AI人材という言葉は、社内で二度出てきます。一度目は「AIで何かやりたい」と言われたとき、二度目は「そのための人がいない」と言われたときです。
ところが求人を起こす段になると、手が止まります。どんな経験を持つ人を、何人、どの部署に置けばよいのかが決まらないからです。
この記事は、その手前で止まっている採用責任者に向けて書いています。国が示している人材の区分と2040年時点の需給の試算、直近の公的調査が測った不足の実態、そして求人の書かれ方がこの3年でどう変わったかを並べ、自社の要件を決めるところまでを扱います。
AI人材の定義と、IT人材・DX人材との境界
AI人材とは、AIの研究・開発・実装から、現場での業務活用までを担う人材の総称です。特定の職種名を指す言葉ではなく、担う役割の集合を呼ぶ言葉として使われています。
境界が曖昧なまま求人を出すと、要件と候補者がかみ合いません。まず言葉の輪郭を決めます。
国の標準はDX推進人材を役割で6類型に区分し、AIシステムの設計・実装はデータサイエンティストに置く
国が示している区分は、職種の一覧ではありません。経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の『デジタルスキル標準』のDX推進スキル標準は、DXの推進に必要な役割のうち、主な役割を6つの類型に区分しています(経済産業省・IPA『デジタルスキル標準』DX推進スキル標準・ver.2.0は2026年4月16日公開)。
類型 | 担う役割 |
|---|
ビジネスアーキテクト | 変革の目的を定義し、ビジネスモデルと業務プロセスを設計して成果まで牽引する |
デザイナー | 製品・サービスの方針と開発プロセスを策定し、あり方のデザインを担う |
データサイエンティスト | データを活用した業務変革に向けて、データを収集・解析する仕組みやAIシステムに関する仕組みの設計・実装・運用を担う |
データマネジメント | データの安全性と信頼性を確保し、組織全体のデータ利活用を促進する |
ソフトウェアエンジニア | デジタル技術を使った製品・サービスのシステム設計・実装・運用を担う |
サイバーセキュリティ | デジタル環境のセキュリティリスクの影響を抑える対策を担う |
AIシステムの設計・実装は、この標準ではデータサイエンティストの役割に置かれています。ただしAIを業務で使う場面はビジネスアーキテクトにもソフトウェアエンジニアにも現れます。AIは特定の類型に閉じず、6類型を横断すると読むのが実態に近いでしょう。
IT人材・DX人材との重なり方
3つの言葉は、切り口が違います。IT人材は職務領域、DX人材は変革という目的、AI人材は扱う技術。同じ人を別の角度から呼んでいるだけの場合もあります。
したがって3つは重なります。AIを使って業務プロセスを変える人は、AI人材でもありDX人材でもあるでしょう。自社が採用したいのはAIシステムを作る人なのか、AIで事業を変える推進役なのか。ここを先に決めておくと、要件が書けます。
DX人材の側の区分はDX人材の6類型に、採用難の構造はIT人材不足の記事にまとめました。
AI関連人材は7つの種別で測られている
「AI人材が足りない」という言葉の中身は、一様ではありません。IPAの調査は、AI関連人材を7つの種別に分けて充足状況を測っています。
不足の度合いは種別で大きく違いました。IPAの『DX動向2026』(2026年7月30日公表・2025年度調査)で「不足している」と答えた企業の割合は、次のとおりです。
人材の種別 | 不足している | 自社には必要ない |
|---|
データマネジメントの知見があり、社内で企画、推進できる人材 | 71.9% | 14.5% |
現場の知見と基礎的AI知識を持ち、自社へのAI導入を推進できる従業員 | 69.6% | 14.8% |
AIツールでデータ分析を行い、自社の事業に活かせる従業員 | 66.5% | 14.8% |
AIを活用した製品・サービス・新規事業を企画できるAI事業企画 | 58.1% | 25.0% |
AIを活用したソフトウェアシステムを実装できるAI開発者 | 49.9% | 40.7% |
先端的なAIアルゴリズムを開発したり、学術論文を書いたりするAI研究者 | 39.1% | 56.7% |
AIに理解がある経営・マネジメント層 | 39.0% | 11.7% |
