人事評価制度をやめる、という選択が現実の議題になっています。評価基準が読めない、評価者によって結果が変わる、そして評価のたびに現場の意欲が下がる。こうした声が積み上がった先に、制度そのものを外すという判断が出てきました。
ただ、やめるかどうかを決める前に、いまの制度が実際にどう動いているかを見ておく価値はあるはずです。日本には、評価の結果がどう分かれ、それが処遇や育成にどこまで届いているかを数字で示した公表資料があります。廃止が検討される背景とノーレイティングの中身を押さえたうえで、その公表データから判断の順序を組み立てましょう。
人事評価制度の基本構造と代表的な評価手法
人事評価制度とは、従業員の働きぶりと成果を一定の基準で確かめ、その結果を処遇と育成に反映させる仕組みです。等級制度(役割や職能の階層を定める枠組み)と報酬制度の間に置かれ、3つが噛み合って初めて機能します。廃止の是非を論じる前に、自社のどの部分が動いていないのかを切り分けておきましょう。
評価の3つの基準
日本企業で広く使われる評価の切り口は、業績、能力、情意の3つに分かれます。業績評価は期間内に出した成果を測り、能力評価は職務を遂行する力を測り、情意評価は勤務態度や協調性といった行動面を測るものです。
配分の置き方は職種と等級によって変わります。管理職では業績の比重を上げ、若手では能力と情意を厚くする設計が一般的でしょう。3つの比重を明文化していない組織では、評価者ごとに重みが変わり、結果のばらつきが生まれます。
代表的な評価手法
制度の型としては、目標管理制度(MBO)、コンピテンシー評価、360度評価の3つが広く使われてきました。目標管理制度は期首に目標を合意し、期末に達成度を確認する手法です。コンピテンシー評価は成果を出す行動の特性を項目化して測ります。
360度評価は上司だけでなく同僚や部下からも評価を集め、視点の偏りを抑える手法にあたります。近年は目標と主要な結果(OKR)のように、達成度を報酬と直結させずに目標の共有と挑戦を促す枠組みも使われるようになりました。
いずれの手法も、評価の物差しを変えるものであって、結果の使い道までは決めません。手法の選択と、評価結果を昇給や登用にどう接続するかは、別々の設計課題です。制度全体の組み立て方は人事評価とは?分布データで読む制度設計の要点で扱っています。
人事評価制度の廃止が検討される背景
人事評価制度の廃止を検討する企業が増えている背景には、従来の評価方法が現代の働き方や組織の在り方に合わなくなってきたという認識があります。指摘されているのは主に3点で、評価基準の不透明さ、評価者による判断のばらつき、そして従業員の意欲の低下です。
従来の評価制度では、年功序列や成果主義といった基準が置かれてきました。事業環境が短い周期で変わる状況では、これらの基準だけで従業員の貢献を正確に測ることが難しくなっています。在宅勤務やフレックスタイム制が広がり、勤務形態そのものが分かれたことも、一律の基準が機能しにくくなった一因でしょう。
評価基準の透明性が確保されていない
評価基準が明確に示されていないことは、従業員の不満や不信感に直結します。自分の評価結果に納得できない状態が続けば、意欲は下がっていきます。この問題は、業務内容が複雑で職種の幅が広い組織ほど表面化しやすいものです。
評価基準が曖昧なまま運用されている
評価項目や達成基準がはっきりしないと、従業員は何を目指して働けばよいかを判断できません。目標設定の段階でつまずくため、日々の業務の優先順位も定まらなくなります。基準の曖昧さは、評価の場面だけでなく、その前の1年間の働き方に影響します。
評価基準の不透明さが不満につながる
基準が見えないまま低い評価を受けると、従業員はその理由を自分で説明できません。理由が示されない評価は不公平感として残り、組織内の信頼関係を削るものです。評価そのものより、評価の根拠が開示されないことのほうが問題視されやすい傾向があります。
評価基準の見直しが必要になる理由
事業の中身が変われば、成果として数えるものも変わります。数年前に作った評価項目が現在の業務と対応していない状態は珍しくありません。基準を定期的に更新しないまま運用を続けると、評価の精度は下がり続けます。
評価者によって評価がばらつく
同じ基準を使っていても、評価者が違えば結果が変わることがあります。このばらつきは、制度の公平性と信頼性を直接損ないました。部署数が多く、評価者の経験が揃っていない組織ほど差は大きくなります。
