採用費とは、人材を採用するために企業が投じる費用の総称であり、求人広告費や人材紹介手数料などの「外部費用」と、採用担当者の人件費などの「内部費用」の2つで構成されます。「採用費」という独立した勘定科目は会計上に存在せず、実務では採用教育費や支払手数料などに振り分けて処理するのが一般的です。
売り手市場が続くなかで、1件あたりの採用費は上昇傾向にあります。それにもかかわらず、多くの企業が把握しているのは目に見える外部費用だけで、実際に予算を圧迫している内部費用ややり直しコストは可視化されていません。
本記事では、採用費の定義と内訳、勘定科目での会計処理、採用単価の計算方法、そして採用費を正しくコントロールするための考え方までを、一次データに基づいて解説します。
採用費とは|外部費用と内部費用の内訳
採用費とは、募集の開始から入社までにかかった費用をまとめたものです。会計上の正式名称ではなく、「外部費用」と「内部費用」の2階建てで捉えると全体像を把握しやすくなります。
外部費用は、自社の外に支払う費用です。求人広告の掲載料、人材紹介会社への成功報酬、ダイレクトリクルーティングのデータベース利用料、採用イベントの出展費などが該当します。請求書や領収書が残るため、金額を把握しやすいのが特徴です。
一方の内部費用は、社内で発生する費用を指します。採用担当者の人件費、面接官が選考に費やす時間、応募者への交通費、内定者フォローの工数などです。給与のなかに紛れて計上されるため、多くの企業で正確に把握されていません。採用費を語るとき、この内部費用が抜け落ちていると、実態より大幅に少ない数字で意思決定をしてしまいます。
区分 | 主な費目 | 把握のしやすさ |
|---|
外部費用 | 求人広告費・人材紹介手数料・スカウト媒体利用料・採用イベント出展費 | 高い(請求書が残る) |
内部費用 | 採用担当者の人件費・面接官の拘束時間・応募者対応の工数・内定者フォロー | 低い(給与に紛れる) |
採用費を管理する第一歩は、見えている外部費用に、この見えていない内部費用を足し戻すことにあります。
採用費の会計処理|勘定科目は「採用教育費」などに振り分ける
採用費を経理処理するうえで最初につまずくのが、「採用費」という勘定科目は存在しないという点です。採用にかかった費用は、内容に応じて既存の勘定科目へ振り分けて計上します。
多くの企業が使うのが「採用教育費」です。弥生の『採用教育費【勘定科目・仕訳大全集】』によると、採用教育費は従業員の採用・教育訓練・資格取得のための費用を処理する勘定科目で、求人広告の掲載料や説明会の会場費などをまとめて計上できます。会社の規模や採用頻度によっては、採用教育費を使わず、以下のように費目ごとに分けて処理することもあります。
- 求人広告の掲載費 → 広告宣伝費
- 人材紹介会社への成功報酬 → 支払手数料
- 面接や説明会のための移動費 → 旅費交通費
- 採用担当者の給与 → 給料手当(内部費用として認識)
どの勘定科目を使うかに唯一の正解はありませんが、重要なのは一度決めたルールを継続して使うことです。年度によって処理方法が変わると、採用費の推移を比較できなくなり、予算管理の土台が崩れます。まだ社内ルールがない場合は、採用費の振り分け基準を先に整備しておくことが、後の分析を楽にする近道です。
なぜ今、採用費の管理が重要なのか
採用費が経営課題になっている背景には、労働市場の需給の逼迫があります。リクルートワークス研究所の『大卒求人倍率調査(2026年卒)』によると、2026年卒の大卒求人倍率は1.66倍で、企業の求人数が学生数を上回る売り手市場が続く状況です。
売り手市場では、候補者一人を採用するまでに、より多くの母集団と、より手厚い口説きが必要になります。同じ1名を採るために投じる広告費・スカウト工数・面接時間が増えれば、1件あたりの採用費は当然押し上げられます。採用費の上昇は、担当者の努力不足ではなく、市場構造がもたらす圧力だと捉えるべきです。
だからこそ、採用費を「使った結果」として事後に眺めるのではなく、どの費目にいくら投じ、何件の採用につながったかを費目別に管理する視点が欠かせません。管理の解像度が上がってはじめて、削るべき費用と、むしろ増やすべき投資が見分けられるようになります。
採用単価(採用コスト)の計算方法
採用費の全体像を管理に落とし込むための指標が、1人あたりの採用費、すなわち採用単価です。採用単価は次の式で計算します。
採用単価 = 採用費の総額 ÷ 採用人数
たとえば、ある半期に外部費用300万円・内部費用200万円の合計500万円をかけて5名を採用したなら、採用単価は100万円です。計算そのものは単純ですが、精度を左右するのは分子である「採用費の総額」に何を含めるかです。手順は次の3ステップで整理できます。
- 外部費用を費目別に集計する:求人広告費、人材紹介手数料、スカウト媒体利用料などを、チャネルごとに分けて合算する
