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組織内のメンバーの関係性を高め、全体のパフォーマンスを向上させる組織開発の考え方は、エンジニアの関わる組織にも必要です。エンジニアの組織開発の現状や課題、基本的な開発プロセスなどを解説するので、エンジニアの採用企業は参考にしてみましょう。
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エンジニアの組織開発の重要性
(出典)https://www.pexels.com/
近年、エンジニアに限らず人材開発に注力する企業は多くありますが、組織開発の重要性の認識も広がっています。人材開発の概念は理解していても、組織開発とは何か、よく分からない人も多いのではないでしょうか?まずは、組織開発の概要から解説していきます。
そもそも組織開発とは?
「組織開発(OD:Organization Development)」とは、さまざまな文脈で用いられる言葉なので、人によって定義が異なる場合が少なくありません。しかし一般的には、組織内の人々の関係性を良好にし、生産性を向上させる取り組みや、支援策などを指します。
コロナ禍を経て、社員の働き方に柔軟性が求められ始め、さらにビジネス環境の急激な変化もあって、より機動性のある組織運営も必要とされるようになりました。変化に迅速かつ柔軟に対応できる組織を構築するために、組織開発の概念が注目を浴び始めたわけです。
特に最近では、多くの企業がDXへの取り組みを強化しており、それに伴って技術的な受け皿となる、エンジニアの組織開発に力を入れる企業が増えています。
人材開発とは何が違う?
人材開発とは一般的に、組織で活動する人材のパフォーマンスを向上させる取り組みを指します。組織を構成する一人一人の社員に注目し、個人的な成長を促す施策を実行することで、結果的に組織の生産性を上げる取り組みです。
一方、組織開発は組織全体を対象として、そこで活動する人々の関係性に注目するのが特徴です。組織としての課題を人間関係にあると捉え、それぞれのメンバーがいかに協力関係を築き、強みや能力を発揮できる環境を構築するかを考えます。
つまり、個人を対象とする人材開発に対し、組織開発は働く者の相互作用を考えることで、組織として成長を促すわけです。両者のすみ分けは必ずしも明確ではありませんが、注目する対象とアプローチが異なります。
エンジニアの組織開発の現状と傾向
(出典)https://www.pexels.com/
組織開発とは何か、基本的なところを理解したところで、エンジニアの関わる組織開発の現状も押さえておきましょう。これまでは開発案件を外注することで、外部のエンジニアの技術を活用する企業が主流でしたが、エンジニア組織の内製化を図る企業が増えています。
エンジニア組織の内製化を図る企業が増加
近年、グロービスや良品計画、エディオンなどの有名企業を中心に、エンジニア組織の内製化に取り組む企業が増加傾向です。従来、大半の日本企業がシステム開発を外注していましたが、DXの推進やビジネス環境の急激な変化などを背景として、迅速な開発を求めて内製化を進める企業が目立ちます。
自社がハンドリングできる範囲で開発を進めることで、環境の変化に素早く対応しつつ、自社の状況に合ったシステムを導入すべきと考える経営者も増えています。今後さらにシステム開発の内製化の流れは、加速していくでしょう。
アジャイル開発を前提とした組織づくりも主流に
エンジニア組織の内製化の動きは、具体的な開発手法の変化も呼び起こしています。従来のウォーターフォール型の開発では時間が足りないため、UXを重視したアジャイル開発が必要になってきており、それに応じた組織開発に注力する企業が増えてきました。
アジャイル開発はシステムの設計からテスト運用まで、細かいサイクルで実行することで、クライアントのニーズに柔軟に対応できます。しかし、小回りが利く組織でなければ難しい面があるため、上記のように社内にエンジニア組織を抱える内製化を進めることで、うまく実現しようとする企業が増えている状況です。
エンジニアの組織開発で企業が抱える課題
(出典)https://www.pexels.com/
クライアントのニーズや環境の変化に柔軟に対応するため、社内にエンジニア組織を抱える企業が増えていますが、以下のような課題に直面しているケースも目立ちます。エンジニアの組織開発において、企業が抱えがちな問題・課題を押さえておきましょう。
