2023年エンジニアの採用市場の動向と今後の予測。超売り手市場にどのように対応すべきか

Offers HR Magazine編集部 2024年8月9日

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エンジニアの採用難が続く中、今後の採用市場に不安を抱える経営者や採用担当者は少なくありません。採用課題を抱える企業は、働き方や人材の運用方法を根本から見直す必要があります。2023年の採用動向と超売り手市場で勝ち抜くための対応策を紹介します。

2023年のエンジニアの採用市場

(出典)https://unsplash.com/

エンジニアの採用市場は売り手市場です。需要と供給の差は年々広がりを見せ、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると予想されています。2023年以降、エンジニア採用市場の状況はどのように変化するのでしょうか?

IT技術関連の求人倍率は高倍率

IT化の流れはIT業界だけにとどまらず、あらゆる業界・領域で加速しています。少子高齢化で日本の労働人口が減少する中、IT人材の人手不足は深刻な状況で、IT技術関連の求人倍率は全体平均よりも高い傾向です。

東京ハローワークの「職種別有効求人・求職状況(2023年3月)」によると、東京都全体における有効求人倍率の平均は1.49倍です。他方、IT技術関連※の求人倍率は3.19倍(有効求人数2万762人、有効求職者数6,504人)で、全体平均よりも1.7倍ほど高くなっています。

レバテック株式会社の「ITエンジニア・クリエイター正社員転職・フリーランス市場動向 2022年12月」でも、正社員求人倍率は15.8倍の高水準をマークしました。

※電子機器技術者・半導体技術者・電気通信技術者・システムエンジニア・プログラマー・グラフィックデザイナーなど

出典:令和5年3月分|【東京】職種別有効求人・求職状況(一般常用)| 東京ハローワーク

出典:ITエンジニア・クリエイターの求人倍率、15.8倍と高止まり続く| レバテック|エンジニアクリエイターの採用情報サイト

IT人材の不足は今後ますます深刻化する見込み

経済産業省では、IT人材の需給試算を公表しています。「IT人材需給に関する調査(みずほ情報総研株式会社調べ)」によると、生産性上昇率を0.7%、IT需要の伸びを3~9%と仮定した場合、2030年には78.7万人のIT人材が不足する予想です。

IT人材は、第4次産業革命の担い手となる「先端IT人材」と、受託開発や運用・保守に従事する「従来型IT人材」に区別されます。

クラウドやビッグデータ、AIが社会に普及すれば、先端IT人材の需要は大きく増えますが、従来型IT人材は需要よりも供給が多くなる可能性があります。従来型IT人材が先端IT人材への「スキル転換(Reスキル)」を行わない限り、IT人材不足は解消されないでしょう。

出典:- IT人材需給に関する調査 -調査報告書|経済産業省

副業希望のエンジニアの増加

(出典)https://unsplash.com/

コロナ禍や働き方改革の影響を受け、副業希望のエンジニアが増加しています。IT人材不足による就業形態の見直しを迫られる企業も多く、今後はエンジニアの副業・兼業がごく当たり前になるかもしれません。

副業経験あるエンジニアは4割以上

TECH Streetの調査レポートによると、「過去に副業をしていたが、現在は本業のみに専念している」という人を含め、副業経験のあるエンジニアは全体の4割以上を占めることが分かりました(2020年8月時点)。

Offers デジタル人材総研がI️Tエンジニアの副業・転職サービス「Offers」の利用者へのアンケートを行ったところ、副業の掛け持ち(2社以上)をするエンジニアは約4割です。

会社の就業規則で社員の副業を禁じる企業がある一方、副業や業務委託でエンジニアを受け入れる企業があることがうかがえます。

出典:ITエンジニアの「副業のリアル」調査レポート -  TECH Street (テックストリート)

出典:副業実態調査レポートvol.1〜79.4%が、コロナ後に副業を開始したと回答〜 | Offers デジタル人材総研

転職潜在層は約4割

エンジニアを正式に雇用したい企業は、採用市場に転職潜在層がどれだけいるのかが気になるのではないでしょうか?

