採用代行は、求人票の作成から応募者対応、面接日程の調整まで、採用業務の一部または全部を外部の専門企業に委託するサービスです。RPO(Recruitment Process Outsourcing)とも呼ばれます。
導入を考えて最初に詰まるのは「どこまで任せられるか」です。任せる範囲によっては職業安定法の許可や届出が必要になり、その申請の締切が採用スケジュールそのものを縛ります。
本記事では、委託できる業務範囲と自社に残す業務の切り分け、人材紹介・人材派遣との違い、許可や届出が要るかの線引き、メリットとデメリット、費用の考え方、導入事例までを順に扱います。
採用代行(RPO)の定義と仕組み
採用代行とは、企業の採用活動にかかわる業務を、外部の専門会社に委託するサービスです。英語ではRPO(Recruitment Process Outsourcing)と呼ばれ、「採用アウトソーシング」という名称でも知られています。
採用代行サービスの役割は、単なる作業の「代行」にとどまりません。委託を受けた企業の人事課題を分析し、採用戦略の立案から実務のオペレーション、KPIの管理まで担うパートナーとして機能します。自社の採用チームを外部にもう一つ持つ、というイメージが近いかもしれません。
採用代行サービスは大きく2つのタイプに分かれます。
- 採用プロセス代行型。求人票作成、スカウト配信、面接日程調整などの業務プロセスを丸ごと委託する形態。自社に採用担当が少ない企業や、急な大量採用に対応したい場面で選ばれます
- リクルーター派遣型。採用代行会社から専任のリクルーターが自社に常駐し、社内の採用チームと一体で動く形態。自社のカルチャーを理解した上での採用活動が可能です
採用代行(RPO)の正式名称と意味
RPOは「Recruitment Process Outsourcing」の略称です。直訳すると「採用プロセスの外部委託」。日本での呼び名は「採用代行」「採用アウトソーシング」が中心で、いずれも同じサービスを指す言葉です。
人事領域では「BPO(Business Process Outsourcing)」という用語もよく使われますが、BPOが経理・総務・人事など幅広い業務の外部委託を指すのに対し、RPOは採用領域に特化した外部委託を意味します。
RPOという言葉そのものの成り立ちや、メリットとデメリットを項目別に並べたものは、RPOとは?採用代行のメリットとデメリットを徹底解説にまとめています。
採用代行を含む人事業務アウトソーシング市場は2024年度に1兆1,163億円
採用代行の市場規模には、RPO単独で継続的に公表されている統計がありません。近い範囲で最新の実績は、矢野経済研究所の「人事・総務関連業務アウトソーシング市場に関する調査を実施(2026年)」です。
同調査では、給与計算アウトソーシング・勤怠管理ASP(Application Service Provider)サービス・企業向け研修サービス・採用アウトソーシング(RPO)・アセスメントツールの5分野を合わせた人事業務アウトソーシング市場が、2024年度に前年度比4.8%増の1兆1,163億円でした。
人事・総務関連業務アウトソーシング市場全体(主要14分野計)は同3.4%増の11兆8,077億円で、2025年度は同3.2%増と予測されています(矢野経済研究所・プレスリリースNo.4092・2026年5月8日公表)。RPO単独の額は同プレスリリースに載っていないため、RPOを含む分野の伸びとして読んでください。
採用領域に絞った数字としては、同社の「採用アウトソーシング市場に関する調査を実施(2022年)」があります。採用アウトソーシング・採用管理システム・採用関連アセスメントの主要3市場を合わせた市場規模は、2021年度が前年度比15.0%増の628億円でした。2022年度は同12.4%増の706億円と予測されています(矢野経済研究所・プレスリリースNo.3201・2023年3月30日公表)。
706億円は実績ではなく予測値で、3市場の一部が重複するため参考値である旨が原典に注記されています。採用チャネルの多様化や人事担当者の業務負荷の増大が市場を押し上げている、という説明はこの範囲で読むのが妥当です。
グローバルでは、Research and Marketsの『RPO Strategic Business Report 2025』が、RPO市場を2024年の97億ドル(US$9.7 Billion)から2030年に229億ドル(US$22.9 Billion)へ、年平均成長率15.4%で拡大すると予測しています(Research and Markets・2025年)。
