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組織

情シスの研修|担当業務別の中身と助成金の使い方

情シスの研修|担当業務別の中身と助成金の使い方
鈴木 裕斗監修者

株式会社overflow / 代表取締役 CEO

鈴木 裕斗

株式会社サイバーエージェントに新卒入社。広告営業を経て、Amebaプラットフォームの管轄責任者に就任。その後、スタートアップ企業に入社、代表取締役就任を経て2ヶ月後に株式会社ディー・エヌ・エーにM&A、子会社化。子会社代表取締役とDeNA広告部長を兼任。2017年6月、株式会社overflowを創業。2018年から2020年9月末までエキサイト株式会社の社外取締役を兼任。

情シスの研修を考え始めると、最初に「何を教えればよいのか」で手が止まりがちです。情シスの仕事はインフラの運用からセキュリティ、システム導入のプロジェクト管理、社内のヘルプデスクまで幅が広く、一つの講座で全部をまかなうのは難しいからです。

研修の中身は、担当業務ごとに分けて決めると組み立てやすくなります。育成が課題になりやすい業務と、企業が実際に行っている育成の方法については、IT部門長を対象にした調査の結果があります。

研修費には国の助成金を使える場合があり、研修だけで埋まらない役割は中途採用で補うのが現実的な選択です。

情シスの研修は、担当業務の知識と技能を身につける取組み

情シス(情報システム部門)の研修は、社内のIT基盤・業務システム・情報セキュリティ・IT企画を担う社員に、担当業務に必要な知識と技能を身につけさせる取組みです。教える中身は担当業務によって大きく違うため、全員に同じ講座を受けさせるより、業務ごとに到達目標と形式を決めるほうが無駄が出ません。

情シスが従業員に向けて行うセキュリティ研修や生成AIの研修も、「情シスの研修」と呼ばれることがあります。情シスの社員を育てる研修とは、教える相手も目的も別物です。社内向けの研修は後半の節で扱います。

情シスの担当業務は4つの系統に分けると研修の中身を決めやすい

情シスの担当業務を基盤・運用、情報セキュリティ、企画・プロジェクト、社内サポートの4系統に分けて考えると、系統ごとに研修で教える中身を決められます。到達目標の物差しになるのは、IPA(情報処理推進機構)が実施する情報処理技術者試験と情報処理安全確保支援士試験の区分です。

下の表の試験区分は、担当業務との対応を編集部が目安として整理したものです。試験の合格そのものを目的にせず、任せたい業務に必要な知識の範囲を確かめる材料として使います。

系統

主な担当業務

研修で教える中身の例

目安になる試験区分

基盤・運用

ネットワーク・サーバー・クラウドの構築と運用、障害対応

ネットワーク設計、クラウドの権限設計、監視と障害対応の手順

ネットワークスペシャリスト試験(NW)、ITサービスマネージャ試験(SM)

情報セキュリティ

セキュリティ対策の設計と運用、インシデント対応、社内規程の整備

脆弱性への対応、ログの見方、インシデント対応の手順、規程の作り方

情報セキュリティマネジメント試験(SG)、情報処理安全確保支援士試験(SC)

企画・プロジェクト

IT戦略の立案、システム導入のプロジェクト管理、要件定義

プロジェクト管理の体系、業務分析と要件定義、ベンダーとの契約と管理

プロジェクトマネージャ試験(PM)、システムアーキテクト試験(SA)、ITストラテジスト試験(ST)

社内サポート

ヘルプデスク、端末とアカウントの管理

ITの基礎知識、端末とアカウントの管理手順、問い合わせ対応

ITパスポート試験(IP)、基本情報技術者試験(FE)

出所:IPA「試験区分一覧」をもとに編集部作成(2026年10月確認)。

育成の課題が大きいのはプロジェクト管理と上流工程

JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)の「企業IT動向調査報告書2026」で、人材の育成面に課題感があると答えた割合が最も高い担当業務は、プロジェクトマネジメント担当の49.9%でした。次いで上流工程担当(業務分析・システム要件定義等)が46.6%です。

調査は、IT部門長が担当業務ごとに採用面・育成面・流出面から主要な課題を一つ選ぶ形式でした。

担当業務

育成面に課題感

採用面に課題感

プロジェクトマネジメント担当

49.9%

14.2%

上流工程担当(業務分析・システム要件定義等)

46.6%

15.0%

新技術調査・検証担当

45.4%

20.3%

生成AI担当

45.3%

20.0%

IT/DX戦略・企画担当

44.8%

20.2%

データ分析担当(生成AI除くデータサイエンティスト等)

42.5%

21.3%

情報セキュリティ担当

41.0%

23.9%

アプリケーション設計・開発担当(アジャイル型)

37.0%

13.8%

インフラ・ネットワーク担当

36.7%

19.2%

運用管理・運用担当

35.2%

15.8%

出所:JUAS「企業IT動向調査報告書2026」(2025年度調査)図表6-4-4から抜粋・n=954。

報告書は、プロジェクトマネジメント担当と上流工程担当が育成で課題になる理由を、自社員が主体となる業務だからと説明しています。自社の業務と社内の関係者を知らなければ進められない仕事は、経験者を外から迎えてもすぐには任せにくいものです。