- 内部費用を推計して足し戻す:採用担当者と面接官が費やした時間に時給換算を掛け、内部費用を金額化する
- 採用人数で割る:全社の採用単価だけでなく、新卒・中途別、チャネル別、職種別に分けて算出する
特に重要なのがチャネル別の採用単価です。全社平均だけを見ていると、実は高コストなチャネルと低コストなチャネルが平均のなかで打ち消し合ってしまい、どこを見直すべきかが見えません。職種ごとの詳しい相場感はエンジニア採用コストの記事、採用代行に絞った費用相場は採用代行(RPO)の費用の記事で扱っています。
採用費を管理するときの3つの注意点
採用単価を出せるようになったら、次はその数字をどう読むかです。採用費の管理で見落とされがちな注意点を3つに整理します。
内部費用を必ず可視化する
採用費の議論が外部費用だけで進むと、「求人広告費を削れば採用費は下がる」という短絡的な結論に陥りがちです。しかし、安いチャネルに切り替えた結果、面接や書類選考の工数が跳ね上がれば、内部費用が膨らんで採用費の総額はむしろ増えます。外部費用の削減が内部費用の増加を招いていないか、両者をセットで見る必要があります。
採用単価の安さだけで手法を選ばない
採用単価が低いチャネルが、常に最適とは限りません。単価が安くても、入社後の早期離職が多ければ、採用のやり直しで費用は二重にかかります。採用費の費用対効果は、単価の低さではなく、採用した人材が定着し、活躍するところまでを含めて評価するべきです。安さだけを追うと、見かけの採用単価は下がっても、真のコストは上がるという逆転が起こります。
やり直しコストを採用費に織り込む
採用のやり直しは、支払い済みの外部費用に加え、育成コストや空白期間の機会損失まで発生させる、採用費のなかで最も高くつく費目です。にもかかわらず、多くの企業がこれを採用費として計上していません。採用費を正しく捉えるなら、「一度で決まらなかったこと」のコストこそ管理の対象に含めるべきです。
エンジニア採用における採用費の考え方とOffers
採用費が最も膨らみやすいのは、需給が逼迫しているエンジニア採用の領域といえます。ここで多くの企業が陥るのが、採用費の削減を「安い媒体探し」だと捉えてしまうことです。
しかし、採用費を本当に押し下げるのは、母集団形成の歩留まりを上げてやり直しの回数を減らすことです。どれだけ安いチャネルを見つけても、スカウトの返信や承諾につながらなければ、投じた工数(内部費用)だけが積み上がります。効くのは、単価の安いチャネルへの乗り換えではなく、一件あたりの反応率を上げて、同じ母集団形成をより少ない工数で回す運用への転換です。
Offersの「AIスカウト生成機能」は、求人情報と候補者の経歴を照合して最適な文面を自動生成し、スカウト作成の工数を80%削減します。ある導入企業では、スカウトの承諾率が13.1%から31.7%へ約2.4倍に改善しました。承諾率が上がれば、同じ採用数に必要な母集団と工数が減り、内部費用を含めた採用費の総額が下がります。
実際に、求人検索エンジンのスタンバイでは、Offersの導入事例として、検索技術に強いハイクラス人材の採用を実現しました。母集団形成から採用までの手間を軽くするこうした運用は、採用工数の削減と採用費の圧縮を両立させる打ち手であり、量と効率が課題になる場面ではAI RPOによる採用プロセスの外部化も選択肢になります。採用チャネルの見直しそのものの進め方は、ダイレクトリクルーティングの記事も参考にしてください。
本記事のポイント
- 採用費とは、外部費用と内部費用の総称であり、勘定科目としては採用教育費などに振り分けて処理する。管理の起点は、見えていない内部費用を足し戻すこと
- 採用単価はチャネル別・職種別に算出し、安さだけで手法を選ばない。早期離職によるやり直しコストまで含めて費用対効果を評価する
- 採用費を本当に下げるのは安い媒体探しではなく、母集団形成の歩留まりを上げてやり直しを減らすこと。工数と単価の両面から採用費を圧縮したい場合は、AI RPOによるスカウト運用の効率化が有効な打ち手になる
採用費のよくある質問
採用費にはどこまで含まれる?
採用費には、社外へ支払う外部費用(求人広告費・人材紹介手数料・スカウト媒体の利用料など)と、社内で発生する内部費用(採用担当者の人件費・面接官の拘束時間・応募者対応の工数など)の両方が含まれます。請求書が残る外部費用だけを採用費と捉えると、実態より小さい数字で判断してしまう点に注意したいところです。
採用費の勘定科目は何を使う?
会計上「採用費」という独立した勘定科目はありません。求人広告や説明会の費用は採用教育費、人材紹介の成功報酬は支払手数料、選考に伴う移動費は旅費交通費というように、内容に応じて既存の勘定科目へ振り分けて処理します。
採用単価はどう計算する?
採用単価の計算式は「採用費の総額 ÷ 採用人数」です。全社平均だけでなく、新卒・中途別やチャネル別、職種別に分けて算出すると、見直すべき費目が見えてきます。