出所は独立行政法人情報処理推進機構『DX動向2026』図表4-12(2025年度・n=1,781〜1,783)で、並べ替えは本稿によるものです。
不足感が高いのは上の3つでした。いずれもモデルを作る役割ではなく、AIを業務とデータにつなぐ役割に当たります。
作る側の位置づけは対照的です。同じ図表4-12では、AI研究者は「自社には必要ない」が56.7%、AI開発者も40.7%を占めました。研究や実装の担い手を自社に置く必要がないと考えている企業が、相当数あることになります。
同図表で経営・マネジメント層は「不足している」が39.0%で、7種別のうち最も低い水準でした。報告書も、この層と「AIツールでデータ分析を行い、自社の事業に活かせる従業員」の不足回答率が他と比べて減少していると書いています。
この並びは、採用の順番を考えるうえで手がかりになります。図表4-12で不足感が最も高いのは、現場とデータをつなぐ層でした。研究者の確保だけが論点ではありません。
AI人材が不足している理由
国の推計では、AI・ロボット等の利活用を担う人材が2040年に約340万人不足する可能性があります。経済産業省が2026年3月に示した2040年の就業構造推計(改訂版)は、十分な国内投資と産業構造の転換が実現するケース(新機軸ケース)を前提に、この区分の2040年の需要782万人に対して供給は443万人にとどまり、339万人が不足すると試算しました。供給も2022年の就業者236万人から443万人へ増える見込みですが、需要の伸びがそれを上回るという見通しです。
国の推計ではAI・ロボット等利活用人材が2040年に約340万人不足する可能性
経済産業省の「2040年の就業構造推計(改訂版)について」(2026年3月・産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会の参考資料)は、AI・ロボット等の利活用を担う人材が2040年に約340万人不足する可能性を示しました。2022年に236万人だった就業者に対し、2040年の需要は782万人、供給は443万人と見込まれています。
職種の区分(2040年) | 需要 | 供給 | 需給の差 |
|---|
AI・ロボット等の利活用を担う人材 | 782万人 | 443万人 | 339万人の不足 |
専門職(上の区分を含む) | 1,867万人 | 1,686万人 | 181万人の不足 |
事務職 | 1,039万人 | 1,476万人 | 437万人の余剰 |
出所は経済産業省「2040年の就業構造推計(改訂版)について」(2026年3月)です。
読むときは2つの条件を押さえておく必要があります。1つは区分の広さで、この推計の「AI・ロボット等の利活用を担う人材」は機械技術者やその他の情報処理通信技術者などの職種を集計したものです。本稿が扱うAI人材より範囲が広く、機械技術者も含みます。もう1つは前提で、2040年に十分な国内投資と産業構造の転換が実現するケースを置いた試算です。
同じ推計は、就業者全体では大きな不足は生じないとしています。事務職では約440万人の余剰が出る一方で、AI・ロボット等の利活用を担う人材は約340万人不足する可能性があります。人手の総量は足りていても、職種の間で配分が偏るという見通しです。
上位の解説記事でよく引かれるのは、2019年に公表された経済産業省『IT人材需給に関する調査』の2030年の推計です。対象の区分も見通しの年も異なるので、2つの数字は並べて比べられません。
本稿が整理した、供給が追いつきにくい3つの理由
推計とは別の本稿の整理として、供給が需要に追いつきにくい理由を3つにまとめました。いずれも短期では解消しにくいものです。構造を知るだけでは、自社が何をすればよいかは決まりません。
- 需要の伸びに供給が追いつかない。生成AIの普及で活用のニーズが広がった一方、育成には年単位の時間がかかる
- 参入の壁が高い。機械学習・統計・数学・データ基盤を横断して身につける必要があり、短期間で人数が増えにくい
- 獲得競争が国境を越える。AIのスキルは国外でも同じ物差しで評価されるため、採用の競合が国内企業だけにとどまらない
ここまでは供給側の話です。次の節から、需要側で何が起きているかを数字で見ます。
公的調査が測った不足の中身
不足は数字で確認できます。IPAの『DX動向2026』は、AIの利活用と人材の過不足を同じ調査のなかで測りました。