エンジニア数の不足と採用難
自社の開発環境に適した組織づくりが必要でも、エンジニアの絶対数が不足しており、慢性的な人手不足に陥っている企業は珍しくありません。優秀な人材は特に採用が難しい状況にあり、売り手市場の中で、いかに経験のあるエンジニアを確保するかが、多くの企業の人材採用における課題になっています。
そこで近年は、正社員としての雇用のみならず、副業人材やフリーランスとの業務委託契約を検討する企業も出てきています。転職潜在層や転職を全く考えていない人材に対しても、業務委託という形であれば、自社に協力してもらえる可能性があるため、より広い視点でエンジニアの活用を考える企業が増えているわけです。
部門間やクライアントとの認識の食い違い
エンジニアを擁する技術部門と、営業・マーケティング部門などとの認識の食い違いや、価値観の違いによる対立が発生している企業もあります。また、クライアントのITリテラシーの不足やコミュニケーション不足などから、さまざまな問題を抱える開発チームも少なくありません。
もともとシステム開発の内製化が進んでいる背景には、外注でのシステム開発の成功率の低さや効率性の悪さがあります。外注でのシステム開発のおよそ半分が失敗してしまうというデータもあり、発注側のITリテラシーの低さやコミュニケーション不足などが原因とされています。
そういった背景から、社内にエンジニア組織を抱える企業が増えているわけですが、それでも部門間の意識の違いや非エンジニア部門のITリテラシーの問題などが、開発の支障になるケースは珍しくないのが実態です。
組織開発の基本プロセス
(出典)https://www.pexels.com/
それでは、組織開発の基本的なプロセスを解説していきます。上記のように他部門との認識の違いなどから、開発に支障が出る場合も多いので、まずは自社の現状における問題・課題を正確に把握し、エンジニアが働きやすい組織を目指していきましょう。
1.現状の確認と問題・課題の把握
まずは開発を進める組織を取り巻く状況を把握し、どういった問題・課題があるかを把握する必要があります。組織として何を目指すのか、具体的にどういった目標を達成するのかを明確にして、現状における課題の認識に努めましょう。
組織を巡る現状を把握する方法としては、社員に対する満足度調査やストレスチェックなどのアセスメントをはじめ、1on1を通じたヒアリングなどが挙げられます。定量調査と定性調査をうまく使い分け、できる限り正確な情報を収集しましょう。
2.組織の骨組みの決定
調査により把握・整理した問題・課題の解決や解消のため、どういった組織が必要か検討します。その上で、組織づくりに必要な理念やビジョン、ビジネス上の目標などを改めて定義し、必要な人員の数やスキルセットなどを明らかにしましょう。
エンジニアの組織の場合は、組織に必要な開発チームの数や構成について、具体的に決める必要があります。開発案件や事業によって小規模なチームを構成し、メンバーを柔軟に変えられるマトリクス型の組織にするのが一般的です。既存の組織を再開発する場合も、根本的な見直しが求められます。
3.アクションプランの設定と実行
組織の骨組みを決定したら、組織づくりのためのアクションプランを設定します。必要な作業を洗い出し、どういった順番で組織をつくり上げていくか考える必要があります。メンバーの行動指針や採用方針の決定、コミュニケーションの設計なども、具体的に進めていきましょう。
アクションプランの設定では、タスクの達成期限や優先順位を決定し、計画表に落とし込むと分かりやすくなります。それぞれのタスクで数値目標を設定しておくと、進捗(しんちょく)状況が把握しやすくなります。実行すべきタスクと順番を決めたら、担当者を選んで実行のスケジュールを立てましょう。
4.施策の評価とフィードバック
設定したアクションプランを実行に移し、達成度合いと成果を検証します。施策を実行した結果、どういった成果を上げられたのか、組織開発を通じて課題はどの程度解決できたのかなどを分析し、結果を組織内で共有しましょう。関係者へのフィードバックも必要です。
さらに評価を通じて改善すべき点を洗い出し、新たな施策の実行に生かすことも重要です。施策の実行と評価、改善のプロセスを繰り返すことで、徐々に組織が理想とする形に変わっていくでしょう。
エンジニアの組織開発のポイントは?