評価者の主観が結果を左右する
評価者個人の価値観や経験は、評価の視点そのものに影響します。結果を重く見る評価者と、過程を重く見る評価者では、同じ働きぶりに違う評語が付くでしょう。客観性を担保する仕組みがなければ、この差はそのまま従業員間の不公平感になります。
同じ基準でも評価者ごとに解釈が分かれる
基準の文言が同じでも、それをどの水準で適用するかは評価者に委ねられています。同程度の業績を上げた従業員が、所属部署や上司の違いだけで別の評価を受けることがあるのです。この状態は組織全体の公平性を損ない、制度への信頼を失わせます。
評価の公平性を保つための対策
ばらつきを抑える手段としては、評価者トレーニングの実施と、複数の評価者による評価の導入が挙げられます。評価基準の明確化と評価プロセスの標準化も同じ方向の打ち手です。評価者間のすり合わせと評価結果の検証を定期的に回すことで、差は縮まります。
従業員のモチベーションが下がる
人事評価制度が意欲の低下を招くケースが増えました。低い評価が繰り返されると、従業員の自信と業務への意欲は削られていきます。組織の生産性に直接響くため、放置できない問題です。
低評価がもたらすモチベーションの問題
低い評価を受けた従業員は、自分の貢献が認められていないと受け取ります。評価の理由が明確でなく、改善のための助言もない場合、その受け取り方は固定されるでしょう。何をどう変えれば評価が変わるのかが示されないことが、意欲低下の中心にあります。
評価制度が離職につながる理由
評価制度への不満や不信感が転職の引き金になる例は少なくありません。自分の努力や貢献が正当に評価されていないと感じた従業員は、より良い条件を外に求めます。中核人材ほど選択肢を持っているため、流出の影響は大きくなりがちです。定着の測り方は定着率とは?計算式と100−離職率が使えない理由で扱っています。
モチベーションを維持するための方法
意欲を保つには、評価制度の見直しだけでは足りません。日常的なフィードバックと成長機会の提供が並行して要ります。定期的な1対1の面談や、スキル習得のための研修機会の提供が、その実体になります。

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評価結果の分布と処遇への反映を先に測る
制度をやめるかどうかの前に、いまの評価が「どう分かれ」「どこまで届いているか」を数字で押さえる手順があります。日本では国家公務員と地方公共団体について、評語の分布と評価結果の活用状況が公表されており、民間企業でも自組織の同じ数字を出せば比較の土台になるのです。
以下は公務部門の実測値です。民間企業の平均ではありませんが、評価が「中央に寄る」「下位がほとんど付かない」という現象が実在することと、その規模を確かめる材料になります。
評語は上位3区分に集中し、下位2区分はほとんど付かない
内閣官房内閣人事局が令和8年3月に公表した見直し後の人事評価制度の運用状況によると、国家公務員の一般職員に6段階の評語を用いた能力評価(令和5年10月から令和6年9月まで)では、上位3区分(卓越して優秀・非常に優秀・優良)の合計が66.3%を占めました。一方、下位2区分(やや不十分・不十分)の合計は0.5%にとどまります。
評語 | 能力評価 | 業績評価 |
|---|
卓越して優秀 | 1.2% | 1.8% |
非常に優秀 | 17.1% | 20.0% |
優良 | 48.0% | 46.4% |
良好 | 33.2% | 31.4% |
やや不十分 | 0.4% | 0.4% |
不十分 | 0.1% | 0.1% |
出所は前掲の内閣人事局資料で、能力評価は令和5年10月から令和6年9月まで、業績評価は令和6年10月から令和7年3月までの一般職員が対象です。業績評価でも上位3区分は68.2%、下位2区分は0.5%でした。評語を5段階から6段階へ細分化しても、下位の付き方はほとんど動いていません。中心化傾向と寛大化傾向は評価者の心構えの問題として語られがちですが、公表値で見ると制度側の設計に組み込まれた結果に近いといえます。
結果が任用や育成に届いている実感は2割を下回る