この成長を後押ししているのがAI技術の統合です。RPO業界団体Recruitment Process Outsourcing Association(RPOA)とLighthouse Research & Advisoryの『2025 RPO Trends Report』は、高度な分析とAIを使った採用ツール、案件単位の柔軟な提供形態を、RPOが企業の採用を支えるための軸に置いています。
同報告書は米国に拠点を置く従業員100名以上の企業の採用・人事の意思決定者519名へのオンライン調査に基づきます(RPOA・Lighthouse Research & Advisory・2025年・n=519)。
採用代行に委託できる業務範囲
採用代行に委託できる業務は、採用戦略の立案から入社後のフォローまで幅広く存在します。ただし、すべてを一括で委託する必要はありません。導入の第一歩は、自社でやるべき「コア業務」と外部に任せられる「ノンコア業務」を切り分けるところにあります。
採用代行で委託できるノンコア業務(日程調整・スカウト配信など)
まず外部に委託しやすいのは、オペレーション中心の業務です。
採用フェーズ | 委託できる業務例 |
|---|
求人票・JD作成 | 求人原稿の作成、求人媒体への掲載・更新 |
母集団形成 | スカウト配信、求人媒体の運用、エージェント対応 |
書類選考 | 応募者の一次スクリーニング、合否連絡 |
面接調整 | 候補者・面接官の日程調整、リマインド連絡 |
内定者フォロー | オファーレターの作成、入社前の連絡対応 |
データ分析 | 採用KPIのトラッキング、レポーティング |
特に面接日程の調整やスカウト配信は、工数がかかる割にルーティン化しやすい領域といえるでしょう。ここを外部に任せるだけでも、採用担当者の稼働は大きく変わります。
注意が要るのは、この表に制度上の扱いが分かれる業務が混じっている点です。スカウト配信のように候補者へ直接働きかける業務は、任せ方によって職業安定法の手続きが必要になります。線引きは後述します。
採用代行で自社に残すべきコア業務(採用戦略・最終面接など)
一方で、自社に残すべき業務もあるはずです。
- 採用戦略の最終決定。どのポジションを、いつまでに、何名採用するかの意思決定
- 最終面接・合否判断。カルチャーフィットや将来のポテンシャルを見極める判断
- 入社後のオンボーディング。自社の文化に馴染んでもらうプロセス
採用代行はあくまで「委託」であり、採用の最終判断は自社に残ります。この線引きを明確にしておくと、後述するデメリット(ノウハウが蓄積されない問題)は小さくできるはずです。
採用代行と人材紹介・人材派遣の違い
採用代行・人材紹介・人材派遣は、「何を外部に頼むか」がそれぞれ異なります。初めて採用の外部支援を検討する方が最も混乱しやすいポイントなので、比較表で整理します。
採用代行・人材紹介・人材派遣の比較表
比較軸 | 採用代行(RPO) | 人材紹介 | 人材派遣 |
|---|
何を頼むか | 採用「業務」の委託 | 候補者の「紹介」 | 「人手」の補充 |
契約形態 | 準委任・請負などの委託契約 | 紹介手数料契約 | 労働者派遣契約 |
料金体系 | 月額固定 or 従量課金 | 成功報酬(年収に対する料率などで提示される。職業紹介として受ける場合は上限制か届出制のいずれかの手数料) | 時間単価(派遣料金) |
雇用関係 | 自社が直接雇用 | 自社が直接雇用 | 派遣元が雇用 |
指揮命令 | 委託先が業務を遂行 | 紹介会社は仲介のみ | 派遣先が指揮命令 |
適したケース | 採用業務の工数を減らしたい | 特定ポジションを早く埋めたい | 一時的な人手不足を補いたい |
採用代行・人材紹介・人材派遣は「何に困っているか」で選び分ける
判断のポイントは「何に困っているか」です。
- 「採用したい人材像は明確だが、スカウトや日程調整に手が回らない」→ 採用代行
- 「どんな人を採用すればいいかわからない。候補者を紹介してほしい」→ 人材紹介
- 「今月だけ人事アシスタントが欲しい」→ 人材派遣
これらを組み合わせて使うことも可能です。採用代行で日常のオペレーションを回しつつ、ハイレイヤーのポジションだけ人材紹介を併用する企業も少なくありません。
採用代行に許可や届出が要るかは、委託の中身で決まる
採用代行に法律上の手続きが要るかどうかは、サービスの名前ではなく「候補者への勧誘まで任せるか」で決まります。職業安定法第4条第5項が定める「労働者の募集」は、労働者を雇用しようとする者が自ら又は他人に委託して、労働者となろうとする者に対しその被用者となることを勧誘することです。勧誘を他人にさせる形が「委託募集」で、ここに手続きが発生します。