AI導入・運用の最大の課題は専門人材の不足
まず前提として、AIを使う企業はすでに過半数です。IPAの『DX動向2026』では、AIを「導入している」が42.3%、「現在、試験利用をしている」が15.7%で、合計58.0%の企業が何らかの形でAIを導入または試験利用していました(IPA『DX動向2026』図表3-1・2026年7月30日公表・n=1,794)。
そのうえで、導入・運用上の課題として最も多く挙がったのが専門人材の不足です。
AI導入・運用上の課題 | 回答率 |
|---|
専門人材が不足している | 50.1% |
生成AIの効果やリスクに関する理解が不足している | 45.8% |
適切な利用を管理するためのルールや基準の作成が難しい | 39.7% |
出所はIPA『DX動向2026』図表3-16(2026年7月30日公表・2025年度調査・n=1,770)です。上位3つはどれも組織側の課題で、技術そのものの難しさは入っていません。
AI導入がどこで止まるかは、AI導入の進め方でも取り上げました。
DXを推進する人材の量と質
隣接する指標として、DXを推進する人材の過不足も見ておきます。設問の対象はDXに取り組んでいると回答した企業です。
指標 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|
「量」が不足(やや+大幅) | 85.7% | 85.1% | 85.5% |
「量」が大幅に不足 | 62.1% | 58.5% | 50.1% |
「質」が不足(やや+大幅) | 85.5% | 86.1% | 88.8% |
「質」が大幅に不足 | 58.1% | 58.9% | 52.9% |
出所はIPA『DX動向2026』図表4-1・4-3(2026年7月30日公表・2025年度調査)で、合計の一部は図表の内訳を本稿で足し合わせた値です。読み方には注意が要ります。2024年度から2025年度にかけて「大幅に不足」はどちらも下がった一方、「やや不足」を含めた合計では質が86.1%から88.8%へ増えました。
逼迫の度合いは緩みつつある一方で、「量」の不足は3年とも85%台で横ばいにとどまり、「質」の不足を感じる企業は増えています。危機を煽る段階から、必要な数と要件を決める段階へ移ったと読めます。
不足感は企業規模を問わず続いている
同じIPA『DX動向2026』(2026年7月30日公表・2025年度調査)の従業員規模別の集計では、人材の「量」が不足(やや+大幅)と答えた企業は、301人以上で9割を超え、100人以下でも6割を超えていました。「質」の不足は301人以上で9割超、100人以下で7割超です。
2024年度と比べると、どの規模でも「大幅に不足」が減り、「やや不足」が増えています(IPA『DX動向2026』図表4-2・4-4)。規模別に見ても和らいでいるのは逼迫の度合いにとどまり、不足を感じる企業の割合は高いままです。
対象はDXを推進する人材で、図表4-2・4-4は従業員規模を100人以下、101人以上300人以下、301人以上1,000人以下、1,001人以上の4区分で集計しています。上の要約は、そのうち100人以下と301人以上を比べた報告書本文の記述です。4区分で見ても、不足を感じる割合は100人以下が最も低く、301人以上の2区分が最も高い結果でした。規模で競えない企業ほど、誰を採用するかを先に絞り、要件の具体さで候補者に選ばれる必要があります。
要件が決まっていない企業ほど、不足を強く感じている
ここが本稿の中心です。同じ調査は、人材の不足感と並んで「自社が何を必要としているか把握できているか」も測っており、こちらの結果のほうが深刻でした。
必要なスキルを把握できていない企業が52.8%
IPAの『DX動向2026』では、DX推進に必要なスキルについて「必要なスキルは把握できていない」と答えた企業が2025年度で52.8%でした(IPA『DX動向2026』図表4-8・2026年7月30日公表・2025年度調査・DXに取り組む企業n=1,356)。2024年度よりやや改善しているものの、半数を超えたままです。
加えて「必要なスキルは把握しているが、現在の人材のスキルの状態は十分に把握できていない」という回答は増えています。何が要るかも、今何があるかも見えていない企業が多数派という状態です。
人材像を設定して社内に周知している企業は16.2%
