リファラル採用(社員紹介制度)は、社員から紹介が届いたあとの段取りが決まっていないと、候補者への連絡が遅れたり、報奨の支給で紹介者ともめたりします。紹介した社員は、自分の友人がいまどの段階にいるのかを気にしています。
ここでは、募集要件を社内に配るところから、紹介の受付、選考、入社、報奨の支給、紹介者への結果の共有までを7つの段階に分けました。表には、段階ごとの主担当と、何がそろったら次へ進めるのかを並べました。
制度そのものの考え方や導入の全体像の解説は、リファラル採用とは?仕組み・制度設計と社員紹介を回すコツです。
リファラル採用のフローは7段階で、段階ごとに主担当を決める
リファラル採用のフローは、募集要件の社内共有、紹介の受付、初回連絡とカジュアル面談、書類選考と面接、内定と入社、報奨の支給、結果の共有と振り返りの7段階で組むと、担当の抜けが出にくくなります。どの段階も主担当は人事が持ち、紹介した社員は候補者と会社をつなぐ役に徹してもらいます。紹介者が選考の評価まで担うと、候補者にも紹介者にも余計な気遣いが生まれるためです。
段階 | 主担当 | 関わる人 | 次の段階へ進める条件 |
|---|
1. 募集要件の社内共有 | 人事 | 現場マネージャー | 職種ごとの求める人物像と、紹介の申し込み先を社内に公開した |
2. 紹介の受付 | 人事 | 紹介者(社員) | 候補者本人の了承と、他の経路で応募していないかの確認を記録した |
3. 初回連絡・カジュアル面談 | 人事 | 現場のメンバー | 候補者が選考に進むかどうかの意思を確かめた |
4. 書類選考・面接 | 人事・面接官 | (紹介者は評価に加わらない) | 一般の応募と同じ基準で合否を記録した |
5. 内定・入社 | 人事 | 配属先の上長 | 入社日が決まり、人事記録に紹介経路と紹介者を残した |
6. 報奨の支給 | 人事 → 給与計算の担当 | 経理 | 規程の支給条件を満たした日を確かめ、給与に載せて支払った |
7. 結果の共有と振り返り | 人事 | 紹介者・経営層 | 紹介者へ結果を伝え、段階ごとの件数を記録した |
表の「次の段階へ進める条件」は、人事の誰が見ても同じ判断になるように、事実で書いておくのがこつです。たとえば「候補者の温度感が高い」ではなく「候補者が選考に進むと答えた」と書きます。
段階ごとに使う文書(社内告知文・紹介依頼文・受付フォーム・結果連絡文)の文面は、リファラル採用のテンプレート|規程・告知文・依頼文にそのまま使える形で載せています。
紹介や知人を通じた転職は、転職者の22.2%が使った経路
厚生労働省『令和7年転職者実態調査の概況』(2026年9月25日公表・個人調査の有効回答7,310人)では、転職者が今の勤め先に就職するために行った転職活動の方法(複数回答)のうち、「縁故(知人、友人等)」が22.2%でした。求人サイト・求人情報専門誌・新聞・チラシ等の45.1%、ハローワーク等の公的機関の29.6%に次ぐ3番目の経路です(厚生労働省)。
同じ表に並ぶ令和2年調査の値は26.8%で、5年前より4.6ポイント下がっています。縁故には会社の制度を通さない知人づての転職も含まれるため、社員紹介制度の利用率そのものではありません。
それでも、転職者のおよそ5人に1人が転職活動で知人・友人を頼っています。社員の人脈を採用の入口として使う以上、段階と担当は紹介が届く前に決めておくのが前提です。
段階1. 募集要件は紹介してほしい人を具体的に書いて配る
募集要件の社内共有では、人事が現場マネージャーと一緒に、職種ごとの求める人物像と紹介の申し込み先を社内に配ります。「いい人がいたら紹介してください」という呼びかけでは、社員は誰の顔も思い浮かべられません。
配る内容は、職種名、担当する仕事、必須の経験、歓迎する経験、働き方の条件、紹介の申し込み先の6つに絞ると、社員が友人に説明しやすくなります。職種ごとに1枚にまとめ、募集をやめた職種はその日のうちに外します。
社員が友人に声をかけるとき、友人が最初に開くのは自社の採用ページや求人票です。外から見た自社の採用情報の状態を確かめたい場合は、エンジニア採用力チェックを使うと、企業のURLから採用ページ・求人票・技術発信などの公開情報を5指標24項目で採点したレポートが1営業日以内に届きます(社員紹介制度の運用や社内の選考の進め方は採点の対象外です)。
段階2. 紹介の受付は候補者の了承と経路の確認から始める
紹介の受付では、人事が紹介者から候補者の情報を受け取る前に、候補者本人が会社と話すことを了承しているかを確かめます。職業安定法第5条の5は、労働者の募集を行う者に、求職者などの個人情報を目的を明らかにして集め、その目的の範囲内で保管・使用することを求める条文です(e-Gov法令検索)。
受付フォームには、候補者の氏名と連絡先、紹介者との関係、紹介したい職種、本人の了承を得た日の4つがあれば足ります。職務経歴書の受け取りは、候補者が選考に進むと決めてからで十分です。
他の経路と重なったときの扱いを先に決める
受付の段階では、同じ候補者がすでに求人媒体や人材紹介会社を通じて応募していないかも確かめます。重なっていた場合にどちらの経路として扱うか、報奨の対象にするかを、規程か運用ルールに先に書いておきます。
人材紹介会社と契約している場合は、紹介手数料が生じる条件を契約書で確かめ、社内ルールと食い違わないようにしておくことが欠かせません。扱いを決めていないと、報奨と手数料の両方を求められたときに人事が個別に判断することになります。
