリングによる育成、AX化による自動化・省力化の4つを並べた、人事アクションの変化のスライド

岸川様:これまでは、採用して研修するというシンプルなワークフローでした。今は外部からの採用に加え、社内人材での異動や配置の最適化、リスキリングによる育成、そしてAX化による自動化・省力化も選択肢に入っています。人事のアクションそのものが、多様化してきているのではないでしょうか。

人材戦略は、仕事を人とAIにどう配分するかの設計へ

人数を埋める計画から、必要業務を整理してAIと人の配分を決め、配置転換・育成・採用を設計する考え方への変化を示した、これからの人材戦略のスライド

岸川様:人材戦略の考え方も、抜本的に変える必要があると思っています。従来は事業計画に基づいて要員計画が策定され、不足分を採用チームが奔走して埋め、人員計画の達成が事業計画の達成に紐づく構図でした。

今は事業計画の立て方も、事業ごとの勝負の仕方も多様化しています。必要な業務をしっかり整理し、業務やスキルをベースに人員の配置を考えなければいけません。そこにAIのトークン管理も入ってきます。

AIによるトークン管理と人的なリソース管理を高い水準で並列に置き、その中で配置転換や育成、採用を設計していく必要があると考えています。ここがかなりの難所になってきました。

AI活用の文脈でいえば、まず仕事の分解から始める必要があります。どんな役割・職務があるのかというジョブ、ジョブを構成する具体的な業務であるタスク、それを攻略するために必要な知識や能力であるスキル、そしてそれを誰がやるのかという担当者です。

この4つの要素ごとに分解してデータを可視化していく必要がありますが、言うは易しで、実現の壁は高いと思っています。

データ基盤を阻む壁は、サイロ化とテキストに残らない経験

労務・給与・評価・研修・現場でシステムと社員IDが分かれ、業務・スキル・担当者を横断して比較できないことを示したスライド

岸川様:大きな壁の1つは、データのサイロ化です。必要なデータがシステムと部門に分かれていて、HRというくくりだけで見ても、労務や研修、現場との接続などがあります。人材データはAPIが非公開のことも多く、各種ツールのデータを簡単に紐づけられません。

割り振られたIDが違えば、当然横断して比較できず、データ連携が難しい状況が生まれるわけです。私たちがAXコンサルをする中でも、製造部向けにはAI推進がうまくいったのに、全社展開しようとすると営業部とのデータの壁があって無理だった、という話が上がります。

加えて、タレントマネジメントなどのデータに残っている内容だけでなく、メモや音声データにも個人の経験やスキルが多様に表れています。テキストに残っていないところで人が評価され、給与に反映されていく構図も、内々では正直あると思うんですね。

非構造化データまでしっかり扱おうとすると、難所はより深まっていくと感じています。

データが確かでないと、AIはハルシネーションを起こす

「データが確かでないとハルシネーションを起こすリスクが高い」と強調したスライド

岸川様:分断されたデータの種別が多くなるほど、基盤整備の壁は高くなります。データの突合自体が目的になって工数だけがかさみ、活用の余地を見出せない。ツールを導入しても、それがサイロ化されたデータの中に収まり、採用から評価までの流れで活用しきれないこともあるでしょう。

コンサルタントに依頼しても、データ整備という前段でつまずき、本質的な回答が得られないことも起きているのだと思います。

データが確かでないと、AIのハルシネーションを起こすリスクが高まります。 想定と異なる意図のメッセージが出力されたり、ソースが明らかでないデマのような内容が出力されたりするので、注意すべきポイントです。

2次元の突合ではなく、関連性を保ったAI-Readyなデータ保有へ

2次元で定義された従来のデータ保有と、データの関連性を保持した3次元上でのAI-Readyなデータ保有を比較したスライド

岸川様:仮にデータをうまく突合できたとしても、データの保有の仕方がすごく重要になります。生成AIで単にデータを結合するときにも、壁になるところです。

AI-Readyなデータ、つまりAIが自律的に行動するために最適化されたデータを作るには、従来の2次元的なデータの接合ではなかなかうまくいきません。多次元的にデータの関連性を読み解いてしっかり接続し、その状態で常に更新して保有し続けることが重要です。

ワードやスキルの関連性も含めて、個人に紐づくデータを多次元的に取っていく。そのためには、私たちがコンテキストと呼んでいる文脈まで含めた評価が重要だと考えています。

