CTOやAIエンジニアの採用は、どの手段を選ぶかで費用の出方も期間も大きく変わります。成功報酬で払う人材紹介は年収が上がるほど手数料も膨らむ一方、スカウトや採用代行の費用は社内の工数か月額の支払いとして出ていく仕組みです。
求める経験を持つ人は限られるため、求人を出して待つだけでは出会える数が少なくなります。企業の側から探しに行く手段を軸にして、予算と期間に合わせて組み合わせるのが現実的です。
採用手段は5つで、費用の出方がそれぞれ違う
CTO・AIエンジニアの採用手段は、人材紹介(成功報酬型)・リテーナー型の人材紹介・スカウト(ダイレクトリクルーティング)・採用代行(RPO)・リファラル採用の5つです。手段ごとに、いつ・何に対して費用を払うかが違います。
採用手段 | 費用の出方 | 費用の目安 | 期間の見方 |
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人材紹介(成功報酬型) | 入社が決まったときに手数料を払う | 紹介会社の手数料表で決まる。法人・団体役員の紹介は1件あたり約436.5万円 | 紹介される候補者次第で、待つ時間が読みにくい |
リテーナー型の人材紹介 | 契約時に着手金を払い、探索を任せる | 着手金と成功報酬の組み合わせを契約で決める | 探索の期間を契約で区切る |
スカウト(ダイレクトリクルーティング) | 媒体の利用料と、文面を書く社内の工数 | 外に払うのは媒体の利用料が中心で、工数は社内に残る | 送ってから返信までの往復が続く |
採用代行(RPO) | 月額などで運用を外部に任せる | 契約の形で決まる | 立ち上げの期間は契約で決まる(Offers の AI RPO は最短2週間で配信開始) |
リファラル採用 | 紹介した社員への報奨金など | 自社の規程で決める | 社員の人脈の広さで決まる |
紹介1件あたりの手数料は、厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)の手数料の総額を常用就職件数で割った編集部の概算です。
サービスの名前ではなく、費用がいつ発生するかで並べると、自社の予算の組み方に合う手段を選びやすくなります。エンジニア職全般の採用コストの内訳は「エンジニア採用コストの相場と内訳、削減のポイント」で整理しました。
CTO・AIエンジニアの求人の年収帯はIT職全体より高い
Offers に掲載された正社員求人では、CTO 系の求人の年収の上限の中央値が1,400万円、AIエンジニアの求人が1,200万円で、IT職の正社員求人全体の970万円を上回っています。年収に比例する手数料は、年収が高い職種ほど額も大きくなる仕組みです。
求人 | 求人数 | 年収の下限の中央値 | 年収の上限の中央値 |
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CTO 系の求人(題名に CTO・最高技術責任者) | 22件 | 900万円 | 1,400万円 |
AIエンジニアの求人(題名に AI・機械学習のエンジニア職) | 57件 | 600万円 | 1,200万円 |
IT職の正社員求人全体 | 3,249件 | 540万円 | 970万円 |
(Offers(株式会社overflow)調べ・年収の下限と上限を記載した正社員求人 n=3,249・2022年3月〜2026年9月公開)
上限の中央値の差は、CTO 系の求人が全体より430万円、AIエンジニアの求人が230万円です。CTO 系の22件のうち11件は上限を1,500万円以上に置いていました。
CTO 系の22件のうち17件は題名に「CTO候補」と書いており、CTOの肩書きの経験者に限らず、入社後にCTOを任せる前提で募集しています。AIエンジニアの職種の範囲や求める経験の整理は「AIエンジニアの採用|人事が押さえる基本と進め方」に任せ、ここで扱うのは手段と費用です。
人材紹介の手数料は紹介会社の手数料表で決まる
人材紹介(成功報酬型)の手数料は、法令で決まった上限の額か、紹介会社が厚生労働大臣に届け出た手数料表の額のどちらかで決まります。ソフトウェア開発の技術者の紹介では手数料の99.6%が届け出た手数料表によるもので、手数料率は紹介会社ごとに違うのが実情です。
厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」は、手数料を上限制と届出制の2種類に分けています。上限制は、期間の定めのない雇用で6か月を超えて働いた場合に、6か月間に支払われた賃金の100分の11(免税事業者は100分の10.3)と、そこから臨時に支払われる賃金などを除いた額の100分の14.8(免税事業者は100分の13.9)のいずれか大きい額を上限とする方式です。
届出制は、厚生労働大臣に届け出た手数料表の額を受け取れる方式で、取扱分野に応じて2種類を併用してもかまいません。
年収1,400万円のCTOを、賞与などを含まない月給だけの年収と置いて上限制で計算すると、6か月分の700万円の100分の14.8にあたる額が上限です。実際の手数料は届け出た手数料表で決まるため、この額を相場として読むことはできません。
職種別にみた紹介1件あたりの手数料