ここでいう転職潜在層とは、「良いところがあれば転職を考える人」「半年以内に転職を考えている人」「1年以内に転職を考えている人」「将来的に転職を考えている人」を指します。

Offers登録者(正社員・現在副業中)へのアンケートよると、転職潜在層は40.3%で、うち「良いところがあれば転職を考える」と答えた人は23.5%でした。

出典:副業実態調査レポートvol.2〜66.7%が「転職・独立の意向あり」と回答〜 | Offers デジタル人材総研

コロナをきっかけに副業検討層も急増中

日本全体で副業を検討する人(副業検討層)が急増するきっかけとなったのが、新型コロナウイルスの流行です。

Job総研の「2022年 副業・兼業に関する実態調査」によると、現在副業中の人のうち、45.5%がコロナ禍後に副業をスタートしています。副業を始めたタイミングを年別で見ると、コロナ禍前の2019年から2022年までの増加率は37.0%にも上ることが分かりました。

  • 2018年:33.6%
  • 2019年:37.1%
  • 2020年:53.8%
  • 2021年:65.0%
  • 2022年:74.1%

副業を始めた理由としては、「収入を上げるため」が83.2%、「本業だけでは生活苦」が44.1%です。働き方改革や物価高騰の背景もあり、今後も副業検討層は増加すると予想されます。

※コロナ禍前:2020年3月以前

※コロナ禍後:2020年4月以降

出典:Job総研「2022年 副業・兼業に関する実態調査」を実施 | JobQ[ジョブキュー]

スキル別の時給相場は?

(出典)https://unsplash.com/

エンジニアの採用難が続く中、社員の雇用形態を見直し、副業エンジニアを柔軟に受け入れようとする企業が増えています。副業エンジニアの採用をいざスタートしようと思っても、時給相場が分からない人事担当者も多いのではないでしょうか?

エンジニアの時給相場は、保有スキルによって変わります。「Offers デジタル人材総研」の調査レポートを参考に、副業IT人材の採用平均決定時給を解説します。

出典:スキル別副業ITエンジニア採用決定時給レポート | Offers デジタル人材総研

プログラミング言語別に見た時給相場

副業エンジニアの採用平均決定時給は、プログラミング言語ごとに異なります。各言語の平均時給は以下の通りです。

プログラミング言語

採用平均決定時給

最低時給

Objective-C

5,126円

2,000円

Swift

4,840円

2,000円

C

4,800円

1,500円

C++

4,671円

1,500円

Ruby

4,655円

1,000円

Rust

4,592円

1,500円

Java

4,551円

1,000円

Go

4,523円

1,198円

Kotlin

4,519円

1,500円

C#

4,429円

1,198円

Python

4,428円

1,000円

TypeScript

4,415円

1,000円

PHP

4,308円

1,198円

JavaScript

4,274円

1,000円

C・C++・C#・Javaには、情報系大学出身者が在学中に習得したスキルが自己申告スキルとして含まれており、コンピュータサイエンスの基礎がある人材や経験の長い人材ほど時給は高くなります。

SwiftやKotlinは、Ruby・Java・Goなどのサーバサイド言語に比べてプレイヤーが少ないことから、時給相場は高値になる傾向があります。

AI・分析・解析人材スキル別に見た時給相場

次に、AI・分析・解析人材スキル別の採用平均決定時給を見てみましょう。

AI・分析・解析人材スキル

採用平均決定時給

最低時給

BigQuery

5,473円

3,000円

ニューラルネットワーク

5,085円

2,000円

データ分析

4,767円

2,000円

機械学習

4,545円

2,000円

統計学

4,465円

2,000円

AI

4,363円

1,500円

Deep Learning

4,130円

2,000円

TensorFlow

3,958円

2,500円

自然言語処理

3,646円

1,500円

平均時給が最も高いのが、Google Cloud Platformが提供する「BigQuery」です。数テラバイトや数ペタバイトの膨大なデータでも超高速で解析ができます。企業での需要が高いことから、最低時給も3,000円以上となっています。

