目次
エンジニアの採用は売り手市場が続き、優秀なエンジニアほど採用が難しくなっているのが現状です。そのような状況下において、「スクラム採用」と呼ばれる採用手法に注目が集まっています。 スクラム採用とはどのような採用方法なのか、採用の方法やポイントとともに解説します。
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スクラム採用とは
(出典)https://www.pexels.com/
スクラム採用は採用管理システム事業を展開する「HERP社」(東京都)がつくった言葉で、現代に適した採用手法の一つです。どのような背景で誕生し、そしてどのような採用手法なのかを、まずは解説します。
現場主体の採用方式
スクラム採用とは、HERP社が提唱している採用手法です。HERP社では、スクラム採用を以下のように定義しています。
「スクラム採用:HERP社が提唱している、現場社員を巻き込むことで有効母集団の増加・内定受諾率の向上・ミスマッチの削減といった採用の質的改善を実現する採用手法」
引用:【スクラム採用を完全理解する全3回】第1回 自社のスクラム採用レベルの把握とレベル別の推進手法
「スクラム」と聞くと、ラグビーで試合再開時に肩を組んでいる状態を想像する人も多いのではないでしょうか。 このように、スクラムは現場社員と経営陣、人事が一丸となって採用に取り組むことを指します。
スクラム採用が注目される背景
現在スクラム採用が注目されるようになった背景には、以下の要因があると考えられます。
- 採用活動が多様化している
- ミスマッチを防ぎたい
一つ目の要因は、DX化が進むことで、採用活動が多様化していることです。求人広告や説明会以外に、SNSやリファラルなど、多様化した採用にあわせて採用のチャネルを広げたり、リソースを注ぐ必要が出てきました。
もう一つの要因は、採用におけるミスマッチを防ぎたいという点です。採用活動が多様化し、速度が求められる中で、より自社にとって必要な人材を採用することが求められます。
スクラム採用は現場の人間も参加することで、現場で必要な人材を採用することができ、ミスマッチの防止にもつながるのです。
リファラル採用との違いとは
現場の人間が採用活動に参加するため、スクラム採用は「リファラル採用」と混同されることがよくあります。しかし、この二つの採用手法は異なるものです。
リファラル採用は、現場の人間の知人や友人を推薦してもらう手法になります。推薦した時点で以降の採用フローに関わるケースは少なく、直接的な採用活動に関わるわけではありません。
一方、スクラム採用は求人票の作成やスカウトメールの送信、面接など採用活動に直接関わります。リファラル採用と比べて採用に関わる工数が高く、その分エンゲージメントが高まるのも特徴です。
スクラム採用の要件
(出典)https://www.pexels.com/
現場の人間を巻き込むスクラム採用とは、具体的にどのような採用手法になるのでしょうか。
スクラム採用の定義について紹介します。
採用の裁量を現場に委譲する
スクラム採用では、採用の権限を現場に委譲します。
現場が主導権を持つことで、現場の状況を採用活動に反映し、必要なスキルとリソースを持つ人を採用することが可能になります。
また、実際に現場の人間がコミュニケーションをとりながら採用をすすめることで、実際に採用された後にコミュニケーションが円滑になる効果にも期待が持てるでしょう。
採用活動を通じた成果を可視化
採用活動は採用自体がゴールではなく、採用した人材が活躍してはじめてゴールといえます。
スクラム採用では、実際に採用した人材が活躍できたかどうかを分析し、社内の人間にフィードバックします。そうすることで、より採用活動の 効率を高めるとともに、採用に携わった社員一人ひとりが採用を振り返り、当事者意識を持って採用活動に取り組むようになります。
スクラム採用のメリット
(出典)https://www.pexels.com/
スクラム採用を取り入れることで、採用活動においてどのようなメリットがあるのでしょうか。 具体的なメリットについて解説します。
現在の市場に適応している
現在のエンジニアは売り手市場となっています。優秀なエンジニアは企業間で の取り合いになることも珍しくなく、企業側が積極的にエンジニアに対し情報発信やスカウトを行っています。
そうした現在のエンジニア市場において、 求人サイトや自社のWebページに応募してくる候補者を待つだけの従来の採用手法は適していません。
現場が主体となって積極的に採用活動に携わり、同じエンジニアに対し自社の魅力を発信できるスクラム採用の方が、現在の市場に適しているのです。
既存社員のエンゲージメントを高める
スクラム採用は採用活動の成果が向上するだけでなく、既存社員のエンゲージメントを高める効果ももたらします。
