面接官が担うのは適性と能力の判定と、選考の公正さの担保である
面接官の仕事は、候補者を評価することと、その評価が適性・能力だけに基づいていることを守ることの2つに分かれます。後者が崩れるのは、前者だけを意識しているときです。
厚生労働省は、採用選考の基本的な考え方として2点を示しています。「人を人として見る」人間尊重の精神、すなわち応募者の基本的人権を尊重すること。そして、応募者の適性・能力に基づいた基準により行うことです。
出所:厚生労働省「公正な採用選考の基本」採用選考の基本的な考え方(2026年9月20日確認)。
この2点は理念の宣言ではなく、面接官の手元の作業に直結します。何を聞くかを決める段階で、適性・能力に関係しない事項を質問票から外しておく。その作業がそのまま2点の実行にあたります。
厚生労働省は面接の目的を3つに整理している
同省の「採用選考自主点検資料 令和7年度版」では、面接の目的が3つに分けてあります。面接を情報交換だけの場だと考えていると、2つ目と3つ目が抜け落ちてしまう。
# | 面接の目的 | 面接官が用意するもの |
|---|
1 | 志望動機や要望の確認と、採用条件・労働条件の伝達、自社のアピールという相互の意思疎通 | 伝える条件の一覧と、自社の説明 |
2 | 応募書類や学力試験では分からない理解力・判断力・表現力などの適性・能力の判定 | 何を見極める質問かを決めた質問票 |
3 | あらかじめ定められた一定の基準にしたがった、適性と能力の総合評価 | 事前に決めた評価基準 |
出所:厚生労働省「採用選考自主点検資料 〜公正な採用選考を行うために〜 令和7年度版」(2026年9月20日確認)。
自主点検資料は3つ目を「集大成の場」と位置づけています。1つ目の意思疎通、2つ目の適性・能力の判定を踏まえて、あらかじめ定めた基準にしたがって総合評価する段階だからです。基準を持たずに臨めば、その場の印象がそのまま採否になります。
評価の精度を落とさないための留意点は4つある
同資料は、面接における評価の留意点として次の4点を挙げています。どれも面接当日ではなく、前日までに終わらせる作業です。
# | 留意点 | 確認の仕方 |
|---|
1 | あらかじめ評価基準を決めているか | 評価表が紙かシートで存在するか |
2 | 面接方法や質問内容について「面接マニュアル」等を作成し、面接担当者全員で共有されているか | 面接官が2人以上のとき、同じ質問票を見ているか |
3 | できるだけ客観的かつ公平に評価するため、複数の面接担当者で選考しているか | 1人だけで採否が決まる段がないか |
4 | 応募書類や学力試験で得たデータを整理し、面接の中で確認しながら総合評価しているか | 確認したい点に印を付けた応募書類が手元にあるか |
出所:厚生労働省「採用選考自主点検資料 〜公正な採用選考を行うために〜 令和7年度版」(2026年9月20日確認)。
採用フロー全体のどこにこの準備を置くかは、採用フローの設計で工程ごとに整理しています。
面接の精度は、面接官の裁量ではなく面接の形式で決まる
同じ面接でも、入社後の職務遂行との関係の強さは形式で変わります。質問と評価基準を事前に固定した構造化面接と、面接官の裁量で会話を組み立てる非構造化面接との差です。構造化面接の妥当性推定値は0.42、非構造化面接は0.19で、倍以上の開きがあります。
この数値は、Sackettら4名が2022年に Journal of Applied Psychology へ発表したメタ分析(複数の研究を統合して推定し直す手法)によるものです。従来の推定には母集団の絞り込みに由来する過大補正があるとして、主要な選考手法の妥当性を推定し直しました。
選考手法 | 2022年の推定値 | 1998年の推定値 |
|---|
構造化面接 | 0.42 | 0.51 |
職務知識テスト | 0.40 | 0.48 |
ワークサンプルテスト | 0.33 | 0.54 |
認知能力テスト | 0.31 | 0.51 |
非構造化面接 | 0.19 | 0.38 |
出所:Sackettら「Revisiting meta-analytic estimates of validity in personnel selection」(Journal of Applied Psychology 第107巻11号・2022年)。
非構造化面接の下側80%信用値は−0.01です。条件の悪い場面では、面接での評価が入社後の成果とほとんど関係しなくなることを示しています。
読み方はひとつです。面接官の腕を磨く前に、質問と評価基準を固定するのが先です。
形式をどう固定するか、外部の研修に出すか社内で組むかは、面接官研修の選び方で扱っています。
