みなし雇用制度とは?メリット・デメリットやリスクについて解説

Offers HR Magazine編集部 2024年8月20日

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こんにちは。エンジニア、PM、デザイナーの副業・転職採用サービス「Offers(オファーズ)」のOffers HR Magazine編集部です。採用担当者として、常に最新の労働法制に対応していくことは、企業の安定的な運営にとって欠かせません。今回は、企業と労働者の関係性に大きな影響を与える「みなし雇用制度」について、詳しく解説します。

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みなし雇用とは何か?

みなし雇用制度とは、労働者派遣法や職業安定法などの法律に違反する形で労働者を雇用している場合、その労働者を「法律上、直接雇用しているものとみなす」という制度のことです。一見複雑に感じるかもしれませんが、その根底にあるのは、労働者の権利保護という重要な目的です。

項目

内容

定義

法律上の要件を満たしていない雇用関係において、労働者を直接雇用しているものとみなす制度

目的

労働者の権利保護、適正な労働環境の確保、違法な雇用形態の是正

根拠法

労働者派遣法、職業安定法など

みなし雇用の定義と目的

みなし雇用とは、法律で定められた要件を満たさない雇用関係において、その労働者を直接雇用しているものとみなす制度です。これは、労働者が法律の保護から外れてしまうことを防ぎ、適正な労働環境を確保するために設けられています。派遣労働者や請負労働者など、様々な雇用形態が存在する中で、みなし雇用制度は労働者の権利をしっかりと守るための重要な役割を果たしています。

例えば、違法な派遣契約を結んで働いていた場合、みなし雇用制度によって派遣先企業の直接雇用労働者とみなされ、派遣元企業ではなく派遣先企業に対して直接、賃金請求や解雇に対する異議申し立てを行うことができるようになります。

労働者にとっては、不安定な雇用状況から脱却し、安定した雇用と待遇を確保できる可能性が高まります。一方で、企業にとっては、みなし雇用が発生した場合、予想外のコスト負担や訴訟リスクが生じる可能性があるため、注意が必要です。

みなし雇用の背景と法的根拠

みなし雇用制度が生まれた背景には、労働者派遣法の制定と、その後の改正による規制強化があります。当初は、労働者派遣は認められていませんでしたが、1985年の労働者派遣法制定により、一定の条件下で認められるようになりました。

しかし、その後、派遣労働者の待遇改善や雇用の安定化を目的とした改正が繰り返され、派遣可能な業務や期間などが制限されてきました。このような規制強化の流れの中で、違法な派遣や偽装請負といった問題を防ぎ、労働者の権利を守るための制度として、みなし雇用制度が重要な役割を担うようになったのです。

みなし雇用の法的根拠は、労働者派遣法、職業安定法、労働基準法など、複数の法律にまたがっています。そのため、それぞれの法律の規定を理解し、適切な対応を行うことが企業にとって重要です。

みなし雇用が適用される状況

みなし雇用が適用される状況は、大きく分けて以下の3つに分類できます。

  1. 労働者派遣法違反の場合: 許可なく労働者派遣事業を行っている場合や、派遣可能な期間を超えて労働者を派遣している場合など、労働者派遣法に違反している場合に適用されます。
  2. 職業安定法違反の場合: 許可なく有料職業紹介事業を行っている場合や、虚偽の求人広告を出している場合など、職業安定法に違反している場合に適用されます。
  3. 偽装請負の場合: 請負契約を締結しているにもかかわらず、実態としては労働者派遣と変わらないような指揮命令関係が存在する場合に適用されます。

これらの状況に該当するかどうかは、個々のケースによって判断されるため、専門家の意見を聞くなど、慎重な対応が必要です。

みなし雇用制度が適用される5つのケース

みなし雇用制度は、様々な状況で適用される可能性があります。ここでは、代表的な5つのケースについて、具体的な事例を交えながら詳しく解説していきます。それぞれのケースについて、どのような状況でみなし雇用が成立するのか、企業はどのような点に注意すべきなのかを理解することが重要です。

ケース

内容

禁止業務に従事させる場合

派遣が認められていない業務に派遣労働者を従事させた場合

無許可事業主からの派遣受け入れ

労働者派遣事業の許可を得ていない事業主から派遣労働者の受け入れを行った場合

事業所単位の期間制限違反

1つの事業所において、派遣労働者の派遣期間が3年を超えた場合

個人単位の期間制限違反

特定の派遣労働者について、同一の組織単位での派遣期間が3年を超えた場合

偽装請負のケース

請負契約を締結しているにもかかわらず、実態として労働者派遣と変わらないような指揮命令関係が存在する場合

禁止業務に従事させる場合

労働者派遣法では、港湾運送業務や建設業務など、一部の業務については労働者派遣が禁止されています。これは、これらの業務が、労働災害のリスクが高い、専門的な知識や技能が求められるなど、労働者の安全や雇用の安定を確保する上で特別な配慮が必要とされるためです。

