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リーンスタートアップとは|手法・MVP・成功事例

リーンスタートアップとは|手法・MVP・成功事例
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株式会社overflow / 編集担当

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株式会社overflowの運営するOffers HR Magazine編集部です。

リーンスタートアップは、新しい製品や事業をつくるときに、仮説をもとに実用最小限の製品(MVP)を素早く作り、顧客の反応を測って学ぶ工程を繰り返す進め方です。

提唱者は米国の起業家エリック・リースで、日本語版の著書『リーン・スタートアップ』は2012年に刊行されました。

判断の軸は「この製品を作れるか」ではなく「この製品を作るべきか」です。検証の結果が仮説と違えば、そのまま進むか方向転換(ピボット)するかを選び直します。

リーンスタートアップの定義と提唱者

リーンスタートアップとは、作り手の思い込みで顧客にとって価値のない製品を作ってしまうことによる時間・労力・資源のムダをなくし、求められる製品やサービスを早く生み出し続けるための方法論です。日本語版の版元の書籍ページは、この方法論を「構築-計測-学習」のフィードバックループを回す工程として紹介しています。

出所:日経BP「リーン・スタートアップ」書籍ページ(2012年4月16日発行・エリック・リース著・井口耕二訳)

スタートアップは起業したばかりの会社に限らない

リーンスタートアップが対象にする「スタートアップ」は、創業したばかりの会社だけを指す言葉ではありません。エリック・リースの定義では、スタートアップは極めて不確実な状況で新しい製品やサービスを生み出すための人の組織です。

公式サイト(theleanstartup.com)の原則も、スタートアップにいるためにガレージで働く必要はないと書いています。大企業の新規事業部門や社内ベンチャーのチームも、この定義に当てはまる組織です。社内ベンチャーの立ち上げ方は「社内ベンチャーとは?設立の目的と方法」で扱っています。

提唱者エリック・リースとIMVU

リーンスタートアップを体系化したエリック・リースは、IMVU(3Dのアバターでチャットするサービス)に、共同創業者・CTO(最高技術責任者)として参画した起業家です。IMVU は本人にとって3社目の起業でした。

公式サイトの著者紹介によると、2010年にはハーバード・ビジネス・スクールのアントレプレナー・イン・レジデンスに就いています。英語版の著書『The Lean Startup』は Crown Business から刊行され、日本語版は2012年4月16日に刊行されています(井口耕二訳・408ページ)。

「リーン」はコストを削ることだけを意味しない

リーンスタートアップの「リーン」は、使うお金を減らすことや、早く安く失敗することだけを指す言葉ではありません。公式サイトの原則によれば、製品開発の進め方そのものに方法論を持ち込むことが本旨です。

製造業では品質の高い製品を作ることが進み具合の単位になるのに対し、リーンスタートアップでは検証による学び(validated learning)を進み具合の単位とします。何を作ったかではなく、顧客について何が確かめられたかで前に進んだかを測る考え方です。

リーンスタートアップの手法は構築・計測・学習の繰り返し

リーンスタートアップの手法は、アイデアを製品にし(構築)、顧客の反応を測り(計測)、続けるか方向転換するかを学ぶ(学習)という輪を、できるだけ速く回すことです。公式サイトは、スタートアップのあらゆる工程をこの輪を速めるために組み立てるべきだとしています。

段階

やること

出てくるもの

仮説

顧客が抱える課題と、それを解く製品の価値を仮説にする

検証できる形の仮説

構築

仮説を確かめるのに必要な最小限の製品(MVP)を作る

MVP

計測

顧客の行動を、原因と結果が分かる指標で測る

判断に使える数値

学習

数値をもとに、そのまま進むか方向転換するかを決める

継続か、ピボットか

出所:The Lean Startup「Principles」、日経BP「リーン・スタートアップ」書籍ページをもとに編集部作成

仮説の段階では「作るべきか」を問う

仮説を立てる段階の問いは、製品を作れるかどうかではなく、その製品を作るべきか、その製品やサービスを軸に続けられる事業を築けるかです。公式サイトの原則は、スタートアップを一つの問いに答えようとする大きな実験と位置づけています。

仮説は、検証して当たり外れが分かる形で書くのが基本です。「顧客は〜に困っている」「〜なら月額で払う」のように誰が何をするかを書いておけば、計測の段階で確かめる指標が決まります。

