派遣エンジニアは派遣会社に雇われ、自社の指示で働く人材
派遣エンジニアは、派遣会社と雇用契約を結んだエンジニアが、派遣先の企業の指揮命令を受けて働く形です。労働者派遣法は労働者派遣を「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」と定めています(労働者派遣法第2条第1号)。
雇用主は派遣会社で、派遣先の企業はエンジニアを雇いません。派遣先の企業は派遣会社と労働者派遣契約を結び、その契約の範囲で業務の指示を出します。
情報処理・通信技術者の派遣労働者は197,425人で、大半が無期雇用
情報処理・通信技術者として派遣されている人は、令和7年6月1日現在で197,425人です。このうち169,018人が派遣会社と期間の定めのない雇用契約を結ぶ無期雇用派遣労働者で、有期雇用は28,407人でした(厚生労働省「労働者派遣事業の令和7年6月1日現在の状況(速報)」)。
派遣労働者全体は約201万人です。エンジニアの派遣では、派遣会社に無期で雇われた人が中心になっています。無期雇用か有期雇用かは、後で触れる期間の上限にも関わります。
派遣エンジニアと契約するメリット
派遣エンジニアと契約するメリットは、自社の指示で既存の開発チームに入ってもらえること、採用の工程を自社で持たずに必要な期間だけ人員を確保できること、紹介予定派遣を使えば直接雇用を前提に一緒に働いてから決められることの3つです。
自社の開発責任者が直接指示を出し、既存のチームに組み込める
派遣では、派遣先の企業が派遣エンジニアに業務の進め方を直接指示できます。タスクの割り振り、優先順位の入れ替え、レビューの指摘を、社員と同じ流れで伝えられる点が、SES(準委任)や請負との大きな違いです。
準委任や請負で受け入れたエンジニアに発注者が直接指示を出すと、偽装請負と判断されるおそれがあります(後述)。社内の開発チームの一員として日々の指示を受けながら動いてもらいたいなら、派遣が契約形態として素直です。
採用の工程を自社で持たずに、必要な期間だけ人員を確保できる
派遣エンジニアは、派遣会社が雇用している人の中から派遣されるため、求人の掲載から面接、雇用契約までの工程を自社で持たずに済みます。開発の山場やリリース前の検証など、期間が決まった業務の人員を短期間でそろえたいときに向いています。
令和6年度の派遣契約の期間は、職種を問わない全体で「2月超3月以下」が28.4%で最も多く、「1月超2月以下」が20.9%、「3月超6月以下」が10.2%でした(厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」表10)。数か月単位で契約し、必要に応じて更新する使い方が中心です。
紹介予定派遣なら、直接雇用を前提に一緒に働いてから決められる
紹介予定派遣は、派遣会社が派遣労働者を派遣先へ職業紹介することを予定して行う派遣です(労働者派遣法第2条第4号)。派遣を受けたあと、その人を直接雇用するかを派遣先が決められます。通常の派遣と違い、契約前の面接や履歴書の確認も禁じられていません。
派遣先が同じ人を紹介予定派遣で受け入れられるのは6か月までです(厚生労働省「派遣先が講ずべき措置に関する指針」第2の18)。
同じ労働者派遣事業報告書の表9によると、令和6年度に紹介予定派遣で派遣された人は25,535人で、職業紹介を経て直接雇用に結びついた人は13,881人でした。
派遣エンジニアと契約するデメリット
派遣エンジニアと契約するデメリットは、契約前に面接して人を選べないこと、有期雇用の派遣では同じ部署で同じ人に頼める期間に上限があること、派遣料金が本人の賃金より高く知識が社内に残りにくいこと、成果物の完成までは約束されないことの4つです。
紹介予定派遣を除き、契約前に面接して人を選べない
派遣先の企業は、紹介予定派遣を除き、派遣される人を契約前に特定する行為をしないよう求められています。労働者派遣法第26条第6項は、派遣先になろうとする企業に「派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない」と定めています。
厚生労働省の派遣先指針は、具体例として、派遣に先立って面接すること、履歴書を送付させること、若年者に限ることを挙げ、「行わないこと」としています(同指針第2の3)。求めるスキルや経験は、業務の内容として派遣会社に伝え、誰を送るかは派遣会社が決めます。
自社で面接して選びたいなら、紹介予定派遣か、正社員としての中途採用を選ぶのが筋です。受け入れの手順と事前面接の扱いは、派遣社員の受け入れの流れと注意点で詳しく扱っています。
同じ部署で同じ人に頼めるのは、原則3年まで
