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採用したエンジニアにいち早く会社になじ馴染んでもらうためにも、オンボーディングは重要なプロセスです。オンボーディングをより効果的に実施するためにも目的や方法、受け入れ側がどのような体制で臨むべきなのかワークフローについて解説します。
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オンボーディングの定義
(出典)https://unsplash.com/
エンジニアをジョブ型雇用で採用する企業は多くなってきています。ジョブ型雇用は、採用段階で職務を明示して雇用契約を結び、労働時間ではなく職務や役割で評価する雇用方式で、採用したエンジニアに求められるのは即戦力です。即戦力化のためにオンボーディングは重要なプロセスといえるでしょう。
オンボーディングの効果次第で、採用者がより早くコミットできるようになり、また早期離職のリスクも減らせます。オンボーディングを適切に設定することが重要です。そのために、まずはオンボーディングの定義から見ていきましょう。
オンボーディングとは
オンボーディング(on-boarding)とは、新規採用者が組織やチームに円滑に参加し、業務を効率的に遂行できるようにサポートするプログラムのことです。会社の文化や仕事の進め方、チームメイトやマネージャーとのコミュニケーションスキルなどを新卒、中途問わず新規採用者を対象に教育します。
「on-board」には「乗り物に乗る」という意味がありますが「受け入れる・参加する」といった意味でも使われることがあります。企業が新規採用者をいち早く受け入れることが、オンボーディングの目的です。
OJTとの違い
入社後の教育手法として、オンボーディングはOJTとよく比較されます。この二つの違いについて解説します。
OJTとは「On -the -Job Training」の略で、実際に仕事をしながら、現場のスキルや働き方を学んでもらう育成手法です。OJTはあくまで現場主体での教育であり、企業文化や環境全般を理解するプロセスは含まれていません。
対してオンボーディングは、入社後に企業文化や環境に馴染むための全般的な育成を指す言葉です。オンボーディングの中にOJTが含まれると考えれば分かりやすいでしょう。
オンボーディングを行う目的
(出典)https://unsplash.com/
オンボーディングを行う主な目的について解説します。目的を共有することで、育成側もより効率的にオンボーディングが行えるようになるでしょう。
戦力化までの所要時間を短縮
特にエンジニアの場合、企業による働き方や環境がパフォーマンスに大きく影響します。開発環境やコードの書き方、コミュニケーションの取り方などを共有できていない状態では、チームでの仕事をうまく行えません。
現場で働きながら覚えていくのでは、戦力として数えられるようになるまで時間がかかってしまうでしょう。そこでオンボーディングによって研修と育成を速やかに行うことで、採用してから戦力化までの所要時間を短縮します。
早期離職の防止
企業文化になじめないことによる人間関係のミスマッチ、仕事内容の理解不足や得意領域との齟齬は、早期離職の原因になってしまいます。これらの原因の根幹をたどると、既存社員とのコミュニケーション不足が挙げられるでしょう。
オンボーディングにより、採用者自身がこれから働く人間やグループと早期にコミュニケーションを取ることでこれらの課題を解消しやすくなります。その結果、早期離職の防止につながるのです。
エンゲージメントの向上
エンゲージメントとは、従業員が組織に対してどの程度関心や熱意を持っているかを示す指標のことであり、エンゲージメント向上には、事業への理解度や組織をいかに好きになってくれるかが重要になります。
オンボーディングによって組織の魅力や事業内容について知り、その中での自分の役割や目標を理解し、自信を持って業務に取り組めるよう支援することで、採用者のエンゲージメントの向上につながります。
チーム感の醸成とチームビルディング
オンボーディングは既存の従業員のコミュニケーション能力の向上やチームビルディングにも貢献します。
新規採用者が社内に入ってくると、従来の社員同士で、教育担当について話し合ったり、どのような仕事を任せるかを決定するといったコミュニケーションや協力が必要になります。
オンボーディングのプロセスを通じて、従業員同士がコミュニケーションを取り、協力し合うことでチーム感を醸成し、適切なチームビルディングにつながるでしょう。
オンボーディングを通して目指す状態
(出典)https://unsplash.com/
オンボーディングで成果を出すためには、オンボーディングを通じて、新規採用者にどのような状態になってほしいのかを具体的に想定することが重要です。
