ティール組織について解説。次世代組織モデルの組織概念と事例を紹介

Offers HR Magazine編集部 2023年4月20日

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ティール組織は次世代型の組織モデルとして、日本でも注目が集まっています。組織の在り方について見直そうと思ったとき、ティール組織について知っておくことは役立つはずです。ティール組織の概念や導入事例、組織構成に欠かせない要素を解説しますので、自社で導入する場合は確認してみてください。

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ティール組織とは何か

(出典)https://unsplash.com/

従来の日本は、経営者や上司が自分の権限の範囲において意思決定を下すヒエラルキー型の組織運営が主流でした。しかし、近年注目を集めているティール組織の在り方は、このヒエラルキー型の組織とは異なるものです。

ティール組織がなぜ、日本で注目を集めているのでしょうか。まずはティール組織とは何か、そして注目されている背景について解説します。

次世代型の組織論

ティール組織は、外資系コンサルティング会社の「マッキンゼー・アンド・カンパニー」にて組織変革プロジェクトを行っていたフレデリック・ラルー氏が自身の著書「Reinventing Organizations」において、この概念を提唱したことが始まりとされています。

ティールとは、英語で「鴨の羽色」を指します。組織の状態をRed・Amber・Orange・Green・Tealの5つに分け、Teal(最高の状態)に変革するための組織論です。

ティール組織の目指すところは、経営者や上司が管理せずとも、組織の目標実現に向けて、組織の人員全員が自ら行動し、まい進していく状態にあります。日本でも、、IT企業やベンチャー企業をはじめとしてティール組織の体制を導入する企業は近年増え続けています。

ティール組織が注目される背景

ティール組織は主に二つの理由により、日本で注目を集めています。

一つ目の理由は、従来のヒエラルキー型の組織モデルでは、人材の管理が難しくなっているためです。

現在は、インターネットの発達によって、テレワークや在宅ワークも増えていますし、フルタイム以外の働き方も増えています。こうした多様な人材を管理者が一律で管理するのが、次第に難しくなってきているのです。

また二つ目の理由は、多様な人材を採用・評価しなければならない点にあります。ヒエラルキー型の組織では、上司に評価されることが、仕事のゴールになっています。そのため、社員は上司の顔色をうかがったり、組織としてのゴールよりも上司の評価を重視したりしてしまうことが少なくありません。

その結果、上司が評価しきれない専門性を持った人材の採用や、社員達が新たな企画やスキルを持っていたとしても、それが評価されずに組織の生産性を衰退させてしまうこともあり得るのです。

こうした従来のヒエラルキー型の組織では、現在のビジネスに対応できなくなってきている問題が増えているため、ティール組織に注目が集まっています。

ホラクラシー組織との違い

社員が主体となって意思決定をする組織の在り方として、ティール組織の他にも「ホラクラシー組織」があります。よく混同されがちですが、この二つの意味は異なります。

厳密にいえば、ティール組織とは組織運営のための考え方や概念であり、ホラクラシー組織とは、実際に組織を運営するためのモデルです。いわばティール組織を実現するための手法の一部として、ホラクラシー組織があると考えれば良いでしょう。

ホラクラシー組織について詳しく知りたい方は、以下の記事も読んでみてください。

Offers Magazine「ホラクラシー組織とは?導入企業やティール組織との違い」

ティール組織に至るまでの組織フェーズ

(出典)https://unsplash.com/

ティール組織には、状態ごとにRed・Amber・Orange・Green・Tealの5つのステージがあると前述しました。ここでは、それぞれの色がどのような状態であるのかを、より具体的に解説します。

Red組織

Red組織をひと言でいえば、「ワンマン体制」ということです。1人のトップが力と権力で組織を支配し、目の前の利益を追い求めます。従業員は、その意思決定に従わなければなりません。

中長期的な目標を立てるといった計画性はなく、ひたすらに短期的な利益を追求するのがこの組織の特徴です。ティール組織論の中では最も原始的な状態として位置付けられています。Red(赤)の色が一般的に警告を示すとおり、健全からは大きくかけ離れた危険な状態にある組織といえるでしょう。

Amber組織

Amberは琥珀色です。オレンジと赤の中間にある色で、ティール組織論の中では下から2番目に位置しています。まだまだ健全な組織とはいい難い状態です。

この状態には、日本の従来の企業である「ヒエラルキー型」の組織が含まれます。階級制度が徹底されており、組織は上下の関係によって成立しています。

個人より組織としての役割を優先し、上から降りてきた業務命令を遂行することが、社員には求められます。そのため、社員が自発的な行動をしたり、アイデアを出したりすることはほとんどないでしょう。

秩序が保たれるために、現状維持には向いていますが、変化や成長する見込みは薄く、現在のビジネスモデルとしては適合できなくなってきています。

Orange組織

Orangeの状態は、ティール組織の中では中間に位置しています。組織内の上下関係はあるものの、Amberの状態とは違い、社員たちにはある程度の主体性が認められる組織です。

