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採用稟議が通らない理由と書き方|人件費の試算

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採用稟議が落ちるのは、決裁者が持つ問いのどれかに稟議書が答えていないときです。

問いは4つあります。なぜ今この人数が要るのか。年収のほかに会社がいくら負担するのか。経営計画のどこにつながるのか。この条件で採用できるのか。

4つとも、稟議を出す前に書き足せる内容です。人件費は年収に会社負担の社会保険料を足して見積もります。2026年度からは、その社会保険料に子ども・子育て支援金の負担が加わりました。

Offers HR Magazine編集部監修者

株式会社overflow / 編集担当

Offers HR Magazine編集部

Offers HR Magazine 編集部は、株式会社overflow が運営する採用メディアの編集チームです。エンジニア採用に取り組む人事・採用担当者に向けて、採用手法・人事制度・組織づくりの情報を届けています。

採用稟議が落ちる4つの理由と、決裁者が確かめていること

採用稟議が落ちる理由は、増員の必要性の根拠、人件費の見積もり、経営計画とのつながり、採用できる見込みの4つのどれかが稟議書に欠けていることです。決裁者は正社員の採用を、毎年続く人件費の支出として審査します。4つのうち1つでも答えが無ければ、結果は承認ではなく差し戻しか保留です。

落ちる理由

決裁者の問い

稟議書で足すもの

増員の必要性が数字で示されていない

今の人数で回らない根拠は何か

業務量・残業時間・未対応の案件の推移

人件費が年収だけで書かれている

1人あたり年間いくらかかるのか

会社負担の社会保険料と採用費を足した総額

経営計画とのつながりが書かれていない

どの事業目標のための採用か

対応する事業計画・人員計画の項目

採用できる見込みが立っていない

この年収と要件で人が来るのか

同じ職種の求人の年収帯・採用手法と期間

増員の必要性が、業務量の数字で示されていない

「現場が忙しい」「人が足りない」という書き方では、決裁者は必要性を判断できません。

稟議書には、業務量が増えた事実を数字で書きます。残業時間の月ごとの推移、担当者1人あたりの案件数、対応できずに断った案件や遅れた納期が材料です。

欠員補充なら、退職者が担っていた業務と、残ったメンバーへの割り振りでは回らない理由を書きます。

人件費が年収だけで、会社負担と採用費が抜けている

年収だけを書いた稟議では、決裁者が予算と突き合わせた時点で金額が合いません。

会社は年収とは別に、健康保険・厚生年金保険・雇用保険などの保険料の会社負担分を払っています。人材紹介の手数料や求人広告費といった採用費も必要です。どちらかが抜けたまま承認されると、採用のあとで予算を超えます。決裁者が差し戻すのは、それを避けて確かめ直すためです。

会社負担の見積もり方は、2026年度の料率を使って「人件費は年収に会社負担の社会保険料を足して見積もる」の節で示しています。

経営計画・人員計画との対応が書かれていない

決裁者が承認するのは、会社の目標に必要な支出です。部門の都合に見える採用は、優先順位で後回しになります。

稟議書には、採用が対応する事業計画の項目を書きます。たとえば「来期の新規事業の立ち上げに必要な開発体制」「既存プロダクトの保守を担う人員の欠員」といった書き方です。年度の人員計画に載っている採用なら、その計画の該当箇所を添えます。

年度の途中の起案で問題になるのは、予算の枠が残っていない場合です。そのときは、今期に1名、来期に残りと時期を分けて起案すると、決裁者は判断しやすくなります。

年度の採用計画そのものを作る時期なら、Offers のお役立ち資料にある採用計画テンプレート(Excel)が使えます。採用戦略の立案から予算配分までを、数値とモデルケースつきで組み立てるたたき台です。必要な人数の出し方は採用計画の立て方と必要採用数の出し方で扱っています。

年収と要件が採用市場と合わず、採用できる見込みが立たない

承認しても採用が決まらなければ、決裁者にとっては使われないまま残る予算です。年収の上限が低すぎる稟議や要件が多すぎる稟議は、「この条件で採用できるのか」と問い返されます。