入社日当日の状態、そして入社後1カ月の状態について、それぞれ解説します。
入社日の新規採用者の状態
入社当日の状態としては、以下のような状態となってもらうことを目指しましょう。
- 会社で働くことを楽しみにできており、不安の割合は少なくなっている
- 契約締結が完了し必要最低限のツールのアカウント発行が完了している
- キックオフMTG、全社で実施しているミーティング、ボード1on1などへ招待が完了している
入社前にも面談や資料共有を通じてオンボーディングを実施し、会社で働くことへの不安が解消され、むしろ仕事が楽しみになっているようなメンタル状態が好ましいです。
また、仕事に必要な社内アカウントの発行や環境設定などは、入社日までには終わらせておき、当日はスムーズに仕事に移れるような状況になっていることを目指しましょう。
そして、キックオフMTGや全社MTGなど、組織で行われるMTGへの招待が完了しており、新規採用者がネクストアクションを把握している状況が理想的です。
1カ月後の新規採用者の状態
入社日から1カ月目までのオンボーディングの中で、新規採用者が以下の状態になっていることを目指しましょう。
- 会社の業務で使用するツール(Slack,Notion,Redashなど)の使用方法の基本が理解できている
- チーム内での役割をチームメンバー、新規採用者本人が正しく理解し合っている新規採用者が自走し、オーナーシップを持ち担当業務を進められる状態となっている
- 会社、業務に関して不明点が生じた際に適切な問い合わせ先に連絡ができている
特に「自走できる」(細かい指示が無くても自身で動ける状態になっている)ことと、「業務に関する問い合わせが適切にできる」というのは業務上重要ですので、この2点をクリアできる状態を目指しましょう。
オンボーディングを設計する方法
(出典)https://unsplash.com/
エンジニア向けのオンボーディングのプログラムをどのように設計すればよいのか、設計手順や流れについて解説します。
目標の設定
オンボーディングのプログラムを設計する前に、目標を明確にする必要があります。この場合の目標とは、オンボーディングを通じてエンジニアにどのような状態になってほしいのか、理想の状態を具体化することです。
前述した入社直後と1カ月後それぞれの「理想の状態」が保有しているスキルや働き方、コミュニケーションの取り方などをピックアップし、それを身につけられるようにオンボーディングのプログラムを作成する必要があります。
プログラム内容の作成
次に、プログラムの内容を決定します。これには、オリエンテーション・研修・トレーニング・チームビルディング活動などの直接的なプログラムから、フィードバックや評価の方法などのサポート業務も含まれます。
また、プログラムの長さや形式、スケジュールなども決定する必要があります。目標に対し、最適な手段と方法を模索し、プログラムを作成していきましょう。
担当者と期間の決定
エンジニアのオンボーディングの場合、担当者はマネージャークラスの人材かチームリーダー、あるいは中堅社員から選出されることが多いです。
中堅社員を担当者に任命する場合、その目的は新規採用者の育成だけでなく、中堅社員のマネジメント能力やコミュニケーション能力の育成も兼ねます。その場合はオンボーディングの責任者として、マネージャークラスの人材を、担当者の上長として配置すると良いでしょう。
オンボーディングの期間についても決定します。入社の前後含めて1カ月、長くても2カ月程度が一般的です。担当者のリソースも確保する必要があります。社内のリソースや目標の高さに応じて期間を決定しましょう。
フォローと改善
新規採用者をどのように評価し、どうフォローするかも決めておく必要があります。オンボーディング後に適切なチーム・役割に配置するために重要です。また早期退職者を出さないため、オンボーディング期間中のフォローと、オンボーディング終了後のフォロー体制についても確立しましょう。
メンター制度や、1on1ミーティングの実施などを行っている企業が多いようです。
加えて効果を高めるためにプログラミング自体の改善も視野に入れておきましょう。効果測定や参加者からのアンケートを募り、次回以降のプログラムに反映していきます。
オンボーディング実行の流れ【入社前】
(出典)https://unsplash.com/
プログラムが作成できたら、次は実際にオンボーディングを実行する流れについて見ていきましょう。担当者や責任者が注意すべき点も併せて解説します。
ボーディング参加者が入社するまでに行っておく準備について解説します。
担当者とマネージャーの連携確認
オンボーディング担当者とマネージャーを別々に設ける場合、連携についても確認しておきましょう。対象エンジニアについての情報共有や責任の範囲、またオンボーディング中に起こり得る問題をあらかじめ想定し、対処法についてもある程度話し合っておくと円滑に進行できます。
