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準委任契約の締結手順と2つの型、条項と偽装請負

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エンジニアに開発や保守を任せるとき、準委任契約は「完成を約束させない代わりに、業務の進め方を相手に委ねる」契約です。契約書の見た目は請負と似ていても、報酬の発生の仕方、途中で終わったときの扱い、発注側が口を出せる範囲は大きく違います。

契約のタイプの選び方から、契約書に書く条項、相手が個人のときに増える義務、締結した後の運用で偽装請負と判断されないための基準まで、条文と厚生労働省の資料に沿って順に整理しました。

Offers HR Magazine編集部監修者

株式会社overflow / 編集担当

Offers HR Magazine編集部

Offers HR Magazine 編集部は、株式会社overflow が運営する採用メディアの編集チームです。エンジニア採用に取り組む人事・採用担当者に向けて、採用手法・人事制度・組織づくりの情報を届けています。

準委任契約の定義と、委任・請負・派遣との違い

準委任契約は、法律行為でない事務の処理を相手に任せる契約で、民法656条が委任の規定(643条以下)をそのまま準用します。システム開発・保守・運用、コンサルティング、調査といった業務が当てはまり、受任者が負うのは仕事の完成ではなく、善良な管理者の注意をもって業務を処理する義務(善管注意義務・644条)です。

委任・請負・労働者派遣と並べると、違いは「完成を約束するか」と「発注側が指揮命令できるか」の2点に集約されます。

契約

任せるもの

完成の義務

発注側の指揮命令

根拠

準委任

法律行為でない事務(開発・保守・調査など)

負わない(善管注意義務を負う)

できない

民法656条

委任

法律行為(契約の締結の代理など)

負わない(善管注意義務を負う)

できない

民法643条

請負

仕事の完成

負う

できない

民法632条

労働者派遣

派遣労働者の労働

なし(労働の提供)

できる(派遣先が指揮命令)

労働者派遣法

出典: 民法(e-Gov 法令検索)、厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」。

請負との違いは仕事の完成を約束するかどうか

請負は「ある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払う」契約です(民法632条)。期日までに決まった機能を納めてもらいたいなら請負、要件が変わり続ける開発に一定期間の稼働を確保したいなら準委任が向きます。請負契約の詳細は「請負契約とは?エンジニア採用で知っておきたい契約の基礎知識」で扱っています。

労働者派遣との違いは指揮命令の有無

労働者派遣では派遣先が派遣労働者に直接指示を出せますが、準委任では発注側に指揮命令の権限がありません。厚生労働省の疑義応答集(第3集)は、準委任契約でも実態として発注者と受注者側の労働者の間に指揮命令関係があれば、契約の形式を問わず労働者派遣事業に該当すると明記しています。この判断基準は後半の「偽装請負と判断される運用の基準と罰則」で詳しく扱います。SES(システムエンジニアリングサービス)契約と派遣の違いは「SESの意味とは?派遣契約との違い」も参照してください。

外部への委託で続けるか正社員の中途採用に切り替えるかの判断

日々の作業の進め方や時間を自社で決めて指示したい役割は、準委任契約では成り立たず、雇用で迎える方が契約と実態が一致します。準委任は、業務の進め方を受任者に委ねられる範囲の仕事に向いた契約です。チームの中で優先順位を毎日入れ替える、社内のメンバーと同じ指示系統で動いてほしい、といった役割を準委任で続けると、偽装請負と判断されやすくなります。

役割の中身を見直して、正社員としてエンジニアを中途採用する方針に切り替えるなら、候補者が最初に見る自社の採用ページや求人票の情報が足りているかを、募集を始める前に確かめておくと手戻りが減ります。

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準委任契約の2つのタイプは履行割合型と成果完成型

民法上の準委任契約の報酬の型は、業務をした分に払う「履行割合型」(648条)と、業務で得られた成果に払う「成果完成型」(648条の2)の2つです。成果完成型は、2020年4月1日に施行された民法(債権法)改正で条文に置かれました(法務省)。どちらを選んでも完成の義務は生じず、請負に変わるわけではありません。