人的資本経営が昨今盛んにいわれていますが、人事が主導して人的資本に関する戦略を立てようとするなら、HRで分断されたデータの統合と、AI-Ready化されたデータ基盤作り。この2つが入り口としてとても重要になります。

3社の事例に共通するのは、クローズドデータとオープンデータの掛け合わせ

大手製造企業で外部労働市場データと社内データを統合し、人材ポートフォリオの可視化とジョブ・スキル定義の自動作成を実現した事例のスライド

岸川様:私たちが支援している企業の事例をいくつか紹介します。重要なのは、どのデータを抽出して統合すれば、目指したい姿に近づけるかです。企業がやりたいことによって変わるので、どの種別のデータを取るかがすごく重要になります。

大手製造企業さまの場合は、求人データやトレンドデータといった外部の労働市場データと、社内の非構造化・サイロ化されたデータ群を統合して整備しました。それによって、ジョブ定義やスキル定義がAIを通じて確度高く生成される状態まで持っていっています。

結果として、人材ポートフォリオの可視化が実現しました。以前は毎回ペルソナを確認しに行き、人事が振り回される形で採用計画に対応していたんです。

採用ペルソナの策定から採用活動、その後の育成まで、各人材の能力値が可視化されたことで、意思決定の迅速化が図られています。

能力がわかることで、リスキリングにかける投資も最適化されました。全体になんとなく研修を張っていたところから、必要な能力に応じて研修や育成コンテンツを張れるようになり、市場競争力のある組織形成につながった事例です。

大手商社:社員ごとに個別最適化したキャリアマップ

大手商社で社内蓄積データと外部キャリアデータを統合し、キャリアマップ可視化ツールと研修レコメンドAI機能を展開した事例のスライド

岸川様:大手商社さまでは、社員ごとに個別最適化されたキャリアマップを作りたいというニーズがありました。各個人が目指すべきキャリアパスが多様化しすぎて、どの選択肢を提示すべきかが不透明になり、エンゲージメントの低下や離職の増加という課題があったんです。

経歴書や公募情報などの社内データと、キャリアパスの多様化に関する外部の市場データを突合しました。キャリアマップの可視化ツールと、キャリアマップから示唆された内容に研修を当て込むレコメンドのAI機能を展開し、自律的なキャリア形成と組織力の強化が実現しています。

大手医療メーカー:休眠したタレントプールの掘り起こし

大手医療メーカーでATSデータと外部データを突合してタレントプールを構築し、掘り起こしのアプローチを自動化した事例のスライド

岸川様:3つ目は、大手医療メーカーさまの事例です。タレントプールをしっかり活用したいというニーズでした。大手になるほど過去の接点データは休眠化しがちで、接点はあるのに応募に至らず、採用に苦戦している状況だったんです。

企業さまがお持ちのATSデータと、外部のSNSなどのキャリアデータを突合し、独自のタレントプールを構築しました。さらに全求人データとタレントプールをマッチングし、定期連絡などのアプローチを自動化することで、掘り起こしができる状態を作っています。

過去に応募いただいたのに逃してしまった方々の活用が最大化され、採用パイプラインが安定しました。転職を考えたときの第一想起の認知も確立でき、お褒めの言葉をいただいた事例です。

社内のクローズドなデータだけの活用では、精緻なソリューションの適用はなかなか進みません。 お客さまがお持ちのクローズドデータと、市場に出回っているオープンデータを精緻に掛け合わせる。これがデータ基盤の作り方と活用の仕方の第一歩として、すごく重要だという示唆を得ています。

私たちはHRデータを横断し、採用から選考管理、タレントマネジメントまでをつなぐHR-AXプラットフォームを作っています。成果分析や人員計画に連動させてAIモデルの改善を回しており、企業さまに使っていただきながら、自社でもドッグフーディング的に進めているところです。

データが揃ってもAIが判断できないのは「人間臭さ」と判断の背景

「労務・給与・評価のデータがバラバラな会社では、AIは何を判断できないのか」というディスカッションのテーマを示したスライド

――岡田:データが分断されて確かでないと、AIが推測で補ってしまう。だからこそデータを統合してAI-Readyな基盤を作る、というお話でした。では、AI-Readyな基盤ができたとき、AIに任せきれず人が判断しなければいけないところは、どこに残るでしょうか。