自社の採用ページや求人票が候補者からどう見えているかを先に確かめたい場合は、エンジニア採用力チェックが採用ページ・求人票・技術発信を5指標24項目で採点し、結果を資料として受け取れます。
聞いてはいけない質問は、法令の禁止と行政の要請に分かれる
「面接で聞いてはいけないこと」として流通している一覧は、出所の異なる複数の枠組みが混ざったものです。本稿はそのうち2つを整理します。1つは職業安定法とその指針による収集の原則禁止、もう1つは厚生労働省が示す配慮すべき事項です。
この2つは、根拠も効力も、例外の扱いも違います。一覧を暗記するより、どちらの層の話をしているかを見分けられるほうが、その場の判断は速いはずです。
職業安定法は、求人企業そのものを名指ししている
職業安定法第5条の5第1項は、求職者等の個人情報の取扱いについて定めています。主体として列挙されているのは9者で、公共職業安定所・特定地方公共団体・職業紹介事業者のほかに求人者と労働者の募集を行う者が並びます。
つまり、この条文は人材紹介会社だけを縛るものではありません。自社で募集して自社で面接している企業も、そのまま対象に入ります。
条文は、業務の目的の達成に必要な範囲内で、当該目的を明らかにして個人情報を収集し、収集の目的の範囲内で保管・使用しなければならないと定めています。ここに付く但書は「本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない」です。
出所:職業安定法(昭和22年法律第141号)第5条の5(e-Gov 法令検索・2026年9月20日確認)。
指針が収集を原則で禁じているのは3類型である
条文を具体化しているのが、指針(平成11年労働省告示第141号)です。最終改正は令和6年厚生労働省告示第318号で行われました。第五 一(二)が挙げる、求人者や労働者の募集を行う者が収集してはならない個人情報は3つです。
記号 | 収集してはならない個人情報 |
|---|
イ | 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項 |
ロ | 思想及び信条 |
ハ | 労働組合への加入状況 |
出所:厚生労働省「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者…等がその責務等に関して適切に対処するための指針」(平成11年労働省告示第141号・最終改正 令和6年厚生労働省告示第318号)第五 一(二)。
この禁止には、ただし書きが付く。特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合は、この限りでないとされています。
例外に入るには、業務の目的の達成に必要不可欠であること、収集目的を示すこと、本人から収集することの3つがそろう必要があります。面接の流れで気になったから聞く、という形はここに当てはまりません。
厚生労働省が配慮を求めるのは14事項で、3区分に分かれる
もう一方の層が、公正採用選考特設サイトに載る「採用選考時に配慮すべき事項」です。14事項が3つの区分に分けて挙げられています。原典は一覧の末尾に「これらに限られるわけではありません」と注記しており、14は閉じた集合ではありません。
区分 | 事項数 | 含まれるもの |
|---|
(a) 本人に責任のない事項の把握 | 4 | 本籍・出生地/住宅状況(間取り・部屋数・住宅の種類・近隣の施設など)/家族(職業・続柄・健康・病歴・地位・学歴・収入・資産など)/生活環境・家庭環境 |
(b) 本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握 | 7 | 宗教/人生観・生活信条/思想/購読新聞・雑誌・愛読書/支持政党/尊敬する人物/労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動 |
(c) 採用選考の方法 | 3 | 身元調査などの実施/合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施/本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用 |
出所:厚生労働省「採用選考時に配慮すべき事項」(公正採用選考特設サイト・2026年9月20日確認)。
(b) に「尊敬する人物」と「愛読書」が入っている点は、実務で見落とされやすいところです。場を和ませる定番の質問として使われてきましたが、思想・信条にかかわる事項であり、本人の適性や能力とは関係がありません。
(c) が区分として立っているのも重要です。質問の内容だけでなく、身元調査や必要性の説明できない健康診断といった選考の方法そのものが対象になります。
2つの層は、例外が認められる条件で分かれる