それは、現場の社員が自分たちの手で、現場を作っているという主体的な意識を根付かせることにあります。現場に不足しているリソースやスキルを分析して採用につなげることで、現場の課題を洗い出すきっかけにもなるでしょう。
加えて、自身の権限で採用するわけですから、育成やコミュニケーションも主体的に行いやすくなります。
誰かにやらされるのではなく、主体性を持って社員それぞれが動くことで、現場の士気もあがり、事業に対する理解度も向上するのです。
いま欲しい人材にアプローチできる
人事部が主導で採用活動を進めて行くと、現場が本当に欲しい人材にアプローチができなくなる可能性があります。
とくに、採用の決定権を持つ担当者がエンジニアのスキルやプロダクト管理に理解がないまま進めるとミスマッチになりやすく、採用コストの高騰や現場でのハレーションを招きかねません。
エンジニアに対し理解がある現場が主導で採用を進めることで、リアルタイムで欲しい候補者の人物像を洗い出し、適切にアプローチすることが可能になります。
スクラム採用における課題
(出典)https://www.pexels.com/
スクラム採用もメリットばかりではありません。誤った運用や手法への誤解により、かえって採用の失敗を招いてしまうこともあります。
そうならないためにも、スクラム採用における課題についてもあらかじめ把握しておきましょう。
採用の方針・方向性にズレが生じる
スクラム採用は、色々な部署・役職・考え方を持つ人が採用業務に携わることになります。
その結果、どのような人物を採用するか、どんなスキルセットを持った人を優先的に採用するかといった方針にズレが生じる可能性があります。
また、現場主体で採用が進んでいくため、経営や事業方針と照らし合わせたときに成果が上がらない事態も招きやすくなります。企業として、現場に求めていることやビジョンをしっかり共有することが重要です。
現場の負担が大きくなる
現場の人間が採用活動に参加するため、現場の負荷が大きくなります。
採用活動にリソースを割かれたことで通常業務に支障をきたし、プロジェクトの遅れやリソース不足を招く可能性も起こりえるでしょう。また、通常業務の合間に採用活動を行う場合、採用活動そのものがおろそかになってしまい、成果を上げられないことも起こりえます。
現場主体で採用を進める場合、現場のリソースをしっかり確保し、無理のないフローを作ることが大切です。
セキュリティリスクがあがる
現場の人間が採用活動に参加することで、採用候補者の個人情報・企業の情報を閲覧できる人の数が多くなります。
結果として、情報漏洩のリスクがあがります。会社の重要情報や候補者の個人情報が流出した場合、会社の信用を大きく損なう可能性がありますので、情報の扱いやセキュリティ対策をしっかり行う必要があります。
スクラム採用を成功させる要因は?
(出典)https://www.pexels.com/
スクラム採用を成功させるために、以下に紹介するポイントを押さえておきましょう。
経営層も採用活動に参加する
スクラム採用は現場主導の採用ですが、成功させるためには経営層の参加も不可欠です。その理由には「体制・環境の構築」と「ビジョンの共有」という2点があります。
スクラム採用は現場に負荷がかかってしまう採用手法です。そのため、通常業務とは別にリソースを確保できる体制や通常業務に支障をきたさない仕組み作りが必要になります。採用に参加しやすい環境をいかに用意するかは、経営層の仕事です。
また、採用方針がぶれたり、採用担当者によって齟齬がでないように「なぜスクラム採用を行うのか」「スクラム採用によってどのような企業を目指すのか」といったビジョンを、経営層が積極的に発信しましょう。
採用フロー・情報管理を一元化する
採用フローや情報が属人化することは避けなければなりません。採用の基準が担当者によって曖昧になると、現場に混乱をもたらし、採用活動の成果も下がります。
そうならないために、まずは採用フローをきちんと定め、担当者によって採用方針ややり方に違いが出ないようにします。同時に採用要因や面談の議事録、採用者の情報や採用後の成果などの情報を一元化し、採用活動で得た情報を、採用活動に参加している社員全員にフィードバックできる体制を構築することが大切です。
あわせて、情報漏洩が発生しないよう、情報管理の方法やガイドラインを定めることも行いましょう。
まとめ
HERP社が定義した「スクラム採用」は、採用が多様化し、売り手市場であるエンジニアの採用活動に適しています。現場の人間が採用に参加することで、より現場にとって必要な人材にアプローチができたり、既存社員のエンゲージメントが高まったりというメリットがあります。
その一方で、スクラム採用は担当者によって採用方針がぶれたり、現場に負担をかけたりという課題が生じます。課題解決のためには、経営層も採用活動に参加し、現場の人間が安心して採用活動を行える環境・体制を作ることが重要です。