人材像の設定状況は、さらに低い水準でした。IPAの『DX動向2026』によると、DXを推進する人材像を「設定し、社内に周知している」企業は2025年度で16.2%で、2024年度の20.4%から約4ポイント下がっています(図表4-5・DXに取り組む企業n=1,356)。「設定していない」と「わからない」の合計は約5割でした。
求人票は人材像の写しです。社内で人材像が決まっていないまま出した求人には、要件の合う候補者が集まりにくくなります。
把握の有無で不足感が23.4ポイント開く
必要なスキルの把握は、不足感そのものとつながっています。IPAの『DX動向2026』でスキルの把握状況別に見ると、人材の「質」が「大幅に不足している」と答えた企業は、スキルを把握している企業で40.6%、把握できていない企業で64.0%でした。差は23.4ポイントです。
必要なスキルを把握している企業ほど、不足を感じにくい傾向がありました。IPAはこの結果から、スキルの把握状況が人材の「量」「質」の適切な把握や確保と「関連している」と述べています。因果の向きまでは示されていませんが、採用が動かないときは、市場の人数を疑う前に、誰を採用すればよいかが社内で決まっているかを確かめておきたいところです。
公開している求人票や採用ページが候補者からどう見えるかは、エンジニア採用力チェックで確かめられます。企業URLを入力すると、AIが採用ページ・求人票・技術発信といった公開情報を5指標24項目で採点し、1営業日以内にレポートが届きます。
求人の書かれ方は3年で変わった
要件が決まらない理由のひとつは、求める中身そのものが動いているからです。自社の掲載データで、その動きを実測しました。
Offersに掲載された正社員求人の本文を年ごとに集計すると、次のようになります。
年 | 生成AIに言及 | 機械学習に言及 |
|---|
2023年 | 0.9% | 10.1% |
2024年 | 6.0% | 6.2% |
2025年 | 16.9% | 9.6% |
2026年(9月14日まで) | 34.5% | 9.0% |
出所はOffers 掲載求人データ(株式会社overflow調べ・各年に公開された正社員求人・2026年9月14日時点)です。
Offersの掲載求人(正社員のみ)では、生成AIに言及する求人の割合が2023年の0.9%から2026年(9月14日まで)の34.5%へ、3年で約38倍になりました。一方で機械学習に言及する求人は10.1%から9.0%で、ほぼ同じ帯にとどまっています。
生成AIに言及する求人が増え、機械学習に言及する求人は横ばいです。
求人データから見たAI活用の広がりはAI活用事例の現在地にまとめました。
AI人材に求められるスキルと代表的な職種
要件を書く前に、スキルと職種の対応を押さえておきましょう。
共通の土台になるのは3つです。
- 機械学習とデータサイエンスの知識。モデルの仕組みと限界を理解する
- プログラミングと数学・統計の素養。実装と評価を自分で回せる
- AIの利用に関わる法とガイドラインの知識。データの扱いとリスクを判断できる
職種としては、機械学習エンジニア、データサイエンティスト、MLOpsエンジニアが実装側の中心です。加えて、AIを前提に設計するソフトウェアエンジニアや、業務側でAIの適用範囲を決める推進役も、求人の対象に広がっていると本稿は見ています。職種別の求人数は集計しておらず、実測の値ではありません。
研究寄りの職務と実装寄りの職務では、評価すべき経験も候補者のいる場所も変わります。どの職種を狙うのかを決めてから要件に落とすと、書類選考の基準がぶれません。職種ごとの進め方はエンジニア採用の記事をご覧ください。
育成で広げる範囲と、採用でしか埋まらない範囲
確保の手段は育成と採用の2つです。どちらか一方では成立しません。境界は、先ほどの7種別を「使う側」「業務とつなぐ側」「データの基盤を整える側と実装する側」「研究する側」に束ねると引けます。
育成が届くのは活用側
社内のリスキリングで広げられるのは、AIツールを使って自部門の業務で成果を出す層です。既存の業務知識を持っている社員に、AIの使い方と適用範囲の判断を足す形になるため、数ヶ月単位で人数を増やせます。
業務とAIをつなぐ推進役も、現場経験がある社員を起点にすれば育成の射程に入ります。
