情シス(情報システム部門)の人材を募集しても応募が集まらない、採用できても任せたい仕事と経験が合わない。こうした行き違いの多くは、「情シス」という部門名のまま募集を始めるところから生まれます。
情シスの仕事には、社員からの問い合わせ対応、PC(パソコン)やアカウントの管理、ネットワークやクラウドの運用、情報セキュリティ、IT投資の企画までが含まれ、担当業務ごとに人材の集まり方も年収の水準も異なります。
担当業務ごとに、採用で埋めるのか、育成や外部委託で補うのかを分け、年収と求人票をその担当業務に合わせる。これが情シス採用の出発点です。IT部門長が答えた業界団体の調査と公的統計、Offersの求人データをもとに、その分け方を整理しました。
情シスの採用は担当業務の範囲を決めるところから始まる
情シスの採用で最初に決めるのは、新しく入る人に任せる担当業務の範囲です。情シスは部門の呼び名で、その中にはヘルプデスク、端末とアカウントの管理、インフラ・ネットワーク、情報セキュリティ、IT企画といった性質の違う仕事が含まれます。「情シス募集」とだけ書いた求人では、応募者は自分の経験が合うかを判断できません。
情シスの採用でよく募集される担当業務は、次のように分けられます。
担当業務 | 主な仕事 | 求人票に書く具体名の例 |
|---|---|---|
ヘルプデスク・端末とアカウントの管理 | 社員からの問い合わせ対応、PCの選定とセットアップ、入退社に伴うアカウントの発行と削除 | Google Workspace・Microsoft 365、端末管理(MDM)やID管理の製品名 |
運用管理 | 社内システムの日々の運用、障害対応、IT資産の管理 | 運用している社内システムの種類、運用の体制 |
インフラ・ネットワーク | オフィスネットワーク、サーバー、クラウド基盤の設計・構築・運用 | 利用しているクラウド、ネットワーク機器、拠点の数 |
情報セキュリティ | セキュリティ規程の策定、脆弱性対策、ログの監視、認証の取得と運用 | ISMS(ISO27001)やPマークの有無、ゼロトラストの取り組み |
IT企画・プロジェクト管理 | IT投資の計画、システム導入の企画、ベンダーとの折衝、プロジェクトの管理 | 予算の権限、進行中のプロジェクト |
表は編集部の整理です。
部門名の「情シス」と職種名の「社内SE」を分けて書く
求人票では、部門名の「情シス」と、そこで働く人の職種名を分けて書くと、応募者が担当業務を読み違えにくくなります。職種名には「社内SE(システムエンジニア)」「コーポレートエンジニア」「コーポレートIT」などが使われ、どれを選ぶかは会社ごとに違うのが実情です。
職種名を決めたら、その職種が上の表のどの担当業務を受け持つかを求人票の冒頭に書きましょう。IT系の職種全体の中での位置づけは、エンジニアの種類と採用設計の地図で確かめられます。
一人で全範囲を担う募集は比重を決めておく
従業員の少ない会社では、表の担当業務を1人か少人数で兼ねる募集になりやすく、範囲を絞り込めません。この場合に決めておくのは、担当業務ごとの比重です。
たとえば「入社後1年はヘルプデスクとアカウント管理が中心で、2年目からセキュリティ規程の整備を任せる」のように、時期と比重を言葉にしておく。そうすれば、応募者は自分の経験との重なりを判断できます。
担当業務によって採用の難しさの理由が違う
情シスの人材不足は一律ではなく、担当業務ごとに「採用で埋まらない」「社内で育たない」「辞めていく」の比重が違います。一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査報告書2026」は、IT部門長に担当業務ごとの主な課題を1つずつ選んでもらっており、採用面の課題が最も多かったのは情報セキュリティ担当の23.9%でした。
調査は東証上場企業とそれに準じる企業を対象に2025年9〜10月に行われ、957社が回答しています。情シスの採用に関わる担当業務を抜き出すと次のとおりです。
担当業務 | 概ね充足 | 主に採用面 | 主に育成面 | 主に流出面 | 担当外・アウトソース |
|---|---|---|---|---|---|
情報セキュリティ担当 | 18.1% | 23.9% | 41.0% | 11.4% | 5.6% |
インフラ・ネットワーク担当 | 23.5% | 19.2% | 36.7% | 12.5% | 8.2% |
運用管理・運用担当 | 25.9% | 15.8% | 35.2% | 13.5% | 9.5% |
IT/DX戦略・企画担当 | 9.0% | 20.2% | 44.8% | 11.3% | 14.7% |
プロジェクトマネジメント担当 | 11.7% | 14.2% | 49.9% | 10.6% | 13.6% |
上流工程担当(業務分析・システム要件定義等) | 11.5% | 15.0% | 46.6% | 11.6% | 15.2% |
出所:JUAS「企業IT動向調査報告書2026」図表6-4-4の抜粋(2026年4月公開・n=954)。
表のどの担当業務でも、最も多い回答は育成面の課題でした。採用で人を増やすだけでは、情シスの人材の課題は片づかないということです。
IT部門の人員は増やす方向にある
JUAS の同じ調査では、今後1〜2年でIT部門の人員数が「増加」すると答えた企業が43.5%、「減少」は7.7%でした(n=927)。3〜5年の中長期では「増加」が56.6%に上がります(n=926)。
「IT人材の採用・育成」の機能・能力が不足していると答えた企業は、売上高100億円未満で71.3%、1兆円以上でも55.3%と、売上規模を問わず半数を超えました。人員を増やしたい企業が多いなかで、採用と育成の仕組みが追いついていない状態です。
情報セキュリティとインフラは経験者の採用で競り合う
情報セキュリティ担当は、充足していると答えた企業が比較的多い一方で、採用面の課題を挙げた企業が担当業務の中で最も多い仕事です。JUAS は情報セキュリティ担当を、技術が高度化して採用が難しい人材と位置づけ、インフラ・ネットワーク担当にも、採用面の順位はやや低いものの同じ傾向を見ています。どちらも業種を問わず必要とされる仕事なので、人材が流出しやすいという指摘もあります。
同じ調査で、セキュリティ担当者(CSIRT担当者を含む)が不足していると答えた企業は67.3%でした(n=954)。不足していると答えた企業の対策は、要員の育成が51.5%、外部サービスの利用が51.0%、経験者採用が44.4%です(n=891)。経験者の採用だけに頼らず、育成と外部サービスを並べて使う企業が多いと読めます。
IT企画とプロジェクト管理は育成の比重が大きい
プロジェクトマネジメント担当の49.9%、上流工程担当の46.6%が、主な課題に育成面を挙げました。JUAS は、どちらも自社の社員が主体となる業務であることを理由に挙げています。
社内の業務や意思決定の流れを知っていることが前提の仕事なので、経験者を採用しても、入社後に社内を知る期間が要ります。採用の段階では、システム導入を企画から運用まで通して経験したかを確かめ、社内の業務を覚えるまでの期間を計画に入れておくのが現実的です。
運用管理は流出への備えが要る
運用管理・運用担当は、流出面の課題が13.5%で、表の担当業務の中で最も高い値でした。JUAS は高齢化などの問題も理由に挙げています。
運用の担当者が抜けると、手順書に書かれていない対応のやり方が一緒に失われます。欠員が出てから募集するのではなく、引き継ぎの期間が取れる時期に採用を始めておけば、仕事の受け渡しを計画どおりに進められるはずです。