またオンボーディングに対する考え方や育成の方針についても擦り合わせを行いましょう。担当者とマネージャーで言っていることが違うと、新人は不安になってしまいます。
環境の準備
オンボーディング開始前に、オンボーディングを実施できる環境を準備する必要があります。オンボーディングで利用するスペースや機材の確保、使用するツールのアカウントの発行や、パソコンにソフトをダウンロードするといった作業が当てはまります。
こうしたハード面の準備だけでなく、オンボーディング関係者に情報やタスクを共有しておく準備も進めておきましょう。
オンボーディング資料の共有
オンボーディングで使用する資料を参加者に共有し、オンボーディング当日までに読んでもらうように促します。
会社のビジョンや参加するプロジェクトの内容など、テキストで共有可能な情報はあらかじめ共有しておいた方が、時間も効率化できます。
オンボーディング実行の流れ【入社後】
(出典)https://unsplash.com/
次に入社後に実際にオンボーディングを実行していく流れについて確認していきましょう。入社日から入社後のタスクについて紹介します。
権限の付与や各チャンネルへの招待
業務で使うツールや連絡チャンネルなどの権限の付与と、チャンネルへの招待などを行います。
セキュリティや契約上の問題で事前に行えなかった管理権限の共有や、会社の業務で使用するツール(Slack,Notion,Redashなど)のグループチャンネルに招待し、そのチャンネルがどういう役割を持っているのか、またコミュニケーションの取り方などを説明します。
コミュニケーションツールや連絡チャネルでのやりとりは社外秘となるものも多くあるため、情報漏洩しないためのセキュリティに関する注意点の説明も合わせて行うと良いでしょう。
他のメンバーへの紹介
コミュニケーションツールでグループに招待した場合、他のメンバーに対して新規採用者を紹介しましょう。新規採用者から自己紹介を行うようにします。
オフラインの場合は、メンバーを集めた上で新規採用者を紹介しましょう。しっかり顔を合わせて紹介することでほかの社員も覚えやすくなりますし、新規採用者も「大切にされている」という印象を持つことができます。
キックオフMTGの設定
マネージャーとのキックオフミーティングを設定しましょう。キックオフミーティングとは、プロジェクトに関する最初のミーティングです。
働き方や事業内容などの全体的な情報共有はもちろんですが、これから参加するプロジェクトの内容や、新規採用者に求める成果についても擦り合わせを行います。
オンボーディングで効果的な取り組み
(出典)https://unsplash.com/
オンボーディングを成功させる上で効果的な取り組みについて解説します。オンボーディングと並行して以下の制度やイベントの導入も検討してみてください。
メンター制度
メンター制度とは、チームリーダーやマネージャーとは別に、年齢や立場の近い社員が新規採用者をサポートする制度のことです。別の部署やチームの人間が担当するのが一般的です。そうすることで、相談内容について客観的なアドバイスができ、信頼関係を築きやすくなります。
メンター制度を導入することで、新規採用者の負担も減り、精神的にも楽になります。会社としても、メンターを通じて新規採用者の状態を把握しやすくなるというメリットがあります。
シャッフルランチ
シャッフルランチとは、株式会社サイバーエージェントから生まれた文化です。部署やチームが異なる社員同士のグループを作り、ランチを一緒してもらう制度です。
自分が働く部署やチーム以外にどのような人がいて、どんな考え方を持っているのかを知る機会となります。社内の人脈を培う場としても活用できるので、経営層を巻き込んだ上で、週1などのペースで行う会社もあります。
経営層からしても、自社の社員がどんな人間なのかを知ると同時に、社員からしても自社の経営層について知ることで、会社に親近感を持つなどエンゲージメントを高める要因にもなるでしょう。
オンボーディングにより新規採用者をコミットする
(出典)https://unsplash.com/
オンボーディングによって、新規採用者はいち早く会社に溶け込み、パフォーマンスを発揮できるようになります。エンゲージメントの上昇や離職率の低下にも期待が持てる取り組みです。
またオンボーディングは中堅社員のマネジメント能力やコミュニケーション能力育成の場としても活用できます。オンボーディングを通じて新規採用者だけでなく、中堅社員やマネージャーのスキルアップも行い、企業の人材能力の底上げを図りましょう。
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