項目

履行割合型(648条)

成果完成型(648条の2)

報酬の対象

業務を処理したこと(期間・工数)

業務によって得られた成果

請求できる時期

業務の履行後。期間で定めたときは期間の経過後

成果の引渡しが要るときは引渡しと同時

途中で終わったとき

既にした履行の割合に応じて請求できる

請負の割合報酬の規定(634条)を準用

向く業務

保守・運用、要件が固まらない開発への継続参画

調査レポート、特定機能の設計書など成果を区切れる業務

出典: 民法648条・648条の2(e-Gov 法令検索)。

履行割合型は期間や工数で払う

履行割合型は、月額固定や時間単価で報酬を決める一般的な形です。民法648条は、受任者は特約がなければ報酬を請求できないとしているので、報酬を払う前提なら金額と算定方法を契約書に書きます。委任者の責めに帰することができない事由で履行できなくなったときや、契約が途中で終わったときは、既にした履行の割合に応じて報酬を請求できる(648条3項)ため、月の途中で終了した場合の日割りの計算方法も決めておくと安心です。

成果完成型は成果の引渡しと引き換えに払う

成果完成型は、成果物の引渡しと引き換えに報酬を払う形です。完成の義務は負わないので、作り直しを求めたいなら契約書に定めておく必要があります。成果の定義(何を、どの形式で、いつまでに渡すか)と、受け取った後の確認の手順を書いておくことが欠かせません。

報酬の払い方は業務の区切り方で選ぶ

公開当初の記事では「毎月定額型・単発業務型・成果完成型」と並べていましたが、民法上の型は上の2つで、月額固定・スポット・成果報酬は報酬の払い方の違いです。保守や継続参画は月額固定の履行割合型、障害対応などのスポット業務は時間単価の履行割合型、調査や設計書のように成果を区切れる業務は成果完成型、という選び方が基本です。業務の区切り方から選んでおくと、途中終了時の計算と食い違いにくくなります。

準委任契約を締結する手順

準委任契約の締結は、業務範囲を決めて契約類型を選ぶ、報酬の型を決める、契約書の条項を詰める、相手が個人なら取引条件を明示する、署名して運用を始める、の5段階で進めます。契約書の作成は民法上の成立要件ではありません。それでも報酬は特約がなければ請求できず(648条)、相手が個人の場合は取引条件を書面または電磁的方法で明示する義務がある(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律3条。以下、取引適正化等法)ため、実務では書面か電子で残すのが前提です。

段階

やること

確認する条文・資料

1. 業務範囲と類型

完成を約束させたいか、指示を出したいかで請負・準委任・派遣・雇用を選ぶ

民法632条・656条、37号告示

2. 報酬の型

履行割合型か成果完成型か。算定方法と支払期日を決める

民法648条・648条の2、取引適正化等法4条

3. 条項

業務内容、報告、再委託、解除、秘密保持、権利の帰属などを詰める

民法645条・644条の2・651条

4. 取引条件の明示

相手が従業員を使わない個人などなら、給付の内容・報酬の額・支払期日等を直ちに明示する

取引適正化等法2条・3条

5. 締結と運用

書面か電子契約で締結し、指示の窓口と体制を現場に周知する

37号告示関係疑義応答集(第3集)

電子契約で締結する場合も、取引適正化等法の明示は電磁的方法で行えます。ただし相手から書面の交付を求められたら、遅滞なく交付しなければなりません(同法3条2項)。

準委任契約の契約書に書く条項

準委任契約の契約書には、業務の内容と範囲、報酬と支払期日、契約期間と解除、報告、再委託、秘密保持、成果物の権利の帰属、指示の窓口を書きます。民法は準委任について解除や報告のルールを定めていますが、多くは契約で変えられるので、自社に合う形を書いておかないと民法の原則がそのまま当てはまります。