経済産業省の2040年の就業構造推計(改訂版・2026年3月)は、事務職で約440万人の余剰、AI・ロボット等の利活用を担う人材で約340万人の不足が生じる可能性を示す内容でした。ただし、この340万人は機械技術者やその他の情報処理通信技術者などの職種を集計した区分です。自部門でAIツールを使えるようになった事務職の社員は、職業分類の上では事務職のままなので、活用側への育成はこの区分の不足を埋める手段にはなりません。推計の区分に近いのは、次の節で扱う実装する側です。
採用でしか埋まらないのは、データの基盤を整える側と実装する側
一方、データの基盤を整える層と、AIシステムを実装する層は、社内育成では間に合いません。ゼロから育てるには数年かかり、その間に事業機会は過ぎていきます。図表4-12で「不足している」が最も高かった「データマネジメントの知見があり、社内で企画、推進できる人材」は、種別名の中心が企画・推進の役割です。本稿ではデータマネジメントの知見を前提にする点を重く見てこちら側に含めて読んでいますが、その知見を持つ社員が社内にいる企業なら、育成で広げる範囲に入ります。
研究の担い手を置くかどうかは、その前に決める論点です。先ほどの調査では「自社には必要ない」が過半数を占めていました。自社でモデルを開発するのか、既存のモデルを業務に載せるのか。ここが決まらないまま研究職の求人を出しても、要件は書けません。
ほとんどの項目で、着手している企業は1割未満
もっとも、この切り分けに着手している企業はまだ少数にとどまります。IPA『DX動向2026』(2026年7月30日公表・2025年度調査)がAIの影響を踏まえた人材育成・確保への対応状況を尋ねたところ、「効率化・自動化が見込まれる既存業務の把握」の「着手している」が19.0%と相対的に高かったものの、他の項目は1割に満たない水準でした。ほとんどの項目で「検討の予定はない」が3割以上を占めています。
着手の有無は成果とも結びついています。同調査でAI導入の効果が高いと実感している企業とそうでない企業を比べると、「人材に必要なスキルの把握」に着手している割合は21.5%対12.0%でした。
AI人材育成の進め方
育成は、対象の定義から始めます。全社員にAIのリテラシーを広げるのか、特定部門にデータ分析のスキルを持たせるのか。ここが決まらないと、研修の設計も測り方も決まりません。
進め方は3段階で組みます。
- 対象を定義する。どの部門の誰に、どの水準まで求めるかを文章にする
- 学習を設計する。研修やeラーニングで知識を入れる
- 実務で使わせる。実際のプロジェクトを通じた育成(OJT)で定着させる
知識を入れて終わりにせず、業務で使う場面までつなげることが、育成を成果に変える分かれ目です。
国の支援制度も用意されています。第四次産業革命スキル習得講座(Reスキル講座)の認定講座や、デジタルスキルの学習コンテンツを集めたマナビDXがその入口です。ただしIPAの『DX動向2026』では、「第四次産業革命スキル取得講座認定制度」と「マナビDX Quest」について「知らない」と答えた企業が7割を超えていました。制度はあるのに届いていない状態なので、育成計画を立てる段で一度調べておく価値があります。
採用で確保するときの進め方
本稿の見立てでは、採用側の難所は、優秀な層ほど転職市場に出てきにくいことです。応募を待つ形だけでは接点を作りにくくなります。
先に接点を作る
企業側からデータベースを使って直接声をかけるダイレクトリクルーティングが、この層に届く手段になります。関係を先に作っておけば、転職を考えた瞬間に想起される位置に立てるでしょう。手法の全体像はダイレクトリクルーティングの記事に、応募を待たない設計は母集団形成の記事に書きました。
スカウトの工数をAIで圧縮する
ダイレクトリクルーティングの課題は、スカウト文の作成と候補者選定に工数がかかることです。ここをAIで縮めるのがAIスカウトの発想になります。
Offersの「AIスカウト生成機能」は、求人情報と候補者の経歴データを照合して、一人ひとりに合わせたスカウト文を自動で作ります。株式会社overflow「AIスカウト生成機能」提供開始のプレスリリースによると、スカウト文作成の工数は80%削減できるとされています(2024年10月時点・同社調べ)。導入企業の実績としては、スカウト承諾率がA社で13.1%から31.7%へ、B社で19.0%から32.4%へ改善しました(2024年10月時点・各社の実績値)。
AI採用の全体像と他社の実証値はAI採用の記事にまとめています。