岸川様:すごく難しいですね。基本的には定量のところから把握しにかかると思いますが、AIが判断しにくいのは、何をもってその方が評価され続けているのかという整合性です。AI-Readyなデータ基盤ができていない前提では、接続の仕方はまだ雑になってしまうと思います。

例えば、評価がAだから給与レンジはこうである、という接続はできます。ただ、採用時の期待値とどんな乖離があったのか、乖離はあったけれど上司が変わったおかげで評価をもらえるようになったのか。そうしたコンテキストの把握は、どうしても難しくなります。

では、採用から評価までのデータがすべて揃っても、それでもAIが評価できないところは何か。やはり人間臭さや、その方のキャラクター、よりヒューマンスキルに近いところになるのではないかと思っています。

評価の一次叩きはAIに出させることができても、現場の上長が評価の割にこの人をポジティブに、あるいはネガティブに捉えている、といった感情に寄り添うところは残ります。「この方は能力値上は足りていないけれど、昇格させたい」という力学は、やはり人の判断によるところです。

判断の背景や、感情的にそう思う理由をさらいに行く。そうしたソフトとハードの住み分けになるのではないかと考えていました。

データをつなぐ前に、セキュリティと評価項目の形式を見直す

――岡田:こうしたデータをつないでいくときに、人事がまず確認しておくべきとっかかりはありますか。

岸川様:実は一番重要なのは、セキュリティの観点だと思っています。データの接合自体をAIに任せてしまうやり方を取る企業も、規模によってはあると思います。ただ、法人契約の内容を見直し、秘匿性が守られているかを確認することが、本当に最初のファーストステップではないでしょうか。

つなぎ込むときに最初に大事なのは、採用領域の切り口だと思っています。ATSで管理している評価内容が、テキストベースではなく選択ベースになっている方が接続しやすい。データ接続を前提とした評価項目になっているかの見直しから入るのが、セカンドとしていいのではないかと考えていました。

すべてがテキストベースの評価だと、それがいい評価なのか悪い評価なのかをAIが判断できず、その後の接続が難しくなる。そう肌で感じています。

ルールの言語化は、MVVと評価軸のすり合わせから

AIが判断できないのは担当者の頭の中にある「どれを正とするか」のルールだと示した、Offers AXの支援事例のスライド

――岡田:当社のOffers AXの支援でも、近いことがありました。ある企業の人事の定例報告を自動化する際、データ自体は揃っていたものの、同じ方の情報でもデータによって中身が違ったり、どれを使うべきかが担当者の頭の中にしかなかったりしたんです。

データを揃えるだけでは足りず、使い分けのルールまでAIに渡す必要がありました。こうしたルールを、人事側でどこまで言葉にしておけばよいのでしょうか。

岸川様:正直、私たちもそこまでやり切れているのかという問いは立つのですが、評価でも採用でも揺れがちなのは、ミッション・ビジョン・バリューとの整合性だと思っています。

私たちが苦戦しているのは、代表や経営がどんな思想でMVVを立てていて、それが中間管理職にどう理解され、だからこそ評価の軸としてどう反映されているのか、という部分です。つまり、何をもって整合している・していないを判断しているのか。

この3ステップを描いて言語化し、すり合わせ続けることは道半ばだと思っています。遠い道のりですが、やるべきだとも考えています。

会社が大きくなるほど、経営が大事にしたい思想もずれますし、経営の目線も虫の目や鳥の目になりがちです。常に大局を見据えてMVVを語り続け、それに合った人を採用してほしいというメッセージを一貫させ続けるのは、意外と難しいのだろうと現場にいて感じます。

何ができていれば良しとされるのかを、MVVに沿って事例をもとにすり合わせ続け、評価の指標に落とし込む。それが結果として、入社後の活躍まで見据えたときに一番揺れが減るのではないか、という仮説を置いています。

採用判断にAIを使うなら、ペルソナを細かく定義して改善し続ける

ジョブ・タスク・スキル・担当者の、可視化すべき4つの要素を示したスライド

――岡田:講演では、ジョブ・タスク・スキル・担当者の4つの要素を挙げつつ、実現の壁は高いというお話でした。採用判断にAIを使うなら、最初にどの部門のどの仕事から着手したのでしょうか。

岸川様:採用の逼迫性が高い、緊急度の高いところから解像度を上げに行き、それを全ポジション・全部署に展開していく構図でした。これは、ペルソナ把握の延長線上にあると思っています。