社員達の評価は数値や目標達成率に基づくものであり、業務に対して従順であることよりも、実際に結果を出せたかが重要になります。

成果を出すための自発的なアイデアや行動を社員達が取ることが多く、イノベーションが起こりやすくなります。

しかしながら、組織の命令は未だトップダウン型であり、上下関係は存在します。そのため、イノベーションを起こすにしても、社員一人一人が個人で意思決定して生まれるものではありません。

Green組織

Greenの状態は、ヒエラルキーがまだ残ってはいるものの、社員が主体的に働ける状態を指します。意思決定のプロセスが上司から部下へのトップダウン型ではなく、部下から上司に仕事の提案や共有が行われるボトムアップ型になるのが大きな特徴といえるでしょう。

所属する社員のスキルや考え方が尊重され、社員の中から新たなアイデアや事業が生まれます。組織としては、社員が働きやすい環境を整えることが役割になります。

その一方で、多様な意見が飛び交うために意思決定や行動までのプロセスに時間がかかるという問題点が起こるようになります。

Teal組織

Tealの状態は、ティール組織論において、最高の状態に位置します。組織は一つの個として動くことが特徴です。

上司やリーダーは存在せず、社員が必要に応じて意思決定を行います。そのためには、メンバー全員が組織の目標やビジョンをきちんと理解し、そのために行動できることが前提です。

ティール組織では社員は対等な関係にあります。社員1人1人が意思決定を下し、それが組織としての動きになるため、多様な働き方や市場の早い成長にもついて行けるようになります。

ティール組織に欠かせない要素

(出典)https://unsplash.com/

ティール組織の状態に移行するために、組織として何が必要なのかを解説します。以下の要素を獲得するために、組織変革を目指しましょう。

自主経営(セルフマネジメント)

ティール組織では、メンバー1人1人が、自身で意思決定し、それに基づいて行動することが求められます。

会社がそのためにしなければならないのは、意思決定ができるだけの情報を共有することです。また、社員が悩んだときに適切なアドバイスができる体制も必要になります。

社員1人1人が自身で仕事を管理、意思決定ができることと、その環境を会社として整えることが重要です。

全体性(ホールネス)

全体性とは、組織に所属する全員がフラットな関係であり、多様性を受け入れられる体制のことを指します。上下関係はなく、各人の行動やパフォーマンスに対し、他社員の干渉や制限がある状態は好ましくありません。

多様なスキルや考え方、働き方の社員がフルにパフォーマンスを発揮できるよう、社員の心理的安全性の担保や、個性やスキル、考え方を公平に評価できる組織体制が必要です。

目的の進化(エボリューションパーパス)

「存在目的」とも呼ばれるものです。一つの目的に向かって進んでいくだけでなく、組織の在り方やビジネスモデルを組織に所属する全員が理解し、目的自体が進化することが必要です。

そのためには、社員に対する十分な情報開示が行われ、業務命令をする人間ではなく、意思決定に対するリスクや効率化の助言を与えることが、組織の役割となります。

ティール組織の導入事例

(出典)https://unsplash.com/

実際にティール組織を導入して成功した企業の例を紹介します。参考にしてみてください。

株式会社キャスター

株式会社キャスターは、リモートワークを中心とした人材事業を提供している会社です。700人もの人材が、リモートワークで働いています。

発注する企業との窓口になる「フロント」と、実際に作業する「キャスト」という役割に分かれ、必要なスキルを持ったキャストでチームを組み、プロジェクトを進行します。フロントとキャストは上下ではなく役割の違いでしかないという認識の下、リモートの多様な働き方、多様なスキルを内包する組織となっています。

株式会社キャスター

株式会社ネットプロテクションズ

国内BNPL決済サービスのリーディングカンパニーである株式会社ネットプロテクションズでは、ティール組織に向けた組織改革を積極的に実践しています。

評価の目的を「報酬の適正分配」から「相互の成長支援」を重視した「Natura」という人事評価精度の設計し、成果に追われることなく社員が働きやすい環境を実現しています。

Naturaの導入と同時にマネージャー役職を撤廃し、上下関係がなくなったことで、社員が自主的に働ける環境を作り出しています。

株式会社ネットプロテクションズ

組織の進化により企業を成長させる

(出典)https://unsplash.com/

ビジネスの回転の速さ、働く人の多様化などさまざまな要因によって、日本従来のヒエラルキー型の組織からティール組織にシフトする企業も増えてきています。

ティール組織は組織に上下関係がなく、社員がそれぞれの専門性やスキルに応じたパフォーマンスを発揮することが可能です。与えられた目標を達成するだけでなく、目標そのものを設定、進化させることで組織に成長を促します。

ティール組織への変革のためには、ティール組織の状態として設定されているRed・Amber・Orange・Green・Tealの五つのステージのうち、まず自社組織がどこに位置しているのか、そしてどのような課題があるのかを見極める必要があります。

正しく組織を進化させるために、ティール組織に必要な要素を自社に取り入れ、社員の働きやすい環境と心理的安全性を提供しましょう。

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