委託の中身で当たる制度が変わる
厚生労働省の「募集・求人業務取扱要領」Ⅲ 委託募集は、委託募集を「その被用者以外の者をして労働者の募集に従事させる形態で行われる労働者募集」と定義しました。報酬を与える場合は許可、与えない場合は届出が必要です。
委託の中身 | 当たる制度 | 必要な手続き |
|---|
応募の勧誘まで任せ、報酬を払う | 委託募集 | 許可と、報酬の額の認可(法第36条第1項・第2項) |
応募の勧誘まで任せ、報酬を払わない | 委託募集 | 届出(法第36条第3項) |
候補者を探して応募を勧め、あっせんまで行う事業として任せる | 職業紹介 | 受託側が有料職業紹介事業の許可(法第30条第1項) |
すでに許可を持つスカウト型の職業紹介事業者に任せる | 職業紹介 | 委託募集の許可は基本的に不要 |
求人情報を求職者に提供する側(求人媒体) | 募集情報等提供 | 求職者の情報を収集して行うものは届出(法第43条の2) |
採否は自社が判断し、勧誘を伴わない事務だけを任せる | どれにも当たらない | 手続きなし |
出所:厚生労働省「募集・求人業務取扱要領」Ⅲ 委託募集および職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)の該当条文(2026年9月15日確認)。
同要領は、求人者に紹介するため求職者を探索した上で就職を勧奨し、これに応じて求職の申込みをした者をあっせんする「スカウト行為」を事業として行う場合は職業紹介事業に含まれ、その事業を行うには職業紹介事業の許可が必要だとしています。スカウト配信の代行を一律に手続き不要と考えるのは危うい、ということです。
反対に、すでに許可を取得している人材スカウト型の職業紹介事業者へ募集を委託する場合は、その事業者に求人を申し込んだものと解することが適当で、委託募集の許可は基本的に不要とされています。その根拠として同要領が挙げるのは、東京エグゼクティブ・サーチ事件の最高裁判決(最判平成6年4月22日民集48巻第3号944頁)です。
なお、企業グループに属する企業が同じグループの他の企業から委託を受けて募集を行う場合のように、別の法人格を持つ募集主の委託を受けて募集する形は委託募集に該当します。グループ会社だから手続きが要らない、とは読めません。
委託募集では報酬の額そのものが認可の対象になる
見落とされやすいのが、報酬の額まで認可が要る点です。職業安定法第36条第2項は、報酬の額についてあらかじめ認可を受けなければならないと定めています。
認可の基準も具体的です。同要領の「報酬の認可基準」は、報酬が支払われた賃金額の100分の50(同一の者に引き続き1年を超えて雇用される場合は、1年間の雇用にかかわる賃金額の100分の50)を超えるときは、委託募集に必要となる経費が特に高額となる特段の事情がある場合を除き認可しない、としています。認可を受けた額を超えて報酬を与えることも禁じられています(法第40条)。
同じ「成果報酬」でも、拠って立つ制度で上限の考え方が変わります。有料職業紹介の上限制手数料は支払われた賃金額の100分の11が基本で、委託募集の報酬は賃金額の100分の50が認可の分かれ目です。桁が違うので、提示された料率だけを横に並べても比較になりません。
出所:厚生労働省「募集・求人業務取扱要領」Ⅲ 委託募集(2026年9月15日確認)。
申請の期限が採用の段取りを決める
手続きが要る場合、実務でいちばん影響するのは提出期限です。同要領は次のように定めています。
- 厚生労働大臣の許可等:募集を開始する月の21日前まで
- 都道府県労働局長の許可等:募集を開始する月の14日前まで
- 報酬を伴わない委託募集の届出:募集を開始する月の10日前まで
どちらの窓口になるかは募集の規模で分かれます。自県外の募集で、一の都道府県からの募集人員が30人以上か、募集人員の総数が100人以上なら厚生労働大臣、それ以外は都道府県労働局長です(職業安定法施行規則第37条第1項第6号)。この確認は募集事業所ごとに行います。
許可には期間の上限もあります。同要領の許可基準は、募集を行おうとする期間が1年を超えないものであることを求めており、報酬を伴わない届出の有効期間も最長1年です。加えて、募集開始後は四半期ごとに募集採用の状況をまとめ、「労働者募集報告」の作成に備えることも指導の対象です。
出所:厚生労働省「募集・求人業務取扱要領」Ⅲ 委託募集および職業安定法施行規則第37条第1項第6号(2026年9月15日確認)。