条項

書くこと

書かないと当てはまる原則

業務の内容と範囲

対象のシステム・作業・稼働の目安、範囲外の依頼は別契約にすること

範囲の解釈で争いになる

報酬

型(履行割合型・成果完成型)、単価、算定方法、支払期日

特約がなければ報酬を請求できない(648条)

契約期間と解除

期間、更新の有無、解除の予告期間

各当事者がいつでも解除できる(651条)

報告

報告の頻度と形式(週次の作業報告など)

請求があればいつでも報告、終了後は遅滞なく報告(645条)

再委託

再委託の可否と、許可する場合の手続き

許諾ややむを得ない事由がなければ復受任者を選任できない(644条の2)

秘密保持

対象の情報、契約終了後の扱い

守秘の範囲と期間が決まらない

成果物の権利

ソースコードや資料の著作権・知的財産の帰属

帰属をめぐって争いになりやすい

指示の窓口

受注側の責任者、発注側からの連絡の経路

現場の直接指示が偽装請負の火種になる

出典: 民法(e-Gov 法令検索)の各条。

解除の条項は民法651条と取引適正化等法16条の両方で考える

民法651条では、準委任契約は各当事者がいつでも解除できるのが原則です。ただし相手に不利な時期に解除したとき、または発注側(委任者)が、受任者の利益(報酬を得ること以外)も目的とする契約を解除したときは、やむを得ない事由がない限り相手の損害を賠償する責任が生じます。

相手が取引適正化等法の特定受託事業者で、6か月以上続く委託であれば、従業員を使う、または役員が2人以上の発注者は、災害などやむを得ない場合を除き、契約の解除や更新しないことを少なくとも30日前までに予告する義務を負います(同法16条、期間は同法施行令3条)。民法上はいつでも解除できても、継続案件の打ち切りは30日前の予告が前提です。契約書の予告期間も30日以上で書いておくと、運用とずれません。

報告と再委託の条項は運用まで決めておく

民法645条により、受任者は委任者の請求があればいつでも業務の状況を報告し、終了後は遅滞なく経過と結果を報告する義務を負います。週次の作業報告など頻度と形式を決めておけば、進め方に口を出さずに状況を把握できます。再委託は、委任者の許諾を得たときかやむを得ない事由があるときにしか認められない(644条の2)ので、受注先の会社が別のエンジニアに任せる可能性があるなら、許可の手続きを書いておくのが安全です。

相手が個人のエンジニアのときに取引適正化等法で増える義務

2024年11月1日に施行された取引適正化等法は、従業員を使わない個人や一人社長の法人(特定受託事業者)に仕事を委託するときの義務を定めています。準委任契約で個人のエンジニアに開発を任せる場合も対象で、明示・支払期日・解除の予告の3つが締結の段階に関わります。

義務

誰が負うか

内容

条文

取引条件の明示

特定受託事業者に委託するすべての事業者(発注者が従業員のいない個人の場合も含む)

給付の内容、報酬の額、支払期日などを、委託したら直ちに書面または電磁的方法で明示する

3条

支払期日

従業員を使う、または役員が2人以上の発注者

給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間で支払期日を定める

4条

解除の予告

従業員を使う、または役員が2人以上の発注者

6か月以上続く委託の解除・不更新は30日前までに予告する

16条・施行令3条

出典: 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(e-Gov 法令検索)、同法施行令(公正取引委員会)。

相手が会社(受注企業の社員が作業する SES など)なら、取引適正化等法ではなく、発注側の体制と運用が次の節の37号告示の基準に沿っているかが論点です。

偽装請負と判断される運用の基準と罰則

偽装請負かどうかは契約書の名前ではなく実態で判断され、準委任契約でも発注側が受注側の労働者に直接、業務の進め方や労働時間を指示していれば労働者派遣に該当します。厚生労働省の「37号告示に関する疑義応答集(第3集)」でも、電子メールやチャットツール、プロジェクト管理ツールでの直接の指示は判断の対象です。