情報セキュリティ担当は、育成面の課題感が41.0%ある一方で、採用面の課題感が23.9%と12の担当業務で最も高くなっています。研修で育てるか経験者を採用するかは、担当業務ごとに判断が分かれるところです。担当業務ごとの採用と育成の分け方は、情シスのDXと足りない役割の埋め方で詳しく扱っています。

情シスの育成は、実務での指導と研修を組み合わせる企業が多い

JUASの同じ調査では、育成の課題が大きいプロジェクトマネジメント担当と上流工程担当について、育成の取組みを自由回答で尋ねています。どちらの担当業務でも、OJT(職場で実務を通じて行う育成)の回答件数が最も多く、研修が続きました。

報告書は、OJTと研修は両方の人材に共通する取組みで、組み合わせている企業が多いとまとめています。

取組みの分類

プロジェクトマネジメント担当

上流工程担当

OJT

131件

121件

研修・資格(上流工程担当は研修)

120件

70件

外部人材・外部の活用

25件

20件

人材交流

分類なし

31件

知識・スキルの整理

14件

11件

採用

12件

9件

その他

14件

3件

出所:JUAS「企業IT動向調査報告書2026」図表6-4-6・6-4-7(自由回答の分類別の回答件数)。

OJTの中身として挙がったのは、小さなプロジェクトから順に経験を積ませる、経験者がレクチャーする、アウトプットへのフィードバックを高頻度で行うといった方法です。社内で指導できる人材を確保しにくい企業では、外部の人材と仕事を並走させる工夫も見られたと報告書は書いています。

プロジェクトマネジメント担当は、研修と資格で知識を体系立てる

プロジェクトマネジメント担当の育成で挙がったのは、社員のレベルに応じたプロジェクトマネジメント研修、資格やベストプラクティスの学習、研修と同期したOJTでした。報告書によると、PMBOK(プロジェクトマネジメントの知識体系ガイド)のような標準があることから、体系的な知識・スキルの整理を行っている企業も多いとのことです。

研修で体系を学ばせ、直後に小さなプロジェクトで使わせる順番にすると、研修とOJTがつながります。到達目標の目安は、IPAのプロジェクトマネージャ試験(PM)の範囲です。

上流工程担当は、業務部門との人材交流を組み合わせる

上流工程担当(業務分析・システム要件定義等)の育成で挙がったのは、OJTと社内外の研修に加えて、グループ内や業務部門との人材交流、ローテーション制度を使ったアサイン、業務部門経験者の配置です。

要件定義は現場の業務を知らなければ進められません。講座だけでは身につきにくい業務の理解を、異動や人材交流で補う組み立て方です。

情報セキュリティ担当は、育成と外部サービスを並べて補う

JUASの同じ調査で、情報セキュリティ人材が不足していると答えた企業(n=891)の対策で最も多いのは要員の育成の51.5%で、セキュリティにおける外部サービスの利用が51.0%で続きます。

不足している人材を職種別に見ると、セキュリティ担当者(CSIRT=インシデント対応チームの担当者を含む)の人材が不足していると答えた企業は67.3%でした(n=954)。

情報セキュリティ人材不足への対策

割合

要員の育成

51.5%

セキュリティにおける外部サービスの利用

51.0%

経験者採用

44.4%

全社教育の拡充

32.9%

外部委託の増員・強化

29.6%

運用の自動化・効率化(省力化)

23.9%

他部門からの異動

14.5%

出所:JUAS「企業IT動向調査報告書2026」図表5-4-4から抜粋・情報セキュリティ人材が不足していると回答した企業n=891。

報告書は、セキュリティ担当者にはITの基本的な知識とセキュリティへの理解に加え、全社に影響する施策を進めるために関係部門と円滑にやり取りする力も求められ、必要なスキルの多さが確保を難しくしているという声を紹介しています。

研修の中身も、技術の講座に加えて、社内規程の作り方や関係部門への説明の仕方まで含めるのが、実務に近い組み方です。

研修で埋まらない役割は、中途採用と組み合わせる

研修とOJTで育てるには、指導できる人と経験を積める案件が社内に必要で、どちらも用意できない担当業務は中途採用で経験者を迎えるのが近道です。迎えた経験者を社内の指導役にすると、次の世代の育成にもつなげられます。

JUASの育成の取組みの調査でも、プロジェクトマネジメント担当で12件、上流工程担当で9件が、即戦力となるキャリア採用を挙げていました。採用面の課題感が最も高い情報セキュリティ担当は、採用と育成を並べて計画しておく必要があります。

情シスの採用の進め方と年収相場をまとめた記事が、情シス採用の進め方です。

中途採用の募集を始める前に、エンジニアなどIT人材の候補者から見た自社の採用情報の状態を確かめておく方法もあります。エンジニア採用力チェックは、企業URLから公開情報を5指標24項目で採点し、原則1営業日以内にレポートが届く無料の診断です。

