中途採用の候補者は、面接官を通して入社後の上司や職場を思い描きます。面接官の態度や質問に引っかかりを覚えた候補者は、その場では何も言わず、選考の途中や内定の後に辞退を選ぶことがあります。辞退の連絡に「他社に決めた」とだけ書かれていれば、面接官が原因だったかどうかは表に出ません。
面接官の側で変えられるのは、辞退につながる言動の型を知って避けること、原因を選考の記録から見つけること、面接の前後の動き方を揃えることの3つです。辞退の連絡を受けた後の対応や、人材紹介会社との手数料の扱いは、この3つとは別の問題として切り分けています。
面接官の言動による内定辞退は、理由が企業に届かない
面接官の態度や質問は中途採用の候補者が志望度を下げる主な理由の一つで、しかも候補者は面接官への違和感をほとんど企業に伝えません。転職活動の経験者を対象にした2つの調査が、この両方を数字で示しています。
doda人事ジャーナルが2025年6月に20〜60代の転職経験者525名に行った調査では、面接を受けて志望度が下がった経験がある人は、メンバークラス(一般社員・係長)で49.6%、管理職クラス(課長・部長・経営者・役員)で58.2%でした。
志望度が下がった理由の最多は、メンバークラスでは「面接官の態度・印象が悪い」(50.4%)です。管理職クラスでは「社風が合わないと感じた」(46.1%)と「待遇や条件が希望と合わなかった」(45.4%)が上位でした(doda人事ジャーナル調査・転職経験者525名・2025年6月)。社風を確かめる手がかりの多くは面接官とのやり取りなので、管理職クラスでも面接官の振る舞いは判断材料に入ると考えられます。
面接官の発言に違和感を持っても、候補者はそれを企業に言いません。XTalent株式会社が2026年3〜4月に行った「転職活動におけるジェンダーバイアス実態調査」は有効回答136名と小規模ですが、面接で感じた違和感を企業に直接伝えた人は女性2.3%・男性9.1%にとどまりました。男女とも3割は、転職エージェントには伝えていました。
伝えなかった理由として、女性の41%・男性の29%が「選考への不利益を懸念」を挙げています(XTalent株式会社「転職活動におけるジェンダーバイアス実態調査」・有効回答136名)。辞退の連絡に面接官のことが書かれていないのは、面接に問題が無かったからとは限りません。
中途採用の内定辞退率は2025年実績で15.0%
マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」によると、企業1社あたりの内定者数と採用者数の平均から計算した中途採用の内定辞退率は、2025年が15.0%でした(調査時期2025年12月17〜22日・2025年全体n=1,327)。2024年の9.3%から5.7ポイント上がっています。
この内定辞退率は辞退の理由を区別せずに計算した値で、面接官が原因の辞退がどれだけ含まれるかは分かりません。面接官の影響を測る材料は、自社の選考記録の中にしかありません。
候補者が不信感や辞退を挙げる面接官の言動は4つの型に分かれる
doda人事ジャーナルの調査で候補者が不信感を持った点に挙げた面接官の言動と、XTalent株式会社の調査で辞退や志望度の低下につながった面接官の言動は、態度、準備と関心の不足、事前情報との食い違い、属性への決めつけの4つの型に分けられます。いずれも面接官に悪気が無くても起き、候補者の側では「入社後もこの人と働くのか」という判断に直結する言動です。
型 | 候補者が挙げた言動 | 調査での回答(doda は不信感を持った点の割合) |
|---|
態度 | 横柄・威圧的、態度が悪い | 不信感を持った点の最多(メンバークラス35.2%・管理職クラス29.9%) |
準備と関心の不足 | 興味がなさそう、質問の意図が分からない | 興味がなさそうな印象を受けた20.1%(メンバークラス)、質問の意図がわからない・回答が的を射ていない28.0%(管理職クラス) |
事前情報との食い違い | 求人票や事前の説明と、面接で聞いた内容が違う | 事前情報と面接の内容に乖離がある24.6%(メンバークラス) |
属性への決めつけ | 性別による役割の決めつけ、結婚・出産に関する質問 | 「結婚・出産に関する質問」などで女性の6割以上が辞退か志望度低下(XTalent調査) |
出所:doda人事ジャーナル調査(2025年6月・転職経験者525名)とXTalent株式会社「転職活動におけるジェンダーバイアス実態調査」(2026年3〜4月・有効回答136名)から編集部が型に分けて作成。
4つの型のうち、面接官が自分で気づきにくいのは準備と関心の不足です。面接官は質問しているつもりでも、候補者の側からは書類に書いたことを確かめられただけに見えることがあります。
威圧的な態度は、ストレス耐性を見るつもりでも避ける
威圧的な態度は、ストレス耐性を確かめる意図があっても避けるべき言動です。厚生労働省の「採用選考自主点検資料 令和7年度版」は、職務上必要なストレス耐性を評価する意図がある場合でも、面接担当者が過度に威圧的な態度をとり、応募者の人権や人格を損なわないよう求めています。