もし、これらの禁止業務に派遣労働者を従事させていた場合、みなし雇用が成立する可能性が高くなります。例えば、建設現場で、派遣労働者に危険な高所作業をさせていた場合などが該当します。企業は、派遣労働者を雇用する際には、派遣可能な業務かどうかをしっかりと確認し、禁止業務に従事させないように注意する必要があります。

無許可事業主からの派遣受け入れ

労働者派遣事業を行うためには、厚生労働大臣または都道府県労働局長の許可を受ける必要があります。これは、派遣事業を行う事業者が、労働者の保護や雇用の安定を確保するための一定の基準を満たしているかどうかを審査するためです。

もし、許可を得ていない事業主から派遣労働者の受け入れを行った場合、みなし雇用が成立する可能性があります。例えば、設立間もないベンチャー企業が、許可を得ていない派遣会社から安価な労働力を確保しようとした場合などが該当します。企業は、派遣労働者を受け入れる際には、派遣元事業者が適切な許可を得ているかどうかを確認する必要があります。

事業所単位の期間制限違反

労働者派遣法では、1つの事業所において、派遣労働者の派遣期間を原則として3年までと制限しています。これは、派遣労働者の雇用の安定を図るためです。もし、この期間制限を超えて派遣労働者を雇用していた場合、みなし雇用が成立する可能性があります。

例えば、特定のプロジェクトのために派遣労働者を長期にわたって雇用し続け、3年を超えてしまった場合などが該当します。企業は、派遣労働者の派遣期間をしっかりと管理し、期間制限を超えないように注意する必要があります。

個人単位の期間制限違反

事業所単位の期間制限に加えて、特定の派遣労働者について、同一の組織単位での派遣期間が3年を超えた場合も、みなし雇用が成立する可能性があります。これは、特定の派遣労働者が、長期間にわたって同じ組織で働き続けることで、実質的に直接雇用労働者と変わらない状態になることを防ぐためです。

例えば、特定の派遣労働者が、高い専門性を持つため、同じ部署で長期間にわたって働いてもらっている場合などが該当します。企業は、個々の派遣労働者の派遣期間をしっかりと管理し、期間制限を超えないように注意する必要があります。

偽装請負のケース

請負契約とは、仕事の完成を目的とした契約であり、指揮命令関係は存在しません。しかし、実際には、請負契約を締結しているにもかかわらず、実態としては労働者派遣と変わらないような指揮命令関係が存在する場合があります。これを「偽装請負」といいます。

例えば、システム開発を請け負う契約を締結しているにもかかわらず、発注元企業が、請負業者に対して、具体的な作業指示や勤務時間の管理などを行っている場合などが該当します。このような場合、みなし雇用が成立する可能性があります。企業は、請負契約を締結する際には、指揮命令関係が生じないように注意し、真の意味での請負契約を締結する必要があります。

みなし雇用制度のメリット

みなし雇用制度は、一見すると企業にとって負担の大きい制度のように思えるかもしれません。しかし、労働者の権利保護という観点から見ると、企業にとってもメリットがある側面が存在します。

メリット

内容

労働者の保護と安定

労働者の権利を保護し、雇用の安定に貢献する

企業の責任明確化

企業の責任を明確化し、コンプライアンス意識の向上を促進する

違法派遣の抑止力

違法な派遣や偽装請負を抑制し、適正な労働市場の形成に寄与する

労働者の保護と安定

みなし雇用制度の最大のメリットは、労働者の権利を保護し、雇用の安定に貢献することです。違法な派遣や偽装請負によって不安定な雇用状況に置かれていた労働者は、みなし雇用制度によって直接雇用労働者としての権利を主張できるようになります。これにより、労働者は、より安定した雇用と待遇を確保できる可能性が高まります。

また、直接雇用労働者となることで、社会保険や福利厚生などの待遇面でも改善が期待できます。さらに、企業内でのキャリアパスやスキルアップの機会も広がり、労働者のモチベーション向上にもつながる可能性があります。

企業の責任明確化

みなし雇用制度は、企業の責任を明確化し、コンプライアンス意識の向上を促進する効果も期待できます。違法な派遣や偽装請負を行っていた企業は、みなし雇用によって直接雇用義務が生じるため、労働関係法令を遵守する必要性を改めて認識することになります。

また、みなし雇用が発生した場合、企業は、過去の未払い賃金や社会保険料などを支払う義務が生じる可能性があります。このようなリスクを回避するためにも、企業は、労働関係法令をしっかりと理解し、適切な雇用管理を行うことが重要です。

違法派遣の抑止力

みなし雇用制度は、違法な派遣や偽装請負を抑制し、適正な労働市場の形成に寄与する効果も期待できます。違法な派遣や偽装請負を行う企業にとっては、みなし雇用によって多大なコスト負担や訴訟リスクが生じる可能性があります。そのため、これらの違法行為を抑止する効果が期待できます。