無許可で委託募集を行った場合の罰則も条文にあります。職業安定法第64条第七号は、同法第36条第1項の規定に違反したときは1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処すると定めています。
契約前に確かめる4点
見積もりを比べる前に確かめる項目は、次の4つです。
- 勧誘まで任せるのか。スカウト送信や応募の勧奨を委託範囲に入れるなら、どの制度に当たるかを先に整理する
- 相手がどの許可・届出を持っているか。有料職業紹介事業の許可か、特定募集情報等提供事業の届出か、いずれも持たないのか
- 成果報酬の料率の基礎は何か。上限制手数料か届出制手数料か、それとも手数料規制の外にある委託契約か
- 手続きが要る場合の所要日数。募集開始月の21日前・14日前・10日前という期限を採用スケジュールに織り込む
判断に迷う場合は、管轄の都道府県労働局に事前確認するのが確実です。委託範囲と制度の切り分けから相談したいなら、OffersのAI RPOプランで自社の条件に沿った進め方を確認できます。
採用代行のメリットは4方向に整理できる
採用代行のメリットは、担当者の工数、採用の質とスピード、社内に無い専門知識、そしてコストの4方向に整理できます。海外のRPO導入企業を対象にした削減率のベンチマークが引用されることがありますが、原典の公開情報に辿れる形で確認できるものが見当たらないため、本記事では扱いません。国内の水準は費用の章で、厚生労働省の統計に基づいて数字で示します。
採用代行でコア業務に集中できる
採用代行で最も多くの導入企業が実感しているメリットが、採用担当者の工数削減です。
スカウト配信、応募者への返信、面接日程の調整。こうした業務は一つひとつは小さくても、積み重なると膨大な工数になります。採用代行に委託すると、採用担当者は面接や候補者の見極め、現場との要件すり合わせなど、自社でしかできないコア業務に時間を使えるようになります。
Offersの「AIスカウト生成機能」は、スカウト文作成の工数を80%削減したと発表されています(株式会社overflow調べ・2024年10月時点)。人が1通ずつ書いていたスカウトメッセージをAIが自動生成することで、担当者は候補者との対話に集中できる環境が生まれています。
採用代行で採用の質とスピードが向上する
工数が減るだけではありません。採用代行会社は複数のクライアントの採用を同時に支援しており、市場動向やチャネルごとの効果データを蓄積しています。この知見が、自社だけでは得られない採用の質の向上につながります。
「この職種はこの媒体が有効」「スカウトの返信率を上げるにはこのタイミングが最適」。こうした実践的なノウハウは、数十社の採用を並行で支援しているRPOベンダーだからこそ持っている武器です。
採用代行パートナーの専門知識・ノウハウを活用
初めて採用に取り組む企業や、これまで採用を経営層が兼務していた企業にとって、RPOベンダーの専門知識は大きな助けになります。
採用要件の定義方法、求人票の書き方、スカウトの文面設計、選考フローの組み立て方。「何から始めればいいかわからない」状態から、プロの型を借りて立ち上げられるのは、採用代行ならではのメリットです。
採用代行でトータルの採用コストを抑える
外部委託はコスト削減を自動的にもたらすわけではありません。Deloitteの『Global Outsourcing Survey 2024』(採用に限らないアウトソーシング全般の調査)では、ベンダーのサービスコストの低下またはサービス品質の向上が見えていると答えた経営層は25%にとどまりました。効果は使い方で決まる、と読むのが実態に近いでしょう。
「外部に委託する分、コストが増えるのでは」と感じるかもしれません。採用に引きつけて考えると、削減余地の大きさは人材紹介への依存度で決まります。厚生労働省の「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」では、有料職業紹介の常用就職1件あたりの手数料は約103万円でした。紹介経由の比率が高い企業ほど、採用代行で母集団形成を内側に寄せたときの削減幅は大きくなるでしょう。具体的な計算方法は費用の章で扱います。
採用代行のデメリットと注意点
メリットがある一方で、採用代行の導入にはリスクも存在するでしょう。「思ったほど効果が出なかった」という声の多くは、次の2つに集約されます。制度上の注意点は前章にまとめました。
採用代行では社内に採用ノウハウが蓄積されにくい
採用業務を外部に任せ続けると、自社の採用チームにノウハウが残りません。これは採用代行で最も指摘されるデメリットです。
RPOベンダーが優秀であればあるほど、「全部お任せ」になりやすい。しかし契約終了後に自走できなければ、また外部に依存する構図が繰り返されます。
