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スタートアップの福利厚生|企業規模別の費用と具体例

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スタートアップの福利厚生|企業規模別の費用と具体例

スタートアップの福利厚生は、知名度や給与水準で大企業と並びにくい会社が、働きやすさで人材を集め、長く働いてもらうための手段です。

予算が限られるぶん、何でも揃えるのではなく、従業員が実際に使う制度から順に整える考え方が向いています。

福利厚生の区分、企業規模による費用の差、健康・学び・働き方・生活の4分野の具体例、導入時の注意点と効果の測り方を、公的統計と法令・税の定めに沿って整理しました。

Offers HR Magazine編集部監修者

株式会社overflow / 編集担当

Offers HR Magazine編集部

Offers HR Magazine 編集部は、株式会社overflow が運営する採用メディアの編集チームです。エンジニア採用に取り組む人事・採用担当者に向けて、採用手法・人事制度・組織づくりの情報を届けています。

スタートアップの福利厚生の定義と2つの区分

福利厚生は、企業が給与とは別に、従業員の生活や健康、働きやすさを支えるために設ける制度やサービスの総称です。法律で負担が義務づけられた法定福利と、企業が任意に設ける法定外福利の2つに分かれ、スタートアップが独自色を出せるのは法定外福利の側になります。

法定福利と法定外福利の違い

法定福利は社会保険の保険料の事業主負担のように法律で負担が決まっているもので、法定外福利は住宅手当や食事補助のように、企業が内容と対象を自社で決める制度です。

区分

主な内容

企業の裁量

法定福利

健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険などの保険料の事業主負担

無し(法律で負担が決まる)

法定外福利

住宅手当・借り上げ社宅、食事補助、健康診断の上乗せ、研修や書籍購入の補助、育児・介護の支援

有り(内容・対象・金額を自社で決める)

スタートアップが福利厚生に取り組む目的

スタートアップが福利厚生に取り組む主な目的は、人材の獲得と定着、従業員の健康の維持、会社の考え方を制度の形で示すことの3つです。

知名度や資金力で大企業と並びにくいスタートアップにとって、福利厚生は給与以外の判断材料として求職者に示せる要素になります。

急成長期は1人あたりの業務量が増えやすく、休息や健康を支える制度は、長く働き続けてもらうための土台になります。どの制度を入れるかには、会社が従業員の何を大事にしているかが表れるものです。

企業規模別に見た法定外福利費の金額と内訳

厚生労働省の令和3年「就労条件総合調査」では、常用労働者1人1か月平均の法定外福利費は4,882円でした。企業規模別では1,000人以上の5,639円に対して30〜99人は4,414円で、項目別に最も開きがあるのは住居に関する費用(3,974円と960円)です。

企業規模

法定外福利費の計

住居

医療保健

食事

私的保険制度への拠出金

調査計

4,882円

2,509円

729円

493円

373円

1,000人以上

5,639円

3,974円

768円

174円

111円

300〜999人

4,567円

2,506円

710円

427円

157円

100〜299人

4,546円

1,832円

756円

690円

367円

30〜99人

4,414円

960円

660円

849円

1,027円

出典:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査 結果の概況」第19表(2021年11月公表・常用労働者1人1か月平均)。

30〜99人の企業は、食事(849円)と私的保険制度への拠出金(1,027円)では1,000人以上(174円・111円)を上回っています。1,000人以上より少ない項目のうち、最も開きがあるのは住居の費用でした。

同調査の報道発表資料によると、調査の対象は常用労働者30人以上の民営企業で、費用は令和2年(又は平成31(令和元)会計年度)の1年間の分です。30人未満のスタートアップの実額は含まれないため、自社の規模に近い30〜99人の行を目安にするのが現実的です。