同資料は、威圧的な対応や感情的な批判、説教じみた発言がSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やインターネットの掲示板に書き込まれて拡散され、企業イメージの低下につながる場合があるとも注意しています(厚生労働省「採用選考自主点検資料 令和7年度版」)。候補者が困難な場面でどう動くかを知りたいなら、圧をかけるのではなく、前職で実際に起きた難しい場面と、そのとき取った行動を具体的に聞きます。
家族に関する質問は、場を和らげるつもりで聞いてしまいやすい
家族や家庭環境に関する質問は、面接官が雑談のつもりで聞いてしまいやすい言動です。厚生労働省の「採用選考時に配慮すべき事項」は、応募者から「本人の適性・能力以外の事項を把握された」と指摘があったもののうち、「家族に関すること」の質問が多くを占めると書いています。面接の空気を和らげるために聞いてしまうケースが多いという注意も添えられています。
本籍・出生地、家族、生活環境・家庭環境などは、同ページが就職差別につながるおそれがある14事項として挙げているものです(厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」)。法令で収集が禁じられる事項と、行政が配慮を求める事項の線引きは、面接官の役割と聞いてはいけない質問の線引きで扱っています。
中途の候補者は平均3回前後の面接で、面接官を比べている
中途採用の候補者は、1社の選考で平均3回前後の面接を受け、そのたびに面接官から会社の印象を受け取ります。マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」では、応募者1人あたりの平均面接回数はWEB面接で3.0回、対面面接で2.8回でした(1次面接をWEB/対面で実施したことがある人事担当者の回答)。
同じ調査で、応募から内定応諾までの合計日数はWEB面接で平均31.5日、対面面接で平均30.2日です。約1か月のあいだ、候補者は複数の会社の選考を並行して進めています。doda人事ジャーナルの調査でも、選考中に面接を辞退した理由の最多は、メンバークラスで「他社で選考合格になった」(60.1%)でした。
面接官の1人が印象を落とすと、他社と比べられている最中なので、残りの面接で取り戻せる余地は小さくなります。最終面接を担う役員や部門長は入社後の上司として見られるため、1回の言動の重みがとくに大きい立場です。
面接官が原因の辞退は、辞退理由ではなく選考の記録から見つける
面接官が原因の辞退を見つけるには、辞退連絡に書かれた理由を集計するのではなく、面接官ごと・選考段階ごとの記録を突き合わせます。候補者は面接官への違和感を企業にほとんど伝えません(XTalent調査で女性2.3%・男性9.1%)。辞退理由の欄だけを見ていると、原因は「他社決定」や「条件」に紛れて見えなくなります。
記録する項目 | 記録から分かること |
|---|
候補者ごとに、どの段階の面接を誰が担当したか | 辞退や志望度の低下が、特定の面接官の後に続いていないか |
各面接の後に候補者が次へ進む意思を示した日と、辞退の連絡が来た日 | 辞退がどの面接の直後に決まったか |
面接官ごとの、通過を出した候補者の人数と、そのうち次の段階や内定を辞退した人数 | 面接官による差(分母は通過を出した人数で揃える) |
紹介会社経由の候補者について、担当者から聞いた面接の感想 | 候補者が企業には言わない、面接官への受け止め |
面接官1人が担当する人数が少ないうちは、数件の辞退でも率は大きく動きます。率だけで面接官を評価するのではなく、同じ面接官の後に辞退が続いたときに、その面接の質問と進め方を見直すきっかけにするのが現実的な使い方です。辞退率や承諾率の分母の置き方は、承諾率の3つの指標を整理した記事で扱っています。
紹介会社の担当者と面接後のアンケートで、候補者の受け止めを拾う
候補者が企業には言わない面接官への受け止めを拾う経路は、紹介会社の担当者と、選考結果と切り離した面接後のアンケートの2つです。XTalent株式会社の調査では、面接で感じた違和感を転職エージェントには伝えた人が男女とも3割いました。紹介会社経由の候補者なら、面接のたびに担当者へ面接官の印象を聞いておくと、辞退の連絡が来る前に手を打てます。
アンケートを取るなら、回答が選考に影響しないことを明記し、人事が集計して、面接官には個人が分からない形で返すのが前提です。違和感を伝えなかった理由に「選考への不利益を懸念」を挙げた人が女性41%・男性29%いた(XTalent調査)ことを踏まえると、選考を担当する面接官本人が回収する形では、率直な回答は集まりにくいと考えられます。
面接官が辞退を防ぐために、面接の前・中・後でやること
面接官が辞退を防ぐためにやることは、面接の前に候補者の書類と事前に伝えた情報を読み込むこと、面接中に見極めと自社の説明の両方を行うこと、面接の後に評価と懸念を素早く次へ渡すことの3つです。どれも面接官1人の心がけに任せず、採用担当が手順として用意できます。
段階 | 面接官がやること | 防げる型 |
|---|