構築の段階ではMVPで学びを始める

MVP(Minimum Viable Product・実用最小限の製品)は、完成品ではなく、学びをできるだけ早く始めるために作る最小限の製品です。最初にすべきことは解くべき課題を見定めることで、そのうえでMVPを作って顧客に使ってもらいます。

MVPが1回で当たるとは限らない点も、押さえておきたいところです。公式サイトの事例紹介によると、Googleに買収されたソーシャル検索のAardvarkは、顧客の課題を解く方法を1つずつ試すMVPを続けて作り、6つ目の試作品が現在のAardvarkの形になりました。

計測の段階では原因と結果が分かる指標を選ぶ

計測の段階で使う数値は、施策と結果の因果が分かる指標(actionable metrics)です。登録者の総数のように増えて見えるだけの数字では、仮説が当たったのかを判断できません。

公式サイトは、進み具合の測り方・節目の置き方・作業の優先順位の付け方を、スタートアップ向けの新しい会計(イノベーション会計)として扱っています。問題が起きたときに「なぜ」を5回くり返して原因をたどる方法(Five Whys)も、手法の一つです。

学習の段階で継続かピボットかを決める

学習の段階では、計測の結果をもとに、そのまま進むか(継続)、方向転換するか(ピボット)を決めます。ピボットとは、製品・戦略・成長のエンジンについての根本の仮説を新しく試すための、構造的な軌道修正のことです。

計測した数値が事業の原動力を動かしていなければ、ピボットを検討する合図になります。日本語版の書籍ページによれば、その判断はいっときの成果ではなく、事業として続けられるかどうかで見るものです。

リーンスタートアップと計画型の進め方の違い

リーンスタートアップと、綿密な計画を立ててから作り込む計画型の進め方との違いの中心は、何を確かめながら進むかです。日本語版の書籍ページは、計画型をロケットの発射に、リーンスタートアップを状況に応じて進路を変える自動車の運転にたとえています。

比べる点

計画型の進め方

リーンスタートアップ

最初の問い

この製品を作れるか

この製品を作るべきか

進み具合の単位

作った製品・機能

検証による学び

計画の扱い

最初に立てた計画どおりに進める

検証の結果で進路を変える

仮説が外れたとき

完成後に分かる

MVPの段階で分かり、ピボットを選べる

出所:The Lean Startup「Principles」、日経BP「リーン・スタートアップ」書籍ページをもとに編集部作成

改善の輪を回す点は、PDCA(Plan・Do・Check・Action)サイクルと共通です。PDCAの回し方は「PDCAサイクルとは?成功のポイント」で扱っています。リーンスタートアップの重心は、計画の前提にある「その製品は求められているか」という仮説そのものを検証の対象にし、外れたら方向を変える点にあります。

人事・経営者が新規事業のチームづくりで押さえる点

リーンスタートアップで新規事業を進めるとき、人事・経営者が押さえたいのは、検証の進み具合に合わせて人を増やすことと、採用活動そのものにも構築・計測・学習を当てはめられることです。公式サイトの原則は、実験がうまくいけば初期の顧客を集め、次の実験ごとに人を加え、やがて本格的に製品を作り始めるという順序を描いています。

検証の段階に合わせて人を増やす

新規事業のチームは、仮説が確かめられる前から完成形の人数をそろえるより、検証の段階ごとに必要な役割を足していく方が、リーンスタートアップの考え方に沿います。最初の段階で要るのは、仮説を立てて顧客に当たる人と、MVPを素早く作れる人です。

本格的な開発や販売を担う人を加えるのは、検証が進んで作るべきものが見えてからです。スタートアップの組織と存続の関係は「スタートアップの成功率はどれくらい?」でも扱っています。

採用活動にも構築・計測・学習を当てはめる

採用活動も、求人を仮説として出し、反応を測り、書き方や要件を直す輪として回せます。求人票は「この仕事内容と条件なら、求める経験を持つ人が応募する」という仮説で、応募数・面談への進み具合・選考の通過率は、計測の数値という位置づけです。

数値が仮説と違えば、仕事内容の書き方、必須と歓迎の要件の分け方、訴求する点を変えて出し直すのが次の一手です。応募から選考までの数字を記録する応募管理シートなどのテンプレートは、Offers のお役立ち資料からダウンロードできます。

社内の新規事業では起業家の役割を任せる

社内で新規事業を立ち上げるなら、担当者に起業家の役割を任せ、計画どおりに進んだかではなく、検証で何を学んだかで評価する仕組みが必要です。日本語版の書籍ページも、リーンスタートアップは会社を興す人に限らず、企業や組織のなかで新しい事業を始める人にも役立つと紹介しています。