対策としては、委託先との定期的なナレッジ共有ミーティングの実施や、一定期間後にノウハウを内製化する計画をあらかじめ設計しておくことが有効です。
採用代行の認識齟齬によるミスマッチリスク
「求める人物像がうまく伝わらず、ターゲットと違う人材ばかり集まった」。この問題は、委託開始時の要件定義が曖昧な場合に起きやすくなります。
特にカルチャーフィットのような定性的な基準は、言語化が難しい。選考基準の明文化と、委託先との初期段階での擦り合わせを丁寧に行うことが欠かせません。
採用代行の料金体系と費用の考え方
採用代行の費用は、実際に導入した企業への調査では月額10万〜20万円未満が最も多い層です。法人向けサービス比較メディアのボクシル(BOXIL)を運営するスマートキャンプ株式会社が、採用代行の導入に携わった342人へ行った「採用代行サービス(RPO)の費用調査」(インターネット調査・2025年11月25日〜12月2日実施)では、月額費用の有効回答325件のうち「10万円〜20万円未満」が18.8%で最多でした。
2番目に多いのは「40万円〜60万円未満」の14.2%です。以下、「5万円〜10万円未満」が13.8%、「20万円〜40万円未満」が10.5%と続き、この4つで全体の約57%を占めました。一方で月額100万円以上の企業も2割あります。
同調査は月額費用の中央値を「40万円〜60万円未満」としており、最多層と中央値は別の帯にあります。相場は1点に収束しないと読むほうが実態に近いでしょう。同じ調査で初期費用の最多層は「5万円〜10万円未満」(有効回答328件)でした。
同じ調査でサービス側の公開料金も集計されています。公式サイトに料金の記載がないサービスを除いた最低表示金額の中央値は月額180,000円(価格帯29,800円〜600,000円)で、料金を公表している14社のうち11社が月額10万〜30万円の価格帯に入っていました。これは各社が公開する最低金額を集めた中央値であり、実際に払う額そのものの中央値ではありません。導入企業の実支払額のほうは中央値が40万円〜60万円未満なので、表示価格の入口と実際の支払額は別の水準として見てください。
本記事は採用代行の全体像を扱うため、費用はここで料金体系ごとの成り立ちと1人あたり単価への直し方に絞ります。業務単位の料金表や見積もりの読み方まで細かく見るときは、採用代行(RPO)の費用相場・料金体系・選び方の基本を参照してください。
採用代行の月額固定型は業務範囲で幅が出る
毎月一定額を支払い、決められた業務範囲を委託する形態です。同調査は、低料金の帯が多いことについて「業務を部分的に切り出して採用代行サービスに委託する企業が多い」と考察し、月額100万円以上が2割ある点を「工数削減から戦略的な採用支援まで活用の多様化が進んでいる」と読んでいます。委託範囲が広いほど帯が上がるという対応関係そのものは、同調査が数値で示したものではありません。
予算の見通しが立ちやすい形態です。同調査で料金形態を尋ねた設問(有効回答336件・回答者1人あたりの平均選択数1.57の複数回答)では、月額固定を挙げた回答が217人、従量課金が216人で、同調査は両者を主流と結論づけています。
採用代行の従量課金型は業務量に連動する
業務量に応じて費用が変動する形態です。求人媒体の管理、面接の実施、スカウト配信といった単位ごとに単価を決め、実施した分だけ支払います。採用時期によって業務量が大きく変動する企業に向いています。
金額は委託先とスコープごとに個別見積もりになるため、公開された相場データがありません。見積もりを取るときは、単価そのものより「想定する月間件数×単価」を月額固定型の見積もりと並べて比べてください。
採用代行の成果報酬型は有料職業紹介の手数料制度と地続きになる
採用が決定した場合にのみ費用が発生する形態です。人材紹介の報酬体系に近く、年収に対する料率で提示されることがあります。
ここで前提を1つ置きます。次に述べる手数料の上限は、有料職業紹介事業の許可を持つ事業者が職業紹介として受け取る手数料に対する規制です。採用の可否を自社が判断し、事務の代行にとどまる委託には適用されません。同じ「成果報酬」でも、相手が職業紹介として受けているのか業務の委託として受けているのかで、拠って立つ制度が変わります。
制度の根拠は法令の条文です。職業安定法第32条の3第1項は、有料職業紹介事業者が手数料を受け取れる場合を2つに限っています。第1号が厚生労働省令で種類と額を定める手数料(上限制手数料)、第2号があらかじめ厚生労働大臣に届け出た手数料表による手数料(届出制手数料)です。