段階3〜4. 面談と選考は人事が進め、紹介者を評価者にしない
初回連絡と選考は人事が主担当になり、紹介した社員は面接の評価者に入れません。選考の基準と手順は一般の応募と同じにして、「紹介だから通す」「紹介だから厳しく見る」のどちらも起きないようにします。
初回連絡は、受付から何営業日以内と期限を社内で決めておきます。候補者は友人の顔を立てて会うことにした人も多く、転職の意思が固まっていない段階です。そのため、最初の接点はカジュアル面談にし、会社の実態を伝えて、候補者が選考に進むかどうかを本人に決めてもらいます。
紹介者が持っている候補者の情報(一緒に働いたときの仕事ぶりなど)は、面接官に参考として渡してかまいません。ただし、評価は面接で確かめた事実で付けます。
選考の途中で紹介者に伝えるのは「面談をした」「選考に進んだ」「選考を終えた」といった進み具合までにします。不合格の理由や面接での評価は候補者本人の個人情報なので、紹介者には伝えません。
段階5. 内定から入社までは、入社日と紹介経路を記録に残す
内定から入社までの段階では、人事が入社日を確定し、人事記録に紹介経路と紹介者の名前を残します。記録が残っていないと、段階6で報奨の支給条件を確かめるとき、誰の紹介だったかを人の記憶でたどるしかありません。
内定を出したあとに候補者が辞退することもあります。辞退の連絡を受けたときの紹介者への伝え方と、報奨の扱いはリファラル採用の内定辞退と紹介者・報酬の扱いで詳しく解説しました。
段階6. 報奨の支給は、規程に書いた条件で給与に載せて支払う
報奨の支給は、人事が規程の支給条件を満たした日を確かめ、給与計算の担当へ対象者と金額を渡して、給与に載せて支払います。職業安定法第40条は、労働者の募集を行う者が、募集に従事する被用者に報酬を与えることを、賃金・給料その他これらに準ずるものを支払う場合などを除いて禁じているためです(e-Gov法令検索)。
厚生労働省職業安定局『募集・求人業務取扱要領』(令和7年6月)の「直接募集」は、募集主の被用者が募集主の指示により募集主のために直接労働者に働きかけて応募を勧誘することも含む定義です(厚生労働省)。社員紹介制度はこの直接募集の形で運用し、報奨は賃金として払う、という順序で考えると整理しやすくなります。
確認する点 | 根拠になる条文 | フローでの扱い |
|---|
社員への報奨を賃金として払う | 職業安定法第40条 | 給与に載せて支払う |
支給の条件を就業規則に書く | 労働基準法第89条 | 常時10人以上の労働者を使用する会社は、支給条件を就業規則(賃金規程)に書いて届け出る |
社員以外の人に謝礼を払わない | 職業安定法第36条 | 退職者や取引先など社員以外への謝礼は、厚生労働大臣の許可が要る形になるため制度に入れない |
候補者から金銭を受け取らない | 職業安定法第39条 | 候補者側から紹介料などを受け取る仕組みを作らない |
労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、賃金(第2号)や臨時の賃金等(第4号)の定めを就業規則に書いて届け出ることを求めています(e-Gov法令検索)。紹介の報奨がどの号に当たるかは手当の設計によるため、規程を作る段階で所轄の労働基準監督署か社会保険労務士に確かめておくと安心です。
支給日は「入社日」か「入社後の在籍期間」で決める
支給の条件は、入社日に支給が決まる形と、入社から一定期間の在籍を条件にする形のどちらかで規程に書きます。どちらにしても、条件を満たした日が人事記録から読み取れるようにしておくと、給与計算の担当へ渡す時期を迷いません。
人事から給与計算の担当へ渡す情報は、紹介者の氏名と社員番号、支給額、支給する月、支給条件を満たした日の4つです。金額の決め方や相場は、リファラル採用の報酬相場をまとめた記事を参考にしてください。
段階7. 紹介者へ結果の事実を返し、段階ごとの件数を残す
結果の共有では、人事が紹介者へ「入社が決まった」「今回は見送った」という結果を伝え、紹介への感謝を添えます。見送った理由は候補者本人の個人情報なので、紹介者には伝えません。結果が返ってこないと、紹介した社員は次の紹介をためらいます。
振り返りのために、段階ごとの件数(紹介の受付、カジュアル面談、選考に進んだ数、内定、入社、報奨の支給)を四半期に1回まとめて経営層と共有します。どの段階で止まっているかが、次に直す場所です。たとえば受付は多いのにカジュアル面談に進まないなら、段階1の募集要件の書き方か、段階3の初回連絡の期限を見直します。
リファラル採用のフローで人事が押さえる要点
リファラル採用のフローで人事が押さえる要点は、7つの段階すべてで主担当を人事に置き、紹介者を評価者にしないこと、そして報奨を規程に書いた条件で給与に載せて支払うことの3つです。
- 段階は、募集要件の社内共有、紹介の受付、初回連絡とカジュアル面談、書類選考と面接、内定と入社、報奨の支給、結果の共有と振り返りの7つで組む
- 受付では候補者本人の了承と、求人媒体や人材紹介会社など他の経路と重なっていないかを確かめる
- 選考の基準は一般の応募と同じにし、紹介者に伝えるのは進み具合と結果の事実までにする
- 報奨は職業安定法第40条に沿って賃金として払い、支給条件は就業規則(賃金規程)に書く
- 段階ごとの件数を残し、止まっている段階から直す
まず表の7段階を自社の担当者名で埋め、段階2の受付フォームと段階6の支給条件から文書にしていくと、紹介が届いた日から迷わずに動けます。