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雇用契約にはいくつかの種類がありますが、エンジニアを採用する場合は「請負契約」で採用することが多くあります。請負契約はどのような採用方法なのでしょうか。他の契約との違いやメリット、契約上で注意すべきことについて解説します。
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請負とは?
(出典)https://unsplash.com/
企業として新規に人を採用する際、契約にはいくつかの種類があります。その中でエンジニアと契約をする際に最もよく用いられるのが「請負契約」です。
エンジニアの雇用を考えている場合、請負契約については深く知っておかなければならないでしょう。そのためにもまず、請負契約の概要とエンジニアの業務例について解説します。
業務委託契約の一つ
請負契約とは、業務委託契約の一種です。業務委託契約には他に、「委任契約」「準委任契約」があります。
企業が特定の業務を依頼し、業務完了の際に報酬を支払う形式の契約となります。会社やお店に労働者として雇われる「労働契約」とは、適用される法律や働き方もまったく異なるものです。
請負契約の業務例
ITエンジニアに対し請負契約で依頼する業務には、以下のようなものがあります。
- アプリやサービスの開発
- 自社システムの運用保守
- プロジェクトマネジメント
- Webサイトの制作
- システムの設計や要件定義
- プログラミング
請負契約で依頼する業務は多岐に及び、エンジニアのスキルや社内のリソースによっても変わってきます。
類似用語も押さえよう
(出典)https://unsplash.com/
業務委託契約での他の種類や、エンジニアでよく交わされる「SES契約」について解説します。それぞれとの違いについても把握しておきましょう。
委任契約
委任契約は、法律行為を委託し、相手が承諾することで契約となる方式です。例えば、弁護士に法律相談を頼む場合や、税理士に税法上の手続きを代行してもらう場合は委任契約で依頼することになります。
委任契約の特徴は、仕事の結果には関与しないという点です。仮に、裁判で負けた場合、報酬を支払わなくてよいということにはなりません。委託者は仕事の結果に関与せず、受託者は自分の専門知識や技能を使って仕事をします。
準委任契約
準委任契約は、法律行為以外の業務になるという点が委任契約とは異なりますが、成果ではなく業務遂行に対し報酬が支払われるという点は、委任契約と同様です。
主な業務内容として、コンサルティング、システム開発や医師の診察、介護などがあります。
例えば医療現場において、万が一患者が亡くなってしまった場合でも、医師の業務に非がなければ報酬は支払われます。
必ずしも望んだ結果にならないような仕事や、成果が具体的でない仕事に対して準委任契約が結ばれる場合が多くなっています。
派遣契約
派遣契約は、人材派遣会社が派遣先の企業と契約を結び、派遣契約した労働者を一定期間働かせる契約です。
人材派遣会社は労働者に給与を支払い、契約先の企業は人材派遣会社に対して派遣料金を支払います。労働者は、派遣先の指示・監督の下で業務を行いますが、雇用関係は派遣元との間にあるため、雇用条件や待遇は派遣元が決めます。
この契約形態は、企業が繁忙期や専門知識が必要な業務などで一時的に人員を増やす際に利用されます。
SES契約
SES契約は「System Engineering Service」の略で、システムやソフトウェアの開発・運用などで行われる委託するシステムエンジニアリングサービスの契約です。厳密には、法律上でSES契約というものは存在しません。
企業がITシステムを開発・運用する際、専門知識を持った企業(SES企業)に一部または全部の業務を依頼する形を取ります。SES企業は、システム開発や運用に必要な技術者を提供し、依頼元企業は報酬を支払います。
契約の種類は明確には規定されていませんが、準委任契約か請負契約のいずれかで契約が結ばれることが多いようです。成果物が完成するまでの仕事になるか、一定期間の業務になるかで契約方法が変わります。
請負契約でエンジニアを雇用するメリット
(出典)https://unsplash.com/