法令の層と配慮の層は、実務での扱いが分かれます。その場で判断がつくよう、次のように整理しておく。
| 法令の層(職業安定法第5条の5と指針) | 配慮の層(配慮すべき14事項) |
|---|
根拠 | 法律と告示 | 行政による要請と啓発 |
対象 | 条文は求職者等の個人情報の全般/指針の3類型は人種・民族・社会的身分・門地・本籍・出生地など、思想及び信条、労働組合への加入状況 | 14事項(3区分・原典は「これらに限られるわけではありません」と注記) |
例外 | 条文は本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合/指針の3類型は業務の目的の達成に必要不可欠で、収集目的を示して本人から収集する場合 | 原典に例外則の定めは無い |
例外の条件は、法令の層の中でも一段ではありません。条文の第5条の5第1項には本人の同意による但書がありますが、指針の3類型の但書に本人の同意という語は入っていません。3類型の但書が要求するのは、業務の目的の達成に必要不可欠であることのほうです。
ただし指針は無関係だとしているわけではありません。第五 一(六)は、第5条の5第1項や(二)にもとづいて本人の同意を得る場面を想定し、同意を求める事項を可能な限り具体的かつ詳細に明示すること、業務の目的の達成に必要な範囲を超える収集への同意を応募の条件としないこと、自由な意思にもとづく明確な表示であることの3点を定めています。同意を取る手順は用意されている一方、必要不可欠という要件が同意で消えるわけではありません。
配慮の層に載る事項は、法令の層の3類型と重なるものと、重ならないものがあります。住宅状況や生活環境は配慮の層にありますが、指針の3類型そのものではありません。
身元調査には、指針が定める収集手段の規律も及ぶ
指針は、収集してよい情報の中身だけでなく、集め方も定めています。第五 一(三)は、本人から直接収集するか、本人の同意の下で本人以外の者から収集するか、本人により公開されている個人情報を収集する等、適法かつ公正な手段によらなければならないとしています。
出所:同指針 第五 一(三)。
前職や知人へ本人の知らないところで照会する行為は、この手段の要件を満たしません。配慮すべき事項の (c) が挙げる採用選考の方法の一つも、身元調査です。
同じく第五 一(五)は、個人情報の保管と使用を収集目的の範囲に限るとしています。ただし、他の保管もしくは使用の目的を示して本人の同意を得た場合、または他の法律に定めのある場合は、この限りでないとされています。面接で得た情報を別の目的へ回すときに要るのは、この手続きです。
質問は避ける一覧ではなく、職務要件からの逆算で作る
聞いてはいけない事項を覚えるやり方は、途中で止まります。言い換えれば避けられるという性質のものではないためです。ご家族はお仕事をされていますか、という聞き方でも、把握しようとしている内容は変わりません。
厚生労働省の自主点検資料も、質問を行き当たりばったりでするのではなく、すべての応募者に公平な対応ができるよう、あらかじめ質問事項を決めておくことを求めています。そのうえで、応募者が職務遂行のために必要な適性・能力をどの程度有するかを評価するために必要な事項を質問するとしています。
出所:厚生労働省「採用選考自主点検資料 〜公正な採用選考を行うために〜 令和7年度版」(2026年9月20日確認)。
実務の順序は3段です。
- 募集する職種の職務遂行に必要な適性・能力を書き出す
- それぞれを確かめる質問を用意し、質問票にする
- 質問票に載らなかった質問は、本番で使わないと決めておく
同資料は、話の流れの中でうっかりたずねた事柄や、応募者の気持ちをやわらげようと聞いた事柄にも就職差別につながるおそれのある事項が含まれうると注意しています。質問票を配るだけでなく、事前の打合せで面接担当者全員に確認を徹底することも、あわせて求められる作業です。
質問票と評価表が社内に無い段階では、どこから手を付けるかの判断が先に要ります。エンジニア採用力チェックは、採用ページ・求人票・技術発信を24項目で採点し、偏差値と改善アクションを返すので、着手点を決める材料になります。
面接官が陥りやすい過ちは、4つに整理されている
評価のゆがみは性格の問題ではありません。条件が揃えば誰にでも起きます。自主点検資料は、面接官が陥りやすい過ちを4つ挙げています。
過ち | 何が起きるか | 打ち手 |
|---|
ハロー効果 | 一つの側面が良い(悪い)ことをもって、他の全ての面も良い(悪い)と判断してしまう | 評価項目ごとに独立して採点し、合算は最後に行う |
個人的な好み | 外見などによる個人的な好みに左右される | 評価表に無い観点を採否の理由に書かない |
第一印象 | 第一印象にこだわる | 印象を記録する欄と評価欄を分ける |