スタートアップで導入される福利厚生の具体例

スタートアップで導入される福利厚生の具体例は、健康、学びとキャリア、働き方、生活の4分野に分けると、自社に足りない分野が見えやすくなります。

分野

制度の例

ねらい

健康

健康診断の項目の上乗せ、人間ドックの費用補助、外部カウンセラーへの相談窓口、運動施設の利用補助

不調の早期発見と、働き続けられる体調の維持

学び・キャリア

外部研修やカンファレンスの参加費補助、書籍購入の補助、資格の受験料補助

知識と技術の更新、成長の機会の提示

働き方

フレックスタイム制、リモートワーク、時差出勤

生活の事情に合わせて働く時間と場所を選べるようにする

生活

住宅手当・借り上げ社宅、食事補助、育児・介護の支援

生活の基盤を支え、ライフイベントでの離職を防ぐ

健康を支える制度

健康を支える制度には、法定の健康診断への上乗せ、専門家に相談できる窓口、運動の習慣づくりを支える補助の3つの型があります。

上乗せの例は、人間ドックの費用補助やがん検診の追加です。健康診断の結果をもとに、生活習慣病のリスクがある人へ保健指導の機会を用意する方法もあります。

メンタルヘルスでは、外部の専門機関と契約して従業員が相談できる窓口(EAP:従業員支援プログラム)を設ける方法があり、社内に専任者を置けない規模でも始められます。運動の補助は、近隣のスポーツクラブとの法人契約や、月会費の一部を会社が負担する形が例です。

学びとキャリアを支える制度

学びとキャリアを支える制度は、社外の研修やカンファレンスへの参加費、書籍の購入費、資格の受験料を会社が補助するものが中心です。

参加後に社内で学んだ内容を共有する場を設けると、個人の学びがチームの知識になります。書籍の補助は、月額の上限を決めて購入費を補助する方法と、電子書籍の読み放題サービスを法人で契約する方法の2通りが代表的です。

資格の補助は、受験料の負担と合格時の報奨金を組み合わせる例があります。エンジニアなら情報処理技術者試験やクラウドの認定資格など、業務に関わる資格に対象を絞ると費用を管理しやすくなります。

柔軟な働き方を支える制度

柔軟な働き方を支える制度の代表は、フレックスタイム制、リモートワーク、時差出勤の3つです。

フレックスタイム制は、3か月以内の清算期間と、その期間の総労働時間を労使協定で定め、日々の始業・終業の時刻を従業員が自分で決める制度です(労働基準法第32条の3)。就業規則への規定と労使協定が要り、清算期間が1か月を超える場合は労使協定を労働基準監督署へ届け出ます。

リモートワークは、通勤時間を減らせることや、住む場所を問わずに人材を探せることが利点です。一方で、情報セキュリティの対策と、顔を合わせない中での連絡や評価の方法を、導入の前に決めておく必要があります。

時差出勤は、始業時刻を複数の選択肢から選べる制度です。混雑を避けた通勤や、家庭の事情に合わせた出勤がしやすくなります。

生活を支える制度

生活を支える制度には、住宅、食事、育児・介護の支援があり、住宅と食事は給与として課税されない条件が国税庁の案内で定められています。

住宅は、企業規模による費用の差が最も大きい分野です。会社が借りた住宅を従業員に貸す借り上げ社宅は、従業員から賃貸料相当額(建物と敷地の固定資産税の課税標準額などから計算する額で、他から借りた社宅でも同じ計算になり、会社が払う家賃とは別の額です)の50%以上の家賃を受け取っていれば、差額は給与として課税されません。現金で支給する住宅手当は、給与として課税されます(国税庁 タックスアンサー No.2597)。

食事補助は、2026年4月に条件が変わりました。国税庁の案内によると、国税庁は令和8年3月31日に通達を改正し、食事の現物支給で給与として課税されない上限を月額3,500円から7,500円へ引き上げ、令和8年4月1日以後に支給する食事から適用しています。

非課税になるのは、従業員が食事の価額の半分以上を負担し、かつ会社の負担額が月7,500円(税抜き)以下の場合です。現金で食事代を補助すると、深夜勤務者の夜食代(1食650円以下)を除いて全額が給与として課税されます(国税庁 タックスアンサー No.2594)。

育児・介護の支援には、法定を上回る休業期間や休暇日数、休業中の給与の一部補填、保育費用や介護サービスの利用補助、相談窓口の設置といった例があります。

福利厚生が採用と定着にもたらす効果

福利厚生は、求職者に給与以外の判断材料を示せる点で採用に関わり、働き続けやすい環境をつくる点で定着に関わる制度です。

採用での効果

働く時間や場所を選べる制度は、育児や介護と仕事を両立したい人など、固定的な勤務体系では応募しにくかった人にも選択肢を広げます。社内の雰囲気が伝わる制度は、会社の文化を求職者に示す材料にもなります。