紹介1件あたりの手数料は、厚生労働省の報告の手数料の総額を常用就職件数で割ると、職種によって大きく違います。法人・団体役員は約436.5万円で、ソフトウェア開発の技術者の約150.5万円の3倍近くです。
職種(厚生労働省の分類) | 常用就職件数(有料) | 紹介1件あたりの手数料(概算) |
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法人・団体役員 | 1,392件 | 約436.5万円 |
法人・団体管理職員 | 16,007件 | 約288.3万円 |
情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発を除く) | 26,882件 | 約164.1万円 |
情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発) | 39,780件 | 約150.5万円 |
全職種 | 888,993件 | 約110.6万円 |
出典:厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)をもとにOffers推計。
手数料の総額には常用就職以外の手数料も含まれるため、全職種で割った約110.6万円は、厚生労働省が公表した常用就職1件あたりの約103万円より高めに出ます。職種別の値も同じ方向にずれる概算として読んでください。
CTOを取締役として迎える場合は、法人・団体役員の行が近い比較になります。経営幹部を紹介で迎えるときの契約の違いは「経営者を人材紹介で探す方法と、役員・後継者を社外から迎える手順」で扱いました。
年収に手数料率を当てた試算
年収に比例する手数料は、CTO・AIエンジニアの年収帯に手数料率を当てると額の見当がつきます。手数料率は紹介会社の手数料表で決まるため、下の表では年収の30%と35%を仮に置きました。
想定する年収 | 手数料率30%の場合 | 手数料率35%の場合 |
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1,400万円(CTO 系の求人の上限の中央値) | 420万円 | 490万円 |
1,200万円(AIエンジニアの求人の上限の中央値) | 360万円 | 420万円 |
1人の入社で数百万円が一度に出るため、2人目・3人目の採用まで見込むなら、成功報酬だけで組んだ予算は上限が読めなくなります。
契約前には、厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で、紹介会社ごとの手数料に関する事項や、短期間で離職したときに手数料を返す返戻金制度の有無を確かめられます(厚生労働省「職業紹介事業者を利用する際の主なポイント」)。
リテーナー型は着手金を前払いして探索を任せる
リテーナー型の人材紹介は、契約の時点で着手金を払い、候補者の探索から口説きまでを紹介会社に任せる形です。届出制の手数料は求人の申込みを受けた時点以降に手数料表に基づいて受け取れると業務運営要領が定めており、紹介の前に費用を払う契約もこの仕組みの上に成り立っています。
リテーナー型は前払いの分だけ探索に手間をかけられるため、ほかの会社で働いている人の中から候補者を探しに行く場面に向いています。
着手金は採用に至らなくても戻らない契約もあるので、何に対していくら払うのか、採用できなかったときの扱いはどうなるのかを、契約前に書面で確かめてください。
求人検索エンジン「スタンバイ」を運営する株式会社スタンバイは、エンジニア向けの主要な媒体やエンジニアに強いエージェントと取引がありながら、検索エンジンや広告配信、クローリング技術など分野での経験が問われる領域で採用が難航していました。2023年4月に Offers のリテーナープランを導入し、2か月後に内定者が決まっています。入社が決まったのは機械学習エンジニアとバックエンドエンジニアのポストです。
導入の経緯と進め方は Offers の導入事例(株式会社スタンバイ) で読めます。
スカウトと採用代行は工数を誰が持つかで費用が変わる
スカウト(ダイレクトリクルーティング)は、企業が候補者のデータベースを検索して直接声をかける手段で、外に払う費用は媒体の利用料が中心です。候補者の経歴を読み、一人ひとりに合わせた文面を書く工数は社内に残ります。採用代行(RPO)は、その運用を外部のチームに任せて、工数を費用に置き換える手段です。
CTO・AIエンジニアの候補者に送る文面には、何を任せたいのか、なぜその人なのかを書く必要があります。自社の技術と事業を説明できる人が文面に関わるほど、社内で使う時間は増える関係です。
スカウトの仕組みや媒体の選び方は「ダイレクトリクルーティングとは?利用率37.3%と費用」で詳しく扱っています。
採用代行を選ぶときは、運用を始めるまでの期間と、社内に残る作業を確かめます。Offers の AI RPO はエンジニア全般に対応し、特にAIエンジニア・CTO/VPoE・テックリードなどの希少職種に強みがあるとする採用代行で、60〜90分のヒアリングと候補者リストのすり合わせを経て、最短2週間で配信を始める流れです。