上限制の額を定めているのは職業安定法施行規則第20条第1項と同規則の別表(第20条関係)で、厚生労働省の「職業紹介事業の業務運営要領」第6 手数料(令和8年7月31日適用)はこの2制度を実務向けに整理した行政の解説です。
別表の紹介手数料の欄によると、上限制手数料で徴収できるのは支払われた賃金額の100分の11(免税事業者は10.3)までです(同欄第1号)。期間の定めのない雇用契約に基づき同一の人が引き続き6箇月を超えて雇用された場合は、次の2つのうち大きいほうが上限になります(同欄第3号)。
1つは6箇月間の雇用に係る賃金について支払われた賃金額の100分の11(免税事業者は10.3)、もう1つは同じ6箇月間の賃金から臨時に支払われる賃金と3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金を除いた額の100分の14.8(免税事業者は13.9)です。雇用期間の定めがある契約で6箇月を超えた場合は、率は100分の11のままで、基礎になる賃金が6箇月間の雇用に係る賃金に変わります(同欄第2号)。
一方の届出制手数料は、厚生労働大臣に届け出た手数料表の額を徴収できる制度で、率の上限が条文に置かれていません。ただし、特定の者に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき、または手数料の種類や額などが明確に定められていないことによって当該手数料が著しく不当であると認められるときは、同法第32条の3第4項に基づいて手数料表の変更を命じられます。
ここで注意したいのは分母です。上限制手数料の100分の11は「支払われた賃金額」を基礎とする率で、市中で見かける「年収の何%」とは基礎が違います。どちらの制度で届け出た手数料なのかは事業者ごとに異なり、提示された料率だけからは判別できません。
この違いは見積もりを読むときに影響します。職業紹介として受ける相手に確かめるべきは、料率の根拠がどちらの制度にあるかです。業務の委託として受ける相手なら、そもそも手数料規制の外にある契約だと分かります。ただし、その委託が前章の委託募集に当たる場合、報酬の額にかかるのは別の認可基準(賃金額の100分の50)です。
採用代行の費用は1人あたりに直して比べる
料金体系が違うサービスを横に並べるには、単位を揃える必要があります。おすすめは「自社の年間採用予定人数で割って、1人あたりいくらか」に直すことです。
比較の基準になる実測値が2つあります。1つは厚生労働省の「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」(令和8年3月31日公表)で、有料職業紹介全体の手数料収入は約9,835億円(対前年度比17.6%増)、うち常用就職に係る手数料が約9,136億円(同16.8%増)でした。そして常用就職1件あたりの手数料は約103万円(同10.9%増)です。人材紹介を使った場合に実際に払われている1件あたりの金額が、この水準にあります。
もう1つは厚生労働省の委託調査「採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 報告書」(令和3年度)です。同報告書の「1件あたりの平均採用コスト(正社員)」の集計では、民間職業紹介事業者(紹介会社)が平均85.1万円、インターネットの求人情報サイトが平均28.5万円、求人情報誌・チラシが平均11.3万円でした。同じ1名の採用でも、どのチャネルを使うかで単価が数倍動きます。
比較の基準 | 1件あたりの金額 | 出所 |
|---|
人材紹介(実際に払われた手数料) | 約103万円 | 厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」 |
民間職業紹介事業者(企業回答の平均採用コスト) | 85.1万円 | 厚生労働省委託調査「採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 報告書」 |
インターネットの求人情報サイト | 28.5万円 | 同上 |
求人情報誌・チラシ | 11.3万円 | 同上 |
この表は年度も測り方も違う2つの調査を並べています。103万円は令和6年度に事業者が実際に受け取った手数料を常用就職の件数で割った値で、ここでいう「常用」は4か月以上の期間を定めて雇用されるものと期間の定めなく雇用されるものを指し、正社員に限りません。85.1万円以下の3つは令和3年度の委託調査で求人企業が回答した正社員1件あたりの平均採用コストです。水準の桁を掴む用途に留め、差額をそのまま自社の削減額として扱わないでください。