ただ、ペルソナの把握や言語化は、かなり現場由来になっている印象を両方の環境を見ながら受けていました。部署の代表や事業責任者がいうペルソナに当て込む形で、しかもその用途が検索、つまり人を探すことだけに限定されていたんです。

ここは2つ改善しました。1つは、ジョブ・タスク・スキル・担当者を大項目として用意しつつ、スキルもパーソナルスキル、ポータブルスキル、テクニカルスキルのように細分化し、優先順位の重み付けをかなり細かく実施したことです。

ペルソナの策定は、テキストやスプレッドシートに残しておくことに意味があります。最初はそれをAIに読み込ませるだけでもいいのですが、ゆくゆくはATSの中に標準のペルソナとして格納され、そのままデータ活用できる状態がきれいだろうと思っています。

もう1つは、一度作って終わりにせず、改善の指針として扱い続けることです。検索のためだけのペルソナになっていると、検索軸として登録した後は放置されてしまいます。

その会社・その事業部にとって最も重要な要素は何か、という問いを立てる。人を落とす、あるいは通過させるタイミングで、定例の場で事業責任者とどこの重み付けが評価されたのかをすり合わせ、それをATSの中に落とし込んでいく。途中の改善プロセスをきちんと落とし込むことが重要なのだろうと思います。

まとめると、ペルソナを人と会うための道具ではなく、その事業部で活躍する人材とは何かという大局的な目線に立って細かく設定する。設定の基軸として私はこの4つを挙げていますが、正直、細かければいいと思っています。そのうえで重み付けをするのが1つ目です。

2つ目は、それをコミュニケーションの柱として定例などで使い続けることです。人が落ちる、あるいは活躍するといった事象に応じて、何が優先されたからなのかを振り返り、重み付けやペルソナを変え続ける。その努力をし続けることが重要だと考えています。

外部採用で埋めるのはハイクラス。採用要件は「活躍し続けられる理由」へ

「異動・育成・AI活用と選択肢が増えた今、外部採用で埋めるべき仕事をどう見極めるか」というディスカッションのテーマを示したスライド

――岡田:異動・育成・AI活用と選択肢が増えた今、外部採用で埋めるべき仕事をどう見極めていけばよいでしょうか。

岸川様:正直、そんなに採用しなくても事業が期待どおりに推進できるなら、それが一番いいと思っているんです。そうもいかないからこそ、外部採用はまだ選択肢に上がってくるのだと思います。

今後も市場の潮流として加速し続けるであろう流れでいうと、ハイクラス採用をいかに再現性を持ってやるかが、継続的な重要テーマになるはずです。市場環境的に求められるスピード感が増すなかで、既存社員の育成スピードがそれに追いつかないケースが、今後も一定発生するからです。

ハイクラス人材の採用には、2つの観点があると思っています。スキル単体で見たときに市場価値の高いスキルを持っているかと、その方に人間力があるかです。

人間力があり、かつスペシャリティが高い方を採用できると、その方が自分で組織を作れる状態になります。 それが育成も含めて、実は一番スピード感のある施策になり得るんです。

いい人を引っ張ってきたら、その人が部下を連れてきて組織が立ち上がった。それが市場の変化に一番合わせやすい組織の作り方だと思っています。それを狙いに行く意味でも、外部採用はハイクラスにおいて一定のニーズがあるだろうと考えています。

採用要件は「活躍できたか」から「なぜ活躍し続けられるか」へ

――岡田:データが揃った会社では、採用要件はどう変わっていくのでしょうか。

岸川様:私たちが自社でやり切れているのかという問いは立つのですが、変わるだろうと思うのは評価の軸です。活躍した人材をリピートしたい、だから活躍人材をもとにペルソナを策定して採用し続けたい、と皆さん思われるはずです。

その「活躍できたかどうか」の軸ではなく、なぜ自社で活躍し続けられているのかという軸に則った採用要件に変わっていくのだろうと思っています。

それは代表や上長とのシンパシーによるものなのか、KPIのその都度の達成なのか。あるいは、事業をいくつも転々としても成果を出し続けられる、抽象化された何かのスキルなのか。見るべきタイムラインが変わってくるだろうと思います。

