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エンジニアの採用活動にデータ分析を活用すれば、課題や改善策、ターゲットに最適な採用チャネルを導き出せます。アクセス解析や採用管理システムなどをうまく活用し、採用活動の最適化・効率化を目指しましょう。データ分析の重要性や活用法を解説します。
エンジニア採用に求められるデータ分析とは?

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採用活動にデータ分析を取り入れる企業が増えています。近年は、応募者の情報を分析・管理できる優秀なツールも登場しており、データ活用に早く取り組んだ企業ほど、採用競争では優位に立てるといってもよいでしょう。
採用活動におけるデータ分析の重要性
企業は採用活動を通じて、応募者情報やエントリー数、内定者数といったさまざまなデータを取得しています。採用におけるデータ分析とは、これらのデータを活用しやすいように整理・加工・取捨選択し、次の採用に生かそうとする取り組みです。
IT人材の不足が叫ばれる中、エンジニア採用は年々ハードルが上がっています。近年はデータ分析を通じて採用活動を最適化しようという動きがあり、採用競争に勝つためには、データをいかに使いこなせるかが重要になるでしょう。
継続的なデータ分析によって採用活動をブラッシュアップしていけば、応募者の質が向上し、採用のミスマッチが低減します。根拠に基づいた選択や判断が迅速に行えるようになり、人事担当者の業務負荷も減少するでしょう。
データ分析に注力するメリット
中小企業やスタートアップ企業の多くは、エンジニア採用に課題を抱えています。応募者数が集まらない企業もあれば、入社前の内定辞退が相次ぐ企業もあり、事情は企業ごとに異なります。
データ分析のメリットは、自社の採用課題が明らかになることです。どこにボトルネックがあるのか、どのプロセスで時間がかかっているのかが可視化され、改善策が立てやすくなります。リソースを適切に割り当てられるようになるため、採用活動における無駄がなくなるでしょう。
採用期間は年々短期化しており、各プロセスに時間をかけすぎると、他社に採用機会を奪われる可能性があります。事実に基づいたデータがあれば、意思決定における不安や迷いが減り、スピーディーに次のプロセスに移行できます。
エンジニア採用で収集できるデータの種類

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データ分析結果を採用活動に生かすには、どのようなデータが得られるのかを理解し、適切な方法で収集しなければなりません。
採用活動では多くのデータが取得できますが、大きくは「応募者に関するデータ」「選考プロセスに関するデータ」「コストに関するデータ」に分けられます。
応募者に関するデータ
採用活動の初期段階では、求人媒体や自社のオウンドメディア、SNSなどを通じて応募者を集めるのが通例です。自社の求人に興味を持つ人材を集めるプロセスは、母集団形成と呼ばれます。
母集団形成で取得できるのは、以下のようなデータです。総応募者数だけでなく、応募経路ごとの数を比較することで、ポジションに適した採用チャネルの選定が可能となります。
- 総応募者数
- 応募経路ごとの応募者数
- 自社のサイトからのエントリー数
- スカウト送信数・返信数
- 説明会への参加人数
選考プロセスに関するデータ
一般的な選考プロセスは、書類選考からスタートし、筆記試験や適性検査を経て、面接(1次・2次)に進みます。
エンジニア採用の場合は、技術スキルを図るためのコーディングテストや技術面接などを挟み、最終面接へと進むのが一般的でしょう。選考プロセスでは、以下のようなデータが収集できます。
- 各選考の参加者数
- 各選考の合格者数
- 各選考の辞退者数
- 内定者数
- 内定承諾者数
- 内定辞退者数
- 入社数
コストに関するデータ
採用コストは、社内の人件費をはじめとした内部コストと、求人媒体や採用イベントに費やされる外部コストの2種類に大別されます。
何にお金がいくら使われたのか、どの過程にどれだけの時間が費やされているのかを把握することで、効率的で無駄のない採用が実現します。以下は、コストに関するデータの一例です。
- 求人サイトへの掲載料および広告費
- イベント・セミナーなどの開催費用
- 採用サイトの制作費用・システムの導入費
- 内定者フォローにかかった費用
- リファラル採用のインセンティブ
- エンジニアの採用単価
- 各担当者の人件費・活動時間
- 応募から内定までにかかった日数
エンジニア採用で分析すべきデータ項目