情シスは社内向けの研修を企画する側にも立つ

情シスは研修を受ける側だけでなく、従業員に向けたセキュリティ研修や生成AIの研修を企画して展開する側にも立ちます。JUASの調査(n=954)で、「生成AI活用の研修を準備し、社内で展開」にIT部門が主体的に取り組んでいる企業は、成果が出ている11.7%と成果を検証中の20.0%を合わせて31.7%でした。

同じ項目で、取り組んでいない、または個人に任されている企業は33.0%、IT部門以外が対応している企業は12.4%です。社内向けの研修を情シスに任せるなら、講師役を務める時間を業務の計画に入れておく必要があります。生成AIでIT部門が担う研修以外の役割を同じ調査の図表から整理した記事が、情シスのDXと足りない役割の埋め方です。

全社員向けにデジタルの基礎を教える研修の中身は、DX研修とはで国の標準に沿って整理しています。

研修の形式は、社内・外部講座・OJT・社外の勉強会から選ぶ

情シスの研修の形式は、社内講師による研修、外部の講座、OJT、社外の勉強会やコミュニティの4つです。どれを選ぶかは、担当業務の性質と、社内に教えられる人がいるかで決まります。

形式

向く場面

気をつける点

社内研修(社内講師)

自社のシステム構成や運用手順、社内規程を教えるとき

講師役の業務時間を確保する

外部の講座

ネットワーク・クラウド・セキュリティ・プロジェクト管理などの体系を学ぶとき

自社の環境に当てはめる練習は別に用意する

OJT

要件定義やプロジェクト管理など、経験を積まないと身につかない業務

指導できる人がいないと成り立たない

社外の勉強会・コミュニティ

情シスが少人数で、社内に相談相手がいないとき

学んだ内容を業務に戻す場を社内に用意する

社内に教えられる人がいない担当業務は、外部の講座で体系を学ばせ、ベンダーやコンサルタントとの仕事に同席させてOJTの代わりにする方法があります。JUASの調査でも、プロジェクトマネジメント担当の育成で、ベンダーとの連携やPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)としてのコンサルタントの支援が挙がっていました。

社内講師を立てて研修を内製するときの講師の要件は、研修の内製化とはで整理しています。

情シスの研修費は、人材開発支援助成金の対象になることがある

情シスの社員に受けさせる研修は、職務に直接関連する10時間以上の訓練であれば、厚生労働省の人材開発支援助成金の対象になることがあります。令和8年度の助成には、訓練中の賃金の一部(1人1時間当たり)や訓練経費の一部があり、額と率はコースごとに違う設計です。

下の表の()内は中小企業以外の額です。人材育成支援コースの経費助成率は正規雇用労働者等の場合で、賃金要件等を満たすと賃金助成は1,000円(500円)、経費助成率は60%(45%)に上がります。

コース(メニュー)

賃金助成(1人1時間当たり)

経費助成率

対象になる訓練

人材育成支援コース(人材育成訓練)

800円(400円)

45%(30%)

職務に関連する10時間以上のOFF-JT

人への投資促進コース(高度デジタル人材訓練)

1,000円(500円)

75%(60%)

高度なデジタル人材を育成するための訓練(令和8年度末までの時限措置)

事業展開等リスキリング支援コース

1,000円(500円)

75%(60%)

事業展開やDX等に伴う訓練(令和8年度末までの時限措置)

出所:厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」令和8年8月3日版。

申請には、訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に、計画届を労働局へ出す必要があります。訓練期間中も賃金を払い、支給申請日までに訓練経費を事業主が全額負担することも条件です。

対象外になる訓練もあります。同じご案内は、既存のアプリやシステムを購入してその操作方法を習得するだけの訓練や、コンサルタントによる指導を対象外としています。

厚生労働省の「令和8年8月3日からの変更点について」によると、同コースのDX化・GX(グリーントランスフォーメーション)化に関する訓練では、令和8年8月3日から、職務に間接的に必要となる内容や職業人として共通に必要な内容も対象外になりました。例として挙がっているのは、生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練です。

導入したツールの操作説明だけの研修は対象から外れやすいため、助成金を使うなら、担当業務の専門的な知識と技能を学ぶ中身で計画を立てます。

情シスの研修を始める前に決める3点

情シスの研修は、担当業務ごとの分担、到達目標、助成金の申請時期の3点を先に決めておくと、講座選びで迷いにくくなります。

  1. 担当業務ごとの分担:研修で育てるか、経験者を採用するか、外部に任せるかを担当業務ごとに決めておくのが出発点です。JUASの調査では、育成面の課題感はプロジェクトマネジメント担当と上流工程担当で高く、採用面の課題感は情報セキュリティ担当で最も高い結果でした。
  2. 到達目標:研修のあとに任せる業務と、目安になる試験区分で書きます。講座の受講そのものを目標にしないためです。
  3. 助成金の申請時期:訓練開始日の6か月前から1か月前までに計画届を出せるよう、研修の日程から逆算します。

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