リーンスタートアップの成功事例

リーンスタートアップの事例として提唱者の公式サイトが挙げるのは、Dropbox・IMVU・Aardvarkなどです。Dropboxは動画をMVPにして作り込む前に需要を確かめ、Aardvarkは6つ目の試作品で事業の形を決めました。方向転換の例としては、位置情報アプリから写真共有へ切り替えたInstagramの立ち上げの経緯があります。

企業

リーンスタートアップとの関わり

公表されている結果

Dropbox

3分の画面録画の動画をMVPにして、作り込む前に反応を確かめた

ベータ版の待機リストが1日で5,000人から75,000人へ(2008年3月)

IMVU

新機能とその開発の進め方を実験で決める

提唱者が共同創業者・CTOとして参画した会社

Aardvark

課題の解き方を1つずつ試すMVPを続けて作った

6つ目の試作品が事業の形になり、のちにGoogleが買収

Instagram

位置情報アプリBurbnから写真共有へ方向転換した

公開から1週間で利用者10万人

出所:ドリュー・ヒューストン「Startup Lessons Learned」(Dropbox)、The Lean Startup「Case Studies」(IMVU・Aardvark)、TechCrunch「A Pivotal Pivot」(2010年11月8日・Instagram)

Dropboxは動画をMVPにして需要を確かめた

Dropboxは、ファイル同期の製品を作り込む前に、3分の画面録画の動画をMVPとして使い、需要を確かめた会社です。共同創業者でCEOのドリュー・ヒューストンのスライド「Startup Lessons Learned」によると、2007年4月にHacker Newsへ画面録画を投稿して多くの反応を集め、2008年3月に公開したベータ版の紹介動画では、ベータ版の待機リストが1日で5,000人から75,000人に増えました。

同じスライドは、学びとして、最大のリスクは誰も欲しがらないものを作ることだと述べています。利用者の手に渡すものはコードでなくてもよく、できるだけ早く本当の反応を得ることが要点です。

IMVUは新機能を実験で決める

IMVUは2004年に創業した3Dのチャットとアバターの着せ替えのコミュニティで、エリック・リースが共同創業者・CTOとして参画した会社です。公式サイトの事例紹介は、IMVUが新しい機能も、その機能を開発する進め方も、実験を通じて決めていると紹介しています。

Instagramは位置情報アプリから写真共有へ方向転換した

Instagramの前身は、位置情報を使うWebアプリ(HTML5製)のBurbnです。TechCrunchの2010年11月8日の記事によると、創業者のケビン・シストロムとマイク・クリーガーはBurbnに約1年を費やしたものの、機能が多すぎると判断し、写真・コメント・「いいね」以外の機能をすべて削って作り直しました。

作り直した写真共有アプリのInstagramは、公開から1週間で利用者が10万人に達しています。積み上げた機能を捨て、顧客に使われていた部分に絞った判断は、ピボットの典型です。

リーンスタートアップのメリット

リーンスタートアップのメリットは、作り込む前に「作るべきか」を確かめられるため、顧客に求められない製品に時間と人手を使い続ける事態を減らせることです。仮説が外れても、MVPの段階で分かれば、ピボットの判断を早く下せます。

ほかに、次のような利点があります。

  • 不確実な状況でも、検証による学びを単位に進み具合を説明できる
  • 顧客の反応を早い段階から製品に反映できる
  • 新規事業の担当者と経営者が、継続かピボットかを数値をもとに話し合える

リーンスタートアップの注意点と向かない場面

リーンスタートアップの注意点は、MVPを出すこと自体が目的になると、測る指標があいまいなまま試作だけが増え、継続かピボットかを決められなくなることです。進める前に、何が分かれば次に進むのかを仮説と指標で決めておきましょう。

登録者の総数のように増えて見えるだけの指標は、施策の効果を示しません。判断には、原因と結果が分かる指標を選ぶのが原則です。

ピボットを重ねるうちに、事業として何を実現したいのかを見失うこともあります。方向転換のたびに、目的を確かめ直してください。

医療・金融・インフラのように最初から安全性や信頼性が求められる製品では、MVPだからといって品質を下げられません。最小限の範囲を慎重に決める必要があります。

完成度の低いMVPを広く公開すると、初期の利用者の評判に響くこともあるでしょう。検証の相手と範囲を絞れば、影響を抑えられます。

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