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データ収集後は、データ項目の整理と分析を行い、採用課題を解決するための方法を探っていきます。エンジニア採用では、どのようなデータ項目に注目すればよいのでしょうか?
応募者数や応募の経路・採用率
母集団形成の良しあしやターゲットに合った採用チャネルを選定しているかどうかは、応募者数や応募の経路・採用率から読み取れます。
例えば、応募経路ごとの採用率を分析すれば、エンジニア採用に最も効果的な採用チャネルを把握できると同時に、予算配分の見直しによるコストの削減が可能となります。
採用率の低い求人媒体は、ターゲット層に合っていないか、訴求ポイントがずれている可能性が高いでしょう。属性の分析によって、規則性や傾向を見いだせれば、ターゲットに合った訴求が行えます。
選考プロセスごとの歩留まり率
選考プロセスのデータを多角的に収集することで、採用が効率良く進んでいるかどうかが分かります。例えば、過去データとの比較や歩留まり率の分析により、どのプロセスに問題が生じているのかが明確になるでしょう。
歩留まり率とは、各プロセスに進んだ人数の割合のことで、以下の計算式で算出します。
- 歩留まり率=選考通過数÷選考対象数×100
例えば、30人の面接を実施して10人の通過者を出した場合、歩留まり率は約33%です。プロセスごとの歩留まり率を算出した後は、自社の過去のデータや業界の平均値と比較し、課題・改善点を洗い出します。
現状の採用コストや採用単価
採用コストや採用単価を洗い出し、費用に対する効果を十分に得られているかを分析しましょう。採用単価は、以下の計算式で算出できます。
- 採用単価=採用コストの総額÷採用人数
例えば、採用コストの総額が200万円で、5人のエンジニアを採用した場合、採用単価は40万円です。
数ある職種の中でも、エンジニアは採用単価が高い傾向があります。どの企業も採用活動に無限にお金を使えるわけではないため、採用コストの平均相場と比較しながら、自社に合った予算の策定を行う必要があります。
採用にかかる人件費や業務時間
採用コストは、社外に支払う費用だけではありません。人事担当者の人件費や業務時間など、内部コストがどれだけかかっているかを分析しましょう。
エンジニアの採用手法は年々多様化しており、近年は企業が応募者にアプローチをするダイレクトリクルーティングやSNS採用を行う企業が増えてきました。
これらの手法は費用がほとんどかからないのがメリットですが、企業側から情報を発信したり、面談の機会を設けたりしなければならず、人事担当者の業務負荷が増大します。
業務効率性や生産性の向上につなげるため、採用に関わった担当者数やスカウト配信の工数も採用コストに含めて分析しましょう。
エンジニア採用におけるデータ分析の例