有期雇用の派遣エンジニアには、2つの期間の上限があります。1つは事業所単位で、同じ事業所が派遣を受け入れられる期間は原則3年です(労働者派遣法第40条の2第2項)。過半数労働組合等の意見を聴く手続きを経れば、3年を限りに延長できます(同条第3項・第4項)。
もう1つは個人単位で、同じ組織単位(課やグループ)で同じ派遣労働者に3年を超えて来てもらうことはできません(同法第40条の3)。事業所単位の期間を延長した場合でも、同じ人に同じ課で3年を超えて続けてもらうことはできません。
ただし、無期雇用派遣労働者はどちらの期間の上限の対象からも外れます(同法第40条の2第1項第1号・第40条の3)。情報処理・通信技術者の派遣は無期雇用が中心なので、長く同じ人に来てもらいたいときは、派遣会社に無期雇用の人を派遣してもらえるかを最初に確かめておくと安心です。
派遣料金は本人の賃金より高く、知識が社内に残りにくい
派遣料金は、派遣先が派遣会社に払う対価で、派遣エンジニア本人が受け取る賃金とは別の額です。令和6年度の情報処理・通信技術者の派遣料金は8時間換算の平均で34,382円、同じ職種の派遣労働者の賃金は21,032円でした。
項目(8時間換算の平均) | 情報処理・通信技術者 | 全業務平均 |
|---|
派遣料金(令和6年度) | 34,382円 | 26,257円 |
派遣料金(令和5年度) | 33,387円 | 25,337円 |
派遣労働者の賃金(令和6年度) | 21,032円 | 16,735円 |
(厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」表6・表7・派遣料金は消費税を含む)
情報処理・通信技術者の派遣料金は全業務平均より高く、前年度からも上がっています。人月単価での見積もりの見方は、エンジニア派遣の料金の相場を参照してください。
費用とは別に、契約が終わると、その人が持っていた設計の経緯や運用の勘所が社外へ出ていきます。中核のシステムを派遣だけで回すと、設計の判断を担える人が社内に育たない点も、契約前に見ておくべきデメリットです。
成果物の完成までは約束されない
派遣契約で派遣会社が約束するのは、契約で決めた業務に人を就かせることで、システムの完成ではありません。仕事の完成に対して報酬を払う契約は請負で、民法は請負を「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する」ものと定めています(民法第632条)。
派遣エンジニアに開発を任せる場合、要件の決定、進み具合の管理、品質の確認は、指示を出す派遣先の側が持つことになります。レビューやテストの体制を自社で用意できるかが、契約前の確認点です。
派遣エンジニアと正社員の中途採用の使い分け
派遣エンジニアが向くのは、期間が決まった業務や、社内のチームに日々の指示で組み込みたい業務です。システムの中核を担い、設計の判断を社内に残したい役割は、正社員の中途採用で直接雇用するほうが向いています。
状況 | 向いている形 |
|---|
リリース前の検証や移行作業など、期間が決まった業務 | 派遣 |
開発チームに入って、自社の指示で動いてほしい | 派遣 |
一緒に働いてから直接雇用するか決めたい | 紹介予定派遣 |
進め方を受注者に任せ、成果物や作業の範囲で発注したい | 準委任・請負 |
中核のシステムを長く担い、設計の判断を社内に残したい | 正社員の中途採用 |
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派遣・SES(準委任)・請負の違いは、指示を出すのが誰か
派遣・SES(準委任)・請負の違いは、エンジニアに業務の指示を出すのが誰かにあります。派遣は派遣先の企業が直接指示し、準委任と請負で指示を出すのは、エンジニアを雇う受注者の側です。
観点 | 派遣 | SES(準委任契約で結ぶ場合) | 請負 |
|---|
エンジニアの雇用主 | 派遣会社 | 受注した会社 | 受注した会社 |
業務の指示を出す人 | 派遣先の企業 | 受注した会社 | 受注した会社 |
対価の対象 | 契約で決めた業務への就業 | 事務の処理 | 仕事の完成 |
主な根拠 | 労働者派遣法 | 民法第656条(準委任) | 民法第632条(請負) |
期間の上限 | 有期雇用の派遣は原則3年 | 労働者派遣法の期間の上限はかからない | 労働者派遣法の期間の上限はかからない |
SES の意味と派遣との違いは、SESの意味と派遣契約との違いでも整理しています。準委任契約の結び方と条項は、準委任契約の締結手順にまとめました。
準委任や請負で発注者が直接指示すると、偽装請負になる
準委任や請負の契約で受け入れたエンジニアに、発注した企業が直接、業務の進め方や労働時間を指示すると、偽装請負と判断されます。契約の名前ではなく、実態で判断されるためです。