ニューラルネットワークや機械学習の領域はまだ人材が少なく、相場が固まっていません。需要の増加と比例して、平均相場も上昇すると考えられます。

フレームワーク・ライブラリ・ランタイム等別に見た時給相場

フレームワーク・ライブラリ・ランタイムの採用平均決定時給は以下の通りです。

フレームワーク・ライブラリ・ランタイム

採用平均決定時給

最低時給

React Native

4,824円

2,000円

AngularJS

4,590円

1,500円

Node.js

4,585円

1,000円

Redux

4,423円

1,498円

Ruby on Rails

4,324円

1,000円

React

4,294円

1,000円

Vue.js

4,287円

1,000円

Nuxt.js

4,248円

1,000円

Next.js

4,117円

1,000円

Laravel

4,111円

1,198円

jQuery

3,998円

1,500円

Spring Framework

3,970円

1,198円

GraphQL

3,953円

1,500円

平均時給および最低時給が最も高いのが、Facebookによって開発されたReact Nativeを扱うエンジニアです。

React・Vue.js・Nuxt.js・Next.jsの平均時給はほぼ変わらず、4,200円前後が相場となるでしょう。全体で成約数が最も多いフレームワークはReactで、第2位がVue.jsです。平均時給が高いReact NativeやAngularJSは、成約数がそれほど多くありません。

今後のエンジニア採用市場に対応するためには?

(出典)https://unsplash.com/

デジタル化の進展に伴い、あらゆる業界でIT人材が不足します。エンジニア採用市場は需要過多となり、エンジニアの争奪戦は激しさを増すでしょう。採用競争を勝ち抜くには、どのような対策を講じればよいのでしょうか?

正社員採用は副業転職がメインチャネルに

エンジニアの正社員採用が困難な中、副業転職でエンジニアを雇い、タイミングを見計らって正社員に引き上げる形態が増えています。

先に述べた通り、Offer登録者(正社員・現在副業中)の約4割は転職潜在層で、「良いところがあれば転職を考える」という人が2割以上存在します。副業転職を切り口とする採用手法が今後の主流となる可能性があるでしょう。

株式会社overflowでは、正社員の51%が副業からの転身です。お試し転職のような形で実際に一緒に働いてみれば、候補者のスキルや人となりが見極められるため、採用のミスマッチが減少します。候補者も企業の実態を把握でき、入社後のギャップに悩まされずに済みます。

多様な働き方への対応は必須

エンジニアを採用する上で、労働環境や雇用形態を見直す必要があります。IT業界は多様な働き方と相性のよい業界であり、応募先の選定時に「リモートワークが可能か」「フレックスタイムがあるか」「副業ができるか」を重視するエンジニアは少なくありません。

コロナ禍後はテレワークが加速し、職住一致を求める人が増えました。多様な働き方を認める企業は、多くのエンジニアの目に魅力的に映ります。採用に苦戦する企業は、従業員の私生活に配慮し、働き方を自由に選択できる体制を整える必要があるでしょう。

転職前提の人材運用を検討する

Offersを利用する副業人材のうち、転職・独立の意向ありと答えた人を含む転職潜在層は66.8%です。今後は、働き方の自由を尊重する風潮がさらに広がるとともに、一つの会社のみで働くのが当たり前でなくなる時代がやってくるでしょう。

企業間で人材を共有する「人材循環型社会」に合わせ、経営層は社内の雇用体系を見直す必要があります。社内のエンジニアの転職・副業・兼業を想定した、人材運用の構築も求められるでしょう。

例えば、「転職したら終わり」ではなく、元従業員の再雇用や業務委託を認める制度を設ければ、労働力人口の減少や人手不足に影響されずに、能力のある人材が確保できます。

出典:副業実態調査レポートvol.2〜66.7%が「転職・独立の意向あり」と回答〜 | Offers デジタル人材総研

今後の売り手市場に対応できる体制構築が重要

(出典)https://unsplash.com/

2023年のエンジニア採用市場は売り手優勢であり、今後もエンジニアの需要は増え続けると予想されます。「個人が会社を選ぶ時代」において、多くの企業はエンジニアの採用課題を抱えるでしょう。

採用難を打開する方法の一つが、副業からの正社員化です。副業採用をメインチャネルとした採用活動を行うことで、転職市場にめったに現れない他社のハイクラスエンジニアとの接触が実現します。

能力のある人材が限られる中、企業は従来の雇用形態や働き方に固執せず、フレキシブルな人材の採用・運用を進めていかなければなりません。

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