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いくらデータを収集しても、採用プロセスや業務改善に生かせなければ、自社が求めるエンジニアの確保にはなかなかつながりません。どのようにデータ項目を分析し、プロセスに生かしていくかの活用事例を紹介します。
コストパフォーマンスの高い求人媒体を選ぶ
採用コストを抑えるには、コストパフォーマンスの高い求人媒体を選ぶ必要があります。求人媒体ごとの採用単価を算出し、費用対効果を可視化しましょう。
- 求人媒体ごとの採用単価=求人媒体にかかった費用 ÷ 採用人数
例えば、求人媒体にかかった費用が30万円の求人媒体Aで採用人数が3人であった場合と、100万円の求人媒体Bで採用人数が5人であった場合を比較してみると、それぞれの採用単価は以下のように算出できます。
- 求人媒体A:30万円÷採用人数3人=採用単価10万円
- 求人媒体B:100万円÷採用人数5人=採用単価20万円
費用対効果が低い媒体があれば、プランの変更やターゲットの見直しなどで調整を行いましょう。コストパフォーマンスの高い求人媒体だけに絞り込む手もあります。
選考辞退が発生している段階を明らかにする
「応募者は多いが、選考の途中で辞退されることが多い」という企業は少なくありません。選考を辞退するエンジニアは優秀層が多く、競合他社のオファーや内定を承諾している可能性があります。
歩留まり率が低いプロセスを特定できれば、辞退率を減らす施策が打ち出せます。選考プロセスでの通過率に加え、人事担当者(面接官)ごとの通過率も出しておきましょう。以下は、歩留まり計算式の一例です。
選考プロセス | 計算式 |
途中辞退率(受験者数に対する途中辞退者数) | 途中辞退者数÷受験者数×100 |
1次選考辞退率(一次選考の応募者数に対する一次選考前の辞退者数) | 1次選考前の辞退者数÷一次選考応募者数×100 |
面接辞退率(面接受験者数に対する面接辞退者数の割合) | 面接辞退者数÷面接受験者数×100 |
内定承諾率(内定者のうち内定を承諾した人の割合) | 内定承諾者数÷内定者数×100 |
内定辞退率(内定者のうち内定を辞退した割合) | 内定辞退者数÷内定者数×100 |
採用ターゲットを見直して早期離職を防ぐ
採用活動は、人材が定着してこそ成功したといえます。エンジニアの早期離職の多くは、採用のミスマッチに起因しており、採用ターゲットを一から見直して再定義する必要があります。
まずは、採用に至った人材や早期退職した人材、長く定着している人材などを洗い出し、どのような共通項があるかを分析しましょう。
ミスマッチが多い企業は、人事と開発チーム(現場)の意思疎通がうまくいっていない可能性が考えられます。人事のみで採用を完結すると、開発チームが求めているエンジニア像を的確に把握できません。
最も応募率の高い採用経路を把握する
費用対効果の高い求人媒体をピックアップすると同時に、最も応募率が高かった採用チャネルを洗い出しましょう。
一昔前までは、求人媒体や転職エージェントによる採用手法がメインでしたが、近年は採用手法が多様化・複雑化しています。LinkedInやWantedlyといったビジネスSNSを活用するエンジニアも多く、使い方によっては求人媒体よりも高い効果が見込めます。
ここで重要なのが、それぞれの採用率を割り出し、パフォーマンスを検証することです。「応募は多いが、辞退者が多い」「応募数は少ないが、採用率が高い」など、採用チャネルごとの傾向が見えてきます。
面接担当者の評価の偏りを是正する
エンジニアの採用面接では、複数の担当者が関わります。採用基準を設定していても、個人の主観や好みが評価に影響する恐れがあるため、偏りがどれだけあるかをデータで分析する必要があります。
例えば、面接官Aが関わった面接では、どのような特性・技術レベルを持った人材が採用されたのか、選考や面接ではどのような評価になったのかを分析することで、面接官ごとの評価の軸が明らかになるでしょう。
偏りが大きい場合は、面接シートや面接マニュアルを作成し、基準の擦り合わせを徹底します。
求人サイトの内容を改善する
求人サイトを活用している企業は、アクセス解析を通じてサイトの改善を図りましょう。アクセス解析ツールを活用すれば、以下のようなデータが取得できます。
- アクセス数
- 閲覧者の属性
- ページビュー数
- ページ別訪問数
- 滞在時間
- リピートしているユーザーの数
- 検索キーワード
平均滞在時間や全く閲覧されていないページをチェックすることで、いち早く改善すべき部分が分かります。
アクセス数は多いが応募者が少ないケースでは、募集内容に魅力を感じているエンジニアが少ないことがうかがえます。アクセス数自体が少ない場合は、SEOが必要でしょう。
有効なデータ分析をするためのポイント