制度を整えても求職者に伝わらなければ採用にはつながらないため、求人票や採用ページに制度の内容と使える条件まで書いておくことが前提です。

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定着と働きやすさへの効果

福利厚生が定着に関わるのは、体調の不安や育児・介護といった生活の変化を、退職ではなく制度の利用で受け止められるようになるからです。

育児中の従業員に在宅勤務や短時間勤務を用意すれば、キャリアを中断せずに働き続ける道ができます。相談窓口や休暇の制度は、不調が深刻になる前に手を打つきっかけになります。

定着の度合いは、制度の導入前後で定着率を比べて確かめるのが基本です。計算の方法は定着率の計算式と使い分け、従業員の意欲との関係は従業員エンゲージメントの高め方で扱っています。

福利厚生を導入するときの注意点

福利厚生を導入するときは、運用費まで含めた予算の見積もり、従業員のニーズの把握、税と労務の扱いの確認の3点を、制度を決める前に済ませておくことが重要です。

予算と優先順位の決め方

予算は、導入時の費用だけでなく毎月の運用費まで含めて見積もり、従業員が実際に使う見込みの高い制度から順に入れます。

たとえば社員食堂なら、設備の費用だけでなく、毎月の食材費や人件費も見込まなければなりません。運動の補助なら、社内にジムを設けるより、近隣施設との法人契約の方が初期費用を抑えられます。

優先順位を左右するのは、従業員の年齢層や家族構成です。住宅手当と育児支援のどちらを先にするかは、自社の従業員の構成を見て決めます。

従業員のニーズの把握

従業員のニーズは、匿名のアンケートで現在の満足度と希望する制度を聞き、1on1 で理由を補って把握します。

アンケートでは、選択肢の偏りや答えを誘導する聞き方を避けることが大切です。従業員の年齢層が上がれば育児より介護の支援が求められるように、ニーズは時間とともに変わるため、導入後も同じ設問で聞き続けます。

税と労務の扱いの確認

福利厚生費として経費にできるかと、従業員の給与として課税されるかは別の問題で、制度ごとに要件が定められています。

食事補助の上限のように要件が改正されることもあるため、導入時と見直しのたびに国税庁の案内で現在の要件を確かめることが欠かせません。フレックスタイム制のように労使協定や届出が要る制度もあり、判断に迷うときは税理士や社会保険労務士に確認します。

制度の運用を外部の福利厚生代行サービスに任せる方法もあります。選ぶときに比べるのは、従業員が使いたいメニューがあるか、費用、個人情報の管理体制の3点です。

導入後の効果測定と見直し

福利厚生の効果は、従業員満足度、制度ごとの利用率、定着率の3つを導入の前後で比べて測り、使われていない制度は定期的な見直しで内容を変えるか廃止します。

効果を測る指標

効果を測る指標は、従業員の評価を聞くもの、利用の実績を数えるもの、定着の変化を見るものに分けて持つと、制度の良し悪しを判断しやすくなります。

指標

測り方

見るところ

従業員満足度

匿名のアンケートを定期的に実施

制度ごとの満足度と改善の要望

利用率

制度ごとの利用者数を対象者数で割る

使われていない制度の洗い出し

定着率・離職率

一定期間の在籍者数と離職者数を数える

導入の前後の変化

退職理由

退職時の面談やアンケート

制度で防げた離職がなかったか

見直しの進め方

見直しは、年1回の制度全体の点検と、四半期ごとの小さな改善の組み合わせが基本です。

年1回の点検では、利用率の低い制度の内容変更や廃止、新しい制度の追加を決めます。法改正や税の扱いの変更があったときは、年1回の時期を待つ必要はありません。

集めた要望にどう対応したかを従業員に伝えると、自分たちの声が制度に反映されていると感じてもらえ、次のアンケートの回答も集まりやすくなります。

スタートアップの福利厚生の要点

スタートアップの福利厚生は、大企業と同じ制度を揃えるのではなく、自社の従業員が使う制度を選んで整え、使われているかを測って見直すことが要点です。

厚生労働省の令和3年就労条件総合調査で見ると、企業規模で最も開きがある法定外福利費の項目は住居の費用で、食事と私的保険制度への拠出金では、30〜99人の企業が1,000人以上を上回っています。

食事補助の非課税の上限が2026年4月から月額7,500円になったように、税や労務の条件は変わります。導入と見直しのたびに現在の要件を確かめ、制度の内容と使える条件を求人票や採用ページにも書いて、採用と定着の両方に生かしてください。

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