運用ごと外部に委ねる
自社に採用のリソースがない場合は、設計から運用までを外部に委ねる形も選択肢に入るでしょう。採用代行(RPO)の委託範囲と法律の線引きは採用代行の記事で扱っています。
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AI・エンジニア人材を採用で確保した事例
Offersを使ってAI・エンジニア人材の採用に至った企業の例を挙げます。スタンバイ・ナイル・SmartHRの3社は、事例ページに正社員の採用と明記された事例です。
株式会社スタンバイの事例では、検索と機械学習という専門領域で母集団を広げる経路を用意する段階にありました。Offersを導入し、その2カ月後に内定者が決まりました。採用したのは機械学習エンジニアとバックエンドエンジニアのポストです。
ナイル株式会社の事例では、技術力とビジネス理解を兼ね備えたハイクラス層へ、新しい経路で接点を作ることが課題でした。Offersの運用代行プランを活用し、正社員1名の採用に至りました。事例ページは、今回採用した人材としてリードエンジニアを紹介しています。
株式会社SmartHRの事例は、その年の採用目標を200名以上に置いた採用計画を支えるチャネルを増やす取り組みです。これまで接点のなかったエンジニア層へ、プロフィールに記載された転職意欲を確かめながらアプローチし、サーバサイドエンジニアの正社員採用に至りました。
株式会社ビットキーの事例では、モノとインターネットをつなぐ特殊なポジションの採用が最大の課題でした。伴走型のリテーナープランを選び、ハイクラスエンジニアの採用につなげています。
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AI人材の確保は、要件を決めるところから始まる
AI人材とは、AIの研究・開発・実装から現場での活用までを担う人材の総称であり、国の標準にAI人材という類型はありません。国のDX推進スキル標準はDXを推進する人材を役割で6つの類型に区分しており、AIシステムの設計・実装はデータサイエンティストの役割に置かれています。本稿の読みでは、AIを業務で使う場面はその類型を横断して現れます。
経済産業省の2040年の就業構造推計(改訂版・2026年3月)では、AI・ロボット等の利活用を担う人材が2040年に約340万人不足する可能性が示されています(新機軸ケース)。不足は7つの種別で測られており、IPA『DX動向2026』図表4-12で「不足している」が最も高いのは「データマネジメントの知見があり、社内で企画、推進できる人材」の71.9%と、「現場の知見と基礎的AI知識を持ち、自社へのAI導入を推進できる従業員」の69.6%でした。
ただし、より手前に課題があります。IPA『DX動向2026』(2026年7月30日公表・2025年度調査)でDXに取り組む企業(n=1,356)を見ると、DX推進に必要なスキルを把握できていない企業が52.8%、人材像を設定して社内に周知している企業が16.2%でした。この水準では、求人を出しても要件が定まりにくいと考えられます。スキルを把握している企業と把握できていない企業では、質の大幅な不足感が40.6%対64.0%に開きます。
手順は3つです。必要な役割を7種別で仕分ける。育成で広げる範囲と採用でしか埋まらない範囲を分ける。そのうえで、採用に回す枠から要件を書き起こす。
自社の現在地を測るところから始めるならエンジニア採用力チェックを、採用の運用ごと設計し直すならOffers AI RPOプランをご確認ください。
出典
- 独立行政法人情報処理推進機構『DX動向2026 広がるAI導入、DXは変われるか』2026年7月30日公表。2025年度調査、有効回答1,799社
- 経済産業省「2040年の就業構造推計(改訂版)について」2026年3月(産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 第30回 参考資料2)
- 経済産業省・独立行政法人情報処理推進機構『デジタルスキル標準』DX推進スキル標準(DSS-P)。ver.2.0は2026年4月16日公開
- 株式会社overflow「Offers、『AIスカウト生成機能』の提供を開始」プレスリリース
- Offers 掲載求人データ(株式会社overflow調べ・正社員求人・2026年9月14日時点)