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採用活動の結果は、有効なデータ分析ができるかどうかに左右されます。収集したデータを無駄にしないためにも、社内の運用環境を整えるところから始めましょう。
目的や採用基準を明らかにする
目的の明確化とターゲットの設定は、採用活動を戦略的に行うための基本です。何のためにデータ分析を行うのかが不明瞭な状態では、収集したデータを有効活用できません。
「コストをかけている割には人材が採用できていない」「ミスマッチによる離職が多い」など、自社が抱える課題を洗い出した上で、ターゲット像および採用基準を明確にしましょう。
ゴールや基準が明確であれば、データ分析によって現状とのギャップを認識でき、取るべき行動が分かるようになります。
社内のエンジニアの協力を得る
データ分析を含め、採用活動では社内エンジニアの協力が不可欠です。人事担当者の中に技術部門出身者がいない場合、開発チームが求める人材とはかけ離れた人材を採用してしまうリスクがあります。
いくらベテランの面接官でも、技術面のスキルや開発チームのメンバーとの相性までは的確に判断できません。
社内エンジニアに協力を仰ぐ際は、開発業務に影響が出ないように、十分なリソースを確保します。「チームに必要な人材が確保できる」「採用支援を評価の対象とする」など、採用活動に関わってもらうことのメリットを提示しましょう。
PDCAサイクルで改善を積み重ねる
採用活動で結果を出すには、PDCAサイクルを効率良く回す必要があります。PDCAを採用活動に当てはめると、以下のような順番になります。
- Plan:採用計画を立てる
- Do:計画に基づき、採用を実行する
- Check:採用活動の振り返り(評価)をする
- Action:課題を改善する
データ分析を最大限に活用できるのは、PDCAサイクルのPlanとCheckの段階です。分析を通じて課題を見つけ、予測を立てたり改善策を講じたりして、さらに次の採用計画に生かしていきます。
分析結果が必ずしも正しいとは限らないため、PDCAサイクルを回して改善を積み重ね、採用計画をブラッシュアップしていきましょう。
採用活動の分析に有用なシステム

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本来、データ分析は大変手間がかかる作業ですが、近年はデータの一元管理や分析に特化したシステムが登場しています。人事担当者の業務負荷を減らし、作業を効率化するためにも、分析に有用なシステムは積極的に導入しましょう。
採用管理システム
採用管理システムは、採用活動におけるさまざまな情報を一元管理するツールです。
応募者情報や選考進捗、面接の評価といった情報が一つのシステム上で管理できるため、人事担当者の作業効率が大幅に向上するのが利点です。データ共有で業務の属人化が減るほか、抜け漏れや見落としといった人為的なミスも防止できます。
搭載機能はシステムごとに異なりますが、多くのシステムにはデータ分析機能やレポート機能が実装されています。求人媒体との連携機能があり、応募者数や応募経路、採用率などの把握も容易です。
エンジニア採用を成功させる鍵は、PDCAサイクルをいかに効率良く回すかです。採用管理システムで自社のボトルネックをスピーディーに分析し、改善につなげていきましょう。
Googleアナリティクス
求人サイトや採用ページのアクセス解析に活用できるのが「Googleアナリティクス」です。Googleが提供しているアクセス解析ツールで、無料版と有料版の2種類があります。
サイトの訪問者数・訪問経路・属性・使用したデバイスなどが分かるほか、Googleの機械学習により、どのようなユーザーが応募や離脱の可能性が高いのかを割り出せます。
インターネットが普及した現代では、採用サイトによる募集がほぼ当たり前になっています。人事担当者は、アクセス解析ツールを使いこなせるようにしておきましょう。
出典:お客様のビジネスに適した分析ツールとソリューション - Google アナリティクス
データ分析により採用活動の最適化を目指す

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採用活動にデータ分析を活用すると、成果につながりやすい採用チャネルの選定や適切な予算配分が行えるようになります。エンジニア採用に関する知見やノウハウが徐々に蓄積されていくため、自社が求める人材をスムーズに採用できるようになるでしょう。
データの収集や分析を全て人の手で行おうとすると、膨大な時間がかかります。採用管理システムやGoogleアナリティクスなどをうまく活用し、人事担当者の作業量を減らしましょう。