稟議書には、同じ職種・同じ経験年数の求人が提示している年収帯を添えます。そのうえで書くのが、使う採用手法と入社までに見込む期間です。エンジニアのように採用の競争が激しい職種ほど、年収帯の裏付けが要ります。

採用稟議は募集開始と採用決定の2回あり、落ちる理由が違う

採用稟議には、ポジションと予算を承認する募集開始の稟議と、選考で選んだ候補者1人と提示条件を承認する採用決定の稟議の2種類があります。必要性・人件費・経営計画・採用できる見込みの4つで落ちやすいのは、募集開始の稟議のほうです。

稟議の種類

承認するもの

落ちる主な理由

募集開始の稟議

ポジションの新設・増員、人数、年収レンジ、採用費

必要性・人件費・経営計画・採用できる見込みの説明不足

採用決定の稟議

候補者1人の採否、提示年収、等級、入社日

提示年収が承認済みのレンジを超える、要件との食い違い

採用決定の稟議が止まる理由の1つに、募集開始の稟議で承認した内容との食い違いがあります。承認済みのレンジを超える年収を提示したい場合に書くのは、候補者のどの経験がレンジを超える理由になるかです。

候補者1人の採否を決める稟議の進み方と、稟議を待つ候補者の扱いは、転職稟議の不採用確率|出回る数字の出所と判断の基準で扱っています。

人件費は年収に会社負担の社会保険料を足して見積もる

採用稟議に書く人件費は、年収に、会社が負担する社会保険料と採用にかかる費用を足した額です。2026年度の会社負担の社会保険料は、協会けんぽ東京支部に加入する会社の40歳未満の社員で、給与の約15.4%になります。

保険料

料率(2026年度)

会社負担の率

月給50万円の会社負担(月額)

健康保険(協会けんぽ東京支部)

9.85%

4.925%(折半)

24,625円

子ども・子育て支援金

0.23%

0.115%(折半)

575円

厚生年金保険

18.3%

9.15%(折半)

45,750円

雇用保険(一般の事業)

13.5/1,000

8.5/1,000(0.85%)

4,250円

子ども・子育て拠出金

0.36%

0.36%(全額会社負担)

1,800円

合計(40歳未満)

―

15.4%

77,000円

介護保険(40歳以上65歳未満のみ)

1.62%

0.81%(折半)

4,050円

出所:全国健康保険協会「令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)」、日本年金機構「保険料額表(令和2年9月分~)」「厚生年金保険料額表(令和8年度版)」、厚生労働省「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」をもとに編集部が算出。

表に含めていないのは、業種で率が決まる労災保険料です。健康保険料率は都道府県ごとに違うため、東京以外の会社は加入する支部の料率に置き換えてください。

年収600万円の社員1人で、会社負担は年92万4,000円

賞与なしの月給50万円(年収600万円)で40歳未満の社員を採用すると、会社負担の社会保険料は月77,000円、年92万4,000円です。稟議書に書く人件費は、年収と合わせて年692万4,000円になります。

40歳以上65歳未満の社員なら、健康保険料に介護保険料が加わります。会社負担は月81,050円、年97万2,600円です。

月給の高いポジションでは、会社負担の率が15.4%より下がります。厚生年金保険の標準報酬月額は65万円が上限で、月給がそれを超えても厚生年金保険料は65万円の等級で計算されるためです。健康保険と厚生年金保険の保険料は賞与にもかかるので、賞与を払う前提の年収なら、賞与の分も会社負担に含めて見積もります。

2026年度に変わった料率は4つある

2026年度は、会社負担の社会保険料のうち4つの料率が変わりました。前年度の稟議で使った率をそのまま使うと、見積もりがずれます。

料率

2025年度

2026年度

子ども・子育て支援金

制度の開始前

0.23%(2026年4月分から・労使折半)

雇用保険の会社負担(一般の事業)

9/1,000

8.5/1,000

健康保険(協会けんぽ東京支部)

9.91%

9.85%(2026年3月分から)

介護保険(40歳以上65歳未満)

1.59%

1.62%(2026年3月分から)

出所:全国健康保険協会「令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」「令和7年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」、厚生労働省「令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内」。