月額固定型の採用代行は、この表と直接は比べられません。採用が決まらなくても月額が発生する一方、何名採用しても月額は変わらないためです。だからこそ「月額×委託月数 ÷ 採用予定人数」に直す作業が要ります。
月額20万円を6か月使って2名採用するなら1人あたり60万円、3名なら40万円です。前掲の調査では初期費用の最多層が「5万円〜10万円未満」で、初期費用・求人媒体費・スカウト送信費は実務では別途かかります。自社で比べるときは、月額だけでなく初期費用と媒体費まで足したうえで採用予定人数で割ってください。
採用予定人数と委託したい業務範囲が決まっているなら、OffersのAI RPOプランなら、その条件での進め方と体制を相談できるはずです。CTO・VPoEなど採用難易度が高いポジションには、専任チームが予算にコミットする予算型リテーナープランも選べます。
採用代行の導入事例を課題別に見る
採用代行の効果は、「どんな採用課題を抱える企業が、どんな業務を委託して何を得たか」で変わります。ここでは課題別に事例をマッピングして紹介しました。業種も規模も異なる企業が、それぞれの課題に合わせてRPOを活用した例です。事例をもっと並べて型と期間を見たいときは、RPO導入事例14社に見る成果の型と期間にまとめています。
タレントマネジメントSaaS企業がマネジメント層採用、選考4ヶ月・面談5回でVPoE 1名を確保
タレントマネジメントSaaSを提供する企業は、開発組織を60名から200名規模へ拡大する局面で、組織を束ねるVPoE人材の採用に課題を抱えていました。マネジメント層は母数が少なく、見極めにも時間がかかります。
Offersの採用支援を通じて候補者を厳選し、選考期間4ヶ月・面談5回をかけてVPoE 1名の採用に成功。書類選考通過率の高さが示すとおり、質の高い母集団形成につながりました。「量より精度」が求められるポジションで、RPOが候補者コミュニケーションの設計を担った事例です。
ビットキーがIoT/組込のニッチ領域でSoftware Edge Deviceエンジニアを採用
IoTプラットフォームを展開するビットキーは、約90名の開発組織のうち、IoT・クラウド・ネットワークを横断するSoftware Edge Deviceチームのソフトウェア(SW)エンジニア採用に苦戦していました。スキル領域の組み合わせが特殊で、転職市場の母集団そのものが限定的だったためです。
Offersを通じて技術要件に沿った候補者リスト作成とスカウト運用を展開し、Software Edge Deviceチーム向けSWエンジニア1名の採用に至りました。母集団が狭いニッチ領域ほど、技術理解のあるRPOパートナーの価値が顕在化します。
スタンバイが予算型リテーナーで2ヶ月、機械学習+BE/FSの正社員を採用
求人検索エンジン「スタンバイ」を運営するスタンバイは、機械学習エンジニアとバックエンド・フルスタックエンジニアの確保に苦戦していました。検索・機械学習という専門領域で、短期に正社員を揃える必要があったためです。
Offersの予算型リテーナープランを活用し、検索技術の要件定義からターゲットリスト作成、スカウト運用まで一体で推進。2ヶ月で機械学習+バックエンド/フルスタックの正社員採用に至りました。専門領域×短期という難度の高いミッションで、予算にコミットする伴走型RPOが機能した例です。
採用代行が向いている企業と導入ステップ
採用代行はすべての企業に必要なわけではありません。導入効果が特に大きいのは、「採用リソースが足りない」か「採用のやり方がわからない」のどちらか、あるいは両方に当てはまる企業です。
採用代行の導入が向いている企業の特徴
- 採用担当が不在、または兼任。経営層やマネージャーが採用を兼務しており、本来の業務に支障が出ている
- 急成長フェーズで大量採用が必要。資金調達後やサービスローンチ前など、短期間に複数名を採用しなければならない
- 専門職の採用に苦戦している。エンジニア、デザイナー、データサイエンティストなど、特殊なスキルセットが必要なポジション。経済産業省の「IT人材需給に関する調査」(平成30年度調査)では、2030年にIT人材が最大約79万人不足すると予測されています
- 採用チャネルが多すぎて管理しきれない。求人媒体、エージェント、スカウト、リファラル。チャネルが増えるほどオペレーションは複雑化します
逆に、採用人数が年間数名で、社内に専任の採用担当がいる企業であれば、人材紹介の活用で十分なケースもあります。
採用代行導入の4ステップ
Step 1. 要件定義 まず「何に困っているか」「何を委託したいか」を明確にします。業務範囲、採用目標、予算、期間を整理しましょう。委託範囲に勧誘が入るなら、前章の手続きと期限もここで確認します。