対比効果 | 直前の応募者との対比で、過大(過小)評価してしまう | 候補者どうしではなく、基準と照らして採点する |
出所:厚生労働省「採用選考自主点検資料 〜公正な採用選考を行うために〜 令和7年度版」(2026年9月20日確認)。
4つとも、面接官の意識でどうにかする類のものではありません。評価表の作り方と採点の順序で減らすのが現実的です。複数の面接担当者で選考する運用が同資料に置かれているのも、同じ理由によります。
候補者から見た面接官の態度は、7つの行動に落ちている
面接官の態度が悪いと本来の実力が出ない。この話を、自主点検資料は行動の一覧という形にしています。心構えではなく、その場でやるかやらないかが分かれる形になっている。
同資料のコラムは、好感を持たれる面接官の態度・行動として7つを挙げています。
# | 行動 |
|---|
1 | 面接官も自己紹介する |
2 | 応募者の緊張をとく会話から面接を始める |
3 | 「○○さん」と応募者の苗字で話しかける |
4 | 質問をするときに応募者の目を見ながら話す |
5 | 応募者の話にうなずきや相づちをうち、共感を持っている態度を示す |
6 | 時には笑顔や笑いがある |
7 | 最後に「これで面接を終了します。ありがとうございました」とお礼を言う |
出所:厚生労働省「採用選考自主点検資料 〜公正な採用選考を行うために〜 令和7年度版」(2026年9月20日確認)。
過度に威圧的な態度をとること、感情的に批判すること、説教じみたことを言うことは、同資料が名指しで戒めている行為です。こうした対応がSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やインターネットの掲示板に書き込まれて拡散し、企業イメージの低下につながる場合があるという注意も添えられています。
面接での印象が辞退にどう結びつくかは、内定辞退の防ぎ方で段階ごとに扱っています。
エンジニア職の面接は、候補者が複数社を比べている前提で組む
面接官が「選ぶ側」として振る舞えるかどうかは、職種の需給しだいです。エンジニア職は、統計でも求人の側が多い状態にあります。
令和8年7月の情報処理・通信技術者は、新規求人倍率2.98倍・有効求人倍率1.34倍です。職業計はそれぞれ2.04倍・1.05倍なので、求職者1人あたりの求人が全職業の平均より多い状態にあります。
出所:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」参考統計表6(全国計・常用〔パート含む〕・令和8年7月)。
この条件では、面接は評価の場であると同時に、候補者が自社を評価する場でもあります。自主点検資料が面接の目的の1つ目に「自社の採用条件・労働条件の伝達や自社のアピール等お互いの意思疎通」を置いているのは、面接を一方向の選考ではなく双方向のやり取りと位置づけているためです。エンジニア職の求人倍率が示す需給の非対称は、この双方向性を軽視できない理由の一つになります。
伝える内容を面接官ごとに変えないことが、ここでは魅力付けそのものより大切になります。条件の説明が面接の回ごとに食い違えば、最初に気づくのは候補者です。
見送った候補者との関係を、その場で切らない
自社の基準に合わなかった候補者でも、接点を残す選択肢があります。求める要件は時期によって変わりますし、候補者の経験も増えます。
不採用や辞退になった候補者との関係を保ち、将来の採用候補として管理する考え方が、タレントプールです。運用の手順はタレントプールの作り方で扱っています。
関係を残すには、面接の終わり方が条件になります。前節の7つの行動が守られていない面接のあとで、半年後に連絡を取るのは現実的ではありません。
見送った候補者との関係維持とあわせて、新しい候補者との接点づくりを社内の工数だけで回せない場合は、AI RPOのように、Offers の登録者から候補者を見つけて継続的にアプローチする工程を外部に持たせる方法もあります。
面接官が本番までに揃えるものは3つに絞れる
最後に、この記事で扱った内容を着手の順序に並べ直します。
- 質問票と評価表を先に作る。 面接官の裁量に任せるより、質問と評価基準を固定するほうが入社後の成果との相関が高い(構造化0.42/非構造化0.19)
- 質問票を法令と配慮の2層で点検する。 指針の3類型は同意を得ただけでは例外に入らず、配慮すべき14事項は3区分で確認する(原典は一覧が閉じていないとも注記している)
- 評価は基準と照らして付ける。 直前の候補者との比較・第一印象・個人的な好みは、評価表の作り方で減らす
意気込みや心構えの前に、この3つを紙にしておくことが、面接の精度を上げる土台になります。社内の選考がどの段階で止まっているかを把握したい場合は、Offers の企業向けサービスで提供している支援の範囲もあわせてご確認ください。