採用費は保険料とは別に積み上げる

採用にかかる費用は、社会保険料とは別の行で稟議書に書きます。

外に払う費用は、人材紹介の成功報酬、求人広告の掲載料、スカウトサービスの利用料などです。社内では、面接に出る社員の工数や社員紹介の報奨金がかかります。

手法ごとに見積もりを分けて書けば、決裁者は「この手法をやめたらいくら下がるか」を判断できます。費目の分け方は採用コストの内訳と費目の分け方、削る順番の決め方にまとめました。

承認される採用稟議書の項目と書き方

承認される採用稟議書の共通点は、決裁者の4つの問いに対応する項目が1件の起案の中にそろっていることです。件名から添付資料までの8項目を順に書くと、決裁者が差し戻さずに判断できる形になります。

項目

書く内容

答える問い

件名

部署・職種・人数・新設か補充か

―

採用の背景と目的

業務量の推移、欠員の影響、対応する事業計画

必要性・経営計画

ポジションと人数・入社時期

配属先、職種、人数、入社予定月

経営計画

人材要件

必須の経験とスキル、歓迎する経験

採用できる見込み

年収レンジと人件費

年収の下限と上限、会社負担の社会保険料を足した年額

人件費

採用手法と採用費

使う手法、手法ごとの費用、見込む期間

人件費・採用できる見込み

採用しなかった場合の影響

残業の増加、受けられない案件、納期の遅れ

必要性

添付資料

職務記述書、年度の採用計画の該当箇所

―

人材要件と業務内容は、職務記述書(ジョブディスクリプション)にまとめて添付します。書き方はジョブディスクリプションのテンプレートを紹介!作り方や運用方法も解説を参照してください。

稟議書は、結論と金額を1枚目に置く

決裁者は複数の稟議を続けて読みます。1枚目の冒頭には「何名を、いつまでに、年間いくらで採用するか」を書き、根拠はその後ろに続けます。

数字は文章に埋めず、表にまとめるのが基本です。業務量の推移はグラフにすると、増え方が一目で伝わります。専門用語や社内の略語に初出で一言の説明があれば、決裁者は読み止まりません。

提出の前に、人事と経理に数字を確かめてもらう

起案者が現場の部門長なら、提出の前に人事へ年収レンジと採用手法を、経理へ人件費の見積もりを確かめてもらいます。

決裁の場で数字の誤りが見つかれば、内容ではなく数字の確認のための差し戻しです。事前に確かめた担当者の名前を稟議書に書いておくと、決裁者が確かめ直す手間も減ります。

稟議が落ちたあとは、差し戻しの理由を確かめて直す箇所を絞る

採用稟議が落ちたら、まず決裁者に、4つの問いのどれに答えが足りなかったのかを確かめます。理由が分かれば、直すのは稟議書の全体ではなく該当の項目だけです。

差し戻しの理由

直し方

必要性が伝わらない

業務量の数字を足す、採用しなかった場合の影響を金額で書く

予算を超える

人数を減らす、時期を分ける、年収レンジを見直す

今期の計画に無い

次の予算策定の時期に合わせて人員計画に載せる

採用できる見込みが無い

年収帯の根拠を足す、必須の要件を絞る

予算を理由に落ちた場合も、人数を1名に絞って先に採用し、成果を見てから次の採用を起案する進め方があります。決裁者にとっては一度に出す金額が小さくなり、判断の材料も増えます。

増員そのものが見送りになったときに部門内で立てるのは、業務の見直しや社内の配置換えで当面を回す案です。その間の業務量の推移を記録しておけば、次の稟議の根拠になります。

採用稟議の承認を得るために押さえる3つのこと

採用稟議が通らない理由は、増員の必要性・人件費・経営計画とのつながり・採用できる見込みの4つのどれかに、稟議書が答えていないことです。

  1. 必要性と経営計画は、業務量の推移と、対応する事業計画の項目で書く
  2. 人件費は会社負担まで含める。2026年度の料率では、協会けんぽ東京支部・40歳未満で給与の約15.4%が年収に上乗せされる
  3. 落ちたら理由を確かめ、人数・時期・年収レンジのうち該当の項目だけを直して再提出する

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