人事院が令和6年1月23日の第5回人事行政諮問会議 事務局説明資料で示した数値では、人事評価の結果が任用に反映されている実感がある被評価者は19.4%、人材育成に活用されている実感がある被評価者は8.0%でした。ただし、これは人事院が新たに実施した調査ではありません。同資料の脚注は、内閣官房内閣人事局が令和3年3月の人事評価の改善に向けた有識者検討会 報告書で示した職員意識調査(令和2年9月28日から10月16日まで実施・回答者数11,203人・推定回収率81.6%)を基に事務局が作成したものだと明記しています。いずれも制度改正前の調査結果です。
評価をやめるべきだという議論の多くは、この「届いていない」という感覚から出発しています。届いていないのは、評価結果を任用と育成につなぐ経路のほうです。制度を外しても、この経路が設計されなければ状況は変わりません。
処遇への反映は組織の規模で差が出る
総務省の地方公共団体における人事評価結果の活用状況等調査(令和7年4月1日現在・調査団体1,788団体の悉皆調査)では、都道府県と指定都市において、昇給・昇任昇格・勤勉手当・分限のいずれについても活用割合が100.0%でした。市区町村の管理職員では、勤勉手当86.9%、昇任昇格83.8%、昇給80.7%となっています。分限は原典に職層別の区分が無く、団体単位で73.9%です。
同じ制度を持っていても、結果をどこまで処遇に接続しているかは組織によって割れます。評価が機能していないという実感がある場合、まず疑うべきは基準の中身より、結果の使い道が定義されているかどうかでしょう。
面談に確保されている時間は10分未満が約半数
この数字の出どころは、前項の19.4%・8.0%と同じ職員意識調査です。内閣官房内閣人事局の人事評価の改善に向けた有識者検討会 報告書(令和3年3月)によると、この調査は令和2年9月28日から10月16日まで実施され、回答者数11,203人・推定回収率81.6%という規模でした。期首面談と期末面談を有益とする回答は8割強に達しています。ところが、面談に要した時間は約5割が10分未満でした。
有益だと認識されている場が、10分で終わっている。この面談の2つの値も、前項の19.4%・8.0%と同じ令和2年の調査時点のもので、前掲の人事院資料が改善のコンセプトとして示す人事評価制度の改善(令和3年10月から段階的に実施)より前にあたります。現在の実態そのものではありませんが、評価が納得されない原因を制度の型に求める前に、対話に割かれている時間そのものを測る価値があることは変わりません。目標の置き方と面談の関係は目標設定の効果と限界、育成の実感を分ける面談で詳述しています。
民間の事業所でも育成に割く時間が足りていない
厚生労働省が令和8年7月31日に公表した令和7年度能力開発基本調査によると、能力開発や人材育成に何らかの問題があると回答した事業所は80.1%でした。内訳では、指導する人材が不足している59.5%、人材を育成しても辞めてしまう51.6%、人材育成を行う時間がない45.5%が上位に並びます。
評価制度の運用は、この育成の余力の上に乗っています。指導する人材と時間が足りない組織で、上司との対話を増やす方向の制度改定を進めれば、負荷はそのまま現場に落ちるでしょう。制度の選択と、育成に割ける資源の実態は、同時に見る必要があります。
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ノーレイティング制度の定義と適用範囲
ノーレイティングは、数値による格付けと順位付けをやめ、継続的なフィードバックへ重心を移す評価の枠組みです。年1回の評価サイクルを軸にする運用から、日常の対話を軸にする運用への切り替えにあたります。
評価を「しない」制度ではありません。格付けをやめるだけで、目標の設定、成果の確認、報酬の決定はいずれも残ります。何を外し、何を残すのかを最初に決めないまま導入すると、評価の根拠が失われた状態だけが残るでしょう。
ノーレイティング制度の位置づけ
ノーレイティングでは、定期的な評価サイクルを廃し、日常的なフィードバックを重視します。上司と部下が頻繁に対話し、目標の進捗と課題をその都度確認する形です。従業員は自分の状態を随時把握でき、改善点を早い段階で見つけられるでしょう。
ノーレイティングの定義
数値評価や順位付けを廃止し、継続的なフィードバックによって従業員の成長を支える評価方法を指します。個人の成長と組織への貢献を、複数の側面から判断する点に特徴があります。