活躍し続けられる人材をどう採用要件に組み込むかは企業によりますが、見るべきデータの取得範囲は変わってくるはずです。

――岡田:活躍し続けられるかどうかは、なかなか難しい判断軸ですね。

岸川様:話しながら、では具体的にどんな評価や要件になるのかは、少しふわっとさせてしまったと思いました。むしろ、これはすごく考えたいテーマですね。

優秀な人材には、中長期の種まきで出会う

優秀な人材は現職で活躍し続けるループの中にいて、転職サイトに登録する前に知人経由で転職が決まることを示したスライド

――岡田:講演の冒頭で、優秀な人材ほど転職市場に出てこないというお話がありました。そうした方を、どこから見つけてくればよいのでしょうか。

岸川様:自社の宣伝につなげるなら、ソーシャルが有効で、SNSを使って採用しましょうという話になります。実際に有効だと思っていますが、多くの人事の方とお話しするなかで強く思うことがあります。

市場における競争の仕方が変わったことを、スタンスとして本当に理解できている方は、実はそこまでいらっしゃらないのかもしれない、ということです。僭越ながら、そう思っています。

採用活動を頑張れば短期で採用できる時代は、完全に終わったと思った方が心が楽だと思います。 スカウトを打つ、エージェントとコミュニケーションを取り続けるといったことは、日頃の行動KPIとして最低限のファンデーションに置く。

そのうえで、意図的な種まきを中長期でどこにやっていくのか、そこにリソースを割くと意思決定するのか。これがすごく重要だと思っています。

種まきのチャネルは人それぞれです。交流会に行くのもよし、社内のリファラルに働きかけるのもよし。出会いの幅をどこに見繕うかは人それぞれですが、中長期で芽吹くかもしれない種を一定のリソースをかけて今のうちに作っておく。その意思決定が要るんです。

そうしないと、再現性を持って勝ち続けることは、そもそも難しいのだろうと考えています。

質疑応答

質疑応答で視聴者からの質問を読み上げる、株式会社overflowの岡田宗悦

異動や育成に力を入れる企業は増えているか

――岡田:採用が年々厳しくなっていますが、最近は異動や育成に力を入れている企業が増えている印象はありますか。

岸川様:大企業を中心に、非常に増えていると思います。それを福利厚生として打ち出せる会社は、やはり強いですね。

一方でベンチャーには悩みがあります。育成の方向性が市場でのスキルアップにはつながっても、その事業を伸ばすスキルアップになっていない可能性があるんです。

市場での価値だけを上げてしまい、事業では短期で成果が出ないとなると、その人が転職するきっかけを作ってしまうことにもなりかねません。結論として、育成に力をかけるなら個別最適化に振り切るべきで、それ以外はきちんと採用で賄うという意思決定が重要だと考えています。

タスクはどれくらいの粒度で分けるのが現実的か

――岡田:社員300名ほどの会社で人事をしています。タスクはどれくらいの粒度で分けるのが現実的か、目安があれば教えてください。

岸川様:難しいのですが、各個人が本来追うべきジョブの量に応じてタスクもかなり変わるので、いったん決めてしまっていいと思います。完全に当て感ですが、私の場合は1ジョブに対して4〜5つ程度のタスク量で一度出してみて、重複があれば消していく形で整理していました。

先ほどの大項目さえあれば、いったんAIに出させて目視で眺め、なんとなく最適化して進めるのがいいと思います。大事なのは、細かくペルソナを切った後に、それをもとに議論する改善サイクルに乗せることです。叩きとしては、その程度の粒度でもいいのではないでしょうか。

情シスや経営企画との役割分担

――岡田:データ基盤に関わる部分として、情シスや経営企画との役割分担はどうされていますか。

岸川様:当社には情シスがいるので、セキュリティ周りや、情報をどこに保有させるかについては、ご想像のとおりかなり密にディスカッションしています。むしろ、責任をそちらに寄せるように動いている節もありました。

経営企画とは、データを統合した後にどう使うかで、ディスカッションが発生するイメージです。自社内で使ったトークンの管理をどの費用に当てるのか、自社内の取り組みをどう周りに展開させるのか、といった話ですね。初期は情シスとの絡みの方が増えるはずです。

データが揃い切る前でもAIに任せてよい業務

――岡田:データが揃い切る前でも、AIに任せて問題ない業務はありますか。

岸川様:世間一般でいわれる話になってしまいますが、人の能力は「最初に問いを立てること」と「最後にどう伝えるか」の2つに集約していくべきだと思っています。問いを立て、それをもとに考察してアウトプットを出し、スクリプトに落とし込むところまでは、究極的にはAIにやらせてもいいと考えています。