スカウトの設計・送信・追跡・候補者のフォローは Offers 側が代行し、1ポジションから利用できます。既存のスカウト媒体や紹介会社とも併用が可能です。
スカウトの運用を社内で持ちきれないときは、Offers の AI RPO で進め方を確かめられます。
リファラル採用は報奨金を自社の規程で決める
リファラル採用は社員が知人を紹介する手段で、費用は紹介した社員への報奨金と、面談の場を作る社内の時間が中心です。報奨金の額は自社の規程で決めるため、紹介会社の手数料のように年収に比例して膨らむことはありません。
社員の前の職場の同僚や技術コミュニティの知人は、CTO・AIエンジニアの候補者の入口になります。紹介の数は社員の人脈の広さに左右されるので、採用の時期を約束しにくく、ほかの手段と並行して進めるのが前提です。
AIエンジニアの採用は職種の範囲を決めてから手段を選ぶ
AIエンジニアの採用では、機械学習のモデルを作る人か、生成AIを使った機能をプロダクトに組み込む人かで、候補者のいる場所も年収も変わります。範囲を決めてから手段を選ぶと、同じ予算でも声をかける相手を絞れます。
Offers に掲載された AIエンジニアの求人57件では、年収の上限の第3四分位が1,500万円、上限の最大は2,000万円でした。求人を掲載したアカウントは45です。
求人の題名には「機械学習エンジニア」「MLOpsエンジニア」「LLM(大規模言語モデル)エンジニア」「AIエージェントエンジニア」などが並び、同じAIエンジニアでも担う範囲が違います。人材紹介に頼む場合も、スカウトで探す場合も、どの範囲の人を探すのかを依頼文や文面に書くと、紹介や返信の的が外れにくくなります。
採用が難しい理由の1つは求人が届きにくいこと
CTO・AIエンジニアの採用が難しい理由の1つは、求める経験を持つ人が限られるうえ、求人を出して応募を待つだけでは、今の会社で働いている人に声が届きにくいことです。
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」では、情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.48倍で、職業計の1.17倍を上回っています(常用(除パート)・ハローワークの数値)。この倍率は情報処理・通信技術者という職業分類の数字です。
CTOに求める役割も、会社の段階によって変わります。創業期は自ら手を動かしてプロダクトを立ち上げる力、組織の拡大期は開発組織の採用・評価の仕組みづくりや経営陣との連携が中心です。求める役割を決めないまま探し始めると、どの手段を選んでも候補者との期待がずれてしまいます。
採用の進め方は役割の定義から予算の上限へ
CTO・AIエンジニアの採用は、任せる役割を決め、年収の幅を置き、予算の上限から手段を選ぶ順に進めると、費用と期間の見通しが立ちます。
- 任せる役割を決める。CTOに技術戦略まで任せるのか、実装を率いるテックリードの役割なのかで、候補者も年収も変わる
- 年収の幅を置く。CTO 系の求人の上限の中央値1,400万円、AIエンジニアの求人の1,200万円を目安に、自社の提示額と現金以外の報酬(ストックオプションなど)を決める
- 予算の上限を決める。成功報酬型だけで組むと、年収に比例して手数料が膨らみ上限が読めない。着手金・月額・報奨金など、費用の出方が違う手段を組み合わせる
- 探しに行く手段を軸にする。スカウトか採用代行で企業の側から声をかけ、人材紹介とリファラルは並行して進める
予算を先に決めて探索を任せ、使わなかった分を返してもらう進め方は、Offers の予算型リテーナー採用で確かめられます。
CTO・AIエンジニア採用でよく聞かれること
CTO・AIエンジニアの採用でよく聞かれるのは、費用の目安、採用までの期間、候補者の広げ方の3つです。いずれも手段と年収によって答えが変わるため、ここまでの表と合わせて読んでください。
CTOの採用にかかる費用の目安
CTOの採用費用は手段で変わり、人材紹介では年収に手数料率を掛けた額になります。年収1,400万円で手数料率を30〜35%と仮に置くと420万〜490万円で、厚生労働省の報告から出した法人・団体役員の紹介1件あたりの手数料は約436.5万円でした。スカウトやリファラルでは、社内の工数も費用として見込みます。
AIエンジニアの採用にかかる費用の目安
AIエンジニアの採用費用も、人材紹介では年収に比例します。Offers に掲載された AIエンジニアの求人の年収の上限の中央値は1,200万円で、手数料率を30〜35%と仮に置くと360万〜420万円です。
CTOを採用するまでの期間の見方
CTOを採用するまでの期間は、手段と候補者の状況で変わります。成功報酬型の人材紹介は紹介される候補者次第で期間が読みにくく、リテーナー型や採用代行は探索の期間や運用の開始時期を契約で決められます。株式会社スタンバイは、リテーナープランの導入から2か月後に内定者が決まりました。
CTO経験者に絞らずに候補者を広げる方法
候補者を広げるには、CTO経験者に限らず、テックリードやVPoE、開発責任者として技術と組織の両方を担ってきた人まで対象に含めます。Offers に掲載された CTO 系の求人22件のうち17件も、題名に「CTO候補」と書いて募集しています。