廃止するものと残すもの
外すのは、相対評価による序列付けと、その序列を報酬に機械的に対応させる処理です。残るのは、目標の合意、期中の対話、期末の振り返り、そして報酬の決定でしょう。報酬をどう決めるかを設計せずに序列だけ外すと、決定の根拠が上司の裁量に丸ごと移ります。
ノーレイティング制度が広がった背景
事業環境の変化が速くなり、年1回の目標が期の途中で意味を失う場面が増えました。加えて、格付けが従業員間の協力関係を阻害するという指摘が積み重なっています。より短い周期で目標と評価を回す必要が、この枠組みを後押ししました。
ノーレイティング制度のメリット
格付けをやめることで得られるものは、評価の透明性、従業員の納得感、そして目標設定の柔軟性の3点です。いずれも対話の頻度が上がることに由来します。
評価プロセスの透明性が上がる
従業員は自分の状態について上司と頻繁に話す機会を持ちます。評価が期末に一度だけ告げられる形ではなくなるため、結果に対する納得感は高まるでしょう。何が評価されているかが期中に確認できることが、透明性の実体です。
従業員の納得感が高まる
数値評価や順位付けがなくなると、比較の対象は自分の目標へ移ります。競争より成長に焦点が移り、仕事への満足度や組織への関与が高まる傾向が指摘されました。個々の強みを活かした役割分担も組みやすくなります。
目標を状況に応じて変えられる
目標を固定せず、状況に応じて調整できる形になります。事業環境が急に変わっても、目標の側を早く合わせられるのです。従業員の成長段階や能力に応じた設定も、この枠組みなら無理なく組めるでしょう。
ノーレイティング制度のデメリット
一方で、上司の負担増、評価の質のばらつき、導入コストという3つの課題が指摘されています。導入前に対策を用意しておかないと、格付けをやめた分だけ運用が不安定になるでしょう。
上司の負担が増える
上司が部下と頻繁に対話する必要が生じるため、業務負担は増えます。定期的なフィードバックの実施と、個々の成長支援は、時間と精神の両面で重い作業でしょう。前掲の令和7年度能力開発基本調査で、人材育成に何らかの問題があるとした事業所(80.1%)のうち45.5%が「人材育成を行う時間がない」を挙げていることを踏まえると、この負担は無視できません。
対処としては、上司のマネジメントスキル向上のための研修と、業務分担の見直しが挙げられます。フィードバックの記録を支えるツールの導入も負担軽減に働きます。人事部門が上司へのコーチングに関与する体制を用意できれば、さらに軽くなるでしょう。
評価の質が評価者に依存する
数値による客観的な基準がないため、評価の質は評価者の能力と経験に強く依存します。評価者によって質がばらつけば、公平性と一貫性は損なわれました。
対応の柱は、評価者向けトレーニングの充実です。評価の視点、対話の進め方、フィードバックの伝え方といった具体的な技能を身につける機会を設けます。上司だけでなく同僚や部下からの評価も取り入れる多面評価を併用すれば、視点の偏りは抑えられるでしょう。
導入にコストと時間がかかる
既存の評価システムの改修、新しい運用の設計、従業員と管理職への研修と、準備の範囲は広くなります。規模の大きい組織では、全社的な制度変更に伴う混乱も見込んでおく必要があるでしょう。
段階的な導入がこの負担を分散します。特定の部署で試験運用し、結果を検証してから全社へ広げる進め方です。制度変更の目的と期待する効果を従業員に説明し、理解を得ておくことが移行を滑らかにします。

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日本企業における人事評価制度の現状と課題
日本の人事評価制度は、独自の雇用慣行と組織文化の上に組まれてきました。年功序列を土台にしながら成果主義の要素を重ねてきた経緯があり、欧米の枠組みをそのまま移植すると噛み合わない部分が出ます。
日本の人事評価制度の特徴
長期雇用を前提とした人材育成と、集団での成果を重んじる価値観が制度の前提に置かれています。個人の成果だけでなく、協調性やチームへの貢献も評価対象に入る点が特徴です。
年功序列と成果主義の併存
年齢と勤続年数を基礎にしつつ、成果の要素を組み込む形が広く用いられてきました。二つの原理が同じ制度の中に併存するため、どちらを優先するかが曖昧になりやすい構造です。この曖昧さが、評価結果の説明を難しくしています。