人ならではのポイントは、センスのいい問いを立ててAIに動いてもらうこと、目視でハルシネーションがないかを確認すること。そして出てきたアウトプットを感情を込めて伝え、組織や周りを動かしていくことです。

給与システムだけ社員IDが別の場合、どの部署が主導するか

視聴者からの質問に回答する株式会社XAION DATAの岸川哲也氏

――岡田:給与システムだけ社員IDが別ということもあると思いますが、どの部署が主導するケースが多いですか。

岸川様:責任の分け方でいうと、自社のHR領域におけるAX推進は自分たちが責任を持つ、と人事側がいったん言い切っていました。現場側には、必要な情報を出してもらう工程で手伝ってもらうニュアンスになると思います。

逆に、現場側に責任を持たせて主導にしてしまうと、なかなか進まない可能性が出てきます。そうした責任分解がいいのではないでしょうか。

AIで作成したジョブ・スキルの定義を、現場は受け入れたか

――岡田:ジョブやスキルの定義をAIで自動作成した事例で、現場や事業部はその定義をすんなり受け入れられたのでしょうか。

岸川様:ディスカッションは一定回数していると思います。現場が直感的に優秀だと思っている人材と、言語化した結果の人材像にずれがある場合は、それがなぜなのかをディスカッションするプロセスを挟むべきです。

こちらが正しいとして採用活動まで一気に進めてしまうと、ハレーションが起きてしまうんですね。現場側が考えている重要な人物像と合わせていきたい、というプロセスをきちんと踏む必要があると思います。

キャリアマップや研修のレコメンドは、社員が自分から使うようになったか

――岡田:キャリアマップや研修のレコメンドは、社員が自分から使うようになるまでにどのくらいかかりましたか。

岸川様:キャリアマップを社員が自分の手でどんどん使っていくと、下手をすると転職を促すことにも近づくと思っています。そのため、中央集権的にキャリアマップ像を提示し、社員との1on1の機会でディスカッションや、示唆・レコメンドにつなげていく構図にしていました。

データの置き場は人事側や内部で持っておき、社員が自分でどんどんマップを作れる状態には近づけない方がいいのではないかと考えています。質問の意図とは少しずれた回答かもしれません。

ATSとタレントマネジメントが別々に入っている会社は、どこからつなぐか

――岡田:ATSやタレントマネジメントをすでに別々に入れている会社だと、どこからつなげていくイメージですか。

岸川様:タレントマネジメントツールが事業部ごとに分かれていたり、ATSが新卒と中途で別々に存在していたりする場合は、同じ種別どうしの突合から先にやる方がいいと思います。

入社前と入社後でざっくりデータをくくるところの優先度を上げ、その次に一本の筋をどう作るかに進むのがいいのではないでしょうか。

APIが公開されていないATSのデータも取り込めるか

――岡田:APIを公開していないATSのデータも、データ基盤に取り込めますか。

岸川様:使うトークン量とセキュリティによると思いますが、定点でCSVに吐き出し、それを生成AIに読み込ませて2次元的につなぎ込むことはできると思います。もう少し高度化して3次元的につなぎ込むとなると、追加で技術の力が必要になってくるだろうと考えています。

スキルの自己申告は、どんな基準でそろえるか

――岡田:スキルの自己申告は人によって書き方がバラバラになりがちですが、データを作るときの基準はどう決めるべきでしょうか。

岸川様:まさにそうだと思っていて、社員に向けた研修を先にやるべきです。スキルを丁寧に入力することの価値を伝える研修を行い、まずはタレントマネジメントが真の意味で機能する状態にすることですね。

スキル定義は、市場で定義されているスキル定義に当てはめてもいいですし、各企業が大事にしている考え方の区分けがあれば、それでもいいと思います。まずは入力していない人や入力が粗い人に価値を感じてもらい、たくさん出してもらうことの方が、優先度は高いと考えています。

最後に岸川様は、参加者にこう呼びかけました。

岸川様:事業部側と人事側を行き来するなかで、どの立場で話すか悩ましかったのですが、人事領域におけるデータ基盤の利活用は、ずっと悩み続けているテーマです。自社でもいろいろ試していますが、難しいと思う点は多々あります。

人事の皆さんとは、営業のようなニュアンスではなく、ディスカッションの機会を作らせていただきながら、一緒に深めていけたら嬉しいです。

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