Step 2. ベンダー選定 複数のRPOベンダーに相見積もりを取り、自社の課題に合った提案を比較します。実績、対応業種、料金体系、担当者との相性を確認してください。個社ごとの実績と評価軸を並べて見るときは、採用代行(RPO)10サービス比較、7つの評価軸と料金相場・導入事例にまとめてあります。
Step 3. 契約・キックオフ 契約を締結し、委託する業務範囲、コミュニケーション方法、レポート頻度を決定します。選考基準の擦り合わせは、この段階で徹底的に行います。
Step 4. 運用・改善 運用が始まったら、定期的にKPIをモニタリングし、改善サイクルを回します。委託先との週次ミーティングでナレッジ共有を行えば、ノウハウの内製化にもつながるはずです。
AI RPOで変わる採用代行の未来
採用代行市場は、AI技術の統合によって転換期を迎えています。前掲のRPOAとLighthouse Research & Advisoryの調査も、買い手が何を求めているか、どの提供形態が選ばれているか、提供会社を乗り換える理由、そしてRPOを試した企業が採用機能を内製化へ戻す動機を主要な論点に挙げています(RPOA・Lighthouse Research & Advisory・2025年・n=519)。
従来型との違いを掘って見るときは、AI RPOとは?従来のRPOとの違いとエンジニア採用で効果が出る仕組みを参照してください。
AIが変えているのはスカウト文面・マッチング・データ分析の3点
従来の採用代行は「人の手による代行」が中心でした。しかし今、AIがその業務の多くを変えつつあります。
- スカウト文面の自動生成。候補者一人ひとりの経歴に合わせたメッセージをAIが作成
- 候補者のマッチングスコアリング。スキルデータと求人要件を照合し、最適な候補者を数値で可視化
- 採用データの分析・予測。どのチャネルが効果的か、いつ採用活動を強化すべきかをデータで判断
採用代行にAIを組み込んだA社ではスカウト承諾率が2.4倍になった
Offers AI RPOは、AIを採用プロセス全体に組み込んだ次世代型の採用代行サービスです。
株式会社overflowが公表したAIスカウト生成機能のリリースによると、東証グロース市場上場のA社ではスカウト承諾率が13.1%から31.7%へ2.4倍に改善しました(2024年10月時点・各社スカウト承諾率の実績数値)。同リリースはシード期スタートアップのB社の19.0%から32.4%への改善も併記しており、いずれも個社の実績で、導入企業全体の平均ではありません。スカウト文作成の工数は80%削減と発表されています(株式会社overflow調べ・2024年10月時点)。
エンジニアやデザイナーを中心に40,000人が登録するデータベースを基盤に、採用戦略の策定からKPI管理まで一連のプロセスを支援しています。
CTO・VPoEなど採用難易度が高いポジションには、専任チームが予算にコミットする予算型リテーナープランも用意されています。
採用代行検討のポイント整理
採用代行(RPO)とは、採用業務の一部または全部を外部の専門企業に委託するサービスです。
- 市場規模。RPOを含む人事業務アウトソーシング市場は2024年度に1兆1,163億円(前年度比4.8%増)。RPO単独の公表値は継続しておらず、採用領域3市場計の706億円は2022年度の予測値である
- 業務範囲。求人票作成、スカウト配信、面接調整からデータ分析まで委託可能。「コア業務は自社、ノンコアは委託」の切り分けが出発点
- 他サービスとの違い。採用代行は「業務」の委託、人材紹介は「人材」の紹介、人材派遣は「人手」の補充
- 法律。応募の勧誘まで任せて報酬を払うなら委託募集で、許可と報酬の額の認可が要る。申請は募集開始月の21日前または14日前まで。無許可は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
- メリットとデメリット。工数削減・質とスピード・専門知識・コストの4方向に効果が出る一方、ノウハウが残りにくくミスマッチも起きる。ナレッジ共有と要件定義の徹底で対策できる
- 費用。導入企業への調査(342人・スマートキャンプ)では月額10万〜20万円未満が最多層で、月額100万円以上も20%。人材紹介は常用就職1件あたり約103万円(厚生労働省の令和6年度集計)
スカウト運用の工数削減や採用プロセスの効率化を検討している方は、Offers AI RPOプランをご確認ください。CTO・VPoEなどハイクラスポジションの採用には、予算型リテーナープランもあります。