エンジニアを雇用する際には、請負契約を結ぶことが多くあります。なぜ、請負契約が多いのでしょうか。エンジニアを請負契約で雇用するメリットを解説します。
予算管理がしやすい
労働契約は「人」を管理する契約のため、残業代や休日手当などが発生します。そのため、あらかじめ決定していた予算を超えてしまったり、コントロールが難しかったりする問題も発生します。
しかし請負契約の場合、報酬は「成果物」に対してのみ発生するものです。そのため、残業代や福利厚生費などは発生せず、契約時に結んだ報酬以上の金額はあまり発生しません。
そのため、プロジェクトに対する予算管理がしやすいというメリットがあります。
コストを削減できる
業務委託契約では、働いている人に対して福利厚生の提供や保険料の支払いなどが発生しませんし、業務のために使用する機材やツールも会社側が用意する必要はありません。
専門的な業務に従事するためのスキルや技術を用意した人間を最初から雇えるため、教育にかかるコストも削減することができます。
また、プロジェクトの管理やマネジメントも請け負う側の仕事になるため、管理にかかるコストも削減することが可能です。
業務量によるコスト調整がしやすい
プロジェクトの進行やサービス開発において、常にエンジニアが必要とは限りません。エンジニアを労働契約で採用した場合に問題になるのは、プロジェクトやサービスの終了によって、該当エンジニアの仕事がなくなった場合の対応です。
日本の労働法では、解雇は簡単にはできないため、エンジニアのコストが赤字になってしまうこともよくあります。
しかし、請負契約の場合、業務がなくなればそのまま、エンジニアの仕事も終了します。そのため、業務量の増減の激しいIT企業などでは、コストが調整しやすいというメリットが生まれるのです。
社員が本来の業務に注力できる
請負契約でエンジニアを雇用するメリットとして、自社の社員が本来遂行すべき業務に注力できる点が挙げられるでしょう。
例えば、自社Webサイトの運用を例に見てみます。自社のWebサイトは、サーバーに問題が起こっていないか、不正なログインがないかといった監視や、定期的な改修が必要になります。
自社の社員にこの業務を行わせる場合、その社員が本来遂行すべき業務に支障が出るかもしれません。Webサイトのシステムについての技術がなければ、問題が起きたときにスムーズな解決法が見つからず、膨大な時間がかかってしまう可能性もあります。
このように、専門性が高く一定のリソースが必要な仕事を請負契約を結んだエンジニアに任せることで、自社の社員が本来の業務に注力し、パフォーマンスを上げることにつながります。
請負契約でエンジニアを雇用するデメリット
(出典)https://unsplash.com/
請負契約にはデメリットも存在します。エンジニアを請負契約で雇用する場合に、どのようなデメリットがあるのかも併せて見ていきましょう。
技術やノウハウが蓄積されない
請負契約で雇用したエンジニアは教育・育成をしなくてもよいというメリットはありますが、一方でエンジニアが持っている技術や知識が還元されることはありません。
その結果、企業内に技術やノウハウが全く蓄積されないということもあります。例えば、Webサイトの運営を請負契約のエンジニアに任せている場合、社内に業務遂行できる人間がいつまで経っても現れないため、ずっと該当エンジニアを雇用し続けなければなりません。
専門的なスキルや知識を持ったエンジニアは、一般の正社員よりも報酬が高い傾向にありますので、通年で考えるとかなりの出費になってしまう可能性もあります。
また、エンジニア側の都合で契約を終了する場合には、システムを管理・運用できる人間をすぐに見受けてこなければなりません。
業務工程の指示ができない
労働契約と請負契約との大きな違いです。
労働契約では、監督者の指揮の下に業務命令を行うことができますが、請負契約の場合はあくまで「成果物を完成させる」ことが業務になるため、業務命令を下すことができません。
そのため、時間外の対応や休日出勤対応、業務を進める上でのやり方を指示するといったことは不可能です。業務が滞ってしまったり、必要な情報が共有されなかったりというリスクもあります。
こうしたトラブルを防ぐためにも、レポートや進捗状況の提出も業務内容に含んだり、作業開始前にお互いの認識の擦り合わせを行ったりしておくことも重要です。
運用・仕様変更が難しい