適正な労働市場が形成されることで、労働者は、より安心して働くことができるようになり、企業も、優秀な人材を確保しやすくなるなど、社会全体にとってプラスの効果をもたらす可能性があります。

みなし雇用制度のデメリットとリスク

みなし雇用制度は、労働者保護の観点から重要な役割を果たしていますが、一方で、企業にとってはデメリットやリスクも存在します。これらのデメリットやリスクを理解し、適切な対策を講じることが重要です。

デメリット・リスク

内容

企業のコスト増加リスク

賃金、社会保険料、福利厚生費などのコスト増加の可能性

人員計画への影響

予想外の人員増加による、人員計画の見直しが必要となる可能性

偽装請負への対応と注意点

偽装請負と判断されないための、適切な契約形態の選択と運用が必要

企業のコスト増加リスク

みなし雇用が発生した場合、企業は、これまで支払っていなかった賃金、社会保険料、福利厚生費などを支払う義務が生じる可能性があります。これにより、企業のコストは増加する可能性があります。特に、長期間にわたって違法な派遣や偽装請負を行っていた場合、その負担は大きくなる可能性があります。

また、みなし雇用によって直接雇用労働者数が増加した場合、それに伴い、事務所スペースの確保や設備投資が必要になる場合もあります。これらのコスト増加は、企業の経営に大きな影響を与える可能性があります。

人員計画への影響

みなし雇用が発生した場合、予想外の人員増加が発生し、人員計画の見直しが必要になる可能性があります。特に、事業計画に基づいて人員数を厳密に管理している企業にとっては、大きな影響を与える可能性があります。

また、みなし雇用によって新たに雇用した労働者に対して、適切な教育や研修を行う必要も生じます。これらの対応には、時間とコストがかかるため、企業の負担は増加する可能性があります。

偽装請負への対応と注意点

みなし雇用の中でも、特に注意が必要なのが偽装請負への対応です。偽装請負と判断されないためには、適切な契約形態の選択と運用が重要です。

請負契約を締結する際には、仕事の完成を目的とした契約であることを明確にし、指揮命令関係が生じないように注意する必要があります。また、請負業者が、独立して業務を遂行できるような体制を構築することも重要です。

もし、偽装請負と判断された場合、みなし雇用が発生するだけでなく、行政処分を受ける可能性もあります。そのため、企業は、偽装請負のリスクを十分に理解し、適切な対策を講じる必要があります。

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みなし雇用制度への対策と対応方法

みなし雇用制度のリスクを回避し、適切な雇用管理を行うためには、どのような対策が必要なのでしょうか。ここでは、具体的な対策と対応方法について詳しく解説します。

対策

内容

内部育成の強化

社員のスキルアップを図り、必要な人材を社内で育成する

アウトソーシングの活用

専門性の高い業務や一時的な業務を外部に委託する

労働契約の適正化

労働契約の内容を明確化し、法令に準拠した契約を締結する

内部育成の強化

みなし雇用のリスクを回避するためには、まず、社員のスキルアップを図り、必要な人材を社内で育成することが重要です。これにより、外部からの労働力への依存度を減らし、みなし雇用が発生するリスクを低減することができます。

社員のスキルアップを促進するためには、研修制度の充実や資格取得の支援など、様々な取り組みが考えられます。また、社員のキャリアプランを明確化し、個々の能力を最大限に活かせるような人事制度を構築することも重要です。

アウトソーシングの活用

内部で人材を育成することが難しい場合や、専門性の高い業務、一時的な業務を外部に委託することも有効な手段です。アウトソーシングを活用することで、必要な時に必要な人材を確保することができ、人員計画の柔軟性を高めることができます。

ただし、アウトソーシングを活用する際には、委託先の選定や契約内容の確認など、慎重な対応が必要です。特に、偽装請負のリスクを回避するためには、指揮命令関係が生じないように注意し、真の意味での請負契約を締結する必要があります。

労働契約の適正化

労働契約の内容を明確化し、法令に準拠した契約を締結することも重要です。曖昧な契約内容や法令に違反する契約は、トラブルの原因となる可能性が高いため、注意が必要です。

労働契約を締結する際には、労働条件や業務内容などを明確に記載し、双方が合意した上で締結する必要があります。また、労働関係法令の改正などにも注意し、常に最新の法令に準拠した契約内容を維持することが重要です。

まとめ

みなし雇用制度は、労働者の権利保護の観点から重要な役割を果たしていますが、企業にとっては、コスト増加や人員計画への影響など、様々なリスクも存在します。これらのリスクを回避するためには、内部育成の強化、アウトソーシングの活用、労働契約の適正化など、適切な対策を講じることが重要です。

常に最新の法令や判例を把握し、適切な雇用管理を行うことで、企業は、みなし雇用制度のリスクを最小限に抑え、安定的な事業運営を行うことができるでしょう。

本記事が、企業の皆様にとって、みなし雇用制度への理解を深め、適切な対応を行うための一助になれば幸いです。

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