日本独自の評価基準
協調性、勤勉さ、責任感といった行動面の要素が評価項目に入ることが少なくありません。数値化しにくい項目が多いため、評価者の主観が入り込む余地は大きくなります。項目の定義と観察方法を揃えておかないと、部署ごとに別の物差しが生まれるでしょう。
評価制度の変化
多面評価や目標管理制度(MBO)を取り入れ、判断の視点を増やす動きが広がっています。評価の頻度を上げ、期中の対話を制度に組み込む例も出てきました。制度の型そのものより、運用の周期を短くする方向の変化が中心です。
人事評価制度が抱える課題
課題は大きく3つに分かれます。処遇への接続の弱さ、基準の曖昧さ、そして評価者の主観です。いずれも前掲の公表データで裏づけられる論点でしょう。
評価と処遇の接続が弱い
評価をしても、それが任用や育成に反映されている実感が持たれていないことは、人事院の調査値が示すとおりです。結果の使い道が定義されていなければ、評価は年中行事として消化されます。制度の見直しは、基準の書き換えより先に、結果の接続先を決めるところから始めるほうが確実でしょう。
評価基準の曖昧さがもたらす問題
基準が曖昧だと、従業員は目標設定の段階で迷います。何を達成すれば評価されるのかが読めないため、日々の判断も揺れました。評価される側の行動が定まらないことは、制度の目的そのものを損ないます。
評価者の主観が影響するリスク
評価者の主観は、公平性と信頼性を損なう最大の要因として挙げられてきました。中心化傾向や寛大化傾向は、その典型です。前掲の評語分布が示すように、下位区分がほとんど付かない状態は個々の評価者の資質だけでは説明できません。
日本企業がノーレイティングを導入する手順
日本企業で導入する場合、既存の雇用慣行との接続を考えた設計が要ります。段階的な導入、評価者の訓練、現場のフォローアップという3つの手順が土台です。
段階的に導入する利点
一部の部署や職種から始めることで、混乱を抑えながら課題を洗い出せます。試行の結果を踏まえて制度を調整し、その後に全社へ広げる流れです。移行期には従来の制度と並行して運用する期間を置くと、比較の材料も得られます。
評価者トレーニングの位置づけ
格付けをやめると、評価の質は評価者の技能にそのまま依存します。評価の視点、フィードバックの方法、面談の進め方を具体的に訓練する必要があるでしょう。定期的な研修と、評価者どうしの経験共有の場を制度として用意します。
現場のフォローアップ体制
導入後に生じる疑問や課題へ対応する体制がないと、運用は現場任せになります。人事部門による定期的な確認、相談窓口の設置、成功例と失敗例の共有が実務の支えです。従業員からの意見を集める仕組みも、制度の調整に不可欠でしょう。

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ノーレイティング制度を導入する際のポイント
導入を成功させるには、評価制度の見直し、評価者の育成、段階的な導入プロセスの3つを揃える必要があります。どれか1つを欠くと、格付けをやめた分の穴が埋まりません。
評価制度の見直し
既存の制度のどこを残し、どこを組み替えるかを決める工程です。組織の目標と評価の対象を対応させ、フィードバックの周期を先に定めます。
評価基準の再設定
組織の目標や価値観に沿った項目へ組み替え、従業員が理解できる形で示します。定量的な指標と定性的な観点を組み合わせ、どちらの比重をどう置くかまで決めておきましょう。基準そのものを従業員と共有する過程が、納得感の土台をつくります。
フィードバックの仕組み
継続的で具体的なフィードバックが制度の中心です。1対1の面談の定期開催、日常的に記録を残す手段、四半期ごとの振り返りといった要素で構成されます。フィードバックの質を保つには、評価者への訓練が並行して要りました。
定期的な見直しと改善
導入して終わりではなく、運用状況を定期的に確認して調整します。従業員や管理職からの意見収集、他社の運用の把握、組織の変化に応じた修正が作業の中身です。制度を固定せず、環境に合わせて更新し続ける姿勢が結果を左右します。
評価者の育成
評価者の技能が制度の成否を決めます。マネジメントスキル、評価技術、そして信頼関係の構築という3つの側面から育てる設計が要るでしょう。