37号告示(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準)は、受注者が自ら行うべきものとして、業務の遂行方法に関する指示その他の管理、労働時間等に関する指示その他の管理、服務上の規律、配置等の決定及び変更などを挙げています。疑義応答集(第3集)のA7は、発注側が特定の者を指名して業務に従事させたり、特定の者の就業を拒否したりすることも、配置等への関与に該当するという整理です。

システム開発の現場で偽装請負と判断されやすい場面

疑義応答集(第3集)はアジャイル型開発を題材にしています。発注側と受注側の開発担当者が対等な関係で協働し、受注側の担当者が自律的に判断して開発を進めているなら、同じ会議やチャットに全員が参加していても偽装請負とは判断されません。反対に、発注側の開発責任者や担当者が受注側の担当者に直接、作業の進め方や労働時間の指示を出していれば偽装請負と判断されます。

厚生労働省は2026年5月25日にこの第3集へQ8を追加し、Q1〜Q7の考え方がアジャイル型以外のシステム開発にも当てはまるとしました(37号告示関係疑義応答集の案内ページ)。ウォーターフォール型の受託開発や保守でも、同じ基準で判断されることになります。

偽装請負と判断されやすい場面

準委任のまま保つやり方

発注側の社員がチャットで受注側の担当者に作業手順を直接指示する

指示や依頼は受注側の責任者に出す。窓口を契約書に書く

始業・終業の時刻や残業を発注側が決める

稼働の目安は契約で決め、日々の時間管理は受注側が行う

発注側がスキルシートで個人を指名する、交代を求める

求めるのは技術水準と経験年数の条件までにし、誰を配置するかは受注側が決める

範囲外の作業を口頭で追加する

範囲外は変更契約か別契約にする

出典: 厚生労働省「37号告示に関する疑義応答集(第3集)」Q2〜Q8。

偽装請負の罰則と、受け入れ側の労働契約申込みみなし

偽装請負は形態によって職業安定法44条(労働者供給事業の禁止)に触れ、同法64条は44条の違反に「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」を定めています(職業安定法)。

受け入れ側にはもう1つ影響があります。労働者派遣法40条の6は、法の適用を免れる目的で請負その他派遣以外の名目で契約し、労働者派遣の役務の提供を受けた場合、受け入れ側がその労働者に、その時点と同じ労働条件で労働契約の申込みをしたものとみなすと定めています(労働者派遣法)。この申込みは、行為が終わった日から1年を経過する日まで撤回できません。

常駐型でエンジニアを受け入れるときの体制の組み方は「FDE(Forward Deployed Engineer)の事例11件と組み方、偽装請負を避ける受け入れ方」でも扱っています。

準委任契約を結ぶ前の確認リスト

準委任契約を結ぶ前に確かめることは、完成を約束させる必要がないか、報酬の型が業務の区切り方に合っているか、相手が個人なら取引条件の明示と解除の予告に対応したか、現場の指示が受注側を通る体制になっているか、の4点です。

確認すること

見るところ

期日までの完成が必要なら請負を選んだか

民法632条

報酬の型(履行割合型・成果完成型)と算定方法、途中終了時の計算を書いたか

民法648条・648条の2

報告の頻度、再委託の可否、解除の予告期間を書いたか

民法645条・644条の2・651条

相手が個人なら取引条件を直ちに明示し、支払期日を受領から60日以内にしたか

取引適正化等法3条・4条

6か月以上続く案件の終了を30日前までに予告できる段取りか

取引適正化等法16条

発注側の社員がチャットやツールで直接指示しない運用を周知したか

37号告示関係疑義応答集(第3集)

出典: 民法・特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(e-Gov 法令検索)、厚生労働省「37号告示に関する疑義応答集(第3集)」。

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