面接の前 | 職務経歴書を読み、確かめたい点を質問にしておく。求人票とスカウトの文面で候補者に伝えた内容を確認する | 準備と関心の不足、事前情報との食い違い |
面接中 | 自己紹介と面接の進め方の説明から入る。質問の意図を添える。仕事内容と配属先を具体的に話し、逆質問の時間を残す | 態度、準備と関心の不足 |
面接の後 | 評価を当日中に記録し、確かめた点と残った懸念を次の面接官へ渡す。結果の連絡を待たせない | 同じ質問の繰り返し、連絡の遅れ |
面接の前に、候補者が読んだ求人票と同じ情報を持って臨む
事前情報との食い違いは、面接官が求人票やスカウトの文面を読まずに面接へ入ると起きます。doda人事ジャーナルの調査では、メンバークラスの志望度が下がった理由の2位が「仕事内容が想像と違った」(48.1%)でした。面接官は、候補者が応募の前に読んだ求人票と、人事が送ったスカウトや案内の文面に目を通してから面接に入ります。
求人票の書き方そのものが曖昧だと、面接官がいくら準備しても食い違いは消えません。エンジニア職の採用なら、候補者が面接の前に目にする求人票や採用ページの状態を、Offers のエンジニア採用力チェックで確かめられます。企業のURLを入れると、公開情報をもとに5指標24項目で採点したレポートが原則1営業日以内に届きます(面接の進め方や面接官の対応は採点の対象外です)。
面接中は、見極めと自社の説明を同じ面接の中で分けて行う
面接中の面接官の役割は、候補者を見極めることと、候補者が入社を判断できるだけの情報を渡すことの2つです。厚生労働省の「採用選考自主点検資料 令和7年度版」も、面接の目的の第1に、採用条件・労働条件の伝達や自社のアピールを含む、お互いの意思疎通を図る情報交換の場であることを挙げています。
面接の時間を、候補者の経験を聞く部分と、面接官が仕事内容・配属先・評価のされ方を説明する部分に分け、説明の時間を必ず残してください。質問には「この質問では、チームで意見が割れたときの進め方を知りたい」のように意図を一言添えます。doda人事ジャーナルの調査では、管理職クラスの候補者の28.0%が、不信感を持った点に「質問の意図がわからない、回答が的を射ていない」を挙げていました。
逆質問に面接官が答えられないときは、その場で推測で答えず、人事から後日回答すると伝えます。
面接の後は、評価と残った懸念を次の面接官へ渡す
面接の後に面接官がやることは、評価を当日中に記録し、確かめた点と残った懸念を次の段階の面接官へ渡すことです。引き継ぎが無いと、候補者は同じ質問を何度も受け、社内で情報が共有されていない会社だと受け止めかねません。
面接官の評価の提出が遅れると、候補者への結果の連絡もそのぶん延びます。マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」では、WEB面接の場合、1次面接から内定までが平均11.0日、内定通知から応諾までが平均8.9日でした。連絡が延びるほど、候補者が他社の結果と比べる時間は長くなります。
面接官を誰に任せ、どう揃えるかは採用担当が決める
辞退を面接官個人の資質の問題にしないために、採用担当が決めておくことは3つです。誰を面接官にするか、何を基準に評価するか、面接官どうしで何を共有するかです。厚生労働省の「採用選考自主点検資料 令和7年度版」は、面接の点検項目として「面接官の人選は適切か」「面接官の研修、打合せはできたか」「面接の質問内容は適切か」の3つを挙げています。
同資料は、面接の評価の留意点として次の4つも挙げています(厚生労働省「採用選考自主点検資料 令和7年度版」)。
- あらかじめ評価基準を決めているか
- 面接マニュアル等を作成し、面接担当者全員で共有されているか
- できるだけ客観的かつ公平に評価するため、複数の面接担当者で選考しているか
- 応募書類などのデータを整理し、面接の中で確認しながら総合的な評価を行っているか
複数の面接官で選考する形は、1人の面接官の印象だけで候補者の評価が決まらないようにするための仕組みです。同時に、面接官どうしが互いの面接の進め方を見る機会にもなり、辞退につながる言動に気づきやすくなります。面接官研修の内容と選び方は、面接官研修の選び方で精度・法令・費用の3点から整理しています。
面接官の関わり方は、内定辞退を防ぐ取り組みの一部です。条件提示や内定後のフォローを含む全体像は、内定辞退防止の進め方にまとめています。
面接官と内定辞退の要点
面接官の言動は候補者の志望度を下げる主な理由の一つで、しかも候補者はその理由を企業にほとんど伝えません。面接官が原因の辞退を減らすには、言動の型を面接官と共有し、面接官ごとの記録で原因を見つけ、面接の前・中・後の手順を採用担当が用意することが要になります。
- 候補者が不信感を持った点や辞退・志望度低下の理由に挙げる面接官の言動は、態度、準備と関心の不足、事前情報との食い違い、属性への決めつけの4つの型に分かれる
- 候補者は違和感を企業に直接伝えないため、辞退理由の集計ではなく、面接官ごと・選考段階ごとの記録から原因を探す
- 紹介会社の担当者と、選考結果と切り離したアンケートが、候補者の受け止めを拾う経路になる
- 面接官の人選・評価基準・引き継ぎの手順は採用担当が決め、面接官1人の心がけに任せない