マネジメントスキルの向上
部下の成長を支援する視点が求められます。目標設定の支援、進捗の確認、適切な助言といった技能を体系的に習得する機会を設けます。コーチングの手法を学ぶことは、日常的な支援の質を押し上げるでしょう。
評価者トレーニングの設計
評価基準の理解、フィードバックの方法、面談の進め方を扱う内容にします。実践的な演習や事例研究を組み込むと、現場での応用が利くはずです。定期的な開催と、評価者どうしの意見交換の場をあわせて用意します。
評価者と被評価者の信頼関係
信頼がなければ、どれだけ丁寧なフィードバックも受け取られません。1対1の面談の定期開催、判断基準の開示、被評価者のキャリア目標の理解が土台になるでしょう。評価者自身が自分の経験や失敗を共有することも、関係づくりに働きます。
段階的な導入プロセス
試験運用、改善、全社展開という順序で進めます。各段階で得た情報を次の段階へ渡すことで、混乱を抑えられました。
試験運用の位置づけ
小規模な部門で試すことで、制度の課題を早期に把握できます。対象部門の選定では、規模、業務の特性、管理職の理解度を考慮します。実施期間を明確に区切り、評価指標を事前に定めておくことが検証の前提です。
フィードバックをもとにした改善
試験運用で集めた意見をもとに制度を調整します。評価者と被評価者の双方から情報を集め、運用上の課題を洗い出す作業です。改善点を反映した制度を再度試し、有効性を確認してから次へ進みます。
全社展開への移行
展開の計画を立て、各部門の特性に応じた調整を加えます。全社員向けの説明会、移行に伴う不安への対応、先行部門の運用例の共有が実務の中心でしょう。展開後も定期的な確認を続け、必要に応じて修正します。

評価制度の見直しと採用計画は、同じ人員計画の上に乗ります。採用計画の策定から施策、指標の設定と管理までをまとめたExcelファイルを用意しました。採用の目的と目標の設定、スケジュールの作成、指標の管理方法を1つのシートで扱えるようにしました。
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他社の廃止事例を扱う前に確認すること
制度をやめた企業の名前は、記事や書籍を通じて広く知られています。ただ、そこで示されるのは制度の枠組みまでで、廃止によって何がどれだけ変わったかを検証できる形で公表している例はほとんど見当たりません。導入年の記述すら資料によって割れることがあります。
他社が何をやめたかは、自社が何をやめるべきかの答えにはなりません。判断の材料にするなら、公表された統計で確かめられる範囲と、自組織で測れる数字から入るほうが確実でしょう。具体的には、評語の分布、評価結果が昇給や登用に反映された割合、面談に実際に使われている時間の3つが出発点になります。
この3つを出したうえで、格付けをやめる判断が必要かどうかを検討します。分布が中央に寄っているだけなら評価者の訓練で動く可能性があり、結果が処遇に接続されていないなら制度の型ではなく接続の設計が論点でしょう。評語の分布そのものの読み方は、前掲の内閣人事局資料が一次の情報源になります。

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評価制度の見直しを進める順序
人事評価制度の廃止は、評価基準の不透明さ、評価者によるばらつき、意欲の低下という3つの不満から検討されてきました。ノーレイティングはその答えの1つですが、格付けを外すだけでは報酬決定の根拠が上司の裁量に移るだけで終わります。
先に測るべきものは、評語の分布、評価結果が処遇と育成に届いている割合、そして面談に使われている時間です。公務部門の公表値では、上位3区分に66.3%が集まり、任用への反映を実感する被評価者は19.4%、面談時間は約5割が10分未満でした(後の2つは令和2年9月から10月に実施された同一の職員意識調査による値)。同じ形の数字を自組織で出せば、制度の型を変えるべきか、運用を変えるべきかの判断は分かれます。
見直しの順序としては、結果の使い道を定義し、評価者の訓練を組み、対話の時間を確保したうえで、それでも残る問題に対して制度の型を検討する流れが無理のない進め方でしょう。

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