契約時に要件定義や仕様まで決まっている場合、途中の変更は困難です。その場合は契約書のまき直しなどが必要になります。
請負契約は、あくまで契約時に依頼された成果物を完成させることが業務のため、仮に成果物について仕様上の欠陥や問題があったとしても、修正を無償で依頼することはできません。
システムやサービスの運用についても同様です。仕様変更を行う場合などは、契約の再締結や追加報酬が発生することもあります。
請負契約を結ぶ場合、成果物の仕様やルールがきちんと明確化されている場合が好ましく、修正や仕様変更が発生する可能性があるのであれば、その対応までも含んだ契約内容にしなければなりません。
請負契約で注意すべきこと
(出典)https://unsplash.com/
請負契約は、業務の遂行方法やコミュニケーションの取り方によってはトラブルになる可能性もあります。以下に紹介することには注意して、業務を依頼するようにしますよう。
偽装請負にならないように気を付ける
偽装請負とは、締結した契約の内容と実際の業務が異なる行為を指します。「請負契約」を結んでいるにもかかわらず、「労働者」として扱うのは、偽装請負と見なされ、法律で罰せられます。
例としては、業務の手順を指示したり、勤務時間を指定するといったことが挙げられます。本来契約した業務内容以外の仕事を手伝わせることも、偽装請負です。
労働者派遣法や職業安定法に違反することになるため、故意はもちろん、故意でない場合でもやらないように気を付け、現場への徹底指導を行いましょう。
業務範囲を決めておく
業務範囲が曖昧なまま契約を締結してしまい、トラブルになってしまうことも少なくありません。
例えば、プロジェクトの進行上でバグや修正事項が発生したときに誰が対応するのか、進行管理を誰が担うかなどです。成果物が完成した後も、修正回数や修正の期限についてもめることがよくあります。
スケジュール表や業務マップを作成し、担当者不在の業務がないようにしましょう。また、トラブルが起きた場合の対応や修正についても、契約前に取り決めておくことでトラブルを防止できます。
プロジェクトの目的や仕様を共有する
細部の仕様や、職務記述書に記されていない箇所については、担当者の判断に委ねることになります。その結果、本来求めていた成果物とは異なるものが納品されてしまうというトラブルも起こり得ます。
例えば、商品のデータをWeb上で管理するシステムがあったとします。発注側としては在庫がある商品のみで良かったのですが、すでに発注のない商品も含めた全データを管理してしまいシステムが重くなってしまう、といったケースです。
この場合、「ECショップで現在取り扱いのあるアイテムを管理するシステム」ということをエンジニア側に共有しておけば、完成形に関するギャップは防げるかもしれません。
企業としては、セキュリティ上の観点からエンジニアに対し情報の共有を制限してしまうことはよくありますが、共有すべき情報を共有しないでいると、情報不足から本来の目的や仕様と異なる成果物が納品されてしまうかもしれないので注意が必要です。
所有権・著作権の扱い
法律上では、所有権・著作権は創作した者に帰属します。それは納品物であっても同じことです。ポスターやパッケージでデザインを勝手に変更したり無断で別の商品に使用したりした場合に問題になります。
これは、システムでも同じことが起こり得ます。例えば、請負契約のエンジニアが作成したWebサイトのある機能を他のWebサイトで流用したときに、著作権侵害で訴えられる可能性があります。
実際に、ソフトウェアの中身を流用したとして裁判になった事例も世の中には存在します。
成果物の所有権や著作権が誰に帰属するのか、どのように扱うのかも厳密に決めておきましょう。
適切な契約方法で健全な企業運営を行うことが重要
(出典)https://unsplash.com/
請負契約は、コスト削減や予算管理のしやすさなどメリットのある一方で、自社にノウハウが蓄積されないといった課題もあります。
また、偽装契約や著作権の問題も懸念されます。経営者や人事部は、契約の種類による報酬形態の違いや、法律上で起こり得る問題についてはしっかりと把握し、適切な契約を結ぶことが重要です。
それぞれの契約の特性や法律上の扱いを把握した上で、雇用契約を締結しましょう。
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