組織開発の流れを簡単に紹介しましたが、特にエンジニアの組織開発をする場合は、以下のポイントも意識することが大事です。導入規模とともに、組織内のコミュニケーションの活性化にも注力しましょう
規模を抑えてスモールスタートする
初めから組織全体を改善するのではなく、まずは特定のチームや部門に絞って施策を実行し、効果の検証と改善を繰り返すことが重要です。規模を抑えて導入すれば、短期間で成果が検証できるので、改善すべき点を把握しやすく、より適した施策の実行が可能になります。
組織の規模は当然、企業によって異なりますが、いきなり大規模な組織開発を進めるのはリスクが高いので、まずはスモールスタートで施策の改善を重ねていきましょう。
エンジニアに適したビジョンを打ち出す
エンジニアの組織開発をする場合、自社の社風や価値観をベースとしながらも、エンジニアに適した組織ビジョンを打ち出すことも大事です。エンジニアの退職理由の一つとして、仕事に対してやりがいを感じられない点が挙げられます。
エンジニアが日々の仕事にやりがいを感じながら仕事ができるように、組織として目指す方向性や価値観などを含めて、ビジョンの設定ではエンジニアの意見を積極的に取り入れるようにしましょう。
部門・チーム間のコミュニケーションを活性化する
上記のように、エンジニアの組織開発では他部門やクライアントとのコミュニケーションに問題が発生するケースも多いので、互いに理解し合える環境づくりにも注力する必要があります。
開発を進めるエンジニアと、クライアントとやり取りする営業との間に認識のずれが発生し、対立に発展するケースは珍しくありません。表立って対立していなくても、互いに不満を抱えている企業は多いのが実態です。
どちらも相手の仕事内容と抱えている問題・課題について理解し、解決に向けて協力し合える環境を構築しましょう。組織の設計段階で、他部門の担当者の意見を取り入れるなど、コミュニケーションが取りやすい組織づくりを心掛けることが大事です。
フレームワークをうまく活用する
組織開発に有効な手法やフレームワークも積極的に活用しましょう。エンジニアの組織に限らず、多くの組織開発で用いられている手法やフレームワークとして、次のものが挙げられます。
- コーチング:対話を通じて相手の目標の設定・達成をサポートするもので、組織を構成する人員が自らのポテンシャルを発揮できる状態に導く
- OKR:目標管理手法の一つで、組織の目標をチームに整合させ、さらに個人の目標に落とし込んでいく
- MVV:組織のミッション、ビジョン、バリューを定義して、どういった組織づくりをすべきか検討する
- フューチャーサーチ:メンバーで組織の過去・現在・未来について話し合い、ビジョンの達成に向けたプランを打ち出す
- ワールドカフェ:組織のメンバーを少人数のグループに分け、自由な対話を通じて、全員のアイデアや意見を集める方法
これらは組織のメンバーの考えや価値観などを引き出し、組織づくりに必要な団結力を養い、個人の目標と組織の目標を整合させるのに役立つものです。他にも多くの有名なフレームワークがあるので、自社の環境やニーズに合ったものを選択しましょう。
エンジニアの組織開発の好例
(出典)https://www.pexels.com/
最後に、エンジニアの組織開発の有名な事例を紹介します。自社の環境と照らし合わせながら、参考にできる点がないかチェックしてみましょう。
ヤフー株式会社
ヤフー株式会社はかつて、組織内のコミュニケーションに大きな課題を抱えており、業務効率や社員のモチベーションの低下などを招いていました。社内の風通しも悪く、社員間にも内向きの考え方が広まっている状況だったのです。
そこで本格的な組織開発に注力し、上司と部下との相互理解を促す『ななめ会議』や、いまや多くの企業で導入されている『1on1』など、社内コミュニケーションを円滑化する取り組みを始めました。
さらに、2018年にはDeveloper Relations組織を立ち上げ、社外の開発者とのつながりを強化する取り組みなども進めた結果、組織内のコミュニケーションの活性化と生産性の向上を実現しています。
株式会社グッドパッチ
株式会社グッドパッチでは、2016年あたりから急拡大した事業に伴い、社員数が急激に増えたことを受けて、積極的に組織開発に取り組んでいます。
それまでは既存の社員と新入社員との価値観の共有ができていない状態でした。さらに、人事評価の制度も機能しない事態に陥っており、管理職にあたる社員の退職も目立っていたのです。
そこで、業務に必要な知識・技術を全社的に共有するナレッジシェアリングを強化し、グループ単位でスムーズに働ける環境の整備や、OKRの導入などを進めました。その結果、社員の組織に対するエンゲージメントが高まり、企業戦略をスムーズに実行できる組織づくりに成功しています。
エンジニアの組織開発を始めよう
(出典)https://www.pexels.com/
エンジニアの組織開発の重要性や基本的な開発プロセス、組織開発において重視すべきポイントなどを解説しました。近年は人材開発とともに、エンジニアの組織開発の重要性が広く認識されており、開発チームを内製化する企業も増えています。
組織開発を進める上では、まずは現状を正しく認識し、問題・課題の解決のためにどういった組織が必要か検討する必要があります。しっかりと骨組みを考えた上で、どういった機能が必要か考えましょう。エンジニアの意見を取り入れながら、アクションプランを設定し、実行と改善を繰り返すことが重要です。組織開発に役立つフレームワークも、積極的に活用していきましょう。
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