派遣と請負を分ける基準(昭和61年労働省告示第37号)は、受注者が業務の遂行方法の指示、始業・終業の時刻や休日の管理、配置の決定などを自ら行わない限り、請負の形式の契約でも労働者派遣事業を行う事業主とする、と定めています(厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」第2条)。
厚生労働省の疑義応答集は、アジャイル型開発を準委任契約で行う場合でも、実態として発注者と受注者側の労働者との間に指揮命令関係があれば「その契約の形式を問わず、労働者派遣事業に該当し、労働者派遣法の適用を受けます」としています。アジャイル型開発以外のシステム開発にも同じ考え方が当てはまるとされています(厚生労働省「37号告示に関する疑義応答集(第3集)」A1・A8)。
同じ疑義応答集は、発注者側と受注者側が対等な関係で協働し、受注者側の開発担当者が自律的に判断して開発を進めている限りは、偽装請負と判断されるものではないとも書いています(A2)。日々の指示を自社から出したいなら派遣、受注者に進め方を任せるなら準委任や請負、と最初に決めておくのが安全です。
偽装請負は、労働契約の申込みとみなされることがある
労働者派遣法の適用を免れる目的で、請負その他の名目で契約を結び、派遣契約で決めるべき事項を定めずに派遣を受けると、発注した企業がそのエンジニアに労働契約を申し込んだものとみなされます(労働者派遣法第40条の6第1項第5号)。違反に該当すると知らず、知らなかったことに過失も無かったときは除かれます(同項ただし書)。
期間の上限を超えて派遣を受けた場合も、同じ条文の対象です(同項第3号・第4号)。契約形態の選び方を誤ると、思っていなかった雇用の申込みを抱えることになります。
派遣会社は、許可とマージン率などの公開情報で選ぶ
派遣エンジニアを頼む派遣会社を選ぶときは、労働者派遣事業の許可を受けているかと、マージン率などの公開情報を確かめます。労働者派遣事業を行うには厚生労働大臣の許可が要り(労働者派遣法第5条第1項)、派遣会社は契約を結ぶ前に、許可を受けている旨を派遣先に明示しなければなりません(同法第26条第3項)。
派遣会社は、派遣労働者の数、派遣先の数、料金と賃金の差の割合(いわゆるマージン率)、教育訓練に関する事項などの情報を提供する義務も負っています(同法第23条第5項)。この割合は、派遣料金の平均額から派遣労働者の賃金の平均額を引き、派遣料金の平均額で割って求めます。
令和6年の報告では、マージン率などの情報をインターネットで提供していた事業所は33,942所で、提出事業所の77.5%でした(厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」表12)。候補の派遣会社が公開しているマージン率と教育訓練の内容を見比べておけば、派遣料金の高い安いだけで決めずに済みます。
派遣エンジニアと契約するときに決める事項
派遣エンジニアと契約するときは、労働者派遣法第26条第1項が定める事項を労働者派遣契約で決めます。業務の内容、就業の場所と組織単位、指揮命令者、期間と就業日、始業・終業の時刻と休憩、安全衛生、苦情の処理、契約を解除するときの措置、紹介予定派遣ならその内容と、そのほか厚生労働省令で定める事項です(同項第10号)。
決める事項 | エンジニアの派遣で書く内容の例 |
|---|
業務の内容 | 担当するシステム・工程・使う技術 |
就業の場所と組織単位 | 勤務する事業所・配属する課やグループ(リモート勤務の扱いも含める) |
指揮命令者 | 日々の指示を出す開発責任者 |
期間と就業日 | 派遣の開始日・終了日と就業する曜日 |
始業・終業の時刻と休憩 | 就業時間と休憩時間 |
苦情の処理 | 苦情を受け付ける派遣先・派遣会社の担当者 |
契約を解除するときの措置 | 派遣労働者の雇用の安定を図る措置(新たな就業の機会の確保・休業手当等の費用負担など) |
契約の前には、派遣先から派遣会社へ、同じ業務をする自社の社員の賃金などの待遇に関する情報を渡します(同条第7項)。この情報が無いと、派遣会社はその契約を結べません(同条第9項)。
期間の上限に抵触する最初の日(抵触日)の通知も、契約の前に派遣先から派遣会社へ渡します(同条第4項)。通知の対象からは、無期雇用派遣労働者に係る派遣など、第40条の2第1項各号に該当する派遣が外れます。対象となる派遣で通知が無いと、派遣会社はその契約を結べません(同条第5項)。
第26条第1項の各号に、派遣される人の氏名や成果物の完成・納期は挙がっていません。派遣される人の氏名は、契約とは別に、派遣するときに派遣会社から派遣先へ通知されます(同法第35条第1号)。成果物の完成を約束してほしいなら、派遣ではなく請負で契約することになります。